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万華鏡

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第十九話 ビーチその十一

「ばらばらになってそれこそ」
「どうしようもないよな」
「ええ、本当にね」
「だからだよ」 
 美優は笑って言った。
「焼きそばだってチームワークが出来ていれば」
「こうしていい感じで作れて」
「美味いものが出来るんだよ」
 そうもなるというのだ。
「じゃあやっていくか」
「そうね。後は」
「ああ、後はだよな」
「これを作ったら」
 そうしてだと言う琴乃だった。
「勿論焼きそばも食べるけれど」
「焼きそばっていったらもう一つもだよな」
「ええ、ビールね」
「夏の砂浜で焼きそばとビールってな」
 美優は何処か親父めいた笑顔になってその上で言った。
「最高のシチュエーションの一つだよな」
「しかも午前中はたっぷり泳いだしね」
 カロリーを消費して汗もかいた、喉も潮で適度に塩辛くなっている。こちらもいい感じになっているのである。
 それでまた言う美優だった。
「美味いぜ、絶対」
「胡椒はどれだけ?」
「たっぷりとだよ」
 こう景子に返す。
「もうお肉にはかけてるけれどな」
「ええ、最初にね」
「焼きそば自体にもな」
「たっぷりなのね」
「それでおソースもな」
 肝心のそれもだった。
「たっぷりとかけてな」
「そしてなのね」
「濃い味付けがいいな」
 夏の砂浜、しかも運動をした後だからだ。
「里香ちゃんには悪いけれどな」
「食べる分にはいいの」
 その里香の言葉だ、言いながら今切ったキャベツを鉄板の上にザルから一気に入れる。すると水分がはじけるいい音が聞こえてきた。
「そっちはね」
「ああ、そうだったんだ」
「作ると薄くなるけれど」 
 里香曰く京風に。
「食べる分にはいいの」
「成程、そうなんだな」
「そうなの。それにね?」
「それに?」
「元々おソースは濃い方が好きだから」
「焼きそばそれでいいんんだな」
「後はお好み焼きやたこ焼きも」
 そうしたものもだというのだ。
「おソースは多めが好きだから」
「じゃあこれでいいんだな」
「そう、いけるから」
 こう美優に話す。
「大丈夫よ」
「よし、じゃあ濃いめな」
「ビールもう少ししたら出すわね」
 彩夏はもう一つの柱について言ってきた。
「焼きそばが焼けたら出すから」
「そのタイミングでいいよな」
「そうよね、だからね」
 今は出さないがそれでもだというのだ。
「その時に」
「皆で出そうな」
「五百ミリリットルね」
 クーラーボックスの中にあるのはそれだった。
「それを出していって」
「やっぱりビールはそれだよ」
 美優はにこにこおしながらビールについても話す。
「五百な」
「三百五十じゃないのね」
「それだと少ないだろ」
 これも美優の持論の一つだ。
「だから五百を一気に飲んでさ」
「それでなのね」
「ああ、気持ちよくもう一本ってな」
 それで終わらないのが美優だ、実は結構な大酒飲みなのだ。 
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