スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
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第二十話 シャピロの本性
第二十話 シャピロの本性
アラドはフロンティアの街を歩いていた。ランカの音楽が聴こえてくる。
「あれ、本格デビューしたんだ」
「そうみたいね」
一緒にいるゼオラが応える。
「実は私も誘われたことがあるけれど」
「ああ、ゼオラもなんだ」
「フェアリさんとシルヴィアちゃんと一緒にね」
「三人一緒に?」
「そう、三人一緒にね」
こうアラドに話すのだった。
「スカウトされたことがあるわ」
「フロンティアって芸能とか盛んなんだな」
「ギャラクシーもそうみたいだけれどね」
「あっちもか」
「そうよ。今は結構距離が離れてるみたいだけれど」
アラドに話していく。その街中で。
「それでもお互いに交流があったりしてね。盛んみたいよ」
「そうなんだ」
「あんただって音楽は好きよね」
「まあな」
ゼオラの言葉に笑顔で返す。
「けれど俺はやっぱりな」
「食べるのが一番いいの?」
「やっぱり食うのが一番だよ」
笑顔をさらに明るいものにさせての言葉だった。
「人間腹一杯食わないと死ぬからさ」
「それでいつも御飯は丼に五杯なのね」
「ああ、そうさ」
その通りだと答えもする。
「もう食わないと死ぬからさ」
「それだけ食べないとなのね」
「人間食わないと死ぬぜ」
これは正論であった。
「それにゼオラだってかなり食ってるじゃねえかよ」
「否定はしないわ」
こうは言っても少しバツの悪そうな顔であった。
「それでもあんたよりは少ないわよ」
「俺そんなに食ってるかな」
「甲児君位ね」
そこまでだという。
「まあうちの部隊食べる人多いけれど」
「そうだよなあ。全体で普通の部隊の四倍は食ってるよな」
「まずそれだけは食べてるわね」
ゼオラも実際にそれだけだと予測していた。
「もうかなり食べてるから」
「だよなあ。ただな」
「ただ?どうしたの?」
「ラクスさんやミナキさんの料理はな」
ここで出したのは二人だった。
「あれは食えないけれどな」
「アズラエルさん食べてるわよ」
「あの人はまた特別だよ」
こうしたことでも常人離れしているアズラエルだった。
「またな」
「それもそうね。けれど」
「けれど?どうしたんだよ」
「あんたやっぱりあの話本当なの?」
アラドに顔を向けて問うてきたのである。
「ほら、フロンティアの街でイルイちゃん見たって話」
「ああ、あれか」
「そう、あれよ」
まさにそれだというのである。
「あの話見間違いとかじゃないわよね」
「俺が嘘言うか!?」
アラドはゼオラの問いにまずはこう返した。
「言わないだろ。違うか?」
「言われてみればそうね」
顎に左の人差し指を当てて眉をしかめさせたうえでの言葉だった。
「そういうことはね」
「だろ?そういうことはしないさ」
アラド自身もこのことを強調する。
「分っててもさ」
「そうよね。じゃあやっぱりここにいるのかしら」
「俺はそう思うぜ」
また言うアラドだった。
「イルイは絶対にここにいる」
「ううん、有り得ないけれど」
「ワープしたとかな」
「ワープね」
「それもあるんじゃねえか?」
「言われてみれば」
アラドの言葉にあらためて考える顔になった。
「その可能性も」
「だよな。それでだけれどな」
「ええ、それで」
「どうする?これから」
アラドはここで話を変えてきた。
「これからな」
「これからっていうと?」
「何処行く?」
具体的には行く先の話だった。
「これから。何処に行く?」
「そうね。何処に行こうかしら」
ここで腕を組んで言うゼオラだった。
