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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百七十九話 特異点崩壊

              第百七十九話 特異点崩壊
サイド6に向かうロンド=ベル。その先頭にはネオ=グランゾンがある。
ロジャーはそのシュウの愛機を見ながら。こう言うのであった。
「そういえばだ」
「どうかしたのか?」
「あの機体については殆ど何もわかっていないな」
こうグラハムに返した。
「本当に殆ど何も」
「そういえばそうだな」
グラハムも言われてそのことに気付いた。
「シュウ=シラカワ独自の技術があまりにも多い」
「しかも」
ロジャーはさらに話した。
「どうもあのマシンの行くところ」
「何だというのだ?」
今度はカティが彼に問うた。
「ネオ=グランゾンの行くその先に」
「それはわからない」
ロジャーはまずはこう返した。
「彼の心の中は全く読めない」
「そうなんだよな」
パトリックがぼやいてきた。
「あの博士の頭の中だけはさっぱりわからないぜ」
「確かに」
留美も同じ考えだった。
「ですが。おそらくあのネオ=グランゾンにとっても大きな謎ですね」
「そういえば」
ふと気付いたのはスメラギだった。
「あのマシンがあると」
「あると?」
「一体何が」
「妙なことが起こる気がするわ」
こう言うのである。
「何かね」
「そういえばそうだな」
それに頷いたのはカミーユだった。まさにロンド=ベルの初期からいる人物だ。
「俺もあのマシンは長い間見てきているが」
「やっぱりそうなの?」
「ネオ=グランゾン、グランゾンでもいい」
とりあえずどちらもだとされた。
「そのマシンがある世界にはおかしな事件が頻発する」
「偶然?」
ファはまずはこう考えた。
「それは」
「偶然にしちゃ多過ぎないか?」
だがカミーユはまだ言うのだった。
「有り得ない事件が頻発しているんだぞ」
「そういえばそうだな」
サンドマンも実感できることだった。
「私達の世界でもだ」
「ですね」
八雲も彼の言葉に頷く。
「パラダイムシティにしろ東京ジュピターにしろ」
「私自身にしろだ」
サンドマンは自分のことも語った。
「あまりにも偶然が起こり過ぎる」
「ということは」
「やはりあのマシンに謎が」
「だとすればそれは一体」
このことを考えながらサイド6に向かうのだった。
サイド6のコロニー群の前に来た。ここでチカが主に言ってきた。
「ねえ御主人様」
「何ですか?チカ」
「本当に来るんですか?」
「ゲストがですか」
「ええ、そのゼゼーナンとかって人」
この名前が出て来た。
「もうそろそろ時間ですよ」
「来ますよ」
シュウの言葉は何の疑いも不安も持っていないものだった。
「彼の喜びそうな餌を持って来ていますから」
「ロンド=ベルですか」
「そう、そして」
彼はさらに言った。
「私自身もです」
「ではこれで」
「ゲストの総司令官ゼゼーナン卿はです」
シュウの言葉が続く。
「貪欲な人物です」
「貪欲ですか」
「はい。そして野心家です」
尚且つであった。
「その望むものが集まると聞けば」
「自分からってことですね」
「はい、必ず自ら乗り出して」
そうするというのである。
「その実態を観察したい」
「成程」
「そう来ます。それに」
「それに?」
「あるものを送り付けておきました」
こうもしたというのだ。
「ゼゼーナン卿自身にです」
「そのゲストの総司令官にですか」
「そうです。それを見ればです」
さらに言うシュウだった。
「心穏やかではいられません。必ず来ますよ」
「それじゃあですね」
またチカが彼に問う。
「それは一体」
「ふふふ、今は秘密です」
ところがそれは言わないのだった。
「今教えてしまうと面白くありませんからね」
