スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
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第六十話 イルイの言葉
第六十話 イルイの言葉
ロンド=ベルは航路はそのままだった。しかしだ。
「何時来てもいいようにしないとね」
「ああ、そうだな」
「シャピロのことだ、また来るからな」
「だよな、いきなり来るぜ」
「いつも通りな」
シャピロのことがよくわかっていた。それでだった。
彼等は警戒を怠らない。無論他の敵にもだ。
「宇宙怪獣とかプロトデビルンは?」
「今のところ気配はないわ」
サリーが答える。
「そういった相手はね」
「そうか。暫くはシャピロ以外は敵は来ないか」
「そうね」
「最近バッフ=クランも大人しいし」
「ああ、あの連中もな」
ここでバッフ=クラン軍のことも思い出すのだった。
「そういえばあの連中ってな」
「ああ、かなり理性的だよな」
「確かに」
「我々はだ」
そのバッフ=クラン人のギジェが話す。
「好戦的ではないつもりだ」
「そうだな」
コスモもそのことは認めた。
「カララさんもそうだがバッフ=クラン人は決して好戦的じゃないな」
「まずは話し合いが第一だ」
ギジェはまた言った。
「それで話が済むならそれに越したことはない」
「そうですよね、やっぱり」
「まずは話し合って」
「それでですよね」
皆もギジェのその言葉に頷くのだった。
「けれど何で戦争になったんだろう」
「バッフ=クラン軍ともそこまで」
「白旗のせいで」
「我々も知らなかった」
ギジェの顔が苦いものになった。
「まさか白旗がそちらで話し合いを表すものだとはな」
「それはこちらもだ」
ベスが言った。
「まさかな。白旗が相手を侮辱するものだとはな」
「文化の違いね」
カララはそれだというのだった。
「そのせいね」
「それのせいで戦争になった」
「因果なことだよな」
「そうよね」
皆このことについて考えてだ。それぞれ深刻な顔になった。
「話し合いで済んだ話が」
「ここまでこじれて」
「お互いに多くの血を流して」
「それで得たものは」
「何もないし」
「それはこれからではないだろうか」
ギジェはここでまた言った。
「我々は今確かに戦っている」
「ああ」
「それはな」
否定できない事実だった。
「しかしそれでもだよな」
「また話し合いができるよな」
「時が来れば」
「必ずそうなる。そして」
ギジェがまた話す。
「それはイデの意志ではないだろうか」
「イデの?」
「イデオンの?」
「そんな気がする」
ギジェは考える顔で述べた。
「あくまで私の考えだがな」
「まさかと思うけれど」
「そうだよな」
「イデはそういうことを考えているのかな」
「そこまで」
「いえ、それは有り得るわ」
カララが話す。
「イデは人間と同じ考えを持っているようだから」
「じゃああれか」
モエラはそれを聞いて言った。
「イデオンはまさしく神なのか」
「巨神」
「まさしく」
「そうかも知れない。そんな気がする」
モエラはこう皆に話した。
「違うかも知れないがな」
「ううん、どうなのかしらね」
セニアも腕を組んでいる。
「有り得ることかしら」
「ヴォルクルスとはまた違うけれど」
サフィーネは彼女がかつて仕えていた邪神を引き合いに出して話す。
「ああいう存在なのかしら」
「意識の集合体らしいし」
「そうなのかな」
「けれど邪悪なものじゃないのは間違いないし」
「シュウでもいれば何か言うかも知れないんだがな」
マサキはこんなことも言った。
「あいつはここぞって時にしか出ねえからな」
「そうそう。あの人ってそうよね」
ミオもマサキのその言葉に頷く。
「肝心な時に颯爽って感じで出て来てね」
「基本的にキザだな」
イルムは彼をこう看破した。
「ミステリアスな存在を気取ってるな」
