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万華鏡

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第十九話 ビーチその十

「浮力は違うのよ」
「そうよね、もう断然ね」
「違うわよね」
「だから二キロでも泳げるの」
「海だとね」
「そうんじゃのね」
「ええ。けれどそれでも二キロ泳いだら」
 流石にだと。里香は冷凍されていたシーフードを袋から出して鉄板の上に出しながら少し苦笑いになって言った。
「疲れたわね」
「心地よい疲れだけれどね」
「やっぱり二キロだとね」
 琴乃と彩夏もその笑顔で応える。
「くるわね」
「流石に」
「何でもね」
 ここでこうも言う里香だった。
「海上自衛隊だと十六キロ泳ぐらしいけれど」
「えっ、八倍?」
「私達の!?」
「そう、それだけ泳ぐらしいわ」
「八倍って」
「ちょっと」
「ないわよね」 
 里香も言う。
「流石に」
「凄過ぎるけれど」
「有り得ない位に」
「軍隊だからってこともあるけれど」
 里香はさらに言う。
「やっぱり海の人は違うわよね」
「そうね、本当にね」
「ちょっと違うわね」
 二人だけではなかった、景子と美優もそのことには驚きを隠せずそのうえで真剣な顔で料理をしながら話をしていた。
「そこまで泳げたらね」
「もう充分だよな」
「というか魚よ、そこまでいったら」
「全くだよな」
 二人はこうした話をしていた、そして。
 美優は冷凍されていたシーフードが鉄板に順調に焼かれるのを見て言った。
「いい感じで焼けてるな」
「魚介類に火が通ったら」
「次はキャベツな」
「キャベツ今切ってるから」
 それは里香が切っていた。手馴れた動きだ。
「大丈夫よ」
「ああ、じゃあもうそばの用意もしておくか」 
 美優は里香が切っているのを見て言った。
「それじゃあな」
「何か早いわね」
 琴乃は料理が順調なのを喜んだ。
「こんなに早いのは意外よ」
「いや、こんなもんだろ」
 美優はその琴乃にこう返した。
「やっぱりな」
「こんなもの?」
「ああ、この面子ならな」
 五人共料理に慣れている、それならというのだ。
「こんなものだろ」
「そうなのね」
「料理も慣れだからさ」
 美優の持論でもある。
「何度も何度もやってこそなんだよ」
「よくなるからなのね」
「それにコンビネーションもあるからな」
 このこともあってだというのだ。
「この手順は当然だろ」
「コンビネーションね」
「バンドと同じだよ」
 美優は笑って琴乃に話した。
「バンドだってコンビネーション、もっと言えばチームワークだろ」
「合ってないとね」
 まさにそれで終わりだ、琴乃は軽音楽部の活動からこのことがよくわかってきていてそれで答えたのである。 
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