「場所は色々あるけれど」
「路面電車乗るか?」
アラドはこう提案してきた。
「そっから中華街に行くか?」
「悪くないけれど」
「じゃあそこな」
「けれど。あそこ前にも行ったし」
だがゼオラはここでこうも言った。
「あまりそうした場所にばかり行くのもね」
「あれか」
「ええ、飽きるじゃない」
こう言うのだった。
「他の場所行かない?何処かね」
「じゃあゼントラーディの人達のところ行くか?」
アラドはこう提案した。
「それだったらな」
「そうね。だったらね」
「行くか、そこに」
「ええ、そこにね」
そんな話をしてそのゼントラーディの街に行った。するとだった。
「あれ、ヴィレッタさん」
「それにラーダさん達もですか」
「ああ、ここに来ようという話になってな」
「それでなんです」
そのヴィレッタとラーダが二人に話す。そしてだった。
「何だ、御前等も来ていたのか」
「奇遇ですね」
カイとラッセルも来たのだった。
「ゼントラーディの地区はかなり面白いからな」
「何か自分が小人になったみたいで」
「そうそう、ガリバーみたいでいいですよね」
アラドは三人に応えて述べる。
「ここって。それで面白くて」
「では食べに行くか」
ヴィレッタが言ってきた。
「ラーメンでもな」
「ラーメンですか」
「それをなんですね」
「そうだ、ここのラーメンは面白い」
ヴィレッタはアラドとラッセルに対して述べた。
「量がかなりのものだ。果たしてアラドでも食べきれるかどうかわからない」
「ああ、ゼントラーディの人達用だからですね」
それを聞いてまた言ったアラドだった。
「それでなんですか」
「そうだ。それでどうする?」
ヴィレッタは他の面々に対して問うた。
「ラーメン代はそのままだ。それで腹一杯だ」
「よし、それなら」
ラッセルが最初に言った。
「食べに行きますか、それを」
「よし、それなら俺も」
「私も」
アラドとゼオラも乗った。
「丁度腹ペコだったんですよ」
「丁度いいですよね」
「そうですね。私もラーメンを食べたいと思っていたところですし」
「俺もだ」
ラーダとカイも加わってきた。
「それでは是非そこに」
「行くか」
「よし、話は決まりだ」
ヴィレッタは二人の言葉を受けて述べた。
「その店に行くとしよう」
「はい、それなら」
「今から」
こう話してだった。六人でそのゼントラーディのラーメン屋に入った。そこで出て来たラーメンはさながらプールであった。
全員そのラーメンの上にボートで乗ってだ。ラーメンを食べはじめた。
「麺の細さとかチャーシューやネギやもやしが人間用の大きさなのは」
「これはどういうことかな」
「かなりわからないですけれど」
「気にしないことだ」
ヴィレッタがアラド達に対して言う。
「では食べていくぞ」
「ええ、しかし本当に凄い量ですね」
「これだけあったら食べられるかな」
「どうかな」
困った言葉だった。
「これだけ食べられたらいいけれど」
「うわ、まだあるし」
「何十人分はありそう」
「一人辺り十人前は充分にありますね」
ラーダもラーメンの中に箸を入れそのうえで食べながら述べる。
「食べがいがあります」
「しかも量だけじゃないですよ」
当然アラドも食べている。
「味だってかなり」
「そうね。スープも美味しいし」
ゼオラはレンゲでスープを飲んでいた。トリガラの比較的あっさりとしたスープだ。
「それに卵もあるし海苔もあるし。このメンマだって」
「全てのバランスがいい」
カイも言う。
「見事だな」
「幾らでも食べられますね」
またラッセルが言った。
「これは食べられるかも」
「油断は禁物だ」
だがここでヴィレッタは言った。
「最後まで気を抜かずに食べるぞ」
「はい、それじゃあ」
「最後まで」
