スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
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第三十話 ファーストアタック
第三十話 ファーストアタック
その日はシェリルのコンサートだった。
「おっ、招待状来てるぜ」
「そうね」
百枚単位でロンド=ベルに来ていた。
「凄いな、是非にって」
「来てくれって言ってますよ」
ミシェルとルカが弾んだ声で言う。
「どうする?皆それで」
「行きますか?」
「いや、俺はいい」
最初に言ったのはオズマだった。
「そういうのは好きじゃない」
「そういえばそうですよね」
「少佐ってそうしたコンサートとかは」
「アイドルは趣味じゃない」
そうだというのである。
「だからだ。当直に入らせてもらう」
「わかりました。じゃあ」
「僕達は」
「俺もだな」
アルトもだというのである。
「当直をやらせてもらうな」
「そうか、御前もか」
「残るんですね」
「どうもな」
流石にシェリルとのことは言うことはできなかったのであった。
「だからな」
「よくわからないけれどな」
「残られるんでしたらそれで」
これで話が終わった。そうしてであった。
殆どのメンバーが出ることになった。当直は僅かであった。
「残ったのはおっさんと変わり者ばかりか?」
「そうみたいだな」
皆大型バスに乗り込みながらコンサート会場に向かっていた。
「残ったのっていったら」
「アムロさんとかちょっとヤングじゃない人と」
「機械な人達と」
ボルフォッグやテムジンといった面々である。
「それに他は」
「隔離されてる人達だけか」
「彼等は今絶対安静です」
アズラエルがここで言う。
「全く。薬を投与しなくてもあれですか」
「酒飲んで大暴れして」
「また営倉行きか」
「あれには呆れたし」
オルガ、クロト、シャニは酒癖も悪かった。
「いきなり車乗って二百キロで一晩かっとばすなんて」
「何考えてるんだか」
「本当よね」
そんな話をしながらコンサート会場に向かってだ。シェリルのステージを見る。
そこにはランカもいた。ロンド=ベルの言葉を聞いてすぐに声をかけてきた。
「あっ、来られてたんですね」
「おお、ランカちゃん」
「来てたんだ」
「最近有名になってきたみたいだね」
「いえ、まだまだですよ」
少し謙遜して言うランカだった。
「私なんか全然」
「そうなの?」
「結構売れてますよね」
「そうですよね」
こうランカに告げる彼等だった。
「CDもヒットチャートに出て来たし」
「スポットライトにも選ばれて」
「そうそう」
「それでもシェリルさんと比べれば」
そのシェリルはまだステージにいない。
「ですから」
「まあランカちゃんはランカちゃんで頑張ればいいし」
「そうよね」
そんな話をしてだった。皆ではじまるのを見ていた。そしてシェリルが出て来てだ。
「シェリルーーーーーーーーーッ!」
「皆ーーーーーーーーーーッ!!」
そのシェリルが叫ぶ青い軍服を模した衣装だった。
「文化してるーーーーーーーっ!?」
「おーーーーーーっ!」
「それじゃあ行くわよ!」
こう叫んでだった。早速歌いはじめる。
二曲三曲となってきた。しかしであった。
ロンド=ベルの面々の携帯が一斉に鳴った。それこそは。
「げっ、こんな時に」
「これ!?」
「これかよ」
それで、だった。一斉に席を立つ。そうしてだった。
慌しくバスに乗ってそのうえで各艦に戻りだった。
「敵ですか」
「今度は何処ですか?」
「ムゲ帝国だ」
答えたのはシナプスだった。彼は残っていたのである。
「奴等が来た」
「ああ、ムゲですか」
「予想していましたけれど」
「来たんですね」
「そうだ、来た」
