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東方守勢録

作者:ユーミー
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第四話

紅魔館 大図書館


「そこで幻想郷を守るために我々は、神社にむかぃ……だあああ!!」


山のように積まれた本に囲まれながら本を読んでいた白黒の服を着た少女は、いきなり本を投げ飛ばすとわめき始めた。


「どれもこれも同じような話ばっかじゃねえか~!それに信用性のない書き方だし、逸話だのなんだの書いてるし、挙句の果てには相手は外来人じゃねえし……もういやになってくるんだぜ……」

「魔理沙……あなたそれ言うの何回目よ……」


子供のようにだあだあ言い始める魔理沙を見て、人形のようなかわいらしい少女があきれ顔でそう言った。


「しかたないだろアリスー、こっちもいっぱいいっぱいなんだぜ?これなら使えない魔法の練習した方がよっぽどましだぜ……」

「じゃあこれが終わったらやる?」

「……聞かなかったことにしてほしいんだぜ」

「あっそ。さて、この区画はこれでおしまいね……シャンハイ、これ片づけて」


アリスはその場にいた5体ぐらいの人形にてきぱきと指示をだし、本を片づけさせた。


「パチュリー、次はどこの区画を探すの?」

「……今はいいわ。少し休憩しましょう」


アリスの問いかけにそう答えると、紫の髪をした少女が読んでいた本を閉じて椅子から立ち上がった。


「やったぜ」

「とりあえず、咲夜に頼んでお茶でも持ってきてもらいましょう。小悪魔」

「わかりました」


パチュリーの命令をうけ、小悪魔が移動しようとドアに向かい始める。

その時だった。


ガチャ……ギィィィ


タイミング良く、誰かが入ってくる音がした。


「噂をすれば……咲夜かしら」

「おじゃましまーす……」

「「!?」」


聞こえてきたのは咲夜でもレミリアでもなく、少年の声であった。


「男?なんでこんなところに……」

「ちょっと見てくる!」


魔理沙は立てかけてあった箒を手に取ると、それにまたがって飛び出して行った。





大図書館入口付近


「うわぁ……これは広いな……」


俊司は初めて見る大図書館の大きさにどぎもを抜かれていた。


「紅魔館の大図書館はほんとに広いですからね」

「ここでなんの仕事をしたらいいのやら……」

「とりあえずパチュリーさんをさが……」

「げっ!外来人!」


そう言ってパチュリーを探そうとし始めた三人の前に現れたのは、箒にまたがって飛ぶ白黒の魔法使いだった。


「あれは……霧雨魔理沙さん?」

「やっぱり……私の名前を知ってるってことは外来人だな!ここであったが百年目だぜ!」


そう言って魔理沙は見たことのあるアイテムを構えた。


「うわ!ミニ八卦炉だ!初めて見た……」

「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!魔理沙さん落ち着いて!」

「大丈夫大丈夫!すぐに助けてやるからな!」


魔理沙は二人の忠告に耳を傾けることなく魔力を込めていく。やがて八卦炉から大きな光る何かが少しずつ見え始めていた。

俊司はさすがにやばいと感じたのか、ポケットからある物を取り出し身構えた。


「それじゃあいくぜ!」



恋符『マスタースパーク』



魔理沙はためきった魔力を一気に放出し、巨大なエネルギーをまとった極太レーザーを発射した。


「へぇ~あれがマスパか」

「俊司さん!よけないと」

「いや、これでいいよ」


そう言って俊司は持っていたスペルカードを発動させた。


変換『コンバートミラー』


発動と同時に大きな鏡が出現し、魔理沙のマスタースパークをとらえる。


「このまま押し切って……うわっ!?」


突如まぶしい光が鏡から放たれ辺りを埋め尽くす。そしてその光が止んだ時、残っていたのは魔理沙のマスタースパークではなく、俊司のコンバートミラーだった。


「なっ……なんで……当たった感覚もなかったのに……」

「コンバートミラーは盾じゃないからだよ。これは……」

「じゃあ次はこれだぜ!」


魔理沙は俊司の話を聞くことなく、また八卦炉をかまえて魔力を込め始めていた。


「だからちょっと待って!俺革命軍の人間じゃないから!」

「……は?」


必死に叫ぶ俊司の声をやっと聞きとったのか、魔理沙は魔力の込めるのをやめた。


「……どういうこと……なんだぜ?」

「どういうこと?じゃないでしょ魔理沙」


意味がわからず呆気にとられる魔理沙の背後から、二人の少女が現れた。


「だいたい革命軍が単体でここに入ってこれるわけないでしょう……なにか御用かしら?」