「だからですか」
「はい、楽しみにしておいて下さい」
こう言うだけである。既にロンド=ベルは全機出撃し布陣している。その陣の中からテリウスがシュウに対して尋ねてきたのであった。
「なあクリストフ」
「何でしょうか」
「首尾よくそのゼゼーナンって奴が来たら」
「その時ですか」
「どうするつもりなんだ?」
それを問うのであった。
「まさかただ会ってみたいだけってわけじゃないんだろう?」
「さあどうでしょう」
またはぐらかすシュウだった。
「ただ」
「ただ?」
「私はこれで全ての決着をつけるつもりです」
不意に言葉が強いものになった。
「ゲストと戦うか、それとも」
「それとも」
「御主人様!」
ここでまたチカが叫んだ。
「来ました!ゲストです」
「遂にですね」
ロンド=ベルの向こう側にであった。ゲストの大軍が来た。その中の戦艦の一隻から通信が入って来た。そうして初老の髪を後ろに撫で付けた男がモニターに出て来た。
「ネオ=グランゾンか」
「はい」
「シュウ=シラカワだな」
「お久し振りです」
ここでシュウは言った。
「ティニクエット=ゼゼーナン卿」
「ほう」
その男ゼゼーナンは彼の言葉に反応を見せた。
「私を知っているのか」
「以前南極で遠目にお顔を拝見しましたので」
それでだというのだ。
「確かあの時は筆頭書記官でしたね」
「そうだ」
「それでは間違いありません」
「しかしだ」
ここでゼゼーナンは言葉を訂正してきた。
「今の私はだ」
「何でしょうか」
「ゲストの主席だ」
それだというのである。
「ゲストの主席だ。その立場としてここに来ている」
「左様ですか」
「そうだ。そしてだ」
今度はゼゼーナンから言ってきた。
「君が私宛に送り付けてきたものだが」
「御覧になられましたか」
「一応はな」
そうだというのである。
「あれを何故君が持っているのだ?」
「さて」
しかしその問いにはシュウは答えようとしない。
「御自身で考えられてはどうでしょうか」
「ふん、私を試そうというのか」
「どうでしょうか」
「あれは特異点のフェイズシフト理論の解説図だ」
「特異点!?」
「何だそれ」
ロンド=ベルの面々にはわからない話だった。
「また訳のわからない言葉が出て来たわね」
「全く」
「つまり君のそのグランゾンの」
「ネオ=グランゾンです」
「同じことだ」
それは同じこととしたのである。
「とにかくだ。その心臓部の理論だ」
それだというのである。
「それを説明したものだな」
「その通りです」
「君はあれを何処で手に入れたのだ?」
彼が問うのはこのことだった。
「あの部分は完全にブラックボックス化していた」
「ブラックボックス!?何だそりゃ」
「そうよね、何なのそれって」
勝平だけでなく恵子も首を捻った。
「何か訳わからねえ話だよな」
「そうね。何なのよって話」
「ああ、技術を秘密にしておいて入れておくんだよ」
その二人に宇宙太が説明する。
「簡単に言えばな」
「へえ、そんなのか」
「そういうのなの」
「地球の兵器でもあった話だ」
こう説明するのである。
「しかし。あのネオ=グランゾンにもそんなものがあったのか」
「何か謎だらけだったんだがな」
マサキがここで言った。
「前からあのマシンはな」
「内部を調べることは不可能だった筈だ」
ゼゼーナンは言葉を続けていた。
「君はまさか」
「まさかとは?」
「独自であの理論に到達できた訳ではあるまい」
ゼゼーナンはこう述べた。
「君達地球人の科学力ではあれを解明するには」
「どうだというのです?」
「最低あと二百年はかかる筈」
彼はこう考えていたのだ。
「その筈だ」
「どうも貴方達はです」
シュウはその彼に言い返した。
「自分達以外は無知な存在と思っているようですね」
「バルマーも所詮そうだがな」
「あの程度の理論ならばです」
ここでまた言うシュウだった。