「しかもそれが様になるし」
「何ていったらいいか」
「ずるい存在よね」
「全く」
ロンド=ベルの者達もシュウにはこんなふうに考えていた。そうしてだ。
クスハはだ。ブリットを交えてアラド達と話していた。
「それでだけれど」
「ああ、イルイちゃんだよな」
「あの娘よね」
「地球にいた筈なのに」
クスハは目を伏せて言った。
「どうして宇宙に」
「その前にどうしてフロンティアにいたんだろうな」
「そしてシティ7に入って」
アラドとゼオラも首を傾げさせている。
「超能力で移動したのか?やっぱり」
「それかしら」
「多分そうだな」
ブリットは二人のその説に頷いた。
「それで宇宙に出たんだ」
「やっぱりそれか」
「それでなのね」
「そして問題はだ」
ゼンガーもいる。彼は腕を組んでいる。
「その目的だ」
「イルイ=ガンエデン」
ククルはその正式な名前を述べた。
「地球を愛し守る存在だが」
「それがどうして」
「どうして宇宙に出たのかしら」
アイビスとツグミもいる。
「地球を離れて」
「何をするつもりなのかしら」
「何も目的がなくてする筈がない」
スレイは断言した。
「そこまでのことは」
「只の家出とかじゃないからな」
「それは当たり前でしょ」
ゼオラはアラドの今の言葉には口を尖らせる。
「家出ってイルイちゃん家族いないでしょ」
「いや、俺達が家族だろ」
「だからよ。私達が家族ならよ」
アラドのその言葉を受けてだった。
「何で宇宙に」
「家族だからか」
ゼンガーがここでまた言った。
「我々が」
「俺達が気になって?」
ブリットはゼンガーの言葉を受けて述べた。
「それで?」
「それで地球を出た?」
「いや、それにはちょっと」
ツグミがアイビスに言ってきた。
「私達が宇宙に旅立つ前からもうフロンティアにいたみたいだけれど」
「そうだな。だとすればだ」
スレイが考える顔で話した。
「その家族は誰だ」
「俺達以外の家族」
ブリットも考える顔になる。
「誰なんだ、それは」
「いるとしたらね」
「そうだ。それは誰なんだ」
「ううん、まさか」
クスハは考える顔になってだ。皆に話した。
「イルイちゃんって女の子よね」
「そのことに何かあるのか」
「ひょっとしたらだけれど」
こう前置きしての言葉だった。
「イルイちゃんの他にもう一人」
「もう一人?」
「もう一人って?」
「ガンエデンがいるとしたら」
これがクスハの今の考えだった。
「それに会いに行くとか」
「もう一人のガンエデンって」
「つまり男の」
「そのガンエデン」
「有り得るな」
ゼンガーはここでまた言った。
「イルイ=ガンエデンだけで存在できるのか」
「女の子だけで」
「それは」
「雌雄は必ず必要なものだ」
「じゃあやっぱり」
「もう一人いる?」
「ガンエデンが」
「その男の」
「そう考えていい」
ゼンガーはまた言った。
「何処にいるかはわからないが」
「ううん、何か謎が謎を呼んで」
「どうなるかわからないっていうか」
「そんな感じ?」
「そうよね」
「どうにも」
皆ここで首を傾げさせてしまった。
それでだ。クスハが言うのだった。
「ねえ。それじゃあ」
「ああ」
ブリットがそのクスハに応える。
「イルイを助け出して。どうしてなのかな」
「聞きたいわね」
こう話しながらだった。航海を続ける。そうして。
次の日だった。やはり彼等は来た。
しかも三将軍が全員いた。ギルドロームがシャピロに問う。
「シャピロよ」
「何だ」
「その少女がか」
彼はイルイを手元に置いたままであった。
「その少女が我等の帝国をか」
「そうだ、永遠の繁栄に導く」
表向きはこう言っているシャピロだった。
「そして皇帝陛下もだ」
「そうか。それならよいがな」
「わしも異存はない」
ヘルマットも言う。
「それならばな」
「しかしだ」
デスガイヤーは異論を述べてきた。
「そうしたまだ年端もいかぬ娘を利用するというのはだ」
