ソードアート・オンライン stylish・story
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第三十二話 仲間と道具
ALOに初インした翌日の午後三時頃、修也はリーファの案内を受けるために再びナーヴギアを被り、ベットに寝っ転がる。
「しかし・・・昨日のあの表情・・・彼女に似ていたんだが、まさかな・・・」
修也は以前にあった『彼女』の暗い表情を思い浮かべていた。
「ALO内でリアルの話をするのは無粋だし、マナー違反だからな。考えてても仕方ないか・・・さてと行くか!ナーヴギア、リンクスタート!!」
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シュウが目を開けると昨日夕食をご馳走になった宿の同じ席に座っていた。そして目の前には目を閉じたままのキリトが座っていた。恐らくはシュウと同じ時間帯にインして来たのだろう。
すると宿の出入り口からリーファが入って来た。それに逸早く気付いたシュウが挨拶を交わす。
「よっ!早いな、リーファ」
「そんな事無いよ。さっき来たとこ。ちょっと買い物してたの」
二人が話していると自分の装備が気になったのかキリトが二人に割って入る。
「そう言えばこの装備じゃ心細いな・・・と言うか、シュウは何でそんなちゃんとした装備になってるんだ?」
「昨日、リーファとキリトが落ちた後で色々揃えたんだよ。良い試し切りも出来たしな」
「試し切り?」
シュウは昨日あった事をキリトとリーファに話すと二人とも驚愕を通り越して呆れていた。PK集団を一人で手傷負わずに返り討ちにしたのだから。
「シュウ君って本当に規格外だよね」
「気にすんなよ。俺は俺だ。んじゃまずはキリトの装備を整えるとしようぜ」
シュウの言葉に二人は頷き、その場を後にしようとしたがリーファが気になった事を思い出し、キリトに尋ねる。
「そう言えばキリト君、お金はあるの?なかったら私が貸しておくけど」
「それに関しては大丈夫だと思うぞ?キリト。自分のステータスの隣にあるお金の所持金額を見てみろ。ユルドってのが、そうだ」
「わ、分かった」
キリトはシュウに言われるがままにステータスを開き、所持金を確認する。するとキリトは昨日のシュウ同様に目を細めた。言うまでもないがSAOのデータはそのまま引き継がれているためキリトの所持金もシュウよりは劣るが金持ちだった。
「大丈夫だよ、リーファ。お金はあるよ」
「そう?なら良いけど」
ユイを起こすと三人は武器防具店に赴いた。
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三十分後、三人はスイルベーンの中央の塔にやって来た。
キリトの装備は黒いコート【ダークナイト・コート】と大型直剣を購入した。普通のプレイヤーなら両手で扱う質量だったがSAOで二刀流をこなしていたキリトにとってはこの位が丁度良かったみたいだった。そして暫くスイルベーンの町並みをリーファに案内してもらった後中央の塔に来た訳だが理由をシュウが尋ねた。
「なあ、リーファ。どうしてここに来たんだ?」
「ここの頂上から飛んだ方が高度が稼げるから遠距離飛行には持って来いの場所なんだよ。ホラ、行こう」
キリトとシュウはリーファに引っ張られると中に入り、屋上へ向かうためのエレベーターに乗り込もうとした時・・・
「リーファ!!」
とリーファを呼び止める声が聞えた。振り向くと少し年配のシルフが数名のシルフを引き連れてやってきた。
「こんにちは、シグルド」
「パーティーから抜ける気なのか、リーファ」
年配のシルフは【シグルド】と呼ばれており、どうやらリーファが入っていたパーティのリーダーのようだった。
「うん・・・まあね」
「残りのメンバーが迷惑するとは思わないか?」
「パーティに参加するのは都合の付く時だけで、何時でも抜けて良いって約束だったでしょう?」
シュウは一旦パーティに参加したなら途中で抜ける事は難しい事だが、約束をしているとなると抜けられても文句は言えないと考えていたがシグルドは・・・
「だがお前はオレのパーティーの一員として既に名が通っている!何の理由もなく抜けられると此方の面子に関わる!!」
それを聞いたリーファはハッと思い悩んだ表情を浮べていたが・・・
