スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
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第三十四話 マザーズ=ララバイ
第三十四話 マザーズ=ララバイ
「いいか」
「はい」
「何時でも」
「まずは作戦から話す」
ジェフリーが全軍に話す。
「バジュラ達を退けだ」
「まずはですね」
「それからですね」
「そしてだ」
ジェフリーの説明は続く。
「そのうえで敵の巨艦の中に入る」
「そしてランカちゃんを」
「それから」
「そうだ、救出する」
このことも話される。
「わかったな、それでだ」
「はい、わかりました」
「それでは」
「まずは全軍で周りのバジュラを倒す」
そうするというのである。
「それからだ」
「では。今から」
「行きましょう」
こう話してであった。全員でその彼等に向かう。戦いは早速はじまった。
その中でだ。ふとイサムがガルドに言ってきた。
「なあ」
「何だ」
「この連中ってな」
もう目の前に迫ったバジュラ達を見ての言葉だった。
「戦う度に強くなってないか?」
「そう思うか」
「ああ、御前はどう思う?」
こうガルドに問うのである。
「この連中な。そう思わないか?」
「そういえばそうだな」
ガルドもイサムのその言葉に頷いた。
「少しずつだがな」
「抵抗力があがってるのか?」
「それに攻撃力もだ」
そういったものがだというのだ。
「戦術も。脳がないにしてな」
「ああ、何かあるな」
「そうだな。戦術もある」
ガルドはこのことを指摘した。
「本当に脳がないのか」
「どうだろうな。そもそもだ」
「脳味噌がなくて動くの?」
「そうした動物もいることにはいるけれどね」
レトラーデとミスティも話す。
「それでも何か」
「ええ、動きはしっかりしてるわね」
「何か中心にいるのか?」
霧生はいぶかしながらも述べた。
「向こうにな」
「巨大な頭脳か」
金竜が言った。
「この連中を操る」
「そうでなければ少し説明がつきませんね」
「確かに」
ドッカーとフィジカは金竜のその言葉に頷いた。
「バジュラの動きは」
「そうとしか思えませんし」
「だとしたら一体」
ガムリンも言う。
「そこにいるのは」
「まさかとは思うけれどよ」
「あの戦艦かな」
マックスは柿崎の言葉に応えてその巨艦を見た。今ランカが中にいる巨艦をだ。
「あそこにいるのかね」
「あれがバジュラの総旗艦なら」
「バジュラの親玉か」
フォッカーは目を鋭くさせて述べた。
「それがいるか」
「あの巨大戦艦こそが」
「それでしょうか」
輝とミリアもその巨艦を見据えていた。バジュラの中心にだ。その巨体を見せている。
「敵の頭脳」
「それも兼ねている」
「それなら厄介じゃないの?」
ミレーヌは顔を曇らせていた。
「あんなの。どうやって相手したら」
「今までああした巨艦も相手はしたがな」
レイはこう言いはしたがだった。
「それでもな。かなり慎重にやらないとな」
「そうよね、ランカちゃんもいるし」
また言うミレーヌだった。
「本当に慎重にいかないと」
「その必要はねえ!」
だがここで横紙破りが出て来た。
「ランカを助け出すなんか造作もねえ!」
「何でそう言えるのよ」
「助ける気があるからだ!」
バサラはこうミレーヌに返す。
「その気さえあればな!絶対にできるんだよ!」
「じゃあどうするつもりだ?」
レイはこうバサラに問い返した。
「ここは」
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ!!」
叫びながら一気に前に出る。
「耳があるなら聴け!容赦しねえぜ!」
「相変わらずなんだから」
ミレーヌはその言葉を聞きながら呆れはした。
「けれど。そうよね」
「ああ、ここは行くしかない」
レイも続く。
「いいな、ビヒーダ」
「・・・・・・・・・」
ビヒーダは無言で頷く。これで決まりだった。
一気に突き進んでだ。そうしてバジュラ達にもその歌を聴かせる。
するとだ。バジュラの動きが怯んだ。少しではあるがだ。
「音楽は効く!?」
「まさか」
「バジュラにも」
「俺の歌を聴けない奴はいねえ!」
バサラはギターを奏でながら叫ぶ。
「だからだ!どいつもこいつも聴きやがれ!」
これでバジュラの動きを狂わせていた。そうしてだ。
ロンド=ベルはだ。この動きを見逃さなかった。
「よし!」
「今だ!」
「ここで!」