「生憎だがそんなことを言っている場合ではない」
シャピロはそのデスガイヤーを愚弄したようにして言葉を返した。
「今はな」
「ロンド=ベルに勝つ為にか」
「そうだ」
「その娘の力をか」
「使い。そして他の全ての勢力を滅ぼす」
あくまでそういうことにしているシャピロだった。
「そのうえでだ」
「この世界の宇宙を我等のものとする」
「そうするか」
「そうだ。これでわかったな」
また三将軍達に述べた。
「それではだ」
「ふん、まあいいだろう」
「戦うことにはやぶさかではない」
ギルドロームとヘルマットが言った。
「では、だ」
「進撃を開始するとしよう」
「デスガイヤー将軍」
ロッサが彼に声をかける。
「行かれないのですか」
「わかっている」
憮然としているがそれでも頷く彼だった。
「行く、それでいいな」
「はい、それでは」
「ヘルマット将軍の軍は中央だ」
シャピロが指示を出す。
「そしてデスガイヤー将軍が右」
「わしが左か」
「そうだ。そう布陣する」
ギルドロームに告げた。
「そして三方から同時に攻撃をする」
「よし、ではだ」
「攻めるとしよう」
こうしてムゲ帝国軍の攻撃がはじまった。その攻撃は三方から囲み同時攻撃を仕掛けるものであった。その攻撃がはじまりだった。
ロンド=ベルはだ。まずはであった。
「敵の左翼だな」
「ああ、ギルドロームだな」
「あいつは残しておくと厄介だからな」
「また罠か何か精神攻撃を仕掛けて来るしな」
「最初に潰しましょう」
それぞれ言ってであった。ギルドロームの軍勢に全力で向かう。
「一気に倒せ!」
あいつの軍はすぐに潰す!」
「よし!」
その言葉通りであった。実際に総攻撃を浴びせてギルドロームの軍勢を薙ぎ倒していく。ギルドロームはそれに対してであった。
「機雷を撒け」
「機雷をですか」
「そうだ、撒くのだ」
こう部下達に命じるのだった。
「それで敵の行く手を阻みながら戦うのだ」
「了解です」
「それでは」
部下達が頷いてだった。すぐに機雷が撒かれる。
それでロンド=ベルの足止めをしようとする。しかしだった。
「甘いんだよ!」
「そうよ、それならそれでよ!」
広範囲攻撃ができるマシンがだった。
ハイメガランチャーやファンネルでだ。機雷を攻撃で一気に潰す。そうして機雷原を潰してだった。さらに前進するのだった。
「機雷なんてな!」
「潰せばどうということはないのよ!」
「そうよ、こうしてよ!」
クェスもヤクト=ドーガのファンネルを放つ。
「行けっ、ファンネル達!」
それで機雷をことごとく潰す。しかもだ。
「もう一撃!」
「何っ、まただと!?」
「また放った!?」
ムゲ帝国軍の将兵達はクェスの今の攻撃に驚きを隠せなかった。
一度に二回ファンネルを放ってだ。そのうえで機雷を潰したのだった。
それで進路を大きく開けた。そうしてだった。
「よし、今だ!」
「一気に行くぞ!」
「馬鹿な、何故だ」
「何故一度に二回も攻撃を」
「しかもだ」
彼等はここでロンド=ベルの動きを見た。
見ればだ。彼等の倍の速さで動いている。その攻撃もだ。
「まるで二回移動しているようだ」
「そうだな、この攻撃は一体」
「簡単な理屈だ」
こう話したのはエイジだった。
「僕達の腕があがったんだ」
「腕があがっただと」
「それでなのか」
「そうだ、それでこれまでより倍の速さで動き攻撃できるようになったんだ」
所謂二回ができるようになったのだ。
「それでだ」
「くっ、これまでの戦いでか」
「そこまで強くなったというのか」
「そのことに今頃気付くなんてね」
アレンビーは半ば呆れながら言った。
「ちょっと鈍過ぎない?」
「いえ、アレンビー」
「違うのレイン」
「大抵は向こうは気付く前に倒してるから」
「それでなの」
「ええ、だから」
レインが話すのだった。
「それにムゲ帝国軍との攻撃は」
「そういえば久し振りよね」
