ヘタリア大帝国
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TURN58 USJ決戦その十
「そうしていこう」
「では」
「あと一押しだ」
戦局はそうした状況だった。
「このままいける」
「はい、このまま攻めていきましょう」
日本は確かな顔で東郷に応えた。そうして。
太平洋軍は攻撃を続ける、そして遂にだった。
ドワイトがキャロルにモニターから言った。
「もう限界だな」
「撤退しろっていうの?」
「ああ、もう無理だ」
これ以上の戦闘は悪戯にダメージを増やすだけだというのだ。
「だから撤退してな」
「負けるわよ」
キャロルはこの戦争全体のことを言った。
「ここで退いたら」
「じゃあここで無駄に損害を増やすのか?」
ドワイトはキャロルに究極の選択を出した。
「どうするんだ、それは」
「ガメリカの軍人をこれ以上流させる」
「長官もわかるだろ。これ以上の戦闘は何の意味もない」
「だからここは」
「ああ、撤退だ」
つまり敗戦を認めるしかないというのだ。
「わかったな。ここはな」
「これ以上は」
ここで戦局を見た、キャロルも認めるしかなかった。
これ以上の戦闘は意味がなかった、それで言うのだった。
「わかったわよ」
「じゃあ撤退だな」
「あたしが後詰になるわ」
キャロルは己の責任を果たそうとした。そしてアメリカ兄妹にこう告げた。
「祖国ちゃん達はダメージを受けた軍を撤退させて」
「そして君は残って」
「後詰になるっていうのね」
「ええ、後は任せて」
アメリカ兄妹に強い声で言う。
「ここはね」
「いや、ここは俺に任せてくれ」
だがここでドワイトが出て来た。
「長官も逃げてくれ」
「逃げろっていうの?あたしも」
「長官の船もやられてるからな」
小破だがそれでもダメージを受けているのは確かだ、それで航行にも支障が出ているのだ。
ドワイトはそれを見て彼女に言ったのである。
「俺のは無傷だ。それならだ」
「あんたが引き受けるっていうのね」
「早く行きな」
ドワイトは微笑んでさえしてキャロルに告げる。
「生きていればまた反撃もできるさ」
「この戦争が終わっても」
「そうさ。祖国さん達も名誉を挽回できる」
そうなるというのだ。
「臥薪嘗胆ってことだ」
「臥薪嘗胆か」
「ああ、この戦争は負けるが次がある」
ドワイトはアメリカに対しても言う。
「そうしてくれ」
「わかった。それならだ」
アメリカはドワイトの心を汲み取り頷き妹にも言った。
「ここは下がろう」
「わかったわ」
キャロルは苦い顔だがそれでもドワイトに対して答える。
「それじゃあ頼んだわよ」
「まあ死にはしないさ」
ドワイトは余裕さえ見せる。
「また会おうな、祖国さん達もな」
「すぐにミスターのところに行って来る」
「それですぐに講和の話を進めるからね」
アメリカ兄妹は必死の顔でドワイトに返した。
「今は頼んだぞ」
「あたし達は軍の主力を撤退させるわ」
「ああ、頼んだからな」
ドワイトの余裕は彼の祖国達に対しても変わらない。
「それじゃあな」
「健闘を祈るぞ」
「それじゃあね」
アメリカ達は軍の主力を率いて撤退にかかる、そしてキャロルもまた。
前線から姿を消す、ダメージを受けた艦艇から戦場を離脱しそして無事な艦艇もまた戦場から姿を消していく。
最後にドワイトの乗艦であるモンタナも戦場から離脱しようとする、だが。
反転しようとしたその瞬間に太平洋軍のミサイルを受けた、それでだった。
航行不能になる、ドワイトはその艦橋で苦笑いをして言った。
「おいおい、最後の最後でだな」
「どうされますか?」
「どうするもこうなったらどうしようもないだろ」
こう問うてきた部下に返す。
「観念するしかないだろ」
「それでは」
「もう動ける奴は全員戦場から離脱したからな」
動けない艦艇は全て太平世軍に拿捕され将兵達は捕虜になっている、だが動ける者は全て離脱できている。
ドワイトはこの状況に満足しこう言うのだった。
「それならいいさ。やれることはやった」
「そうですね。それでは」
「降伏勧告が来たらな」
太平洋側からのそれがだというのだ。
「受けるぞ、いいな」
「わかりました、それでは」
部下はドワイトの言葉に頭を下げる、かくしてだった。
彼は太平洋軍の降伏勧告を受けて降った。こうしてUSJでの戦いは終わった。
ガメリカ軍は事実上の決戦に満を持した戦力で向かいそのうえで敗れた、彼等にとってはまさかの敗北だったが事実は変わらない。この決戦で太平洋での戦いは決した、誰もがそう思った。
TURN58 完
2012・10・9
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