こう言ってであった。一気に切り込む。後は壮絶な総力戦だった。
「陣は崩すな!」
「このまま攻めろ!」
「一斉攻撃だ」
こう指揮が整然と飛ぶ。
「そのうえでだ」
「あの巨大戦艦に向かう」
「いいな」
「ええ、了解です」
「わかってますよ」
返答も一つしかなかった。
「ここはね」
「そして中に入って」
「本当にランカちゃんを」
「何があっても救うわよ」
マリューの言葉である。
「それが男の子よ」
「あの、私達女ですけれど」
「それでもいいんですか?」
「今のお言葉は」
「ああ、この場合性別はないわ」
「そうなんですか」
「ないんですか」
「全員漢よ」
こうも言うのであった。
「漢って」
「それなんですか」
「男じゃなく」
「漢と書いて男と読む」
マリューは言う。
「そういうことよ」
「はあ」
「じゃあ漢と書いて女ってのも」
「それもありですか」
「勿論よ。この場合は侠気だから」
それであると断言していた。
「それの問題よ」
「侠気ですか」
「それがあるかどうか」
「今の侠気は決まっているわ」
不敵に笑っての言葉だった。
「わかるわね」
「ええ、まあ」
「つまりここは」
「ランカちゃんをですね」
「救い出すこと」
まさにそれだというのだ。
「それよ」
「だから漢だろ」
「そうきますか」
「女の子も今は漢になりなさい」
マリューはまた言ってみせた。
「わかったわね」
「はい、じゃあ」
「今は」
「囚われのお姫様を救い出すわよ」
マリューの言葉は本気であった。
「皆でね」
「了解です!」
「それじゃあ!」
「まずは巨艦!」
攻撃目標はもう決まっていた。
「一気に行くか!」
「言われなくても!」
彼等はバジュラ達を一掃させながらそのうえで突き進む。そうしてであった。
「よし、これで!」
「巨艦が見えてきた!」
「少佐!アルト!」
すぐに二人に声がかかる。
「いいですね!」
「今から!」
「いいな、アルト」
「はい」
アルトはオズマの言葉に小さく頷く。
「今からだ」
「敵の中に」
「入りそしてだ」
「ランカを救い出す」
もうそれは既に決まっていることだった。
「そういうことだ。行くぞ」
「俺が救い出します」
こうそれぞれ話してだった。今その巨艦の中に飛び込もうとする。
その進路はだ。ミシェルがライフルで開けた。
「よし、これでいいな」
「ミシェルか」
「済まないな」
「囚われのお姫様を救うメルヘンはこうじゃないとな」
彼はそのライフルで敵を撃墜しながらだ。不敵な言葉で言うのだった。
「協力する騎士は必要だろ」
「何言ってるのよ」
しかしその後ろからシェリルの声がした。
「マクロスクウォーターに戻る直前は気絶しかけてたじゃない」
「あれはだな」
「幾ら敵の攻撃を後ろに受けてもよ」
見ればだった。ミシェルのバルキリーはかなりのダメージを受けていた。
「それでも気絶しそうになるのはね」
「よくそれで大丈夫でしたね」
「私が咄嗟に操縦したからね」
こうルカに話すのだった。
「だから助かったのよ」
「そうだったんですか」
「まさに間一髪よ」
「しかし俺もすぐに気付いたぜ」
「助かったっていうの?」
「ああ、俺もマクロスにぶつかるつもりはないからな」
だからだというのである。
「だからだよ」
「あら、言うわね」
シェリルはそんなミシェルの言葉を聞いて楽しげに笑うのだった。
「本当に危なかったのに」
「危なかったが生きてるさ」
「私がいなくてそれが言えたかしら」
「言えるさ。今だってな」
「じゃあ見せてみなさい」
また言うシェリルだった。
「もっとね」
「わかるさ。それじゃあな」
そうしてだった。巨艦の一点に攻撃を浴びせる。それによってだ。
そこに穴が開いた。その大きさはだ。
「これ位ならいいか?」
「ああ、充分だ」
「バルキリー一機が通れるならな」
こう答える二人だった。
「では今からだ」
「中に行かせてもらうぜ」
「絶対にですよ」
ルカが強い声で告げる。
「ランカさんを」
「わかっている」
「絶対にな」
二人の言葉はルカのそれよりも強かった。
「すぐに戻る」
「ランカと共にな」
こうしてだった。二人は巨艦の中に入る。そしてその頃。
ランカは巨艦の中にいた。そして戦いを見ていた。
その戦いを見てだ。悲しい顔で言うのだった。
「止めて、こんなの」
戦いを好まない彼女がだ。それを見て何も思わない筈がなかった。
悲しい顔でだ。こう言うのだ。
「こんなことをしても何も」
「ランカ」
しかしだ。その彼女に誰かが声をかけてきた。
「歌を」