「解明に大した時間はかかりませんでしたよ」
「するとだ」
ゼゼーナンはその言葉にさらに入った。
「独自にあの理論に到達したというのか?」
「そうお考えになられるのですね」
「有り得ないことだ」
それはすぐに完全に否定したのだった。
「地球人程度にあれが理解できるものか」
「何かこいつ」
「そうよね」
「何かむかつくけれど」
「それもかなり」
ロンド=ベルの面々は次第に彼に怒りを覚えてきていた。
「どうもな」
「何なのよ、偉そうに」
「それではです」
ここでシュウはロンド=ベルの面々に顔を向けてきた。
「皆さん」
「んっ!?」
「何!?」
「まずは紹介させてもらいましょう」
「そういえばそれまだだったな」
「そうよね」
このことに今更ながら気付いたのだった。
「その戦艦にいるおっさんが」
「そうなの」
「ゲストの最高司令官ティニクエット=ゼゼーナン卿です」
「あいつが」
「そのゲストの」
その話を聞く彼等だった。
「親玉か」
「総大将ってわけね」
「あれか」
ゼゼーナンは今度はロンド=ベル全軍を見た。
「あれがロンド=ベルか。確かにな」
「何だ?」
「今度は何?」
「この星の軍事技術は確かに素晴らしいものがある」
それを見抜いての言葉である。
「どうやらな」
「あれだけではありませんよ」
シュウがゼゼーナンに言ってきた。
「あれはまだ氷山の一角に過ぎません」
「成程な」
「しかしだ」
そしてゼゼーナンは言った。
「ここまで軍事技術のみに偏った文明というのはだ」
「!?こいつ」
「ウェンドロみたいなことを」
「好ましくない」
やはりこう言うのだった。
「我々の管理下において正しき道を示してやらなければバルマーと同じになる」
「同じですね」
シュウもそれを見ていた。
「やはり」
「悪いことは言わん」
ロンド=ベルに対して告げてみせた。
「今すぐ武器を捨てて投降したまえ」
「何っ!?」
「投降!?」
「高性能な武器を持っただけの猿である君達に勝利の機会はない」
「さて」
ここでシュウはロンド=ベルの面々に対して言ってきた。
「あんなことを言っていますがどうされますか?」
「おい」
まずは甲児が怒りの声をあげた。
「ゼゼーナンとかいったな!」
「そうだが」
「手前みてえな奴ははじめてだ!」
こう彼に怒鳴るのだった。
「ここまで人を小馬鹿にした奴はな!」
「そうだというのだな」
「そうだ!」
マサキも叫ぶ。
「こんな野郎はさっさと叩き潰しておしまいにしてやろうぜ!」
「やはり猿は猿でしかないか」
ゼゼーナンはこう言うだけだった。
「こちらが友好的な条約を結んでも構わないと言っているのだが」
「ホワット!?」
ハッターが今の彼の言葉に驚きの声をあげた。
「友好的!?今のが」
「そうらしいわね」
フェイも呆気に取られてしまっていた。
「あのおっさんの頭の中じゃ」
「フェイ、決めたぞ!」
ここでハッターはさらに言った。
「あいつの頭に風穴を空けてやる!」
「何でなの?」
「そうしたいからだ!あいつは許せん!」
「それは同感、やってやるわよ!」
「その様な態度を取るとはな」
まだ言うゼゼーナンだった。
「友好的に話し合いもできないのか」
「友好的だと!?」
今度は万丈が言った。
「友好っていうのは相手を対等な相手として認識してはじめて成り立つものだ」
「その通りだ」
ダバが万丈の今の言葉に頷く。
「この男の態度は」
「貴様の様にはなから相手を見下して態度で臨んでおいてだ」
「まさしく傲慢」
不動も言う。
「それ以外に言い様がない!」
「友好的とは恐れ入る!」
「いいだろう」
ゼゼーナンもこれで話し合いを切ったのだった。
「御前達の様な野蛮人には力を示すのが一番だからな」
「所詮この程度か」
それを聞いたクランが呟いた。
「この男も」
「小者に過ぎない様だな」
サンドマンも言った。
「今度の我々の相手はだ」