こう話して食べていってだ。皆遂に食べきった。麺と具は一本もなくなり勝利を収めたのである。
だが食べ終えてだ。アラドが漫画の如く膨れたその腹で横たわりながら言うのだった。
「うう、もう満腹」
「あんた一番食べたからね」
「ここまでラーメン食ったのはじめてだからな」
こうまで言うのだった。
「いや、本当にさ」
「そうだったの」
「二十玉は食ったぜ」
そこまで食べたというのだ。
「いや、もっとかな」
「多分」
そこまでだとゼオラも言う。
「食べたわね」
「だろ?もう満腹」
「私も。確かに」
「これだけ食べるのはもうそれだけで」
「冒険だな」
ラッセルもカイも言う。
「本当に凄い量でしたね」
「しかし全て食べた」
「食べられると思っていた」
ヴィレッタは最初からそう見ていたのだった。
「六人いればな」
「しかし、それでもなあ」
「暴力的な量だったわよね」
アラドですらこう言っていた。ゼオラもだ。
「いや、冗談抜きで満腹だよ」
「本当に・・・・・・あれっ?」
ここでゼオラはあることに気付いた。
「あれは」
「どうしたんだよ」
「変わった人がいるわ」
こう言うのである。
「ほら、あそこに」
「んっ?フロンティアじゃない服だな」
「ええ、何かしらあれ」
「あれは」
ヴィレッタもそのゼオラが言う者を見る。見れば一人は淡いピンクのアラビアのそれを思わせる服でありもう一人はかなり堅苦しい服と帽子である。ピンクの服の少女は幼い少女でありもう一人はきりっとした顔をしている。その二人であった。
「まさかとは思うが」
「あれっ、まさかって」
「お知り合いですか?」
「いや、それは違う」
アラドとゼオラの言葉は今は否定した。
「だが。どうもな」
「何か知ってる人じゃないっていうと」
「一体」
「バルマーの服装に似ているな」
こう言うのである。
「しかもかなりの大貴族のものだ」
「大貴族っていうと」
「つまりは」
「そうだ、十二支族だ」
この存在の名前も出て来た。
「カイツ家の服か、あれは」
「カイツ家?」
「十二支族の一つなんですね、それは」
「そうだ。あの少女の服はだ」
きりっとした顔立ちの少女の服を見ての言葉だった。
「そうした感じだが。侍従のそれか」
「何かバルマー帝国って服でそういうのがわかるんですね」
「そうだったんですか」
「服でそのまま階級や仕事を表わす」
こうも話すのだった。
「そうしているのだ」
「そういえばヴィレッタさんは軍服でしたね」
「だったら」
「そうだ、私もまた同じだ」
そうだというのだ。
「中級の軍人だった。高級軍人はジュデッカ=ゴッツォ家やゴッツォ家の者がなる。ハザル=ゴッツォやあのジュデッカ=ゴッツォの面々がそうだったな」
「ああ、あいつですか」
「ハザル」
皆ハザルの名前にはすぐに顔を顰めさせた。
「そういえばあいつは宰相の息子でしたね」
「バルマーの」
「そうだ」
まさしくそうだというのである。
「あの者がいい例だ。バルマー帝国は霊帝と十二支族により全てが治められているのだ」
「典型的な封建主義だな」
カイが言う。
「まさにそうだな」
「そうだ、封建主義にして専制主義だ」
ヴィレッタはそれもあるのだという。
「霊帝のな」
「それを考えると凄い国家だよな」
「今時専制主義、しかも封建体制って」
アラドとゼオラもそれを言う。
「そんな国になると」
「まだ宇宙にあったっていうか」
「そうよね。前から思っていたけれど滅多にない国家よね」
クスハもこう考えていたのだった。
「今時ね」
「そしてそれが弱まってもきている」
ヴィレッタはこのことも話した。
「統治が弱まり宇宙怪獣やゼントラーディ、メルトランディとの戦いも続いている」
「それに俺達とも」
「そうなんですね」
