八条学園怪異譚
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第二十話 プールの妖怪その三
「激しい取り合いよね」
「ゲット出来ないと他の学科だし」
「合コンばっかりしてるし」
彼氏を手に入れる為であることは言うまでもない。
「彼氏ねえ」
「愛実ちゃんは彼氏は?」
聖花はふとこのことを問うた。
「どうなの?そっちは」
「ううん、どうしたものかしら」
そう問われると困る愛実だった。これまでそうしたことはこれといって考えたことはなかったからである。しかもそれは。
聖花も愛実と共に新幹線の操縦席の中に向かいながらこう言った。
「私もね」
「そういうのは、なのね」
「何か私達いつも一緒にいるけれど」
それこそクラスでも部活でもだ、そして怪談を見て回ることもだ。
「何か彼氏ってなると」
「縁ないわよね」
「どうしたものかしら。実際ね」
「何かさ、こうしていつも一緒にいると」
愛実は新幹線の操縦席、運転席と言うべきかも知れないその場所の中を見回しながらそしてこうも言ったのだった。
「そのうち噂になるわよ」
「どういう噂?」
「百合とかね」
半ば冗談、半ば本気で言う愛実だった。
「そういう噂がね」
「百合ってレズ?」
「そう、そういう関係じゃないかってね」
噂になるというのだ。
「最近そういう話多いらしいし」
「声優業界の中でファンの人達が勝手に言ってるだけじゃないの?」
聖花はこの業界のことを話に出して返した。
「違うの?」
「ううん、そうかしら」
「というか女の子同士ってね」
聖花は速度のメーカーを見て言う。
「何なのかしらね」
「何なのかって?」
「だから。あまりイメージ出来ないのよね」
こういぶかしむ顔で言うのだった。
「ちょっとね、私は」
「私もだけれどね」
「それでも噂になるの?」
「結構そういう設定好きな人多いらしいし」
その声優ファンの一部等である。確かに悪い話ではない。
「だからね」
「そういうものなの」
「私も確かに女の子とそういう関係になるのは」
例えそれが聖花でもだというのだ。
「あまりね」
「抵抗があるのね」
「というか理解できない?」
「同性愛がなのね」
「女の子同士ってね」
噂になろうとも噂は噂だ。それは決して真実ではないからこそ愛実もここで聖花にこう言うのである。
「子供も生まれないしね」
「同じ性だとね」
これは男同士でも同じだ。
「確かに子供が全てじゃないけれど」
「やっぱり子供って大事だしね」
「ええ、それもあるし」
聖花は微妙な顔で愛実に話していく。話をしながら今度は操縦席の天井を見る、そこも機械的で好きな人にはたまらない造りになっている。
「同性愛っていっても」
「ううん、まあ私が結婚して」
愛実は将来の仮定から述べた。
「それで旦那さんが男の人と浮気してもね」
「それって浮気になるの?」
「なるんじゃないの?けれどそれをしてもね」
「特に怒らないのね」
「微妙な気持ちにはなるけれど」
愛実の考えでは浮気は自分以外の異性に対してするものだ、しかしそれが同性になるとどうかというのだ。
「それでもね」
「怒らないのね」
「そう思うわ。聖花ちゃんはどう?こういう場合は」
「私もかも。私以外の女の子に気を移されたら嫌だけれど」
それでもだった、聖花も言うのだった。
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