「小者ですか」
それを聞いたシンジが彼に問うた。
「あのゼゼーナンは」
「何か見てるだけでぶん殴りたくなるけれどね」
アスカは極めて直情的であった。
「あのおっさん、戦艦の中から引き摺り出して蛸殴りにしてやるわよ」
「そうだ、小者だ」
サンドマンは再び言い切った。
「その様な相手、取るに足らない」
「では」
「総攻撃に移る!」
これがサンドマンの指示だった。
「そして一気に蹴散らす。それだけだ!」
「了解!」
「ゼゼーナン、覚悟しやがれ!」
「その自慢の力を見せてもらうわよ!」
「お待ち下さい」
だがここでシュウが今にも攻撃に入ろうとする彼等に言ってきた。
「それはまだです」
「えっ!?」
「まだって」
「予想はしていました」
こう言うのである。
「こうなることは」
「そうでしたの」
「はい」
サフィーネの問いにも答えた。
「それでです」
「シュウ様、それでは」
モニカも彼に問う。
「一体何をなされないでいないのですの?」
「・・・・・・意味がわかりません」
ルリも流石に今のモニカの言葉には突込みを入れた。
「もう何が何なのか」
「戦闘をはじめる前にです」
シュウはさらに言う。
「一ついいものをお見せしましょう」
「いいもの?」
「それって一体」
「何なんだ?」
ロンド=ベルの面々は動きを止めて彼に問う。
「その見せたいものってのは」
「それは」
「はい、それはです」
ここでシュウはゼゼーナンの乗艦を見た。そうしてまた言うのだった。
「特にゼゼーナン卿、貴方には」
「何だというのだ?それは」
「これです」
その言葉と共にであった。グラビトロンカノンらしきものを放ってきた。黒い衝撃がネオ=グランゾンを中心としてロンド=ベルに一気に襲い掛かった。
「!?グラビトロンカノン!」
「よけろ、早く!」
「大ダメージを受けるぞ!」
「おい、シュウ!」
マサキも彼に対して叫んだ。
「手前何しやがる!」
「御覧になられた通りですよ、マサキ」
「いきなりグラビトロンカノンぶっぱなすたあいい度胸だ!」
彼もそう思っているのだった。
「もう一度俺達とやるつもりか!」
「相変わらず早とちりな人ですね」
しかしシュウは冷静だった。
「今のはグラビトロンカノンではありませんよ」
「何っ!?」
「あれっ、そういえば」
「ダメージを受けてないし」
「そうよね」
他の面々もそれに気付いたのだった。
「何ともないし」
「重力も感じなかったし」
「どうして?」
「特異点の位相をずらしたのです」
それだというのである。
「そして崩壊させた為に発生した余波です」
「何っ!?」
それを聞いて驚きの声をあげたのはゼゼーナンだった。
「まさか、いやそんなことが」
「何だあいつ」
「あんなに驚いて」
「何だってのよ」
「原始人如きにあの原理がわかる筈が」
「甘いですね」
シュウは狼狽すらしている彼に対してあっさりと言い切った。
「原理自体はそれ程難しいものではありませんよ」
「そんな筈がない!」
「ただ」
ゼゼーナンの否定の言葉をさらに否定してみせたのだった。
「発動させるキーとなるエネルギーが不明だったのがネックでした」
「それがか」
「ともかくです」
さらに言うシュウだった。
「これで貴方達の切り札は無効になったわけです」
「くっ・・・・・・」
「今までの様に上手くいくとは限りませんよ」
「上手く!?」
「上手くって!?」
ロンド=ベルの面々はまた首を傾げさせることになった。
「何、上手くって」
「何のことなんだよ」
「何しろこれ以上偶然は続かなくなったわけですからね」
「おいシュウ」
マサキがまた彼に問う。
「一体何のことなんだ?さっぱりわからねえぞ」
「それではです」
シュウもその言葉を受けた。
「説明して差し上げましょう」
「あ、ああ」
「私のグランゾン、ネオ=グランゾンの心臓部にはゲストの技術を使った特異点」
