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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百八十話 ゲストとインスペクター

               第百八十話 ゲストとインスペクター
金星に向かうロンド=ベル。今はまだ敵には遭遇していなかった。
「バルマーはまだ動かないのね」
「はい、まだですわ」
風が海に述べていた。
「どうやらホワイトスターに集結したままで」
「何か拍子抜けね」
それを聞いて思わず言った海だった。
「何もしないなんて」
「海さんはそう思いますの?」
「ええ。風はどうなの?」
逆に彼女に問い返してきた。
「実際そう思わない?」
「確かに何か動いてくるとは思ってますわ」
それは風も同じだった。
「ただ」
「ただ?」
「あちらにはあちらの事情があると思います」
それを言うのだった。
「ですから動かないのも」
「考えられるってことなのね」
「そういうことですわ」
「そうなのか?」
光はそれを聞いて二人の話に入ってきた。
「バルマーが動かないのも」
「はい。バルマー帝国軍は今艦隊を集結させていますわね」
「そうだな」
光は彼女のその言葉に頷いた。
「確か」
「だからですわ。今は動かないのですわ」
「つまりあれね。集結してからね」
海は話を聞いてこう返した。
「バルマーが動くのは」
「そういうことになるわね」
プリシラも話に加わってきた。
「とりあえず今はね」
「じゃあ今はゲストに専念していいんだな」
「ええ、それがベストよ」
それでいいというのだった。
「ゲストに向かってそれでね」
「金星を陥落させるということなんだな」
「その通りよ。わかったらね」
「うん」
光はプリシラの言葉を聞きながら頷いていく。
「今はゲストを」
「そうするしかないわ」
こんな話をしていた。今ロンド=ベルは金星に向かっていた。
「さて、ラビアンローズが来ているそうだな」
「はい」
「もうすぐです」
ブライトに対してトーレスとサエグサが言ってきた。
「我々が金星に向かうと聞いてです」
「移動してくれています」
「それは有り難いことだ」
まずはそれをよしとするブライトだった。
「ではそこに入りだ」
「それで最終的なチェックを受けてですね」
「あらためて金星に」
「そうする。金星での戦いはかなり激しいものになる」
それはもう予想していることだった。
「それにだ。長い戦いにもなるだろう」
「そうだな」
アムロが彼の言葉に応えた。彼は今ラー=カイラムの艦橋にいる。
「それは間違いないな」
「だからだ。それに備えて物資も多く欲しい」
「だからこそラビアンローズに来てもらったか」
「その通りだ。そうしてそこから金星に入る」
「いいことだ。ラビアンローズがあるのとないのとで大きく違う」
「それにだ」
ブライトはさらに言ってきた。
「そこにはコロニー群もある」
「コロニー。そういえば」
「ネオイラクやそういったエリアだ」
そこだというのである。
「ラビアンローズにはそこに入ってもらう」
「そこを足掛かりにして金星というわけだな」
「その通りだ。おそらく金星の護りは堅い」
ブライトハそのことも既に見抜いていた。
「それに対してだ。進めていこう」
「その通りだな。それではだ」
「うむ」
「まずはコロニーとラビアンローズだ」
何につけてもそこであった。彼等はそこに入るのだった。
こうしてロンド=ベルはネオイラクとそこに展開しているラビアンローズに入った。しかしここで。
「さーーーて、やりますか」
ゼブが出て来た。そしてゲストの大軍も姿を現わした。
「こーーーっちも仕事なんでね。やーーらせてもらうよ」
「くっ、ゲスト!」
「出て来たか!」
ロンド=ベルの面々は彼の姿を認めて言った。
「ここで!」
「戦闘になるとは!」
「敵は待ってはくれない」
アムロがまた言った。
「ならばやることは一つだ」
「出てくれるか」
「全員だな、それは」