「レミリアさんに言われてここに行けと言われたものですから……」

「……でしょ?」

「……あはは……わっ……わるいわるい。外来人だったから敵だと思っちゃってさ……」

「気にしてないんでいいですよ。では本題に入る前に……」


そういって俊司は何もない方向に銃を向けた。


「なにしてるのあなた……」

「いや、まだスペルカードの発動終わってないんで」


魔理沙達が不審そうに見守る中、俊司は何食わぬ顔で引き金をひく。

すると、銃口から飛び出てきたのは弾丸ではなく魔理沙の『マスタースパーク』だった。


「ええ!?あれって私の……」

「さてと、じゃあ本題に入りますか」


俊司はまた何食わぬ顔で、訳が分からず呆然とする三人の元に近づいて行った


「俺達には別に仕事を用意してるって聞いたんですけど?」

「そうね……まあ、仕事といえば仕事かもしれないのだけど……」

「……つまりどういうことですか?」

「簡潔に説明するわね」


パチュリーが言うには、彼女達はこの大図書館にある本を使用して過去の異変について調べていたらしい。外来人の軍が過去に幻想郷を襲ってきたことはなかったのか、あったとしたら過去の人々はどうやってそれを阻止したのか、似たような異変は起きていなかったのかなど、多くの可能性を考えて調べ続けてきて約三ヶ月が経過していた。もちろん、収穫は0に等しかった。

レミリアが俊司たちをここに連れてきたのは、今の状況の確認と、外来人である俊司から情報をもらうためだろうとパチュリーは考えていた。


「つまり、外の情報を教えてほしいってことですか?」

「そう言うことになるわね」

「わかりました……わかる範囲と俺の推測でよかったら……」

「助かるわ。魔理沙・アリス、悪いけどあなた達は別の作業をしておいてちょうだい」

「え!?休憩じゃなかったのか!?」

「文句言わないの。わかったわ」


アリスはふてくされた魔理沙を無理やり引っ張りながら、山積みになった本の元に向かった。


「二人も話してる間はアリス達の手伝いをしてもらえるか?」

「わかりました」


妖夢と鈴仙も、俊司を残しアリス達の手伝いに向かった。



「さて、まずは今の状況を整理しましょう」

「そうね」


俊司は、今までやってきたことや、それで何を得たかを簡潔に分かりやすいように説明していった。

パチュリーもその内容を興味深く聞きとり、メモを加えながら整理していった。


「……以上ですね」

「結構状況が改善されてるのね。基地を落とすことができたのもそれのおかげかしら」

「どうですけね……で、次は俺の推測なんですが……」

「ええ……推測って……何の?」

「パチュリーさんは……なぜこの状況に陥ったと考えてますか?」

「それは……私たちの力不足でしょう」

「……それは違うと思います」

「どうして?」


パチュリーの問いかけにすぐにこたえようとした俊司だったが、よっぽど難しい内容なのか、軽く溜息をついて気持ちを落ち着かせてから口を開いた。


「力量については明らかにこっちが上です。それは今でも変わりません」

「じゃあ、何か別の原因があるというの?」

「はい。問題は彼らが外来人であるという点にあります」

「……というと?」

「外の世界には幻想郷の話をモチーフにしたゲームがあるんですよ。革命軍には俺のように知識を持った人間がいる可能性があります。ゲームについては紫も内容を知っています」

「ゲーム……で?それとこれにどんな関係が?」

「問題はその中に出てくるキャラクターのことです。キャラクター全員が実際に幻想郷で生きている人たちになります」

「……!」


パチュリーは何かに気付いたかのように目を見開いて驚いていた。


「わかりましたか?」

「ええ……何となくだけど……」

「ようするに各個人のデータや戦い方など、すべての情報を把握して対策を行えたんですよ。もちろん、それだけではなく革命軍の人間に能力を持った人間が出てきたことも原因の一つですが、やっぱり、前者の方がかなり大きくかかわってると思います」

「一度対策されたら……難しいものね……」

「はい。あと、それだけじゃないんです。そういった情報のせいで、幻想郷の情報が漏れてしまいます。それによって向こうは外と幻想郷、二つの知識を持つことになります。知識は時には力に勝つこともありますし……それが重なってしまったのが原因かもしれないです」

「なるほど……確かに筋が通ってるわ……」

「まあ、あくまでも推測ですので断言はできないですけど」

「でも、その考え方を元に少し調べたらいい情報を得るかもしれないわね……わかったわ。ありがとう」

「いえいえ。それじゃ俺も手伝いますよ」


二人はそのまま魔理沙達の元へと向かった。
 
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