「特異点ってそもそも何だ?」
「ブラックホールです」
シュウはそれだと話した。
「それが使用されています」
「ああ、そうだったな」
ユウキがそれを聞いて述べた。
「それで重力をエネルギーとしていたのだったな」
「そうです。ところがです」
シュウはさらに言う。
「この心臓部はブラックボックスになっていてどの様な原理で動いているのか」
「わからなかったんだ」
「シラカワ博士でも」
「そうだったのです」
リョウトとリオに対しても述べる。
「私でもです」
「そんなに謎に包まれたマシンだったんだ」
「グランゾンって」
「ゲストはそれをいいことにです」
シュウはさらに言う。
「私のグランゾンに一つの仕掛けを施していたのです」
「それが、なのね」
「そうです」
今度はカーラに対して答えた。
「特異点の位相をずらし剥き出しの特異点を作り出す仕掛け」
「そんなものが」
「普通の特異点は時空を歪めるだけですが」
シュウはさらに話していく。
「ある一定の位相を持たせることにより」
「それによって」
「何が」
「事象の発生確率の密度も歪めることが可能になるのです」
「つまりだ」
「それって」
今度はタスクとレオナが話す。
「偶然が多発する」
「そうよね」
「そうです。グランゾン、ネオ=グランゾンが存在する限り」
シュウの言葉は続く。
「この地球では通常では起こり得ない事件が多発し」
「それも時空を超えてだな」
「そうね」
ロジャーとドロシーが言い合う。
「私達の世界までもが」
「他の世界まで」
「混乱が支配する、そういう仕組みになっていたのです」
これがシュウの話だ。
「そしてその混乱を利用し」
「うう・・・・・・」
ゼゼーナンはシュウの視線を受け苦い顔になった。
「あわよくば地球の技術を独占しようとしていたのがです」
「あいつかよ!」
豹馬が忌々しげに叫んだ。
「要するにな!」
「はい、そこにいらっしゃるゼゼーナン卿です」
「馬鹿な・・・・・・」
ゼゼーナンはその表情を顰めさせて言った。
「認めん!」
「事実ですが」
「地球人の如き下等な生物が」
「こいつ何とかならないの?」
「全くだ」
アムとレッシィは彼に完全に呆れていた。
「何処まで他人を馬鹿にしてるのよ」
「所詮同じなんだがな」
「バルマーと同じだ」
タケルも言う。
「この傲慢さは」
「黙れ!」
ゼゼーナンはその彼等に叫ぶ。
「貴様等はバルマーの者か!」
「そうだ!」
タケルが彼の言葉に応える。
「それがどうした!」
「僕もバルマーだ」
エイジも応えた。
「だがこの血の半分はこの星のものだ」
「混血が」
ゼゼーナンは彼等にも侮蔑と偏見を露わにさせていた。
「バルマーもまた。野蛮人よ」
「おい、待て」
イザークは彼に対して明らかに怒りを見せていた。
「バルマーも何もない。貴様はそれを見ようとしないのか」
「見る必要もない」
これがゼゼーナンの返答だった。
「貴様等なぞ」
「わかった」
イザークはそれを聞いてまずは頷いた。
そしてゼゼーナンに対して。こう言うのだった。
「貴様がだ」
「何だと?」
「所詮その程度だ」
こう彼に言うのである。
「貴様は取るに足らない男だ。所詮はだ」
「そうだな」
ディアッカも言うのだった。
「悪いがあんたはその程度だ。何かをできる奴じゃない」
「野蛮人が私を愚弄するのか」
「そう思ってるから駄目なのよ」
ルナマリアも彼に対して告げる。
「私から見てもよ。あんたはどうってことないわ」
「おのれ、まだ言うのか」
「それで、です」
またシュウが言ってきた。
「流石に私も理論は理解できたのですが」
「それからでしたよね」
「はい」
チカに対して応える。
「手間取りました」
「そうそう」
「実際に行うとなるとです」
シュウの言葉が続く。
「特異点を押さえ込むだけの特性を持ったエネルギーがです」
「見つからなかったんですよ」