こうブライトに返すのだった。
「ここはだ」
「そうか。それではだ」
「全員出撃だ」
アムロはすぐに判断を下した。
「そして艦艇もだ。攻撃用意だ」
「わかった。それではだ」
こうして彼等はすぐに戦闘態勢に入った。こうして戦いがはじまった。
ゲストとロンド=ベルはすぐにお互いに兵を進めた。そのまま戦闘に入る。
「よし、これで!」
「倒す!」
まずはロンド=ベルが突撃を仕掛けながら攻撃を浴びせた。
それでゲストの先陣を蹴散らす。しかしまたすぐに第二陣が出て来た。
「そーーろそろ本気にならないとーーーね」
ゼブの周りに次々に援軍が出て来る。それがすぐにロンド=ベルに向かう。
こうした波状攻撃を仕掛けていく。だがロンド=ベルはそれを受けている。
「この程度ではだ」
「やられてたまるか!」
オズマとアルトがそれぞれ言いながら反応弾を放つ。
それが敵陣で炸裂すると次々と誘爆を起こし。それで敵を薙ぎ倒していく。
二人の後ろでミシェルのバルキリーが変形した。それと共にライフルを構えて放つ。それで彼も敵をまとめて薙ぎ倒していくのであった。
次はルカだった。彼も反応弾を放つ。
こうして彼等は敵を倒していく。その中でミシェルとルカは話をしていた。
「なあルカ」
「何ですか?」
「前から思ってたんだがな」
怪訝な顔で言う彼だった。
「ゲストの兵器はインスペクターと同じだな」
「はい、そうですね」
「やっぱり同じ文明なのか?」
こう彼に問うのだった。
「そうとしか覚えないんだがな」
「おそらくそうだと思います」
ルカもそう考えているのだった。
「やっぱり。戦術まで同じですから」
「そうだな。それを考えるとな」
「それにだ」
アルトも話に入って来た。
「ゲストの兵器も地球に影響を受けていないか?」
「んっ?シルエットは全然違うぜ」
「それでもですか?」
「ああ、そんな気がする」
こう言うのだった。
「実際に戦ってみてな」
「まあインスペクターがそうだったしな」
「そうですね」
二人もそれに頷くのだった。言われてみればであった。
「あのディカステスを考えたらな」
「それも有り得ますか」
「ゲストとインスペクターか」
アルトはまた言った。
「何かあるな」
「!?レーダーに反応!」
今言ったのはミーナだった。
「左翼にです」
「敵!?」
「ゲストの援軍!?」
そのミーナにモニカとラムが問うた。
「ここで出て来るなんて」
「まさか」
「いえ、これは」
そう言うとだった。出て来たのは。
「あれは」
「グレイターキン!?」
「ってことは」
「よし、そこまでだ」
あの暫く振りの声が聞こえてきた。
「双方共兵を退け」
「おんや、なーーつかしや」
ゼブはそのメキボスのグレイターキンを見て言った。
「メキちゃんじゃないの」
「その呼び方はよせ」
メキボスはその彼に対して照れ臭そうに返した。
「ゼブリース=フルシュワ」
「なーーーんだよ」
しかしゼブはその彼に言うのだった。
「昔みたいにゼブちゃんって呼んでくーーれてもいーーじゃないの」
「今は立場が違う」
だからだというメキボスだった。
「そういう訳にもいかん」
「やーーれやれだね」
「何故ここで出て来たんだい?」
万丈がそのメキボスに問うた。
「インスペクターの君が」
「詳しい話は後だ」
メキボスは今はそれは話さなかった。
「まずは兵を引け」
「戦いを止めろというんだね」
「そうだ」
こう万丈に対して告げた。
そしてゼブに対しても。こう言うのだった。
「ゼブ、これは枢密院からの命令だ」
「枢密院かーーーら?」
「そうだ、元老院でもいいな」
「まーーーあ呼び方はどーーでもいいさ」
彼はそれはいいとした。
「直接か?」
「そうだ、インスペクターにはもう伝わった」
彼等にはというのだ。
「そしてゲストにもだ」
「ゼゼーナン卿にはそーーのこと伝えたのか?」
「いや、それはまだだ」
そのことについても返すメキボスだった。
「それはだ」
「ならわーーるいが軍はひーーけないね」
「枢密院の命令でもか」
「おーーれの直接の上司はゼゼーナン卿だ」