「えっ!?」
「貴女は歌を」
こう言ってきたのだ。見ればだ。
巨大な幻影らしきものがいた。彼女によく似た緑の髪と優しい顔のだ。その彼女が優しい声で彼女に対して言ってきたのである。
「歌うのです、そして」
「貴女は」
「歌を」
また言う彼女だった。
「それを歌って」
「一体・・・・・・」
ランカがその幻影と話している時だった。遂に二人がそこに来た。
「ランカ!」
「来たぞ!」
「お兄ちゃん、それに」
ランカは二人を見た。そこには。
「アルト君!」
「ああ、来たぞ!」
「今ここにだ!」
二人で言う。言いながら周りに来るバジュラ達を倒している。
「今そこに行く!」
「待っていろ!」
「駄目!」
しかしだった。ここでランカは二人に言うのだった。
「戦ったら駄目!」
「何を言っている?」
「戦うな?」
「そう、駄目!」
また言うランカだった。
「戦ったら駄目!バジュラとは!」
「何を言っているんだ」
「そんなこと出来る筈ないだろうが」
二人は怪訝な顔でランカに返す。その間にも戦闘を続けている。
「とにかく今はだ」
「そこに行くからな」
戦いながらそのうえで向かうのだった。しかしだった。
もう一機来た。それは。
「!?あれは」
「ブレラのか」
「間に合ったな」
ブレラは冷静に来てだ。そのうえでランカのいるカプセルの様なものを左手に取った。そうしてそれから外に向かうのだった。
「これでいいな」
「ランカが助け出されたか」
「しかし何時の前に」
「こちらブレラ=スターン」
ブレラは二人に構わず通信を入れた。
「ランカ=リーの身柄は確保した。今から敵艦の中を出る」
「くっ、あの男」
「本当に何時の間になんだ」
オズマとアルトは歯噛みするばかりだった。今はだ。
「仕方ない。何はともあれランカは救出された」
「撤退しかないか」
「そうだ、行くぞ」
オズマは釈然としないがそれでもランカに告げた。
「いいな、それではだ」
「はい、わかりました」
こうしてだ。彼等も脱出する。こうしてその後で。
巨艦はマクロスクウォーターに照準を合わせられていた。
「二人も脱出したな」
「はい!」
「今です!」
「確かに脱出しました!」
三人娘がジェフリーに対して答える。
「では艦長」
「今からですね」
「あの巨艦を」
「そうだ、沈める」
実際にそうするというのだった。
「それではだ」
「了解!」
ボビーが応えてだ。そのうえで。
「マクロスアタック!」
「ファイアーーーーーッ!!」
その攻撃が放たれてだ。光が巨艦を貫いた。これで全ては決まった。
巨艦はあちこちから火を吹き出して爆発していく。その頃にはもう敵も殆ど残ってはいなかった。
惑星も無事だった。そしてランカも。彼等にとっては満足のいく結果だった。
だがアルトはだ。残ったバジュラ達を掃討し戦いが終わってもだ。晴れない顔であった。
「どうした?アルト」
「バジュラはまだ残っているけれどな」
「まだ繁殖している星はあるらしいし」
ここで仲間達が彼に話す。
「しかしそれでも」
「ランカさんのこと?」
「それ?」
「いや、それはもうどうでもいい」
こう返すアルトだった。
「ただな」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「バジュラと俺達だ」
彼が今考えているのはこのことだった。
「あの時ランカは俺達と戦うなと言ったんだ」
「おいおい、幾ら何でもそれは」
「無理でしょ」
「そうよね」
「バジュラって頭ないしね」
「だから」
「しかしランカは言った」
また深刻な顔で話すアルトだった。
「そうな」
「こういうことじゃないのか?」
そのアルトに言ってきたのはだ。テムジンだった。
「俺が前から聞いた言葉だ」
「ああ、それは?」
「宇宙は二つの種族が生きられる程広くはない」
こう話すのだった。
「こう聞いたことがあるんだがな」
「二つの種族が」
「それが正しいかどうかはわからないぜ」
テムジンはここで前置きもした。
「しかしな。実際にな」
「そうかも知れないっていうのか」
「ひょっとしたらな。まあランカちゃんは優しいからな」
テムジンもランカのそれは認めた。
「だからそう言ったんじゃないのか?認めたくないからな」
「宇宙に二つの種族は生きられないか」
「まあ俺達は同じ人間だ」
テムジンはゼントラーディもメルトランディもそれだと看破した。
「しかしそれでもだ。宇宙怪獣とかバジュラはな」
「それにプロトデビルン」
「そうした相手は」
