八条学園怪異譚
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第十九話 口裂け女その十
「包丁はお料理のものってお父さんとお母さんにずっと言われてるから」
「しっかりした親御さんだね」
「お姉ちゃんが一番そうした考えが強くてね」
愛実にとって愛子は料理の面でも自慢の姉なのだ、それで口裂け女に対しても熱い口調で言うのである。
「私もしっかりとね」
「その考えを持ってるんだね」
「そうよ。あとはね」
「あとは?」
「食器はしっかりと洗う」
それもあるというのだ。
「洗剤をちゃんと使って洗って水で泡を洗い落として」
「清潔にだね」
「最後は拭く、完璧によ」
「そこまでしてこそだね」
「そうよ、食中毒なんてもっての他だから」
「いい娘さんだね、あんた」
口裂け女は愛実のその熱い言葉を聞いて述べた。
「食堂の娘さんだね」
「至らない部分も多いけれどね」
それはあることは自分でも認める。
「やっぱり奇麗じゃないと」
「それよね。実はね」
ここで聖花も言う。
「イギリスは洗剤はね」
「洗剤付けないで洗うとかなの?」
「洗剤は付けるのよ」
こう愛実に述べる。
「けれどお水で落とさないで」
「落とさないって?」
「洗剤を拭き落として終わりなのよ」
「それうちのお店でやったら即刻ギャラクティカマグナムよ」
愛実は古い漫画の必殺技で答えた。
「もう皆どれだけ怒るか」
「シャワーを浴びても泡を拭いて終わりよ」
「お肌滅茶苦茶に荒れるでしょ」
「イギリスってお水の事情が悪くて」
「あれっ、そうなの」
「硬水でしかも日本程お水が多くないのよ」
質もよくなくしかも量も少ないというのだ。
「そこが違うのよ」
「ううん、何ていうか」
「日本から見たら信じられないでしょ」
「とてもね。シャワーを浴びたら」
愛実はその場合についても言う。、
「お水でしっかりと洗い落として」
「それでよね」
「お風呂にちゃんと入って」
愛実はシャワーで済ませることはあまりしない、夏の相当暑い日でもない限り湯舟にも入っているのだ。
だからここでこう言うのだ。
「身体も温めないと」
「腰や肩にもよくjないわよね」
「そうよ。まあその国それぞれだけれどね」
「やっぱりイギリスみたいにはよね」
「あまりしたくないわね」
これは愛実の考えだった。
「というか普通jにイギリスって」
「食べ物はまずいし、よね」
「それで食器もシャワーもって」
「大体欧州ってお水悪いのよ」
「お水は命よ」
料理をしている人間から見てもそうだ。むしろ料理をしていればこのことは余計に思えることである。
「そのお水が悪いって」
「多分紅茶もね」
イギリスの象徴であるこれもだというjのだ。
「日本の方が美味しいわよ」
「飲んでみたの?実際ね」
「それはないけれど」
それでもだというのだ。
「お水が違うから」
「硬水ねえ」
「日本は軟水じゃない」
同じ水といっても全く違う、むしろ軟水しかない日本の方が少数派かも知れない。
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