「そうだ。だからこそキャンベル、ボアザンにも背かれた」
その結果だというのだ。
「既に一個方面軍が崩壊しているしな」
「僕達が倒した銀河辺境方面軍」
ラッセルはすぐに述べた。
「あれを倒したから」
「流石の帝国も一個方面軍を失くしたのは痛い」
ヴィレッタは冷静に述べた。
「戦力の五分の一だ」
「それだけの戦力の穴埋めには」
「相当な苦労が必要ですね」
「そういうことですか」
「その通りだ」
ヴィレッタはラッセルだけでなくアラドとゼオラにも答えた。
「彼等は今その衰えた力を取り戻すのに必死だ」
「そういうことですか」
「バルマーも大変なんですね」
「そうだ。彼等のこともわかっておくことだ」
そんな話をしたのだった。バルマー帝国も苦しい状況だということをわかった彼等だった。そしてそんな話をした次の日のことだった。
「来ましたか」
「またしても」
「ムゲ帝国軍です」
エキセドルが全員に告げていた。
「その数二十万です」
「二十万、かなりですね」
「相変わらずの数ですね」
「それが第一陣です」
しかもそれだけではないというのだ。
「続いて第二陣で二十万来ています」
「合わせて四十万」
「そういうことですか」
「そして第二陣にです」
エキセドルの言葉は続く。
「彼がいます」
「シャピロか」
アランがすぐに述べた。
「あの男だな」
「はい、そうです」
まさにそうだと答えたエキセドルだった。
「あの者の乗艦が来ています」
「それではだ」
アランはそこまで聞いてだ。冷静に言ったのであった。
「まずは第一陣を防ぎだ」
「はい、そうですよね」
「そしてそのうえで」
「第二陣です」
エキセドルの言葉だ。
「それで宜しいですね」
「ではまずは敵を迎え撃ち」
「それから」
「そうです。その第二陣こそが問題です」
エキセドルの言葉が真剣なものになった。さらにだ。
「彼をどうするかです」
「そんなことはもう決まってるぜ」
忍が強い声で述べた。
「あの野郎、絶対に今度こそな」
「そうだね、潰してやるわよ」
沙羅も闘争心を剥き出しにしている。
「今度こそね」
「そうだね。まずは第一陣をやっつけて」
「それからだな」
雅人と亮も話す。
「それからシャピロだね」
「そうなるな」
「それではです」
エキセドルの言葉が続く。
「まずは防衛ラインを敷きそのうえで迎撃しましょう」
「全軍まずはフロンティア及びシティ7を中心に陣を組む」
葉月博士も言う。
「そうする。いいな」
「了解です、それでは」
「今から」
こうしてだった。全員でそのフロンティアとシティ7を囲んで陣を組んだ。そしてその時だった。第一陣がここで姿を現したのであった。
「やっぱり来たな」
「それもぴったり二十万」
「しっかりと来たわね」
皆そのムゲ帝国軍を見ながら言う。そのうえでだ。
敵が来てそれを迎撃する。戦いがはじまった。
ロンド=ベルはその敵を迎え撃つ。すぐに攻撃を浴びせる。
「大外れ~~~」
「狙いが甘いぜ」
ゴーショーグンは敵機の攻撃をあっさりとかわした。レミーとキリーが言う。
「じゃあ真吾」
「今度はこっちの番だな」
「そうだ、それでは今度は」
空間からバズーカを出した。そうしてだ。
「ゴーバズーカ!」
そのバズーカで敵をまとめて吹き飛ばす。かなりの威力だった。
「よしよし、吹き飛ばしたわね」
「まだまだ出て来るけれどな」
「そうだな。しかし幸先よく吹き飛ばしたな」
真吾がレミーとキリーに対して答える。
「四機まとめてな」
「何か最近数の多い相手ばかりだけれど」
「慣れてきたしな」
「ガルラ帝国の時はもっと凄かったな」
ガルラ帝国の戦いも思い出していた。
「百万とかそういう数だったからな」
「そうそう、その時に比べればね」
「今の戦いなんて楽なものじゃないか?」