「それだけのエネルギーが」
「なかったんだ」
ロンド=ベルの面々はそれを聞いて言う。
「特異点はそこまで大きいんだな」
「その力は」
「はい、それで困っていました」
こう彼等に話すシュウだった。
「その時です」
「その時?」
「一体」
「ゴーショーグンの皆さんですが」
「おや、俺達かい」
「ヒーローがここでってわけね」
「光栄だね」
ゴーショーグンの三人はここでもいつもの乗りだった。
「利用しているエネルギーですが」
「ずばりビムラー」
「それよね」
「進化するエネルギー」
「はい、その特性に気付いたのです」
まさにそうだというのである。
「タキオンと似た性質を持ち」
「そうしてか」
「さらになのね」
「そのビムラーの特性が」
「成長までする特殊なエネルギービムラー」
シュウの口から話される。
「これがなければ今の様なことはできませんでしたよ」
「成程な」
「ビムラーからか」
「流石と言うべきだな」
カットナル、ケルナグール、ブンドルも思わず唸った。
「エネルギーも色々あるからな」
「特にこのロンド=ベルにはな」
「その中からビムラーを見出すとは。まことに」
そしていつものブンドルの言葉であった。
「美しい・・・・・・」
「恒例のワンパターンだ」
「気にすることはない」
「いいな」
「ってもう毎度だからわかってますよ」
チカが三人に突っ込み返した。
「そんなことはね」
「何かそれはそれであまり面白くないな」
「とりあえず口癖なのはもうわかっている」
「今更だ」
だからだというカットナルとケルナグールだった。
「いい加減これで何度目だ?」
「毎日一回は言っているではないか」
「言わないと気が済まないのだ」
それが実情だった。とにかく話は続く。
「それじゃあ御主人様」
「はい。ゴーショーグンの皆さんにはです」
三人にあらためて言うのだった。
「御礼を申し上げます」
「まあそれはな」
「礼には及ばないわよ」
「著作権とかは関係ないからな」
それでいいという三人だった。そうしてであった。
シュウはまたしてもゼゼーナンに顔を向けて言うのであった。
「さて」
「むう・・・・・・」
「これで私の用事は全て済みました」
「おい、もう帰るのかよ」
「はい」
こうマサキに答えた。
「そうです。これで」
「もうですの」
「残念でない筈もない訳ではあることではありませんわ」
「・・・・・・ねえルリちゃん」
ユリカは今のモニカの言葉はわからなかった。サフィーネのそれはともかく。
「今のモニカ王女の言葉は」
「残念だというようです」
「何か逆にも聞こえませんか?」
「私もそんな気がします」
それは彼女もなのだった。
「もう何が何だか」
「わかりません」
「鮮血の台詞ですね」
ユンが突然妙なことを言ってきた。
「これは。世界的にも」
「ちょっと待て」
マサキが今の彼女の言葉に速攻で突っ込みを入れた。
「あんた確か影の薄い北の領主じゃなかったか?」
「そういえばそんな記憶もあります」
「何か最近おかしいぞ」
そう言うマサキもだった。
「俺も何か何処かの昔の中国で妖術使いになっていたぞ」
「私もその世界にいまして」
「俺は医者だったな」
今度は凱だった。
「大鎌を持っている女に殺されそうになった」
「何なんだ、一体」
マサキは思わず首を捻ってしまった。
「それにユン、あんた弟さんいたよな」
「弟大好きです」
彼女はここで急にのろけた。
「もういつも一緒にいても」
「最早何が何だか」
「さっぱり」
皆あらためて多くの世界が混ざり合っていることを認識したのだった。
とにかくである。話は続く。
「私の用事は全て終わったのです」
「ああ、そうだったな」
マサキが彼にあらためて応えた。
「それはな」
「私とネオ=グランゾンを利用しようと考えていた」
「無理なことです」
ショーンは冷徹なまでに素っ気無かった。
「器というものがありますから」
