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八条学園怪異譚

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第二十話 プールの妖怪その一

                  第二十話  プールの妖怪 
 二人はこの日口裂け女に案内されてはじめて入った学園内の鉄道博物館の中にいた。そこは鉄道の歴史や様々な車両が置かれていた。
 やはり全体的にメカニックな感じだ、電車の運転席もあれば時間になると動く大掛かりな鉄道模型もある。
 二人はその鉄道模型、市街地や山、トンネルの模型の中を走るそれ等を見ていた。愛実はそうしながら隣にいる聖花に言った。
「こうしたのを見てると」
「何か楽しいわね」
「私元々電車好きだけれど」
 愛実は新幹線の模型を見ながら聖花に話す。模型のディオラマはガラスケース、十メートル四方のその中にある。
「こうして見てると余計に好きになるわ」
「男の子が好きな理由もわかるわよね」
「ええ、電車ってロマンっていうけれど」
「何かそれがわかるわね」
「実はあれなの」
 ここで愛実はこう言った。
「うちの親戚の人で鉄道好きな人がいて」
「あっ、鉄っちゃんね」
 鉄道好きの愛称である。
「そっちの人なのね」
「そうなの。もう鉄道模型なんかお家に一杯あって」
「走らせたりしてるのね」
「そうなの。それ見ながらにこにこしてるから」
「鉄道模型ってお金かかるっていうけれど」
「凄いわよ。もう何百万も注ぎ込んでるから」
 そこまでしているというのだ。
「奥さんも呆れてるわよ」
「離婚しなければいいわね」
「借金とかまではしてないし家庭のこともちゃんとしてるから」
「だったらいいけれどね」
 聖花もそれで納得した。
「いや、借金とかはね」
「そうそう、最悪だから」
 お金のことにもしっかりしている愛実だった。当然聖花もだ。
「よくいるからね、そういう駄目男って」
「確かにいるわね」
「あと暴力振るう奴」
 愛実は顔を顰めさせて聖花に話していく。
「そういうのもね」
「最低よね」
「女でもいるけれど」
 こうしたことは男だけのことではない、女でもいるものだ。人間というものはこうした面でも男女は変わらないものであろうか。
「ほら、俳優の奥さんとか」
「ああ、あの人ね」
 聖花は愛実のその話に眉を曇らせて頷く。
「あの人は酷いわよね」
「旦那さんに暴力振るうのも駄目よね」
「子供に暴力振るうのも」
「それどっちもあるのよね」
 男女双方である。児童虐待は極めて深刻な問題なのだ。
「子供の躾って大事だけれど」
「叩くことはあるけれど」
 それでもだと言う聖花だった。
「酷い暴力っていうのはね」
「絶対に駄目よね」
 こう話す。そして愛実もこう言うのだった。
「棒量で何かをする人ってね、弱いのよ」
「自分が弱いから暴力を出して相手をいじめて自分が強いって思うのよね」
「うん、子供の間でもあるわよね」
「私もいじめられたことがあったし」
 愛実はここで幼い頃のことを思い出した。子供の頃からあまり大きくない愛実はその頃はよくいじめられていた、そしてだったのだ。
 聖花に助けてもらっていた、愛実はこのことも思い出しながらそのうえでその聖花にこう言うのだった。
「人のことをそうするのって」
「弱い証拠よね」
「そうなのよね。人ってそういう一面あるからね」
「気をつけないとね」
「それでその人はね」
 ここで話を戻す愛実だった。
「自分のお小遣いを殆どそれに注ぎ込んでるの」
「もう生きがいになってるのね」
「そうなの。お昼は奥さんにお弁当を作ってもらって」
「何気に夫婦仲よさそうね」
「そうなの。それでね」
 愛実はさらに話す。 
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