だからだというのである」
「ゼゼーナン卿の命令以外は聞ーーけんよ」
「どうしてもだな」
「命令系統だーーからね」
そうした事情故であるというのである。
「まーーずはゼゼーナン卿に話をとーーーしてくれ」
「やれやれだな」
メキボスはゼブの言葉を受けて首を傾げさせてしまった。
「相変わらず妙なところで律儀な奴だ」
「軍人だーーからね」
「まあいい」
しかしメキボスはそれをいいとしたのだった。
「確かに御前の言う方が筋が通っている」
「わーーかってくれたね」
「まずはゼゼーナンにあたるか」
「いーーってらっしゃい」
いつもの調子で送るゼブだった。
「そーーの間に俺はこの連中と決着をつーーけるよ」
「ゼブ」
そのゼブにまた言うのだった。
「御前は戦いは嫌いだったんじゃないのか?」
「今でーーもそうさ」
それは変わらないというのである。
「けど、こーーーれは仕事」
「だからか」
「個人的感情はなしね。そーーじゃあメキぢゃんまたね」
「わかった。ではまたな」
こうしてメキボスは撤退して後には両軍だけが残った。そしてゼブはまた言うのであった。
「そーーーんじゃ予備戦力も全部出して」
彼の前に援軍が出て来た。
そしてそれと共に前線に出てそうして戦うのだった。
ロンド=ベルはここで戦術を変えたのであった。
「あの敵の指揮官のマシンは後回しだ!」
「他のマシンを!」
「戦艦には集中攻撃だ!」
「了解!」
こうして彼等はまずは敵を倒すのだった。ゼブ以外の敵から倒す。
そうして次第に数を減らしていきだった。やがて敵の中枢に進んだ。
「よし、いよいよだな」
「そうね」
「けれど。ゲストの指揮官機ってね」
「インスペクターもだけれど」
ここで彼等の顔が曇ってしまった。その顔で言うのだった。
「強いのよね」
「それがね。どうもね」
「厄介だから」
それを言うのである。見れば二種類のマシンがゼブのまわりにある。
「あの連中だけは」
「集中攻撃で倒さないと」
「ライグ=ゲイオスとゲイオス=グルードのことだーーーね」
彼等の話を聞いたゼブが言ってきた。
「それのことだーーね?」
「あっ、そういう名前だったのかよ」
「そのマシンって」
「そーーさ」
また言う彼であった。
「そーーれで俺のはオーグバリューっていーーうのさ」
「何か凄く強いけれど」
「そんな名前だったのかよ」
「まーーあどれも量産型じゃなーーいさ」
見ればどのマシンも一機ずつで三機の他のマシンを連れている。二種類合わせて三十機もいない。その程度しかいなかった。
「指揮官用だーーからね」
「それでか」
「あんなに強いの」
「そーーさ、それじゃあ行くーーーよ」
こうしてまた向かって来るゼブだった。無論他のマシンもである。
ロンド=ベルもそれを受ける。それを見てイーグルが言った。
「ここはです」
「どうするんだ?」
「あの強い奴等を先にかい?」
「いえ、全体攻撃です」
ジェオとザズにそれを出すというのだ。
「それでまずは周りのマシンを倒します」
「そうか。それでか」
「その後であのゲイオスシリーズをだね」
「はい、そうです」
まさにその通りであった。
「そうしていきます。如何でしょうか」
「いいと思うぜ」
「それでね」
二人もそれに賛成した。イーグルは彼等の言葉を受けてまずは微笑んだ。
「それでは」
「わらわ達もじゃな」
アスカはシャンアンとサンユンに対して問うた。
「まずは雑魚をじゃな」
「御言葉は悪いですがその通りです」
「数を減らさないとどうしようもありません」
二人もその通りだと返す。
「ですからここは」
「まずは全体攻撃です」
「了解したぞ。では各自全体攻撃じゃ」
言いながら三人の乗る童夢も実際にその口から攻撃を放ち敵をまとめて撃墜していた。NSXも派手にラグナ砲を発射して撃墜している。
そしてタータとタトラも。彼女達もだった。
「やったるで!まずは数を減らすんや!」
「あら、タータったら」
妹に対して微笑みながら言う姉であった。
「幾ら何でも頑張り過ぎよ」
「いや、いつも通りやけれど」