まさにその彼等だというのであった。そうしてだ。
「数は三十万」
「三十万ですか」
「それだけですね」
「総員出撃してくれ」
シナプスは数を告げてすぐに命令を出してきた。
「いいな、すぐにだ」
「はい、それじゃあ」
「すぐに」
「しかしなあ」
ここでぼやいたのはフィジカだった。
「コンサートはまあ。後で動画サイトで観るか」
「そうだな。コンサートの動画はすぐに配信されるからな」
金竜が彼の言葉に応える。
「それを待てばいい」
「ええ、それで我慢します」
「というかフィジカ」
ドッカーがここで彼に問うてきた。
「御前家庭もあるだろ」
「まあそうだけれどさ」
「それでそれはまずいだろ」
「アーチストは別にいいじゃないか」
それはいいというのであった。
「それはさ」
「まあそうか?奥さんが文句言わないといいけれどな」
「そうか。それじゃあ」
「今は」
そんな話をしてであった。全員で出撃する。そのムゲ帝国軍の指揮官は。
「久し振りだな」
「またあんたかよ」
「ったくよ、コンサートを邪魔してくれてよ」
「全く、迷惑なんだから」
シャピロだった。誰もが彼の顔を見てうんざりとなっていた。
「本当にね」
「何で出て来たんだよ」
「一体何を言っている」
事情を知らないシャピロがここで彼等に問う。
「何をだ」
「ああ、あんたには関係ないから」
「ただ、今回特にむかついてるだけで」
「それだから」
「理由がわからんな」
シャピロだけがいぶかしんでいた。
「何を言っているのだ、さっきから」
「とりあえず戦うからな」
「それじゃあな」
「いくわよ」
ほぼ問答無用であった。そのうえで向かってだ。彼等から戦いをはじめた。
そのうえで攻撃を仕掛ける。敵を次々と倒していく。
「御前等のせいでな!」
「折角のコンサートが!」
「糞っ、忌々しい!」
こう言いながら敵を薙ぎ倒していくのだった。
「折角楽しんでいたのに!」
「それでどうしてなのよ!」
「出て来やがって!」
「!?シャピロ様」
「これは」
部下達もここで言った。
「敵の様子が妙です」
「いつもと違います」
「何があったのでしょうか」
「私にもわからん」
シャピロがわかる筈のないことだった。
「だが」
「だが?」
「何が」
「今のロンド=ベルは普段以上に士気が高い」
これはわかっているのだった。
「だからだ。用心してかかれ」
「はい、それでは」
「ここは慎重に」
「あの少女を手に入れる」
それは忘れていなかったのだった。
「絶対にだ。いいな」
「では」
「今から」
こうしてだった。彼等は今回は全軍で慎重に進む。ロンド=ベルとの戦いもあまり激しくはない。それを見て大河も言うのであった。
「こちらの怒りで慎重になっているな」
「そうですね」
スタリオンが彼の言葉に頷く。
「今は」
「ならばこちらも同じだ」
「慎重にかよ」
「そうだ、慎重に進める」
火麻に対しても答えた。
「いいな、ここはだ」
「どうもそういう作戦は得意じゃねえんだがな」
攻撃的な彼らしい言葉だった。
「やっぱりよ。派手にぶちかまさねえとな」
「やっぱりそうなんだね」
ルネが彼に対して言う。
「参謀らしいっていえばらしいね」
「俺は攻撃型の参謀なんだよ」
「攻撃的過ぎるだろ」
「なあ」
「最初参謀に思えなかったしな」
「そうよね」
皆火麻について話す。
「そういう人だからなあ」
「今耐えられるか?」
「無理かもね」
「いや、無理だろ」
「じきに切れるさ」
こう話されるのだった。
「いつものパターンでな」
「それに乗る面子も多いしなあ」
「いちいち挙げられないまでに」
「くそっ、こんな大人しい戦いできるかよ!」
「ああ、全くだ!」
早速甲児とシンが切れていた。
「大河さん!ここは積極攻勢だよな!」
「いつも通りな」
