万華鏡
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第十八話 プールその七
「盆地だから」
「私どっちも冬にも行ったことあるけれど」
「私もよ」
琴乃もだった、それは。
「寒いわよね、どっちも」
「冬はね」
「盆地の冬は堪えるわ」
後ろに山がある神戸もそうだが奈良や京都もだというのだ。
「底冷えして」
「もうちょっとしたら夏なのに寒くなってきたわ」
琴乃は里香と話していて明るい、冗談めかした笑顔になってこんなことも言った。
「クーラーいらなくなったわ」
「そこでそう言うのね」
「ええ。扇風機もね」
「それもなのね」
「私はどっちかっていうと扇風機が好きだけれど」
「クーラーじゃなくて?」
「そう、そっちなの」
琴乃は扇風機が好きだというのだ。
「どっちかっていうとだけれどね」
「扇風機ねえ」
「里香ちゃんはクーラー?」
「私はそっちなの」
里香はクーラー派だった。
「扇風機も嫌いじゃないけれど」
「それでもなのね」
「クーラーの方がいいけれど」
「冷えない?クーラーって」
「扇風機も冷えるでしょ」
「扇風機は首が振れるから」
それでだというのだ。
「身体の一箇所にずっと当たるってことがないじゃない」
「だからいいのね」
「そう、クーラーは身体全体が冷えて」
「苦手なの」
「我慢できないって程じゃないけれどね」
だがそれでもだというのだ。
「クーラーは苦手なの」
「そうなのね」
「うん、ちょっとね」
琴乃は困った顔になって里香に話した。
「この学園は建物全体が涼しいけれど」
「クーラー効かしてるからね」
「何かそれってホテルみたいね」
「船かね」
「そういう感じよね」
「そうね、けれどクーラーだから辛いの?」
里香は怪訝な顔になって琴乃に問うた。
「今も」
「そんなに。これ位だとね」
「大丈夫なのね」
「風に直接当たってないし」
このこともあった。
「だから大丈夫なの」
「そう、だったらいいけれど」
「夏に冷暖房あるだけでも有り難いわよね」
「それはね。公立とかだと」
「ないわよね」
「残念だけれどね」
里香はないと答える。
「普通はないから」
「そうよね。公立は」
「冬は人が集まる熱気でそれ程じゃないけれど」
「夏はそれが逆になるからね」
「だから辛いわよね、公立は」
「中学の時なんかそうだったわ」
琴乃は実際にその時のことを思い出して言った。
「もう夏は暑くて」
「やっぱりそうよね」
「もう七月の夏休み前なんか最悪」
思い出しただけでうんざりとすることだった。
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