姉にそう言われた妹はまずは目をしばたかせた。
「ホンマにいつも通りやない」
「違うわ。遥さんが側にいると」
「遥さんが?」
「何かいつもより随分頑張るわね」
こう言うのである。
「どうしてなのかしら、それは」
「気のせいちゃうか?」
それは自分ではわからないことだった。
「まあ遥さんはな」
「シンクロするのね」
「それはある」
このことははっきりと認めるのだった。
「実際な」
「私も何かテュッティさんやアイナさんとは」
「姉様結構そういう人多いからな」
「そうなのよね。有り難いことに」
「うちは二人きりや」
それがいささか寂しいようであった。
「もっとな。いて欲しいわ」
「そう言っても同じ様な人がいてくれて嬉しいでしょ」
「うん、確かに」
「私もなのよ」
タトラはまた微笑んで話した。
「だからそういう人達と一緒にね」
「戦ってやな」
「平和をね」
「そやな。その通りや」
すっかりこの世界に馴染んでいるタータであった。
そうして彼女も姉と共に精霊を出し。それで敵を倒すのであった。
こうしてライグ=ゲイオスとゲイオス=グルードだけになった。後は。
「よし、集中攻撃だ!」
「後はそれで!」
こうしてその強固なマシンを次々に撃墜していく。
そしてそれを見たゼブは。ここで言うのであった。
「それーーーじゃ、まあ」
「撤退ですか?」
「司令、ここで」
「そーーういうことだね」
部下達にも述べるゼブだった。
「今のうーーーちに撤退すべきだーーよ」
「はい、わかりました」
「それでは」
こうしてゲストの軍勢は撤退した。ロンド=ベルは彼等との戦いにここでも勝利を収めたのであった。そしてここで、であった。
「よし、いいタイミングだな」
「メキボスか」
「ああ、丁度終わったところだったな」
こう万丈に対して告げる。グレイターキンが再び戦場に来ていた。
「君には聞きたいことが山程ある」
「まあそう焦るな」
メキボスは微笑んで彼に返した。
「ゆっくりと話すからな」
「そうだな。それではだ」
こうして彼等は合流した。そのうえで話をするのであった。
金星に向かいながらである。そのうえでの話であった。
「さて、何から話そうか」
「まずグレイターキンはどうしたんだ?」
「最初はそれか」
「そうだ。もう修理したのか」
「いや、あれは前に言っていたタイプ2だ」
それだというのである。
「グレイターキンマークツーだ」
「そうか」
「まあ五体満足でよかったさ」
それをよしとするのだった。
「両足、右腕、左手とかはな」
「おいおい、それじゃああれじゃないか」
万丈はそれを聞いて笑った。
「スティーブ=オースティン大佐かジェミー=そマーズだな」
「おいスティーブ!」
ここでミオが言ってきた。
「胡椒位ちゃんと用意しておけよ」
「?何だ?」
ミオのその言葉に突っ込みを入れるメキボスだった。
「何の話しだ?」
「だから世界の料理ショーでしょ?」
ミオは笑いながらメキボスに対して言ってきた。
「それじゃないの?」
「世界の料理ショー!?」
メキボスはそれを聞いても首を傾げるばかりであった。そしてこう言うのだった。
「地球のテレビ番組か何かか?」
「ああ、そうなんだ」
万丈がその彼に対して答えた。
「昔のね」
「そうか」
「しかし御前な」
マサキが呆れながらミオに対して言ってきた。
「どっからそんなネタ仕入れて来るんだ?」
「気にしない気にしない」
「思いっきり気になるよ」
「ところでだ」
メキボスが話についていけなくなり言ってきた。
「先を続けていいか?」
「ああ、気にせず続けてくれ」
こう言って話を進ませるマサキだった。メキボスはさらに言ってきた。
「インスペクターは今は枢密院の管理下になってな」
「そっちのかい」
「ああ、それで俺は枢密院直属の特使になった」
そうだというのである。
「ゾヴォークの監視も兼ねてな」
「ゾヴォーク!?」
それを聞いて今度は万丈が首を傾げさせた。
「何だい、それは」
「今あんた達の戦っている相手だよ」
「ああ、あの連中」
「そうだったの」