「絶対切れると思ったけれどやっぱりね」
アスカが呆れた声で二人に言った。
「本当にね」
「いや、そう言うアスカも」
「何よ」
「今うずうずしてるんじゃないの?」
シンジの言葉である。
「その気配に満ち満ちてるよ」
「うう、何でわかったのよ」
「だってねえ。同じだから」
「私達とね」
アムとレッシィがそのアスカに言ってきた。
「今かなりイライラしてるから」
「全力で戦いたいのだがな」
「まあいつもの展開だとな」
ここで言ったのはダバである。
「別の敵が出るんだけれどな」
「というと今回は」
「どの勢力が出るんだろうね」
「私の予想だが」
ギャブレーの言葉である。
「プロトデビルンかバジュラだ」
「バジュラ?」
「それが出て来るっていうのか」
「その二つのいずれかだな」
こう見ているのだった。
「おそらくな」
「じゃあどっちが出てきてもいいようにしよう」
エリスの言葉である。
「心構えをしておくとそれで違うわ」
「そうだな」
ダバがエリスのその言葉に頷いた。
「それはしておこう」
「ダバっていこういう時真面目よね」
「そうよね」
「本当にな」
皆ダバのその言葉を聞いて述べた。
「じゃあ何が出てきてもいいように」
「身構えておくか」
「その時はやるからな!」
エイジがここで叫ぶ。
「敵が二つなら派手にやれるしな」
「何でこの手の声だとこうなるのかしらね」
ミヅキは首を捻りながら述べた。
「全く」
「声は重要だぞ」
クランがそのミヅキに言う。
「それで私も色々決まっていたりするからな」
「そうそう、わかります」
ミリアリアがクランのその言葉に頷く。
「クランさんの言ってること。本当に」
「そりゃそうだろうね」
サイがクランのその言葉に頷く。
「だってクラン大尉とミリアリアって」
「そっくりだからなあ」
トールもそれを言う。
「何もかもな」
「だよなあ。まあ似ている人が多いのっていいけれど」
「その通りだ。だが俺はだ」
宙の言葉である。
「正反対だからな、性格も何もかもな」
「おいおい、それは俺のことか?」
アムロが笑いながら言ってきた。
「俺のことだよな」
「ああ、悪いけれどな」
まさにその通りだという宙だった。
「アムロ中佐とはな。同じものは感じるけれどな」
「確かにな。さて」
ここでまた言うアムロだった。顔が真面目なものになる。
「来たな。七時の方角だ」
「七時!?」
「そこに」
「そうだ、そこからだ」
こう言うのだった。
「そこからだ。このプレッシャーは」
「はい、バジュラですね」
トビアにもわかったのだった。
「これは」
「バジュラ!?」
「そっちか」
「ギャブレー殿」
バーンがそのギャブレーに声をかけた。
「貴殿の予想通りだったな」
「何となく思っただけだったがな」
実は結構勘だったのである。
「しかし。それが来たならばだ」
「戦うのだな」
「そうさせてもらう」
返答は一言だった。
「このままな」
「そうだな。それではだ」
「行くとしよう」
「うむ」
こうしてそのバジュラの軍勢を見る。その攻撃はだ。
ロンド=ベルだけでなくムゲ帝国軍にもだ。両方向けてきた。
その攻撃を受けてだ。シャピロは言うのだった。
「ここはだ」
「はい、ここは」
「どうされますか」
「バジュラだったな」
その敵のことを問うのだった。
「今の敵は」
「はい、確か」
「そういう名前でした」
「そのバジュラにもだ」
名前を確認したうえでの言葉だった。
「兵を向けるのだ」
「ロンド=ベルだけでなくですか」
「彼等にも」
「そうだ、そうする」
こう言うのだった。
「いいな、それではだ」
「はい、では」
「今は」
「そうしろ。では戦力を二つに分ける」
こうして彼等は兵を左右に分けた。そのうえで戦う。そしてであった。
戦いは激しさを増してきていた。それこそがだった。