「だから知らない相手も多いのよ」
「そういうことだったの」
「ええ」
そうだというのである。
「だからよ」
「わかったわ」
「それじゃあいいわね」
「ええ、またやるわ」
こう言ってであった。ノーベルガンダムを動かしてだ。
そのフラフープとリボンでだ。敵を薙ぎ倒すのだった。
ギルドロームの軍勢は退けた。そうしてだった。
「よし、次は」
「ヘルマットの大軍よね」
「相変わらず多いよな」
「ああ」
皆その大軍を見てまずはこう話す。
「それじゃあ今から」
「攻めるか」
「そうね」
「とにかく数を減らすことを考えるか」
念頭に置くのはこのことだった。
「それなら」
「これまた一気に」
「やるか!」
こう言ってであった。全軍で敵を小隊単位で潰していく。
ヘルマットはそれを見て部下達に命じた。
「いいな」
「はい、包囲してですね」
「そのうえで」
「そうだ、殲滅する」
彼らしい作戦だった。
「そしてそのうえでだ」
「奴等を数で押し潰す」
「今度こそ」
「わかればすぐにかかれ」
ヘルマットはまた命じた。
「いいな、全軍でだ」
「了解です」
こうして彼等はロンド=ベルを取り囲みそのうえで倒そうとする。しかしそれに対してだった。
ロンド=ベルはその機動力を活かしてだ。彼等の中を縦横無尽に暴れるのだった。
一つの敵を倒せばまた別の敵を倒す、そうしていってた。
「敵の陣を食い破れ!」
「いいな、それで!」
「はい、わかりました」
「それでは!」
彼等は全軍で敵の中を動き回りそうして倒していった。
ヘルマットの軍もこれで突破した。最後は。
「将軍、来ました」
「ロンド=ベルが」
「よし」
それを見て部下達の言葉も受けて頷くデスガイヤーだった。
彼はだ、自ら戦闘に立って部下達に命じた。
「続け!」
「はい!」
「正面からですか」
「そうだ、少年から戦う!」
これが彼の考えだった。
「それでいいな」
「わかりました」
「では我々もです」
「将軍に続きます」
「ギルドロームとヘルマットは既に戦場を離脱しているな」
デスガイヤーは同僚達のことも尋ねた。
「既に」
「はい、御二人共既にです」
「離脱されてます」
その通りだというのであった。
「ではこれより」
「我が軍は正面からロンド=ベルと」
「そして勝つ」
彼は言った。
「いいな」
「了解です」
「それでは」
こうしてだった。デスガイヤーの軍とも戦闘に入った。今度は正面から激しくぶつかり合う派手な戦闘だった。
「こいつは相変わらずだな」
「そうだよな」
「力技か」
「それも正々堂々とね」
「数は敵の方が上です」
テッサがこのことを話す。
「それならです。我々は」
「どうするの?」
「まずは防ぐべきです」
こう小鳥に述べた。
「そしてです。機を見てです」
「攻めるのね」
「はい」
小鳥の言葉に頷く。
「そうしましょう」
「よし、じゃあ宗介」
小鳥は宗介に声をかけた。
「わかったわね」
「わかった。それにだ」
「それに?」
「俺もあの娘を救いたい」
そうだというのである。
「是非な」
「あんたもそういう感情あるのね」
「少なくともあのシャピロという男は好きにはなれない」
「っていうかあんな奴誰でも嫌いでしょ」
小鳥も彼は嫌いだった。
「正直なところ」
「僕もだね」
エイジもだった。
「あんな人間は。やっぱり」
「じゃあここはあいつをやっつける前にね」
小鳥がここでも言う。
「今戦っている敵をね」
「倒そうか」
こうしてだった。彼等はデスガイヤーの軍と戦う。まずは引き付けてだった。
そしてだ。そのうえでだ。
守りを固めて敵の数を減らしてだった。
「よし、今だ!」
「今ね!」
「全軍攻撃して下さい!」
テッサも言う。
「そして一気に突き崩します!」
「よし、来た!」
「それなら!」
突撃に入る。一点集中攻撃を浴びせた。
それでデスガイヤーの軍を突き崩してだ。彼も破ったのだった。
