万華鏡
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第十九話 ビーチその四
「だから駅から降りてな、確かあの駅近くにスーパーがあるから」
「スーパー八条ね」
ここでも八条グループが経営する企業が話に出る。
「あそこね」
「よく知ってるな、琴乃ちゃん」
「何回から言ってるから」
それで知っているというのだ。
「もうね」
「そういうことだな」
「そう、それでなの」
琴乃はここでもにこにことしている。
「それで知ってるの」
「成程な」
美優も笑ってそうかと納得した。
「それでなんだな」
「うん、そうなの」
「それじゃあそのスーパーに入って」
「何買うの?」
「まずそばは外せないだろ」
焼きそばの玉、それはだというのだ。
「それにもやしにキャベツにな」
「豚肉?」
「いや、海だからな」
彩夏の問いに腕を組み真剣な顔で返す。
「ここはシーフードだな」
「海老に烏賊に」
「それに貝でさ、後は塩だな」
「おソースじゃないのね」
「いや、ソースにするか?」
美優は彩夏がソースと言うとすぐに考えを変えてこう言った。
「海辺だからな」
「シーフードだから塩焼きそばって言ったのね」
「最初はそう思ったけれどさ」
だがそれでもだった。
「やっぱりな。海だからな」
「おソースなのね」
「暴力だからな、海辺にソース焼きそばってな」
「だからそれにするの?」
「皆実際にどれがいい?」
美優はシーフード焼きそばまでは自分で決めたがソースにするかどうかは決断出来ず他の四人に尋ねた。
「実際にな」
「おソースじゃない?」
「そうよね」
まずは彩夏と琴乃が言う。
「私が言ったけれど」
「私も、海だと」
「焼きそばはおソースが一番よ」
「あの匂いには勝てないわ」
「私もそう思うわ」
里香も言う。
「濃い味付けはまだ出来ないけれどね」
「それでもなのね」
「ええ、海辺の焼きそばっていったら」
里香もそうなればだった。
「やっぱりおソースよ」
「私もね」
最後に景子も言う。
「おソースだと思うわ」
「皆それだな」
「海辺にはそれよ」
海とソース、それは最早日本人を捉えた新しい組み合わせだというのだ。
「やっぱり」
「よし、じゃあ決まりな」
美優は四人の意見を聞いて決めた。
「おソースにするな」
「ええ、お塩も捨て難いけれどね」
「海辺だからね」
「それよ」
こうした話をしてそのうえでだった。
五人はまずスーパーに行きそこで焼きそばの食材を買って海に向かった。水着に着替えて砂浜を出てだった。
美優は緑のビキニ、下はパレオで覆った格好で黄色のワンピースの琴乃に対して明るい笑顔でこう言った。
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