「よし、来た!」
「これこそがな!」
「燃えてきたぜ!」
ロンド=ベルの熱い面々がバーストしてきた。
「いっちょ派手にいくか!」
「音楽もかかってるしな」
「ああ、シェリルちゃんのな」
「シェリルのか」
アルトがその言葉に反応を見せた。
「あいつのか」
「ああ、だからやるぜ!」
「もう派手にな!」
「叩き潰してやるか!」
こうしてだった。両軍に攻撃をはじめた。
火麻もだ。楽しそうに言う。
「潰せ!やれ!」
最早指揮の言葉ではなかった。
「両方共だ、いいな!」
「両方共だね」
「まずはバジュラだな」
敵の優先順位はつけていた。しっかりとだ」
「いいな、奴等からだ」
「ああ、わかったよ」
ルネは微笑んで彼の言葉に応えた。そのうえでこう言うのだった。
「やっぱりね」
「何だってんだ?」
「あんたはそうじゃないとね」
こう言うのである。
「派手にやらないとね」
「俺らしくねえっていうのか」
「ああ、そういうことだよ」
彼が言いたいのはそういうことだった。
「あんたはね」
「よし、それならだ!」
ルネの言葉にさらに波に乗るのだった。
「もっとやってやるか!」
「ああ、行くか!」
凱も言う。
「まずはバジュラだ!」
ロンド=ベルはバジュラを優先的に攻撃していた。その中でだ。アルトも攻撃に加わっていた。そのコクピットの中には。
「何だ、御前もかよ」
「先輩もでしか」
「ああ、そうさ」
憮然とした顔でミシェルとルカにも答える。
「悪いか?」
「いや、別にな」
「たまたまとは思いますけれどね」
「だがな」
「そうですよね」
そして二人でも話をするのだった。
「素直じゃないものだ」
「先輩ってそういうところありますからね」
「何が言いたい」
アルトの顔はさらに憮然としたものになった。
「全く。何なんだ」
「まあ気にするな」
「そうですよ」
しかし二人はこう冷静にアルトに返してだった。
「それよりもな」
「何か出て来ましたよ、バジュラから」
見るとだ。かなり巨大な戦艦がバジュラの軍にいた。そうしてだ。
それがロンド=ベルの方に向かって来てだった。
「ふむ」
「来ましたよ、艦長」
ボビーが艦長のジェフリーに対して笑顔で言ってきていた。
「大きいのが」
「そうだな。それでは」
「あれをします?」
オカマ言葉で問うのだった。
「それじゃあ」
「そうだな。面白いな」
ジェフリーも彼の言葉に不敵に返す。
「それではな」
「艦長、しかしそれは」
艦橋に来ていたキャスリンが抗議めいて言ってきた。
「あまりにも」
「あまりにも。何だ」
「はじめてではないのですか?」
一体何をするかだ。既にそれを察していたのである。
「ですからそれは」
「危険だというのか」
「はい、そうです」
慎重派で真面目な彼女らしい言葉だった。
「あまりにもです」
「危険か」
「まあ言われてみればそうよねえ」
ジェフリーだけでなくボビーもそのことは認めた。
「確かに今までしたことはない」
「これがはじめてなのよ」
「ですから。今は」
そのことを根拠に言うキャスリンだった。
「するべきではありません」
「貴官の言いたいことはわかった」
ここまでは暗視を聞いて返した言葉だった。
「それはだ」
「では早速」
「だからこそだ」
しかしだ。ここで彼は言うのだった。
「やるべきだ」
「えっ!?」
「敵を驚かせその意表を衝く」
これがジェフリーの考えだった。
「そのうえで我々の攻撃の凄さを見せ付けるのだ」
「そんな、若し失敗すれば」
キャスリンはジェフリーの言葉を聞いてだ。思わず言い返した。
「只では済みません」
「失敗すればか」
「はい、そうです」
やはりキャスリンはここでも慎重派であった。
「ですからそれは」
「あらあら、そんなことをしてもよ」