「くっ、まさかここでも敗れるとはな」
「将軍、最早です」
「これ以上の戦闘は」
彼の部下達が言ってきた。
「一刻も早く撤退を」
「そうしましょう」
「退くしかないか」
デスガイヤーは彼の言葉を歯噛みしながら聞いていた。
「ここは」
「既にギルドローム将軍もヘルマット将軍も撤退されてます」
「ですから」
「わかった」
苦い顔だがそれでも頷いた。
「それではな」
「はい、それでは」
「今より」
こうしてだった。彼もまた撤退した。残るはだ。
シャピロだけだった。忍が彼に叫ぶ。
「やい、シャピロ!」
「藤原か」
「そうだ、今度こそ手前を倒す!」
ここでも敵愾心を露わにしている。
「覚悟しやがれ!」
「いつもの言葉だな」
シャピロもまたここでも上から目線だった。
「全く以てな」
「本当にあんたは何もわかってないね」
沙羅はそんな彼を冷めた目で見ている。
「何もかもね」
「凡人に私の考えはわかりはしない」
あくまでこう言う。
「神の考えはな」
「神は神でも鼻紙じゃねえのか?」
今言ったのはジャーダである。
「所詮はそうだろ」
「まあそんなところだろうね」
ガーネットが彼の言葉に頷く。
「あんな奴はね」
「ああ、だからどうってことはないさ」
「そう思います」
ラトゥーニも同意する。
「ああした人は実際にはどうということはありません」
「一撃で終わらせようよ」
「そうだな」
雅人と亮も強気である。
「それで今度こそね」
「こいつの話も終わりだ」
「手前は俺達が倒す」
忍はダンクーガを前にやった。
「いいな、これでだ」
「甘いな」
しかしだ。シャピロはここで言うのであった。
「今は貴様等と戦うつもりはない」
「何っ!?」
「私は神だ」
またしてもこの言葉だった。
「神は己に歯向かう者を許しはしない」
「ではだ」
ユウキが彼に言ってきた。
「御前は今から俺達にその神罰を与えるのか?」
「それにはその為のものがある」
こうユウキに返すシャピロだった。
「それを持って来たその時にだ」
「つまりあれね」
カーラは彼女なりにシャピロの言葉を要約してみせた。
「私達をやっつけるものがないから今は帰るっていうのね」
「帰るっていうか」
「そうよね」
リョウトとリオはこう言うのだった。
「撤退?」
「また」
「次の時を楽しみにしておくのだ」
シャピロは何と言われても平気な様子であった。
「私はこれで帰るとしよう」
「そうはさせるかよ!」
忍が追おうとする。しかしだった。
シャピロの戦艦が戦線を離脱していく。そして残ったムゲ帝国軍もだ。
全て戦場を離脱する。その時だった。
「・・・・・・けて」
「!?その声は」
クスハは確かにその声を聞いた。
「イルイちゃん、やっぱり」
「・・・・・・すけて」
「ええ、わかったわ」
クスハはその言葉に頷く。そうしてだった。
「今度で。絶対にね」
「聞こえたんだな、クスハ」
ブリットはクスハの今の言葉に問い返した。
「そうなんだな」
「そうなの。確かに」
その通りだと返すクスハだった。
「聞いたわ」
「そうか。それだったら」
「今度で。絶対に」
「シャピロ=キーツの手から」
「取り返しましょう」
クスハはそう決めていた。
「本当にね」
「ああ。それにしても」
「それにしても?」
「あのシャピロ=キーツは」
ブリットが今話すのは彼についてであった。
「本当に何もわかっていないんだな」
「そうね」
クスハもブリットのその言葉に頷いた。
「何もわかっているようでね」
「何もわかっていない。それに」
「ええ、それに」
「何も見えていない」
「また見えているつもりになっていて」
「何一つわかってもいないし何も見えていないな」
「絶対に負けられないわね」
クスハはシャピロに対しても意を決していた。
「あの人にだけは」
「いや、絶対に負けない」
ブリットはこう返したのだった。
「あんな奴には」
「負けられないじゃなくて?」