「そうさ、ゼゼーナンとかあのゼブとかな」
彼等のことを言うのだった。
「あんた達はあんた達で呼んでたよな。確か」
「ゲストさ」
また万丈が答えた。
「ついでに言えば君達はインスペクターって呼んでるよ」
「お客さんに監査官!?」
メキボスはこう言って眉を顰めさせた。
「翻訳機の調子がおかしいのか?」
「いや、それでいい」
万丈はそれでいいとしたのだった。
「固有名詞として登録しておいていい」
「そうか」
「意味はそのままだからね」
「わかった。それでだ」
「今度は何だい?」
「もう気付いているかも知れないが」
こう前置きしてからの言葉だった。
「そのゲストとインスペクターは同じ政治組織に属している」
「ああ、やっぱり」
「そうだったんだ」
「わかっていたみたいだな」
メキボスは彼等の返答を聞いて述べた。
「それはもう」
「兵器も戦術も同じだったからね」
だからだという万丈だった。
「それで違うと思う方が不思議さ」
「そうだな。まあ簡単に言えばあれだ」
こう前置きしてから言うのだった。
「同じ国に属しているんだ」
「同じ国にか」
「星系が違うからしょっちゅう交渉がある訳でもないがね」
それは断るのだった。
「元は同じ星から移住した人種だよ」
「そうだったのか」
「バルマーの。そうだな」
ここでダバやエイジやタケルを見て言うのだった。
「あんた達と同じだな」
「そうなのか。じゃあポセイダルやグラドスと同じで」
ダバがここで言った。
「ゲストとインスペクターは母星から移住してだったのか」
「そうさ。それで母星にその枢密院があって大統領がいる」
そうなっているというのである。
「ゲストはかなり閥族主義になっているがな」
「インスペクターはその点はどうなんだ?」
健一が彼にこのことを尋ねた。
「ウェンドロは御前の弟だったが」
「こっちもこっちで結構そういうのがあってな」
メキボスはいささかバツが悪そうにその問いに答えた。
「まあ所謂貴族主義っていうのがあるんだよ、こっちの文明ではな」
「ボアザンと同じか」
「流石にあそこまで酷くはないさ。ちゃんと平民院とかもある」
「平民院か」
それを聞いた黄金が難しい顔になった。
「どっちにしろ貴族の力は強いんだな」
「それはな」
メキボスは苦い顔のままだった。
「あるさ」
「どうもそういうものはだ」
「言いたいことはわかってるさ。地球に比べてそういうことはな」
「別に劣っているとは言っていないが」
「貴族主義が残っているのは否定しない」
こう万丈にも返すのだった。
「正直に言ってな」
「そうなのか」
「そうさ。それでな」
話を戻してきたのであった。
「俺達とゲストのことだが」
「それだな」
「要するに同じ文明、文化の下にあるんだ」
そうだというのである。
「お互いにな」
「ふむ、それで納得がいきました」
ギャリソンがここまで聞いて述べた。
「ゲストのやり方はインスペクターとそっくりでしたから」
「そうだな」
ハヤトもここで頷いた。
「地球の技術を利用するというのはな」
「何度も言うがな」
メキボスはさらに言ってきた。
「軍事利用の才能と闘争本能じゃな」
「我々は発達しているというのだな」
「そういうことだ」
リーに対しても述べた。
「これはこっちの世界だけじゃなくてな」
「俺達も同じか」
フォルカの言葉だ。
「俺達修羅も」
「ああ、あんた達のことも調べさせてもらった」
メキボスは修羅達についても言及した。
「生物学的には完全に人間だな。それに」
「私達もか」
「ああ、シャドウミラーのあんた達もな」
今度はエリス達への言葉である。
「やっぱり生物学的には人間だからな」
「それでは私達もでしょうか」
「あんた達は違う世界の人類だったな」
「はい」
テッサがメキボスに応えていた。
「そうです」
「あんた達にしろそうだ。どうも地球にある人類はそういうのは異常に発達しているんだよ」
「ところで聞きたいのですけれど」
リィナが彼に問うてきた。
「インスペクターの人達もゲストの人達も」
「ああ、俺達のことか」