しかしここでボビーは言うのだった。
「つまらないわよ」
「つまらないかどうかで戦争はしません」
まだ真面目であった。
「確実に勝利を収めないと」
「そうだ、確実な勝利だ」
ジェフリーもそのことには頷いた。
「その為にだ」
「今ここで、ですか」
「いいか、変形する!」
こう命令を出した。
「いいな、そしてだ!」
「ファーストアタック行くわよ!」
ボビーの声が野太いものになった。
「いいわね、それで!」
「はい!」
「待ってました!」
「やりましょう!」
モニカにミーナ、それにラムが笑顔で応えてだった。
「戦闘形態に変形します!」
「そしてランチャーで一気に」
「あの戦艦を!」
「例え小さくともだ」
ジェフリーはマクロスクォーターを指して言った。
「この艦が何故マクロスと呼ばれているか見せてやろう」
「その通りですね」
「何かロンド=ベルにいると」
「こういうのが普通になってきますから」
三人娘も完全に乗り気だった。そうしてだ。
「各員安全区域に入りました!」
「変形用意完了!」
「攻撃用意完了です!」
「よし、それではだ」
巨大なキャノンが構えられる。ジェフリーはその中でまた言った。
「メガマクロスキャノン」
「はい、メガマクロスキャノン」
「発射ですね」
「そうだ、撃て!」
「撃て!」
ボビーにより攻撃が復唱されてだ。そうしてだった。
巨大な一条の光が放たれてだ。バジュラの大群を一掃した。そのうえで敵の巨大戦艦も消し去った。まさに一撃でそうしてしまったのである。
それを見てだ。味方のロンド=ベルの面々もまずは唖然となった。
「おいおい、こんな切り札があったのかよ」
「これはまたな」
「凄いもんだな」
「全くね」
口々に言う。しかしその口元はだ。
笑っていた。そうして次に取るべき行動もわかっていた。
「よし、僅かな部隊をバジュラの掃討に置いてだ!
「主力はムゲ帝国軍に!」
「一気に決めろ!」
こう言ってである。すぐにムゲ帝国軍に総攻撃を浴びせる。
ムゲ帝国軍もマクロスクォーターの攻撃に唖然となっていた。それが隙になった。
一気に攻められてだ。それで勝敗が決してしまった。
「シャピロ様、軍の数は半分を切りました」
「このままでは」
「くっ、またしてもか」
シャピロもその状況に歯噛みするしかなかった。
「まさかまだあの様な切り札を持っているとは」
「軍は完全に浮き足立っています」
「最早満足に戦える状況ではありません」
このこともシャピロに告げられた。
「ここは一体」
「どうされますか?」
「止むを得ん」
シャピロは苦い顔で答えた。
「それではだ」
「はい、それでは」
「ここは」
「撤退だ」
この決断を下すしかなかった。
「わかったな。このまま撤退する」
「わかりました」
「ではここは」
「全軍速やかに戦場を離脱する」
シャピロはこうも告げた。
「わかったな、それではだ」
「了解です」
「殿軍は私が」
部下の一人が申し出てだ。そのうえで戦場を離脱していく。ここでの戦いもこれで終わった。ロンド=ベルがその攻撃で流れを掴んだうえでの勝利だった。
そしてだ。敵がいなくなった時だ。それぞれのコクピットにはまだ。
「ああ、まだやってくれてるな」
「そうね」
「シェリル=ノームが」
「皆、いい!?」
そのシェリルの声もしてきた。
「コンサートはまだ続くわよ」
「えっ、まだやるのか?」
「まだやってるの」
「私達の為に戦ってくれているロンド=ベルの人達」
彼女はここで彼等のことを言うのだった。
「その人達が戻ってきてくれるまでね。少し待っていてね」
「っておい!」
「こんなこと言ってくれてるじゃない」
「これマジ!?」
誰もがその言葉に喜びの声をあげる。
「あのシェリル=ノーズがだよ」
「私達を待ってくれてるって」
「嘘みたいじゃない」
