ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜
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GGO編ーファントム・バレット編ー
46.銃の世界
前書き
第46話投稿!!!
銃の世界に潜り込んだシュウとキリト
そこで出会う2人の少女
菊岡との会談から一週間後の土曜日。
ログインする場所が用意できた、というメールを受け、千代田区にある大きな都心病院に足を運んだ。この病院は俺とキリトがSAOから解放されてから筋力回復のために入院した場所だ。
GGOにダイブすることをスグにも伝えずに来たことに少し罪悪感があるが、プレイヤーを殺した可能性のある《死銃》と接触するなんて言ったらスグは全力で俺を止めるだろう。キリトもアスナと会ったようだが真実は多分伝えてないだろう。
病院に着くがその時には、もう俺はクタクタで死にそうだ。
さすがのロードバイクと言ってもメチャクチャ疲れるな。ここまでくるのに一時間三十分くらいかかったのに対してキリトはエギルのつてで入手したオンボロバイクで来たのでそんな疲れてないようだ。
キリトと合流し、菊岡のメールに指定された、入院病棟三階の病室にたどり着き、ノック後、ドアを開ける。
「おっす!桐ヶ谷くん、如月くん、お久しぶり!」
俺たちを出迎えたのは、ナースキャップの下の長い髪を一本の太い三編みにまとめ、その先端に白い小さなリボンをつけ、女性としては長身のめりはりがある体のまさにThe美人と言わんばかりの左胸に、《安岐》と書かれた小さなネームプレートをつけている、長いリハビリでお世話になった、顔見知りの看護師だ。
「あ.....ど、どうも、ご無沙汰してます」
「お久しぶりです、安岐さん」
久しぶりに会った、安岐さんはいきなり両手を伸ばし、俺とキリトの肩から二の腕、わき腹あたりをぎゅうぎゅうと握った。
「おー、けっこうにくついてきたねぇ。でもまだまだ足りないよ、ちゃんと食べてる?」
「食べてますよ。これでも最近は剣道も本格的にやり始めたんですから」
「というか、なんで安岐さんがここに.......」
キリトが部屋を見回したのち、安岐さんに目線を戻す。
「あの眼鏡のお役人さんから話、聞いてるよー。なんでも、お役所のために仮想......ネットワーク?の調査をするんだって?まだ帰ってきて1年も経ってないのに、大変だねぇ。それで、リハビリ中の桐ヶ谷くんと如月くんの担当だった私にぜひモニターのチェックをして欲しいとか言われて、今日はシフトから外れたんだ。師長とも話ついてるみたいでさ、さすが国家権力って感じだよねー。とりあえず、またしばらくよろしくね、桐ヶ谷くん、如月くん」
「あ.......こ、こちらこそ......」
「よろしくお願いします」
キリトは少し緊張しているようだ。安岐さんは差し出した手をキリトが握ったのち、俺も握る。
「......で、その眼鏡の役人は来てないんですか?」
「うん、外せない会議があるとか言ってた。伝言、預かってるよ」
キリトに渡された茶封筒から引っ張り出される手書きの紙を覗き込む。
『報告書はメールでいつものアドレスで頼む。どちらか一人でいい。諸経費は任務終了後、報酬と併せて支払うので請求すること。追記ーー美人看護婦と個室で三人だからといって若い衝動を暴走させないように』
キリトは一瞬でメモを封筒ごと握りつぶし、ジャケットのポケットに放り込む。強張った笑顔を向けるキリト。
「あー......それじゃあ、早速ネットに接続しますんで......」
「あ、はいはい。準備できてます」
案内されるジェルベッドの脇にはあ仰々しいモニター機器が並び、ヘッドレスの上には真新しいアミュスフィアが置いてある。
「じゃあ脱いで、桐ヶ谷くん、如月くん」
「「は.....はい!?」」
思わず声を合わせる。
「電極、貼るから。どうせ入院中に全部見ちゃったんだから赤くならなくていいよー」
「.......あの、上だけでいいですか......」
キリトの小さな声で聞くと安岐さんは一瞬間を開けてから、縦に首を振った。上に着ているダウンジャケットと長袖のシャツを脱ぎ、ベットに横になる。そして上半身に数箇所にペタペタ貼られていく。
アミュスフィアにも心拍モニター機能はついているが、クラッキングされた場合のことを考えてだろう。
「よし、これでOK.......っと」
モニタ機器のチェックをした安岐さんは頷くと、俺は手探りでアミュスフィアを頭に被り電源を入れる。
「えと、それじゃあ......行ってきます。多分四、五時間くらい潜りっぱなしだと思いますが.......」
「俺たちの体をよろしくお願いします」
「はーい。桐ヶ谷くんと如月くんのカラダはしっかり見てるから、安心して行ってらっしゃい」
