100年後の管理局
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第十七話 お玉、フライ返し
前書き
さっき、日刊ランキングを見ていたら79位に入っていました。とてつもなくびっくりです!
色々な人に読んでいただいて本当にうれしい限りです。
そしてその嬉しさのままに更新。
今回は少しギャグ回な感じで進めております。
この小説ではギャグがとても少ないですからね。
珍しいギャグ回です。
ではどうぞ
海鳴市翠屋。
海鳴の街で最も評判の洋菓子店である。
そこでは五人の男女が、それぞれが注文した洋菓子を食べながら談笑していた。
「美沙さーん。ショートケーキくださーい!勿論和也持ちでー!」
「あ、美沙さーん!俺も同じのお願いしまーす!勿論和也持ちでー!」
「はーい!!」
「ちょっとは遠慮しろよ!お前ら!」
エリと誠也の容赦のない追加注文に、黒髪のさっぱりした髪型をした整った顔立ちの男――高町和也――が叫ぶ。
「エ、エリちゃん……。」
「せ、誠也もちょっとは遠慮しなさいよ……。」
残る二人がエリと誠也を窘めようとするものの。
「りんかもアリスも遠慮しすぎよ。」
「そうそう。ここは和也の奢りなんだから遠慮せずに。」
「「ねー!!」」
「仲いいな!お前ら!!」
まったくもって効果なしである。不憫なり、高町和也。
「諦めろよ、和也。女の人との待ち合わせで遅刻したのが運のつきだ。」
「……遅刻は不可抗力だ。というかお前、自分の分は自分で払えよ。金持ってるだろ?」
「和也よりはあるだろうけど、たまにはいいじゃん。」
「そうよ、和也。いくら誠也が働いているからって、こんな小さい子の分も払えないなんて男が廃るわよ。」
誠也をよしよしと撫でながら和也を責めるエリ。
エリは誠也のことが気に入ったらしい。弟のような扱いだった。
ちなみに、全員がどのくらい食べたかと言うと、
誠也 三皿
エリ 三皿
りんか 一皿
アリス 一皿
和也 一皿
といった具合である。一皿三百円として計算し、これに加えてコーヒーや紅茶を加えると三千円を超えた出費である。哀れなり。
「「ごちそうさまでした。」」
二人はそろって食べ終わる。
すると和也の後ろから、二十代くらいの女性が現れる。
「はい。これ会計ね。バイト代から天引きにしておいてあげる。」
「三千四百五十円だと……。」
女性から渡された領収書には、三千四百五十円の文字があり、和也は手痛い出費に絶望する。
「あ、あの和也さん。私の分は私が払いますから……。」
「わ、私も自分の分くらい払うよ……。」
アリスとりんかが絶望しきった表情の和也にそうフォローを入れる。
「いや、いい。」
「でも、」
「気持ちは嬉しいけど、年下の女の子からそれされると本当に男が廃るから。りんかもここはやっぱり男を立てさせて。」
和也は表情を少し明るく戻し、アリスとりんかからのフォローを断る。
ちなみにその脇では誠也とエリ、そして先ほどの女性が三人で談笑していた。
「あ、美沙さん。こんにちは。」
「お久しぶりです。」
「エリちゃん、こんにちは。誠也君は久しぶりね。半年ぶりくらいかしら?」
「ええ。前回の家族旅行以来ですからそのくらいかと。」
女性の名前は高町美沙。名前からも推測できるように和也の母親である。
「美沙さんは変わらずお若いようでなによりです。」
「そう?ありがと。誠也君は半年でさらに口が上手くなったのかしら?」
「まあ、大人たちの中で仕事してますし。でもお世辞ではありませんよ。」
「あらあら。ならまだ看板娘としてやっていけるわね。」
誠也の言うことに嘘偽りはない。
美沙の年齢は、ここで大っぴらに言うのは避けられるべきだが、和也を産んでいることから推察されるべき年齢であることは確かである。
しかし、この女性がそんじょそこらの女性とは異なるのは十五歳の子供を産んでいるとは思えないその美貌である。
まず見た目からして二十代の前半にしか見えず、しかもその容姿、スタイル共に未だ現役と言っていいだろう。
要は、看板娘として通るほどの美貌は持っているということである。
ちなみに、美沙は結婚してから年を取っていないと滅法の噂である。
「娘とか言う年齢じゃ――っ!」
和也は母親に文句を言おうとするも、ドカッ!と、凄まじい衝撃が和也の頭に走ったことによって和也の言葉は中断させられる。
カランカランと音を立てて地面に転がるのは―――――お玉。
「……美沙のことを悪く言うんじゃない。」
その声は厨房の方から聞こえてきた。
そこまで大きな声ではないものの、非常に良く通る男性的な声で、聞く人によっては声だけでもその人に惚れてしまうこと請け合いだろう。それほど良い声であった。
「あ、あはは。剛士さんも相変わらずですね。」
直撃する瞬間を目撃していたアリスは、前回会った時とさほど変わっていない様子の和也の父親、高町剛士の様子に苦笑するしかなかった。
「な…にしや…がる。」
「……妻に甘く息子に厳しく。俺の基本方針だ。」
激痛で呻く和也にそう言いきる父親がいた。
和也も必死の思いで立ちあがり叫ぶ。
「だからって息子にお玉投げつける父親がどこに――どわぁ!」
またも高速で飛来したお玉を、今度こそキャッチする和也。
ちなみに、お玉を高速で飛ばすのは通常不可能である。
特にお玉の形状から考えて、飛んでいる間減速しやすいうえにまっすぐ飛ばないと考えられるからである。もしかしたら木べらはできるかもしれないが。
つまり、剛士の持っている投擲技術が並大抵のものではないと言える。
そしてはっきり言ってしまえば、キャッチできる和也も只者ではなかったりする。
「……店の中で叫ぶな、バカ者。」
「叫ばせてんのは――」
お前だ!その一言を発することなく和也は沈む。
なぜなら飛来してきたフライ返しが和也の頭に直撃したからである。
後書き
少し短めになっていました。
それと和也の名字が判明ですね。高町になりました。
二人目の高町家です。ちなみに和也は美由紀さんのひ孫にあたるので、ランディとグレイルの関係に同じく、誠也と和也は又従兄弟の関係に当たります。
まあ厳密に言うと色々と異なる点はありますが。
今後ともこの小説を読んでくださるとうれしいです。
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