八条学園怪異譚
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第二十話 プールの妖怪その九
「お風呂には毎日入って身体も髪の毛も奇麗に洗ってね」
「それでよね」
「そう、あと香水も駄目だから」
奇麗にするのはいいがそれはよくないというのだ。
「香水の匂いは食堂の匂いじゃないから」
「そこもしっかりしないと駄目なのね」
「爪は短く、お化粧もナチュラルメイク」
実際に学校でもその化粧は薄い愛実である、勿論爪は短くネイルアートといったものは全くしていない。
「そうしてるから」
「しっかりしてるわね。そしてそれはね」
女の子は今度は聖花を見た、愛実より背の高い彼女をだ。
「聖花ちゃんもよね」
「まあ私もお店の娘だから」
聖花はパン屋だ、それならというのだ。
「やっぱりナチュラルメイクに爪は短く」
「お風呂も毎日よね」
「というか普通お風呂は毎日入らない?」
「それはそうだけれどね」
女の子もこのことはその通りだと言う。
「お風呂は基本よね」
「垢とかフケとかあったらそれだけでアウトだから」
「パン屋さんも同じなのね」
「パンは奇麗でないと駄目なの」
食堂と同じくだ、これもまた。
「だからなのよ」
「で、聖花ちゃんは歯ね」
「歯なのね」
「白くてとても奇麗よ」
まるで象牙の様だ、愛実の髪の毛と同じく密かなポイントである。
「しっかり磨いてるのね」
「虫歯になるの嫌だし口臭はあったら駄目だから」
それでだというのだ。
「オキシトールガムもね」
「あっ、それもなの」
「そう、噛んでるのよ」
「だからそこまで奇麗なのね」
「うん、それなりに気をつけてるから」
「髪の毛と歯も見られるのよ」
女の子は話を総合した。
「二人共そういうところからもポイント高いのよ。ただ性格は二人共おばさん臭いかしら」
「おばさんって。それはちょっと」
「あまりいい気しないけれど」
「だって二人共虎柄のハンカチ持ってるし」
関西特有だ、何故虎なのかは愚問である。
「阪神勝ったらクラスで新聞読んでるじゃない」
「スポーツ新聞じゃないからいいじゃない」
「流石にそれはないから」
「それで新聞の再利用の方法にも詳しいししょっちゅう冷え性対策だの何だの言ってるじゃない」
そういうところがおばさん臭いというのだ。
「何かそういうのがマイナスなのよ」
「だってねえ。普通に冷えたらよくないからね」
「それに阪神が勝ったら嬉しいし」
「そういうのも普通だと思うけれど」
「そうよね」
「普通でもおばさんなのよ」
女子高生とは少し違うというのだ。
「まあ私も阪神ファンだけれどね」
「だったらいいじゃない、別に」
「猛虎愛があるなら」
尚このクラスもその殆どが阪神ファンだ、数人だけがヤクルトだの広島だのを応援している、憎むべき巨人を応援する輩は担任、副担任を含めて一人もいない。
「スポーツ新聞なら完全におっさんだし」
「それがないからね」
「まあねえ。おばさん臭いにしても」
女の子はそれでもだと述べた。
「二人の場合はしっかりしてるところから来るからね、特に愛実ちゃん」
「私なのね」
「正直お母さんみたいだから、しかも大阪のね」
「大阪って」
「そう、神戸よりもね」
彼女達がいるお洒落とされるこの町よりも日本で最も賑やかであり泥臭くそして猥雑と言われている町だというのだ。
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