安岐さんに体を託して俺たちは新たなる仮想の世界へと足を踏み入れる。
「「リンクスタート」」
目を開けると空一面が薄く赤みを帯びた黄色に染まっていた。
《ガンゲイル・オンライン》の世界では、現実の時間と一緒らしい。
GGOの中央都市、《SBCグロッケン》.......メタリックな高層建築群が並び、足元は、土や石ではなく、金属のプレートで舗装されている。
とりあえずあたりを見渡すと背後には、初期キャラが出現するであろうドーム状の建物があり、メインストリートらしき広い通りに、左右ぎっしりと怪しげな店が並んでいる。
まぁ.....そんなことより俺が一番気になるのは、俺の隣にいる、黒髪の肩甲骨のあたりまでの長さの髪に透き通るような白い肌にやたらと大きい瞳の少女だ。
「なあ.....一応聞くようだけど.......お前、キリト......だよな?」
恐る恐る隣の少女に聞いてみると、少女は頷く。
「シュウの姿はほとんど変わらないな。違うのは、髪型くらいだな」
と少女は....じゃなくてキリトは笑いながら、俺はどんな感じ?、と聞いてくる。
俺は無言で出てきたばかりのドームを指差す。ドームの外壁はミラーガラスとなっているため容姿を確認するには充分だ。
キリトはゆっくりとドームに近づき、ドームの前で止まり愕然とした表情で眼を見開いている。
「な......なんだこりゃ!?」
(そうでしょうね.......自分の姿が少女.....しかも普通に可愛い少女の姿だったらそんな声も出るでしょうね。........もう、なんていうか御愁傷様です.......)
一応俺の姿も確認する。
逆立った黒髪、いつもの俺の顔.......ほとんどかわりばえのしない容姿。BFOの世界に行った時も俺の容姿はほとんど変わらずほとんどが髪型が変わるだけだ。
「おおっ、お姉さん運がいいね!」
背後から声が聞こえ振り返ると男がキリトに話しかけている。
「そのアバター、F1300番系でしょ!め〜〜ったに出ないんだよ、そのタイプ。どう、今ならまだ始めたばっかだろうしさあ、アカウントごと売らない?二メガクレジット出すよ!」
キリトは慌てて自分の胸部をまさぐり、自分が男であることを確認すると男の顔を見て肩をすくめながら答えた。
「あー.......、悪いけど俺、男なんだ」
すると男はしばし絶句したあとすごい勢いでまくし立てはじめる。
「じゃ、じゃあ.......それM9000番系かい!?す、すごいな、それなら四、いや五メガ出す。売、売ってくれ、ぜひ売ってくれ!!」
「えーと.....これ、初期キャラがじゃなくて、コンバートなんだ。ちょっと金には替えられない、悪いね」
「そ......そうか......」
男は残念そうな顔をする。
「噂じゃ、その手のレアアバターはコンバート前のアカウントを使い込んでるほど出易いらしいんだよね。参考までに、前のアカのプレイ時間を教えてくれないかな?」
「へ?ぷ、プレイ時間?」
キリトは考え込む。
てか、今思ったけどキリトのアバターがこの男の話を聞く限りかなりのレアなアバターでプレイ時間が多ければ出易いってことは、俺は運が悪かったってことか?
(そう考えてみると少しショックだな)
「ええと......いちま.......い、いや、一年くらいだよ。だからやっぱり偶然じゃないかな」
一瞬こいつ一万って言おうとしただろう.......
「うーん、そうか.....。ま、気が変わったら連絡してくれ」
男はそう言うと、透明なカード状のアイテムをキリトに押し付け立ち去って行った。そのアイテムは光を出し消えていった。おそらく、さっきのはフレンドカードのようなものだろう。
「とりあえず、キリト。大会エントリーと装備の購入にいくぞ」
「お、おう」
まだ少し元気のないキリトとともにメインストリート目指して歩き出した。
......数分後、あっけなく道に迷った。
SBCグロッケンは無駄に広く幾つもの多構造になっている。とりあえず立体マップを見てみるが意味がわからない。
「完全に迷子だな、俺たち」
「闇雲に歩いてもしゃあないし、プレイヤーに聞いた方が早いんじゃないか」
俺とキリトは行き交う人影の中からプレイヤータグを見つけ出す。キリトが小走りで駆け寄り、それに俺もついて行く。
「あのー、すみません、ちょっと道を......」
振り向いたのは、どう見ても女の子だ。さらさらの細いペールブルーの髪は無造作なショートだが、額の両側で結わえた細い房がアクセントになっている。くっきりとした眉の下に、猫科の雰囲気を漂わせる藍色の大きな瞳、小ぶりな鼻と色の薄い唇のサンドカラーのマフラーにジッパーの開いたジャケットを着ている小柄な少女。
この少女との出会いが物語を加速させる。
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