「外見は私達と同じですよね」
「それどころか生物学的にもだ」
「同じですか、やっぱり」
「ああ、そうだ」
また語る彼だった。
「DNAを調べてもな。完全に一致している」
「それじゃあ本当に」
「俺達とあんた達は完全に同じなんだ」
そうだというのである。
「それも言っておくな」
「何もかもがなんですね」
「違うのは文明だけだ」
それだけだというのだった。
「その他はもうな」
「全部同じか」
「本当に」
「そういうことになる。それでだ」
メキボスはまた話を戻してきた。
「そのインスペクターとゲストを統括する本星の意思決定機関がな」
「枢密院」
「そこなのね」
「そうさ。俺はインスペクターの最高幹部の一人として」
さらに言うのだった。
「枢密院から言われて今回ここにいるわけだ」
「成程ね、そういうことだったのか」
「俺達はどうもな」
メキボスは万丈に応えてここで首を捻った。
「噛み合っていないんだ、最近な」
「ゲストとインスペクターがだな」
「そうさ」
こう弁慶に返した。
「ウェンドロがああいう行動に出たのもだ」
「ゲストに対して有利に立つつもりネーーー」
ジャックがすぐに指摘した。
「それしかありまセーーーン」
「そういうことだ。奴はそれどころか宇宙もどうしようかって思ってたがな」
「それはゲストも同じじゃないのか?」
凱が言ってきた。
「ウェンドロと」
「そうかもな」
メキボスもその可能性を否定しなかった。
「その可能性は捨てきれない」
「そうだな。じゃああのゼゼーナンは」
「あいつは野心家だ」
メキボスはゼゼーナンについてこう言い切った。
「まさにな」
「そしてそのゼゼーナンが」
万丈がまた言ってきた。
「確か前に」
「そうだ。先に地球に手を出してきたよな」
マサキも言う。
「南極でよ」
「グランゾンのあれか」
「ああ、それだ」
「よく知ってるな。あれはな」
「あれは。何だ?」
「あれがきっかけだったな」
こう言うメキボスだった。
「確かにな。あれはうちにとってはな」
「どうだったっていうんだい?」
「痛かった」
こう万丈に述べた。
「それで今俺達は戦力のかなりの部分を失った」
「そうだね」
「ところがあいつはな」
「そのゼゼーナンだよな」
「つまりは」
「そう、バルマーとの戦いに負けても戦力を補充してきた」
そうだというのである。
「今はだ」
「そうか。今は」
「奴等が」
「何かそっちも」
「随分とゴタゴタしてるのね」
「それは否定しないさ」
もっと言えば否定できなかった。
「実際な。俺達もな」
「しかし」
今度は竜馬が言ってきた。
「何でそうゲストとインスペクターは仲が悪いんだ?」
「対立してるってことか」
「そうだ。同じ文明でだ」
「おいおい、何を言ってるんだ」
今の竜馬の言葉に笑って返すメキボスだった。
「本気で言ってるのかよ」
「本気だと?」
「だとしたらおめでたいとか言い様がないぜ」
苦笑いと共の言葉だった。
「それじゃあな」
「どういうことなんだ、それは」
「あんた達だってそうじゃないか」
彼等をさしての言葉だった。
「遠方やら色々別れて戦ってたな」
「それか」
「そうさ。そういうことさ」
まさにその通りだというのであった。
「生き物が三匹揃えばそれで派閥ができる」
「そうだな」
隼人もその通りだと頷いた。
「それはな」
「それが生き物さ。ただしな」
「ただし?」
「まだ何かが」
「ゼゼーナンのやり方は滅茶苦茶なんだよ」
それだというのである。
「ゲストの本国でもあいつへの批判は多い」
「つまり人望がないのか」
「所詮は門閥だけであがってきた奴だ」
クワトロに対して素っ気無く返した。
「実力なんてのはな」
「ないのだな」
「ああ、それで力は何もないんだよ」
ゼゼーナンに対してはあくまで酷評であった。
「所詮はな」
「そうか。その程度か」
「しかもあいつは偏見の塊だ。それは」
「よくわかってるさ」
「それはね」
それもわかっているというのである。ロンド=ベルの面々もだ。
「あんな嫌な奴は見たことねえぜ」
「全くよ」