「あの連中とは無理だな」
テムジンはこう仲間達にも話した。
「間違いなくな」
「そうか」
「俺はそう思う」
また言うテムジンだった。
「それはな」
「そういうものか」
「まああれだ。少なくともああした連中とは共存は無理だ」
また話すテムジンだった。
「それはわかっておくんだな」
「そうか」
「ああ、それでだ」
テムジンはここで話を変えてきた。
「ここはだ」
「ここはか」
「酒でも飲むか」
これを勧めるのだった。
「飲むか?今から」
「あ、ああ」
アルトもそれに頷く。
「それじゃあ今からな」
「飲んで楽しめばいいさ」
また言うのであった。
「じゃあ。戦いも終わったしな」
「そうですね、それじゃあ」
「これから」
「さて、何飲む?」
「これなんかどうかしら」
ここでテュッティがあるものを出してきた。それは。
「ウォッカ!?」
「それですか」
「ゲンナジーの推薦なのよ」
「・・・・・・うむ」
そのゲンナジーが重厚な顔で頷いていた。
「そうだ」
「ああ、ゲンちゃんロシア人だからね」
ミオがそのゲンナジーを見て納得する。
「だからウォッカなんだ」
「ウォッカは心の友だ」
ゲンナジーはこうも語る。
「これを飲めれば漢字だ」
「ええと、アルコール度は」
「九十七度」
「九十七度って」
「それって凄過ぎるんですけれど」
皆その度数にまずは唖然となる。
「本当ですか?」
「そんなお酒あるんですか?」
「ある」
ゲンナジーの返答は一言であった。
「ロシアにはある」
「随分いかれた酒だよなあ」
「そんなの飲む?」
「ロシア人って」
「飲まないと生きていられない」
ゲンナジーの今度の言葉はこれだった。
「ロシアは寒いからだ」
「ああ、そうでしたね」
「ロシアって寒かったですね」
「確かに」
皆言われてこのことに気付いた。
「だからなんですか」
「それだけ強いお酒をですか」
「飲むんですね」
「その通り」
ゲンナジーの言葉は簡潔である。
「これを飲めば漢だ」
「それ以前に火吐けるよな」
「吹いて火を点けたら」
「それで」
殆ど漫画であるがその通りだった。
「おっそろしいお酒もあるわね」
「全く」
「で、これ水割りですか?」
ミシェルがこう問うた。
「やっぱり」
「いや、カクテルだな」
アレルヤはそれではないかと考えた。
「さもなければとても」
「普通はそうだよな」
それはアポロも考えることだった。
「そうじゃないととてもな」
「飲めないよな」
「だよなあ」
「九十七度って」
しかしである。ゲンナジーはここでまた言うのであった。
「そのままだ」
「えっ、そのままって」
「ってことは」
「まさか」
「そうだ、ストレートだ」
そうするというのである。
「そのまま飲む」
「九十七度のお酒をですか」
「ストレートで飲むんですか」
「それがロシア」
「そうだ、ロシアだ」
また言うゲンナジーだった。
「飲むか」
「いえ、ここはカクテルで」
「ちょっと、抵抗がありますから」
「ですから」
皆それは流石に止めた。
そのうえでだ。それぞれそのウォッカを水や氷で割ったりカクテルにしてそのうえで飲みはじめる。そしてその味はというとだ。
「これならな」
「飲めるよな」
「確かに」
流石にストレートは無理であった。
「これなら飲める」
「大丈夫大丈夫」
「ストレートは無理だけれど」
「いや、飲める」
また話すゲンナジーだった。
「飲もうと思えば飲める」
「飲めます?」
「本当に?」
「ロシア人は飲める」
実に乱暴な主張にだ。皆は聞こえた。
「だからだ。大丈夫だ」
「いえ、大丈夫じゃないですから」
「遠慮します」
皆それは断るのであった。
「俺達ロシア人じゃないですから」
「私ロシア人だけれど」
ここで名乗り出たのはユングだった。
「わかってると思うけれど」
「俺もだけどな」
トカマクも出て来た。
「一応ウォッカ飲めるよ」
「ストレートでね」
「だからロシア人限定ですから、それって」
「ちょっと飲めませんよ」
「無理ですから」
「そうだったのか」
今複雑な顔をしたのはマイヨだった。
「ウォッカをストレートはロシアだけだったのか」
「そうだったみたいね」
リンダも困った顔になっている。
「世界ではなかったの」
「ロシアの飲み方を広めるか」
「ええ、絶対に」
「皆、いいか」
ゲンナジーが音頭を執る。
「それではだ」
「そうだな。ここはロシア人同士でだ」
「仲良くね」
マイヨとリンダが音頭を取る。そしてロシア人同士集まる。
「ウォッカをストレートで飲もう」
