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ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
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第十八話

 
前書き
いつもご覧くださってる皆さまありがとうございます。

十七話の最後で致命的な致命傷ミスをしてしまったので少し直しました。こういうことが無くなるよう気をつけたいと思います。トラバントも半弟ですし、登場も描写も無いかもな半弟や半妹もいるかもを忘れておりました。
直す前→血をわけた家族は~   直し後→彼女がここで生まれ育った頃の家族は~

 

 
 レイニーの村での毎日を俺はなるべく無駄にしないようにした。
この村から伸びる道がどこへどう繋がっているのか、攻められた時は拠点をどこにして防衛するのか、避難民が辿りついてきた場合の対応施設や対応人員の割り振りはどうなっているのかなどなど。
レイニーに問うてみると,めんどくさいこと聞くねぇなんて言いながらも一つ一つ対応してくれた。

薬草畑のほうは村内の耕作放棄地と村の外縁森林の2か所を候補に上げて開発した。
村内のほうは荒れ地を開墾して整地する必要は無かったし、日当たりが良すぎても生育に良くないという性質のおかげで良い農地を召し上げたりする必要が無い為、かけるコストはたいしたことは無かった。
村の外縁部のほうはわざわざ切り株を取り除いて整地したりもせず、作業の邪魔になる草を伐採し、往復ルートの獣道に手を入れてもらったくらいだ。
問題と言うほどでは無いが種株が少なかったことで、繁茂させるには時間が少しかかるかなと言ったところか。
とはいえ繁殖力も生命力も強い植物なので2年もすれば問題無いだろう。
仕事のほうはこんなもので、あとは定期的に様子を観察するくらいにしておけばいい。
あーそうだ、薬にする時のやり方とか教えないとな。
何も言わなきゃ直射日光に当てて薬効を減殺させるだろうから、これは陰干しせんといかんとかね。
もちろんいざという時やうまく行かなかった時のため、館には植木鉢での栽培を継続している。


そうするとあとは時間が余って余って仕方無いって?、ご冗談を。
村の子供の社会に融け込むには時間がかかったけれど、喧嘩もしながら仲良くなろうと努力しました。
どんな遊びをしてるとかそういうのは悪いけどどうでも良くて適当に付き合うくらいだが、その傍らに食べている木の実とか、この花の蜜はうまいとか蜂の巣があった怖い場所はどこそこだとか、近道だとかの生活の知識を教わるのが目的で、俺の方は字を書けない子に教えるとか簡単な算数などの問題出したりとか。
いやー、子供たちの目がキラキラしていて萌えますね、世界共通なことかな?

こんなことが出来たのもレイニーのおかげなんだよな。
俺の首に縄つけて縛っておくような感覚は全く無くて、ほとんど自由にさせてくれた。
遊んでばかりじゃなくて彼女にはかなり稽古をつけてもらいましたよ。
時間のたっぷりあるときは剣と槍とでの手合わせを、時間の無い時は槍を中心に。
どうしても強くなりたくて根をつめてるとそんな様子に心配してくれたりと…ね。

お忍びで国王が飛竜に乗ってやってきた時は驚いた。
その時はレイニーがツンデレ状態で、見ていて微笑ましかったな。
国王のほうもなんだかんだで娘が気になって心配で、たまらないんだろう。
二人で例の墓参りに行ったって後から聞いて心が温かくなったよ。
俺にも声をかけてくれて、

「これならあと5年10年かかろう、一度報告に戻られたのち、再びここに戻って指導なされ、あれも補佐につけよう」
なんか…ここでレイニーとずっと暮らせみたいに感じてしまうのだが気のせいだろうか?

そんなこんなでレイニーの村での暮らしが1年も過ぎたころか、俺が無事に生存していることをレンスターに知らせる為に手紙を書くよう言われたので、すぐにしたためた。
内容は検閲されるであろうから当たり障りなく、そしてトラキアの人たちは良くしてくれていると。
俺にも手紙が渡されたけれど墨塗りが多くて参ったね。
レンナートさんにも見せてあげたが、なんにしても大事に取っておこう。 

さらに半年余りが流れた、兄上はとっくの昔に国に戻っているだろうなぁ。
俺は背が伸び、レンスターから持ち込んだ衣類などは丈がずいぶん短くなった。




 後になって振りかえると、こういう日は朝から胸騒ぎがした、とか、嫌な予感がした、なんて物語ではよくあるけれど俺にとってはいつも通りに始まった代わり映えの無い一日だった。
森のほうの薬草畑の様子を見に行き、その帰りになんの気なしに上空を見ると領主館のほうへ飛竜の編隊が向かっているのが目に入った。
定期的に連絡の竜騎士の往来はあっても、それは常に1人であり、いままでに3度ほどあった国王のお忍びでもせいぜい3機?編成だっただけに俺はようやく異変を察した。
出かけるときに、イノシシでも出たら危ないから持って行けと言われて渡された細身の槍を握りしめ駆けだした。

領主館の裏の植え込みにまぎれて様子を見てみると、館の正面の庭には飛竜が何匹も着陸していて、館の中からは口論のような大きな声が聞こえてきた。
俺はあたりの様子を窺うと裏口から館の中に身を滑り込ませた。