「そうだな。あの時よりはな」
それを言うのだった。
「宇宙怪獣みたいだったよな」
「どうせ後で宇宙怪獣も出るからね」
「今はウォーミングアップみたいなものだな」
「数、こんなのじゃないわよ」
「億単位かもな」
「億か」
真吾はその数にまず言う。
「何か壮絶な戦いになりそうだよな」
「そんなことはもう承知のうえよ!」
「わしなんぞかみさんと一時の別れを告げて来ているのだぞ!」
「その圧倒的な戦いこそ美だ」
カットナルにケルナグール、ブンドルも出て来た。
「そうした派手な戦いもいいものよ」
「手加減なしで暴れられるわ!」
「その通り」
三人はその状況も楽しんでいた。
そしてだ。そのうえで彼等も攻撃を浴びせていた。
「よし、このままだ!」
「このまま潰すぞ!」
「美しく行くとしよう」
「そうか、この三人もいたのね」
「相変わらずの存在感だな」
「全くだ」
レミー、キリー、真吾は三人を見ても言う。
「これだけの面子がいるし」
「それなら大丈夫かな」
「助っ人の必要はないな」
「いや、出るわよ」
だがここでアスカが出て来て言うのだった。
「どうせね。あの変態爺さんとドイツ忍者が」
「出るのか?」
「絶対に出るわよ」
アスカはうんざりとした顔で述べた。
「もうね。最高のタイミングでね」
「でしょうね。もうヒーローのタイミングで」
「間違いなくだろうな」
レミーとキリーもそれに頷く。
「それであっさりと敵を殲滅」
「あの技で」
「まあ今はいないけれど」
「それでもどうなるか」
「出て来るかもな」
「出て来たら絶対に無視よ」
アスカはこれ以上になく不機嫌な顔で言い切った。
「こんな場所にまで来るとは思いたくないけれど」
「思わない、じゃないんだ」
「時空を超えて来る相手よ」
別世界での戦いのことをシンジに話す。
「何をしてきてもおかしくないじゃない」
「まあそうだけれどね」
「そんな相手だからね」
また言うのだった。
「変態だからね、相手は」
「変態なんだ」
「そうよ、二人共上に超ドが付く程の変態を」
とにかくそう言い張るのだった。
「二度と会いたくはないわね」
「けれど出て来る可能性は」
「否定できないのはわかっているわよ」
それはもう隠さなかった。
「覚悟は決めているわ」
「決めているの」
「そう、決めているわ」
レイにも答える。
「今こうして宇宙空間に生身で立って高笑いしていてもね」
「そんなん言うたらホンマに出て来るで」
今度はトウジが言う。
「あの人はな」
「だから余計にタチが悪いのよ。本当にね」
「まあさ。話は置いておいてね」
「何よ」
「敵の動きがおかしくない?」
シンジは前の敵をポジトロンライフルで吹き飛ばしながら述べた。
「何かさ」
「あれっ、そういえば」
「確かに」
皆もそれに気付いた。言われてだった。
「俺達よりも」
「何かフロンティアに向かっている?」
「そうよね、何か」
「どういうこと?」
「シティ7にも向かっていない」
このことに気付いたのだった。
「フロンティアに向かうのは当然だろ?」
「そうよね」
ハッターとフェイが言った。
「俺達の本拠地だからな、今の」
「それを狙うのは当然じゃないの?」
「少し違うな」
だがここでテムジンが言った。
「それはな」
「違う?」
「そうじゃないの?」
「そうだ、それは違う」
それをまた言うのであった。
「ただフロンティアを本拠地として狙うのならここまで執拗には狙わない」
「そういえばシャピロの野郎」
ここで忍はシャピロの戦艦を見た。
「今度は自分から来ていやがるな」
「あいつ普段はいつも後ろにいるよな」
「ああ、普段はな」
「ふんぞり返ってね」
勝平に宇宙太と恵子が答える。
「それが今は自分から来てやがるな」