「そういうことさ。ゲストでもそう批判が出ているんだよ」
「拠点でもそうなのか」
「相当人望ないのね」
「それでだ」
さらに言うメキボスだった。
「枢密院としてもあいつを放っておくわけにはいかなくなった」
「それでか」
「あんたがってことね」
「そうさ。こっちも地球とこれ以上争っても意味がない」
彼等の事情も関係していた。
「あいつを止める為に枢密院は停戦命令を出した」
「それはいいことだ」
大河はそれを素直に評した。
「我々としても無益な戦争はしたくはない」
「ところがだ。あいつは」
「駄目だったんだな」
「ああ、そうさ」
まさにそうだと万丈に返した。
「戦力を集めて恐いもの知らずになってやがる」
「あれでかよ」
ディアッカは思わず拍子抜けして返した。
「あんな戦力じゃバルマーの。そうだな」
「一方面軍だな」
イザークもこう評した。
「バルマーの一個艦隊が七つあったとすると」
「それ位でしょうね」
ニコルもゲスト軍の戦力分析を冷静に行っていた。
「一度に来れば脅威でしょうが」
「まあそれでな」
メキボスはさらに話してきた。
「本国から離れてるってのも問題でな」
「それで解決方法は」
「それでは」
「実力行使しかない」
これが結論だった。
「それしかな」
「何だよ、結局それかよ」
マサキはそれを聞いて述べた。
「何だかんだでよ」
「悪いな、俺も戦いは避けたかったんだが」
「あのゼゼーナンとは決着をつけないといけないのか」
万丈もそれを受け入れるしかなかった。
「やっぱり」
「まあ俺は特使だから戦争には参加できんがな」
メキボスはそれは断ってきた。
「情報位は提供できるからな」
「そうか。それじゃあ頼むよ」
「ああ、それで今から金星だな」
「そうさ。今から行くところさ」
万丈は気さくに彼に返した。
「君はどうするんだい?」
「とりあえずやることがあるから一旦お別れだ」
「あら、そうなの?」
ボビーはそれを聞いて残念そうだった。
「折角美形がまた来てくれたって思ったのに」
「生憎だが俺はそっちの趣味はないんだ」
メキボスは今度はいささか引いていた。
「悪いがな」
「あら、寂しいわね」
「あとな」
とりあえずボビーから離れて言うのであった。
「そのゼゼーナンはな」
「ああ」
「それで?」
「俺達もそうだったが」
こう前置きしての言葉である。
「既に地球の技術を使ってるからな」
「ああ、それはな」
「わかってるわ」
「もうね」
それはロンド=ベルの面々も既にわかっていた。
「あんた達と兵器は同じだし」
「そういうの見れば」
「俺のグレイターキンマークツーもそうだしな」
それもだというのである。
「それにどうも」
「どうも?」
「ゼゼーナンは切り札を作ってるな」
それもだというのである。
「それが何かまではわからんがな」
「そういえば何か言ってたな」
「そうよね」
皆もそれに気付いた。
「そういえば」
「サイド6で」
「それには気をつけろ」
「へっ、切り札があってもな」
しかしここでマサキが言った。
「あの連中の今のやり方じゃな」
「今のやり方だと?」
「そうさ。切り札って言っても所詮は一機だな」
「ああ、それはな」
このことはメキボスも察しがついていることだった。
「間違いない」
「それじゃあ楽だぜ。戦力が一度に来ないとな」
「そうでもない限りか」
「奴等戦力の逐次投入やってるからな」
そこを指摘するのだった。
「そんなのじゃどうってことねえぜ」
「ふふふ、そうだな」
メキボスもマサキの今の言葉に対して微笑んで応えた。
「それで俺達も敗れたしな」
「ああ、そういうことさ。一度に来たらその時はそのゼゼーナンって奴を一気に倒す」
こうも言うのであった。
「それだけさ」
「ではな。御前達を見させてもらう」
メキボスは今は戦わなかった。しかし彼等を見続けるのだった。それが今の彼なのであった。

第百八十話完

2010・1・7
   
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