そうとなればだ。答えはもう決まっていた。
「よし、それなら」
「すぐに戻りましょう!」
「それでコンサートに戻って」
「シェリルの音楽を!」
「総員に告ぐ」
ここでまたジェフリーの命令が来た。
「どうしても残りたい者以外はだ」
「はい、それ以外は」
「どうしますか?」
「コンサート会場に戻れ!」
これが命令であった。
「いいな、すぐにだ!」
「了解!」
「じゃあすぐに!」
こうしてであった。全員すぐにシェリルのコンサートに戻った。それが今の彼等だった。
そしてその中にはだ。アルトもいた。彼はミシェルとルカにその両手を掴まれてだ。そのうえでコンサート会場まで連行されていたのである。
「俺もかよ」
「ああ、御前は絶対だよ」
「来てくれないと話になりませんから」
笑顔でアルトに言う二人だった。
「さあ、それじゃあな」
「行きましょう」
こうしてであった。本当に強制連行される彼だった。
そのコンサート会場にロンド=ベルの面々が来るとだ。皆拍手で迎えてくれた。
「よし、もう一方の主役が来てくれたな!」
「私達の為に戦ってくれて有り難う!」
拍手と共の言葉だった。
「さあ、それじゃあシェリル」
「ええ」
休憩してジュースを飲んでいたシェリルがグレイスの言葉に応える。
「いよいよね」
「決めるのね」
「勿論よ」
ステージ衣装を格好よく着ての言葉だった。
「今からね。最後の戦いよ」
「このコンサートでなのね」
「そう、次のコンサートもまた戦いだけれど」
強い笑顔での言葉だった。
「今のコンサートはこれでね」
「終わらせるのね」
「はじめるのと終わらせるのが一番エネルギーを使うのよ」
こうも言うシェリルだった。
「だから余計にね」
「そうね。それじゃあね」
「行って来るわ」
戦う顔での言葉だった。
「それじゃあね」
「ええ、それじゃあね」
今は笑顔で見送るグレイスだった。少なくとも今はそうだった。
そしてステージに戻った。シェリルはだ。皆に対して言った。
「皆、待っていてくれて有り難う」
これは自分自身への言葉ではなかった。
「どうもね。それじゃあね」
その観客席を見る。するとだった。
ランカがいた。その彼女と目と目が合った。そうしてであった。
「皆で歌って。これからはね」
「はい・・・・・・」
ランカは今の言葉が誰にかけられたものなのかすぐにわかった。そうしてであった。
彼女も口を開いた。そのうえで歌うのであった。
その歌声を聴きながらだ。アルトは呟いた。
「これが歌か」
「ああ、そうさ」
「これがシェリルさんの」
「心の歌なんだな」
ミシェルとルカに返した言葉ではなかった。
「そうなんだな」
「どうだ?感じたか?」
「先輩も。やっぱり」
「ああ、感じた」
こう返しはした。
「はっきりとな」
「そうか、じゃあな」
「最後まで聴きましょう」
「ああ、聴く」
真面目な顔でこくりと頷いてみせた。
「ここまで来たらな」
「ああ、覚悟決めなよ」
「それじゃあね」
「うっ・・・・・・」
三人の横ではキャスリンが。ついつい口を手で押さえていた。
ボビーはその彼女を見てだ。からかって言ってきた。
「あらあ、おめでだ?」
「違います」
すぐにむっとした顔で返すキャスリンだった。
「マクロスの動きが激しくて」
「酔ったのね」
「はい」
そうだというのだった。
「少し」
「あらあら、あの程度で酔うなんてね」
「駄目だともいうのですか?」
「まだまだ鍛える必要があるわねえ」
こう言うのであった。
「これからね」
「鍛えるとは」
「これからいつも艦橋よ」
そしてこう言ってきたのだった。
「それでどうかしら」
「えっ、あの艦橋にですか」
「そうよ。それでどうかしら」
「それは・・・・・・」
「勿論無理にとはいわないわよ」
それはしないというのだった。