「最前線にね」
「何かあるのかよ」
勝平は首を捻って言った。
「フロンティアに」
「あれ、そういえば確か」
「そうよね、アラドが」
「言ってたけれど」
ここでアラドの言葉を思い出した一同だった。
「ということはつまりは」
「まさかとは思うけれど」
「イルイちゃんいる?」
「ひょっとして」
「そんな筈ないわよ」
だがここでまたゼオラが言った。
「だってイルイちゃんは」
「普通に考えたならばだ」
だがここでゼンガーが言ってきた。
「しかし。イルイがガンエデンだ」
「普通の人間じゃない」
「それだったら」
「そうだ、有り得る」
ゼンガーはこう見ていたのだった。
「それもだ」
「まさか・・・・・・いや、そうだな」
アイビスは言いながら自分の考えを変えた。
「イルイはガンエデンだ。それも有り得るな」
「そうだな。ないとは言い切れない」
「それに今は」
ツグミも言う。
「イルイちゃんの今の所在知ってる人は」
「いないな」
スレイも言い切った。
「それもだ」
「今は地球で静かに暮らしている・・・・・・筈だ」
アイビスはまた言った。
「しかし。イルイは自由に行動できる」
「それならやっぱり」
「フロンティアにいても」
「それは有り得る」
「そうだ、有り得る」
ゼンガーは言い切った。
「それもまただ」
「じゃああいつ等はイルイちゃんを狙って」
「けれど何で?」
今言ったのはクスハである。
「どうしてイルイちゃんを?」
「それはわからない。力を利用しようとしているかも知れないが」
ゼンガーの言葉は続く。
「しかし狙っているとなればだ」
「迎え撃つしかない」
「そうよね」
「それじゃあ」
「倒すしかないよな」
「そうだ。どちらにしろムゲ帝国は退ける」
ダイゼンガーはもうその両手にあの斬艦刀を持っていた。そうしてだった。
一直線に前に出てだ。敵艦を両断した。
「ムン!」
「な、何っ!?」
「一度に二隻もだと!?」
「化け物か!」
斬られた戦艦のクルーが驚きの声をあげた。
「あのマシン一体」
「何だというのだ」
「我が剣に斬れないものはない!」
ゼンガーは斬ってから言ったのだった。
「そして護れぬものもない!」
「甘いな」
だがそれにシャピロが返す。確かにいつもとは違い前線にいる。
「それは」
「甘いというのか?」
「それが」
「そうだ、甘いのだ」
こう返すシャピロだった。ゼンガーに対してもそうした態度である。
「それはだ」
「何故甘い?」
「人は神に勝てはしない」
ここでも己を神と言うのだ。
「だからだ。それはできはしない」
「愚かだな」
「私を愚かだというのか」
「そうだ、愚かだ」
また言ってであった。その戦艦を前にやる。そのうえで総攻撃を仕掛ける。
彼の相手はダンクーガだった。忍はシャピロを見据えながらその攻撃をかわしていた。そうしてそのうえで彼も攻撃を放つ。
「忍、あれだな」
「そうだ、あれだ!」
こう亮に返す。
「断空砲だ!」
「よし、行け!」
「喰らえシャピロ!」
照準を合わせながらシャピロに対して叫ぶ。
「これで手前を地獄に叩き落してやるぜ!」
そうしてその砲撃を敵艦にぶつける。それはかなりのダメージだった。動きが止まった。
「やった!?」
「いけたね」
雅人と沙羅が会心の笑みを浮かべる。
「これでシャピロも」
「終わった?」
「いや、まだだ」
だがここでアランが言った。ブラックウィングでダンクーガの横にいる。
「この程度で沈む奴じゃない」
「そうだな」
忍もそれはわかっていた。
「これ位じゃな。あいつは死なないぜ」
「けれどさ、敵艦は」
「今にも沈みそうだよ」
雅人と沙羅がそれを言う。
「それで何で?」
「シャピロの奴も」
「普通はそうだな」
亮も二人と同じだと見ていた。
「このままな」