「そう、負けないんだ」
ブリットが今言う言葉はこれであった。
「俺達は少なくとも自分達を人間だと考えている」
「それはね」
言うまでもないことだった。その通りである。
「そしてそのうえで何もかも見ている」
「けれどあの人は」
「自分を神と見てそれで思い上がっている」
その増長と傲慢こそがだ。シャピロなのである。
「そんな奴には絶対に」
「負けはしないっていうのね」
「そういうことさ。だから俺達は絶対に負けないんだ」
「その通りだ」
二人のその言葉に応えたのはシリウスだった。
「私もそう思う」
「シリウスさんも」
「そう考えてるんだな」
「その通りだ。天使であろうとだ」
これはだ。シリウスが自分自身で感じ取った言葉である。
「人なのだ」
「そうですね、心が人なら」
「それで人だから」
「その通りだ。力が多少あっても同じだ」
これもシリウスが自身で感じ取ったことあだ。
「全てな」
「じゃあシリウスさんも」
「あいつには」
「負ける筈がない」
シリウスも確信していることだった。
「己が神と称し他者を見下すだけの輩にはな」
「そういうことだな。では次だ」
不動が言った。
「次の戦いで決めるとしよう」
「よし、潰してやるぜ!」
アポロが叫ぶ。
「あの大馬鹿野郎をな!」
「まさかと思ったけれど」
シルヴィアは首を傾げさせて述べた。
「アポロよりずっと酷い馬鹿がいたなんてね」
「それがあの男だな」
「馬鹿っていうか」
兄に応えてさらに話す。
「愚かって言うのかしら」
「そうだ、あの男は愚かだ」
そうだというのである。
「何も見えていないのだからな」
「そうなるのね」
「その通りだ。愚か者には敗れる筈がない」
また言うシリウスだった。
「そういうことだ」
「では次だ」
不動がまた言った。
「次で少女を救い出す!」
「あの、司令」
「ここで大音声なんですか」
「そうするんですか」
「そうだ!」
また叫ぶ彼だった。
「戦の後こそ身を引き締めるのだ!」
「何かわからないけれどね」
「じゃあそうなんでしょ」
「じゃあ次の戦いに備えて」
「気合を入れなおしてね」
こんな話をしてから休む彼等だった。そのうえで次の戦いに備えるのだった。
その次の戦いの相手はだ。もう決まっているようなものだった。
彼等はシャピロに対してだ。決意をあらたにしていた。
「いい加減もうここでな」
「そうね、潰しておかないと」
「ムゲ=ゾルバトス帝国も」
「倒しておくか」
「決着をね」
「それがいいな」
葉月博士は皆の言葉に頷いた。
「敵勢力は潰せる時に潰す」
「そうでないとあれですよね」
「戦いが長引きますし」
「ですから」
「次で」
「その時が来たな」
また言う博士だった。
「では。そういうことでだ」
「ええ、シャピロとの戦いも」
「これで」
「終わらせるか」
「遂に」
こう話してだった。そうしてだった。
次の戦いに決意を固める。決着に向けて。
それでだ。アラドはゼオラと話していた。
「なあ」
「どうしたの?」
「いや、クスハさんも言ってたけれどさ」
「イルイちゃんのことね」
「やっぱり許せないよな」
アラドは珍しく険しい顔になっていた。
「あいつのやっていることは」
「シャピロ=キーツね」
「ああ、絶対に許せない」
こうゼオラに言うのだった。
「俺も。イルイちゃんは絶対にな」
「そうしましょう、絶対にね」
「ゼオラもそれでいいんだな」
「当たり前でしょ」
ぴしゃりとした言葉だった。
「だって。イルイちゃんじゃない」
「ああ」
「それだったら。やっぱり」
「助けたいよな」
「そうよ。だから」
「やるか」
「絶対にね」
こう話してだった。彼等も決意をあらたにするのであった。シャピロとの最後の戦いの時が今迫っていた。
第六十話 完
2010・9・22
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