「是非ね」
「しかし。ロシア人って本当に」
ノリコはウォッカを美味しそうにストレートで飲むユングを見ながら述べた。
「お酒強いわね」
「だから寒いからよ」
カズミがそのノリコに話す。
「それでなのよ」
「やっぱりですか。お酒がないとやっていけないから」
「わかりました」
あらためて頷くノリコだった。
「ロシアのことは」
「じゃあノリコ」
ユングはにこやかに笑ってノリコに声をかけてきた。
「一杯どう?」
「あっ、私はちょっと」
苦笑いで応えるノリコだった。そしてこう言った。
「カクテルで」
「あら、大人しいわね」
「ちょっとね」
こう言ってであった。
「止めておくわ」
「そうなの、じゃあ私はこのままトカマクとね」
「一緒に飲むか」
トカマクは笑顔でユングに応える。
「ロシア人を集めてね」
「ロシア人にお酒はなくてはならないものよ」
ユングはこう主張する。
「だからこそね」
「これが飲めないなんてね」
トカマクもウォッカをストレートで美味そうに飲んでいる。
「悲しいね」
「そうよね、本当に」
「恐るべし、ロシア人」
「全く」
皆これに唖然となる。そんな戦いの後の一場面だった。
そしてだ。ブレラはだ。一人の紫の髪の男と話をしていた。
「上手くいったわね」
「いったか」
「ええ、いったわ」
何故かだ。男の口調は女のものだった。それで話すのである。
「あれでよしとするか」
「ガリア4はいいのか」
「ガリア4以外にも巣はあるわ」
こう言うだけだった。
「だから。いいわ」
「そうか」
「それでもゲッターの力は予想外だったけれどね」
「あれはな。確かにな」
「バジュラにとってあれは驚異になるわ」
「では今のうちに」
「何とか私達のものにしたいけれど」
男はここでこう述べた。
「それはどうかしら」
「好きにすればいい」
今はこう言うだけのブレラだった。
「制御できればな」
「してみせるわ」
「してみせるか」
「そうよ、必ずね」
言葉が不敵なものになっていた。
「そうするわ」
「ならそうするといい」
ブレラはその言葉に素っ気無く返した。
「俺は特に何も言わない」
「そうなの」
「俺はこのまま続けさせてもらう」
主張はこれだけだった。
「このままな」
「それじゃあこれかもなのね」
「ランカを護らせてもらう」
これがだ。今の彼がすることだというのであった。
「それでいいな」
「ええ、いいわ」
男もそれを許すのだった。
「それじゃあね」
「わかった。それではな」
「話はこれで終わりよ」
男は微笑みを見せてもきた。
「それじゃあね」
「帰るのか」
「待たせている娘がいるから」
「彼女を何時まで利用する」
ブレラは彼を見てだ。問いもしてきた。
「何時までだ。何時までそうする」
「利用できるまでよ」
唇の左端を歪めさせての言葉だった。
「それまでよ」
「それまでか」
「手駒は利用できるだけ利用する」
また言った。
「それが基本ではなくて?」
「好きになれないな」
ブレラはその言葉には眉を僅かに顰めさせて返した。
「その考えは」
「あら、そうなの」
「どうしてもな」
そうだというのだった。
「好きになれない」
「別に貴方に気に入ってもらう為にしているのじゃないから」
「だからいいのか」
「そうよ。それじゃあね」
「あの娘は御前に捨てられたら」
「その時は終わりよ」
男の言葉は素っ気無い。
「それでね。終わりよ」
「それでもいいのだな」
「何度も言うけれどね」
前置きする言葉はこれだった。
「いいわよ」
「よくわかった。それではな」
「ええ、それじゃあね」
「仲間達のところに戻る」
こう告げて彼から踵を返した。
「これでな」
「仲間、ね」
男はブレラの今の言葉に今度は唇の右端を歪めさせた。そのうえでの言葉だった。
「馴染んでるわね」
「悪いか」
「いいえ、ただ」
「ただ、か」
「バジュラとあの娘のことを忘れてなければいいわ」
今言うのはこれだけであった。
「それだとね」
「それでいいのか」
「ええ、今はね」
こう言うのであった。
「それだけでいいわ」
「そうか」
「そしてね」
男はまた話した。
「時が来ればね」
「わかった、それではな」
「そういうことでね。それじゃあ」
男はここまで話して姿を消した。後に残ったブレラも今は静かにしていた。戦いはこれで終わった。しかしまだ謎はくすぶり続けていた。
第三十四話 完
2010・6・7
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