「あいつは自分しかない」
だがここでまたアランは言った。
「ならばだ」
「へっ、自分だけでも生き残ろうとするぜ」
忍はシャピロを見据えながらその目に嫌悪を見せていた。
「部下を見捨ててもな」
「そうだな」
ここで刹那が彼の言葉に頷いた。
「自身を神と思う輩はだ。自分だけは生きようとする」
「それならやっぱり」
「ここは」
「そうだ、逃げる」
刹那もそう見ていた。
「部下を見捨ててな」
「果たしてそうするかな」
「そんな卑怯なこと」
だが多くの者はそれを容易には信じようとしなかった。
「幾ら何でもさ」
「そこまで卑怯なことはしないんじゃ」
「いや、逃げる」
忍は周りの言葉に従わなかった。
「あいつは絶対に逃げるな」
「逃げるって本当に?」
「まさか」
「見な」
しかし彼はそのシャピロの乗艦をダンクーガで指差した。するとだった。
一機のシャトルが去った。これでもうわかった。
「本当に自分だけ逃げるか」
「何て野郎・・・・・・」
「あれが神って」
「そんなものだ」
刹那の言葉は醒めたものだった。
「自分さえよければいいのだからな」
「だからああする」
「そういうことなの」
「そうだ、だが戦いは続く」
それはだという。
「フロンティアを何としても陥落させる」
「そしてイルイちゃんがいたら」
「手に入れてその力を」
「そうする、間違いなくな」
また言ったゼンガーだった。
「その為にだ」
「来るのならそれなら」
「倒してやるか」
こうしてだった。指揮官がいなくなろうとも迫り来るムゲ帝国軍を倒していく。やがて彼等は一機もいなくなり残ったのはロンド=ベルの面々だけだった。
「勝ったけれど」
「全機を行かせて自分は逃げるって」
「何て野郎だ」
皆シャピロの汚い行為に顔を顰めさせていた。
「本当にそんなことするなんて」
「どういうことなんだ?」
「何処まで卑怯な奴なんだ」
「卑怯も何もないのだ」
ゼンガーはまた言った。
「奴にとってはだ」
「つまり本当に自分さえよければいい」
「そういうことなんですか」
「あいつにとっては」
「その通りだ。まさに自分だけなのだ」
こう返したのだった。
「だからそうしたことも平気でできるのだ」
「余計に負けたくなくなったな」
「そうよね、それは」
「確かに」
皆あらためてシャピロのことがわかった。しかしそのシャピロはだ。
「四十万が全滅か」
「一人もいなくなりました」
「文字通りの全滅です」
「わかった」
それを聞いて頷く彼だった。それだけだった。
「役立たず共が」
「えっ!?閣下」
「それだけですか」
皆シャピロの今の言葉に唖然となった。
「あの、閣下の御命令で全員戦死したのですが」
「それでもですか」
「あの、それでも」
「どうしたのだ?」
シャピロの言葉は平然としたままであった。
「何かあったのか」
「いえ、それは」
「何も」
ここに至ってだ。彼等も言うことを諦めた。遂にである。
そしてだ。シャピロはこう部下達に言ってきた。
「ロッサを呼べ」
「ロッサ様をですか」
「そうだ、呼ぶのだ」
こう言うのである。
「わかったな、すぐにだ」
「は、はい。わかりました」
「それでは」
「そのうえでだ。軍議を行う」
それをするというのだ。
「そしてまたロンド=ベルを攻める」
「わかりました、それでは」
「今から」
「戦いはまだはじまったばかりだ」
シャピロのみが笑みを浮かべていた。
「神がその至高の座に就くべき戦いがな」
彼は自分だけを見ていた。他の者は全く見てはいなかった。それがこのシャピロ=キーツという男であり彼の全てであった。
第二十話 完
2010・4・17
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