「「仲間はアイテムじゃないぜ(ぞ)?」」
キリトとシュウは呆れ顔になりシグルドに近寄った。
「何だ?貴様等は・・・」
シグルドが二人に威圧をかけるがまずはキリトから話す。
「他のプレイヤーをアンタの大事な剣や鎧みたいに装備にロックしておく事は出来ないって言ったのさ」
「な、何だ「そして」・・・っ!?」
シグルドが怒りの表情を浮かべ、反論しようとしたがシュウが続ける。
「プレイヤーを【者】ではなく、【物】として見ているテメェに口の何処に真実があるって言うんだ?私利私欲の事しか頭にない奴がリーダーとなり束縛する・・・俺はそんなパーティには死んでも入りたくねぇよ」
「き、貴様等!!」
二人の言い様にシグルドは自分の腰の得物に手をかける。
「薄汚いスプリガンとインプ風情が付け上がるな!!差し詰め、領地を追放されたレネゲイドだろうが!!そして他種族の領地に入ってくる事は斬られても文句は言わんだろうな!!」
シグルドは自分の剣を引き抜き、キリトとシュウに向けるがその言動にシュウはフゥと溜め息を付くと・・・
「レネゲイドって言葉が知らねぇが・・・俺達を甘く見るなよ?俗物が」
シュウのその一言で周りの空気が一気に重くなった。言葉だけで空気を一変させる事は並大抵のプレイヤーでは出来ない事だがあのSAO生還者でその強豪者に一角に入っていたシュウに取ってはそれも可能だった。
そしてシュウは左手にムラマサを持つと・・・
「Scum(クズが)・・・」
その場から消え、気が付くとシグルド達の後ろにムラマサを抜刀していた姿で立っていた。見切る事が出来たのはキリトだけだった。そしてムラマサを鞘に納刀すると・・・
バキン!!!
「なっ!?」
シグルドが持っていた剣が根元の先から砕け散った。
【武器破壊】。どんな武器でも弱い所は存在し、そこにダメージが入り過ぎると耐久値がゼロになり消滅する。その応用で弱点に強力な一撃を加える事で成しえる技がこの【武器破壊】だった。シュウはシグルドの持っていた剣の弱点を見切り、抜刀術による強力な一撃をそこにぶつけただけだった。
「ぶ、武器破壊!?」
「あれを生で見たの・・・初めだ」
周りのシルフはシュウの力量に圧倒されていた。
「き、きさ・・・うっ」
シグルドは振り向き、シュウに襲い掛かろうとしたがすでにシグルドの首元にはムラマサの先端が突き付けられており、シュウの鋭い眼光に威圧されたのか動く事も出来なかった。
「覚悟もなしにここに居る筈がないだろう?そして種族やらで簡単に相手を苛む奴に俺は引けを取ったりしない!貴様の顔は見飽きた・・・失せろ。リーファにも傍迷惑だ」
「シュウ・・・君」
リーファはここまでするシュウをじっと見ていた。シグルドもシュウを相手にするのは無謀だととったのか最後にリーファに告げる。
「精々逃げ隠れる事だな、リーファ。そして俺を裏切った事を後悔するんだな」
「っ!!」
リーファはシグルドの言葉に顔を顰め、俯くがキリトとシュウがリーファの隣にやってくると・・・
「そんな事はさせないぜ」
「リーファは俺達の大切な仲間だ。もし彼女が後悔に陥ったのなら俺達はそれを壊す・・・それだけだ」
「キリト君・・・シュウ君」
それを見たシグルドはチッと吐き捨てるとその場から居なくなった。
そしてリーファがゆっくり口を開く。リーファ自身も関係のないキリトとシュウを巻き込んだ事に謝罪の念を持っているようだった。
「ごめんね?関係ない事に巻き込んで」
ここでシュウが自分の考えを述べる。
「気にすんなよ。俺もあいつには我慢できなかったしよ。全く・・・あんな奴がリーダーなんてありえないぜ!!」
シュウが居なくなったシグルド達の事を愚痴っているとリーファがシュウの手を握って来た。シュウは少し驚き、尋ねる。
「リー・・・ファ?」
「ありがとう。私・・・嬉しいよ」
少し涙を滲ませ、上目遣いで見てくるリーファにシュウは少しドキッと心を打たれた。
「リーファ・・・」
シュウとリーファが良い雰囲気になって来たのだが・・・
「ゴホン」
とキリトの咳払いは二人はハッとなると我に返った。
「全く。こっちの事も考えてくれよな?」
キリトの言葉に二人は謝るとエレベーターに乗り込んだ。
後書き
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