「貴女の自由よ。ただ」
「ただ?」
「それじゃあ貴女は満足しないのではなくて?」
そうではないかというのであった。
「だって。貴女もね」
「私も?」
「そっかは言わないわよ。ただ」
「ただ?」
「彼はまだ吹っ切れていないみたいよ」
思わせぶりな笑みと共の言葉だった。
「どうやらな」
「言っている意味がわかりません」
わざと強気な顔になっての言葉だった。
「一体何を」
「何ももそうももないわよ」
ボビーの顔が悪戯っぽい笑みになっていた。
「わかるんだから」
「何のことか」
「まあまあ。少なくともね」
顔は笑っていた。しかし目の光が輝いてだった。
「今の彼よりはずっといいわよ」
「今の」
「彼は止めておきなさい」
よく見ればだった。今のマルコの目は笑っていなかった。
「わかったわね」
「止めておくとは」
「そうよ。あれは悪い男よ」
そうだというのである。
「だからね。止めておきなさい」
「それはどうしても」
「そうよ、どうしてもね」
まさにそうだというのだった。
「わかったわね」
「彼は」
「曲者よ」
ボビーはまた言った。
「それもかなりのね」
「切れ者だとは思いますが」
「切れ者じゃなくて曲者よ」
ボビーはキャスリンのその言葉を訂正させた。半ば無理にだ。
「男を見抜く目も育てることね」
「目を」
「あたしから言うことはそれだけよ。それじゃあ」
「それじゃあ?」
「歌を聴きましょう」
前を見ての言葉であった。
「いいわね、ゆっくりとね」
「わかりました」
「あらあら、やるわね」
ボビーの顔はにこやかなものになっていた。
「デュエットだなんて」
「デュエット!?」
「ほら、見て」
うっとりとした顔でアルトに話す。
「今のシェリル=ノームをね」
「シェリルを」
「それとランカちゃんもね」
彼女もだというのである。
「ほら、よく見なさい」
「よく」
「そう、よくよ」
また言ってみせる。するとだった。
シェリルとランカは共に歌っていた。視線を絡み合わせて。
アルトもそれを見てだ。少し思うのだった。
「あれは」
「わかったわね。今の歌が」
「あ、ああ」
戸惑った顔であったがそれでも頷きはした。
「言葉じゃ言い表せないけれどな」
「感じるだけで充分よ」
それだけでだというボビーだった。
「それだけでね」
「感じるだけでか」
「そう、本当に大切なものに言葉はいらないわよ」
「何かマルコさんの言葉ってな」
「時々哲学的になりますよね」
「恋愛は哲学よ」
ボビーはミシェルとルカに応えた。
「だからよ。あたしはいつも哲学の中にいるのよ」
「それを考えたらボビーさんは哲学者なんですね」
「そうなりますね」
「そうよ。あたしは愛の哲学者」
自分でもこう言う。
「わかっておいてね」
「はい、それは」
「わかりました」
そんな話をしてだった。そのうえでだ。
「じゃあ俺達も今は」
「音楽を聴かせてもらいますね」
「アルト、いいな」
「聴きましょう」
「わかった」
アルトは再度二人の言葉に頷いた。しかし今度は憮然とした顔ではなかった。
真剣な顔で頷いて。そうしてだった。
「それじゃあな。真面目にな」
「ああ、聴こうぜ」
「静かに」
「心か」
アルトはこれまでの言葉を心の中で反芻しながら述べた。
「それがか」
「恋愛は哲学よ。それに」
ボビーはまた話す。
「音楽も哲学なのよ。覚えておきなさい」
「今はよくわからない」
「後でわかるわよ。だからね」
「覚えておくことか」
「そういうことよ。いいわね」
そんな話をしたうえでだ。シェリルとランカの歌を聴くアルトだった。今はそうしていたのだった。
第三十話 完
2010・5・23
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