「だから言ったろう、今は王子は居ない。薬草畑の様子を見に行ったあとは村の子供と遊んだりして暗くなったら帰ってくるから出直しな」
レイニーの刺々しい声が響いた。

「貴様、王子に監視も付けてないのか!とんだ怠慢だな」

「はん、そんなもんここに着任して一度も付けたことないさ。それでもあの子は必ず帰ってきたよ。自分の立場がわかってるんだよ、アタマのいい子さ」

「ならばここで戻りを待たせてもらうぞ」

「勝手にしな!、だけどねぇ ワイバーンで村の真ん中まで乗り付けてくるたぁどういう了見だい?
家畜も村の皆も腰ぬかしちまうだろう。村外れに繋いできな!」

「いいだろう。パピヨン!2名連れてカパドキア城へ向かえ、ハンニバルには兵200を引き連れ、この村まで来いと知らせるのだ」

「いったい、どういうことだい!」

「この村の領主レイニーが謀反を起こしたので鎮圧せよとの勅命だ」

「ふざけんじゃないよ!」

「すぐに王子を突きだせば取り下げてやらんこともない」

「わたしはここです。この村に軍を差し向けるなどお止めください。そしてトラバント殿下、勅命とはどういうことでしょう?陛下からは後5年や10年ここで過ごされよと申しつけられております」
この村に軍が向けられるのを防ぎたかったのでレイニーとトラバントの会話に俺は我慢しきれず割り込んだ。
トラバントは俺のほうを見てほぅと口にしてからレイニーを睨みつけ

「レンスターの小僧、お前が知らないのも無理はないので教えてやろう、先王は死に、俺がトラキア王国の国王と相成った、ゆえに汝に命ず、その身柄トラキア城で預かると」

「王たるを喧伝するその証拠は」

「この天槍グングニルが語ってくれよう」
その冷たい輝きを放つ槍の穂先は無言の威圧感を俺に与えてきた。
そうか、これがグングニルか……

「それにしても先王の最期は見物でしたなぁ。あの剛毅な男が哀れにも命乞いなど」

「黙れ、マゴーネ!」

「良いではありませんか陛下、レイニーは我々の慰み者にしてから殺し、王子は永久にトラキア城に幽閉されるのですから」

一瞬何が起こったかわからなかった。
レイニーの大剣の一閃でマゴーネと呼ばれた男の首が刎ね飛ばされ、胴体は真っ二つに両断されていた。
レイニーはトラバントの部下の中に切り込むと、振った大剣の軌跡の数だけ死者を生みだした。
まだ、その死の軌跡が及んでいない者は我先にと領主館の入り口のほうへと逃げ散った。

「父上を、弑し奉るとはァァッァァ!」
レイニーの死の斬撃を受け止めることが出来た最初の者はトラバントであった。

「流石は剣に於いてはこの国最強の使い手よ……だが、只の剣士が天槍グングニルを携えしこの我を倒すこと……果たして…叶うかな!」
レイニーが攻め続け、トラバントはそれを避け、受け、時には反撃を試みるが互いに有効な一撃を加えられずにいた。
だが、終始攻め続けたその為か、レイニーのほうが先に息が上がったようで運動量が落ちはじめた。
血しぶきが舞ったのはトラバントの反撃を避け損ねたレイニーの太ももをグングニルが掠めたからだ。

「その足ではもう動けまい、今、楽にしてやるぞ。我が不肖の姉よ」

トラバントが勝利を確信し口元を歪めたその時、そう、その時を俺は狙っていた。


二人が夢中で戦っている間に、俺はトラバントの背後方面へとそろそろと動いていた。


後の世で卑怯者と呼ばれようと



卑劣漢と蔑まれようと



この一撃に全てを懸け、自分の体重ごと全力でトラバントにぶち当たった。
細身の槍であったがためか切っ先三寸ほどを残して折れ、砕けたが俺はトラバントの体に埋まった切っ先の部分に拳を打ち当て、振り抜いた。



予想だにしない一撃と、その痛みに、その場に膝をついたトラバント。
レイニーはその隙を見逃さず、右腕の肘から下を斬り飛ばした。
ざぁっと舞った血が俺とレイニーに振りかかる。

「とどめを!」


















レイニーは振りかぶった大剣の平でトラバントを殴りつけ昏倒させた。

「王子、殺しちまったらアタシら逃げ切れる望みが無くなる。我慢しな。
トラバントの腰ぎんちゃくども!オマエらの大事な大事なご主君さまがお怪我されあそばされたぞ、カパドキア城の司祭に治してもらわなくていいのかい!
あぁ、まずは武器を捨てな!そして、ワイバーンは置いていけ!」
俺なんかよりもずっとずっとトラバントを殺すべき理由があるレイニーが耐えているのだ、俺が何を言えようか。
レイニーは壁際に転がっていたトラバントの右腕を縦に真っ二つに切り裂き、ブーツの踵で踏み続けた。



トラバントを収容し、ほうほうの態で逃げ出した姿を確認し、俺たちは大慌てで逃げる準備を整えているとレンナートさんが代官と村長を連れてきた。

「村長、ワルイのは全部アタシになすりつけておいてくれよ。それでも迷惑かけちまうけどさ……」

「お嬢様、いきさつはこの方から伺いました。これをお役立ててください。いつか身の潔白を明かし、お戻りになられるまで皆お待ちしております」
代官が差し出したお金の入った小袋をすまないね…とレイニーは受け取った。


「さっき、最初の男を斬り倒した時、ミゼとアニーがアタシの心の中で力をくれたんだ。これから逃げる為にも名前を変えちまおうと思って、これからはレイミアって名乗るよ。どうだい?」

「…レイミア、良いお名前だと思います」

「だろ。よろしくな」
レイミアは俺の背を軽く叩いた。 
 

 
後書き
なんとか改名イベント出来て一安心 
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