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異世界からチートな常識人が来るそうですよ(タイトル詐欺)

作者:rekyunn
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第十一話 鯛焼きって箱庭だといくらなんだろうか?

 
前書き
遂に総合評価200pt超えました! ありがとうございます!

では、どうぞ。 

 
「ふう、全くあんなの出してくるとは…」

そう愚痴りながらチョコクッキーとクレープを交互に食べている。支店に戻ってからおやつ用としてのお菓子類も買っている。この数時間で境界壁の麓まで来ていた。

「ああ、リリたちのお土産も買わないとな、………あれ?」

そう呟いて広場を見る。大祭なので騒がしいのは当たり前なのだがこの騒々しさは少々異質だった。

証は様子を見るために近くへ行くと、

「〝神隠し″だ! 追え!」

「邪魔だ邪魔だ! 退かねえと殺すぞ!」

叫びながら逃げる男は少女を抱えて逃げている。男は獣人だったが少女の方は―――

「あれは………吸血鬼?」

犬歯が牙のように鋭くなっている。今は目を瞑っているが、開ければ赤色の瞳が姿を現すのだろう。レティシアほどの容姿はないが中々可愛い子だった。近くの売店の店主に聞いてみる。

「なあ、なんですかあれ? これ二つ」

「ああ、よくあることだ。ここは初めてかい? ほいカスタード味。銅貨二つ」

「初めてだが……、周り全員気にしてないのはおかしいんじゃ?」

店主は対して何でもないように言う。

「北側は神隠しが多いからな、専門の機関が対処するから大して問題じゃないよ。気にしなくてもいいさ。……銅貨二つね、毎度有り!」

鯛焼きを受け取り、証は嗤う。

「けど、………それは対岸の火事だからだろう? こっち来てるよ」

は? と店主が反応するよりも早く、背後から襲い掛かってきた火球を、取り出した刀で打ち消す。

「なっ……!?」

「うおっ!?」

「俺、関係なくね? まあそっちがやるなら別にいいが」

そう言って振り向き少女を抱いた男に近づく。(余談だが男は動いたら殺すと宣言していた)

「う、動いたらこいつを殺すぞ!」

「いやいや、俺と関係ない子を人質にしても意味ないだろ」

そうぼやきながら近づいていく。男は少女にナイフを突きつけながら後退していく。

少女は気が付いたのか怯えたようにナイフと証を交互に見ている。

(まあ、助けるのくらいは簡単にできるし、やるか……、あれ)

上から降りてくる金髪美少女に気が付き、足を止める。地上にある彼女の影がいきなり起き上がり、男の手からナイフと少女を引き離す。

「な!? ぐはっ?」

男がいきなりのことに動揺して硬直したところに証が近づいて手刀で気絶させる。男はなすすべもなくくずれ落ちた。

「いや~助かったよレティシア」

「何、証ならこの程度のこと問題なかっただろう? それよりこの子は?」

「さあ?」

その返答には流石に呆れたのか金髪の美少女・レティシアは溜息をつきながら翼を畳む。

「まあ、憲兵隊に渡せば問題ないだろう。それより、飛鳥を知らないか?」

幾分緊迫した声で尋ねてくるレティシアを意外に思いながら首を横に振る。

「いや、知らないけど……なんかあったのか?」

「いや、北側の夜は危ない。早く連れ戻さないと……」

そう呟くレティシアを尻目に、へたり込んでいる少女に手を差し伸べる。

「大丈夫かね?」

――何故に爺口調――

「は、はい。大丈夫です。えっと……」

「まあ、気にすんな。はい鯛焼き」

「え?」

二つのうち一つを渡して立ち上がる。

「あとは憲兵隊に何とかしてもらえ~、じゃ」

「あ、ちょっと……?」

ひらひらと手を振りながら立ち去る証。唖然としてそれを見送る少女とレティシア。

「ま、待て、証!」

割りと本気で走る証に慌てて追いすがろうとするが全く追いつけない。

しかし証はレティシアのことが眼中にないかのように雷を纏いながら走りぬけ、洞穴のような展示会場に飛び込む。

「どけどけどけ! 俺が先d「邪魔だよ」ゴハッ!?」

叫びながら逃げて来た男の頭を踏み台にして、展示会場に入る。階段を駆け下りて行くと、



「いいから協力し合って逃げなさい!」

「わかりました!!」

そんな声が遠くから聞こえてくる。その後に、

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!

と一矢乱れぬ隊列で逃げて来る集団に遭遇した。

「え、 Σ(・□・;)」

久しぶりに唖然としたからか、一度足を止めるが、すぐに気を取り直し、彼らの肩や頭を足蹴にして奥へ向かう。



―――

「服の中へ入っていなさい! 落ちてはダメよ!」

「ムギュ!」

大量のネズミに襲われた飛鳥はそう言って小さな精霊を胸元に押し込み、走り出す。

(出口までそう遠くないはず、そこ迄逃げ切れば……!)

刹那、飛来する二本の投擲剣が飛鳥を挟むようにして地面に刺さる。

「きゃっ!?」



堪らず足を止めた飛鳥を襲おうとしたネズミたちは、

「久遠さんを襲おうとか舐めてんのかゴラァ!!」

投擲剣が創り出した亀裂から溢れ出した炎によって全て焼き尽くされた。

奥の方にいたネズミもマグマのように襲い掛かる炎に塵も残さず蒸発する。

飛鳥はその凄まじい光景に足を止めていたが、背後から掛けられた声に我に返る。

「久遠さん、大丈夫だったか?」

「証くん。……助かったわ。今のは貴方が?」

「ああ、無事で何より。けど、どうしてギフトを使わなかったんだ?」

「っ! それは……」

堪らず口ごもるが、それを気にした様子もなく呟く。

「あのネズミ……魑魅魍魎の類か。無尽蔵に出されたら厄介だな……」

その言葉に反応する前に、

「あすかっ!」

「わ!?」

泣きそうな顔で飛鳥に抱きつく精霊。苦笑いしながらも提案する。

「仕方ないし支店に連れて帰ろう。怪我は治せるけど汚れはあっちで取ろう」

「そう……ね」

飛鳥は沈鬱そうに頷くが、それに証は気付けなかった。










 
 

 
後書き
余談ですまた、彼が神隠しを気絶させたときの功績は十六夜君が時計塔を破壊した件で帳消しされました。

ギフトの紹介です!! 今回はメインの四つの内の一つです!

『天秤の魔炎』

神格。証が箱庭に呼び出される以前に飛ばされた異世界の神に認められ、与えられたもの。

そのため十六夜を含め、箱庭のほとんどの神霊・星霊にすら知られていない。

主に別世界からの呼び出すようにして炎を解放する。亀裂を空間に創り出し、そこから垂れ流しのように出す。証は投擲剣で切り裂いた空間を使ってそこから炎を出す。

本来の炎とは違う点は炎に重さがあること。ほぼ自由に動かせるが上空に動かすのは困難なほど重い。

またこの炎には〝金属融解″の効果があり、全ての金属(金剛鉄・珍神鉄含む)を強制的に融解させる。

どうでしたか? 春の宿題の影響で徹夜する羽目になりましたが無事に出せました。

感想を頂けたら幸いです。

 
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