「御前も私をそう言うのか」
「もうすぐにわかりました」
彼もまたゼゼーナンには冷徹であった。
「貴方のことは」
「くっ・・・・・・」
「私はそういうことは許せないのですよ」
実にシュウらしい言葉であった。
「だからこそです」
「ここでそれを見せたんだな」
「そうです」
またマサキに答えたのである。
「こうして皆さんの前で全てを暴露して差し上げた次第です」
「手前のそういうところは相変わらずだな」
「ふふふ、私という人間がわかってくれていますね」
「伊達に長い付き合いじゃねえさ」
まさにお互いがよくわかっているということだった。
「そういうことだよ」
「どうもです。さて」
またゼゼーナンに対して言った。
「これで貴方の権力も長くは続かないでしょうね」
「下等生物が。まだ言うのか」
「では私はこれで」
もうゼゼーナンは意に介してはいなかった。
「後はロンド=ベルの皆さんのお好きな様に」
「それじゃあね」
チカも彼等に別れの挨拶を告げた。
「また会いましょうね」
「何か相変わらず物凄くまずそうな鳥だニャ」
「全くだニャ」
これが彼女へのクロとシロの言葉だった。
「だから何とも思わないニャ」
「何を言っても」
「まあこれで色々なことがわかったな」
マサキは視線を上にやって述べた。
「とりあえずな」
「そうだね」
それに頷くテリウスだった。
「クリストフのおかげでね」
「さて」
万丈がゼゼーナンに言ってきた。
「ゼゼーナンとやら。どうするんだい?」
「どうするかだと?」
「そうだ。僕達は無闇に戦うことを好んではいない」
「戯言を」
「君がどう思おうとだ」
そうであるというのである。
「我々を対等の存在として認めてもらえるなら」
「そんなに高い条件じゃないんだがな」
神宮寺も言った。
「正直なところだな」
「そうだよな」
洸もその言葉に頷く。
「同じ人間なんだからな」
「そういうことだ」
神宮寺はあららめて彼の言葉に頷いた。そして万丈はさらに言う。
「話し合いの余地はあるが」
「ふざけるな!」
だがゼゼーナンは相変わらずだった。
「貴様等如き下等生物がだ!」
「所詮この程度か」
サコンも彼には冷ややかだった。
「この男は」
「そうだな。今までの相手の中でもかなりだ」
大文字も言う。
「程度の低い相手だ」
「そうですね」
「我々と対等の存在だと!?思い上がりもはなはだしい!」
「そうか、もうわかった!」
万丈もこれ以上聞かなかった。
「世の為人の為ゲストの野望を打ち砕くダイターン3!」
彼の決め台詞が出た。
「この日輪の輝きを恐れぬのならばかかって来い!」
「全軍総攻撃だ」
リーも怒りを見せていた。
「こうした輩こそが宇宙の癌だ。容赦することはない」
「ほう、珍しく正論を言うな」
ブレスフィールドがその彼に言ってきた。
「これはまた」
「茶化さなくともだ」
だがリーの生真面目さは健在だった。
「私も伊達に今までロンド=ベルにいるわけではない」
「だからだな」
「そうだ。容赦することはない」
これが彼の考えだった。
「倒すだけだ」
「うむ、それではだ」
「三将軍の軍を全て出せ!」
ゼゼーナンもまた指示を出す。
「バラン=シュナイルはまだ調整中だ!」
「では閣下」
「ここは」
「私は総司令部に戻る」
彼はそうするというのである。
「後は三将軍に任せた」
「わかりました、それでは」
「その様に」
「後は任せた」
こう言って彼の乗艦だけが撤退する。そうしてだった。
「やれやれだな」
「そうね」
「同感だーーーね」
三将軍のマシンが戦場に出て来た。
「ロンド=ベルが相手か」
「インスペクターを倒した彼等とね」
「なーーんかさ」
ここでゼブが二人に言ってきた。
「俺はこーーーの連中はそんーーーなに野蛮とかは思わなーーーいんだがな」
「それは独り言かしら」
「いいーや、空耳さ」
こうセティに返すのだった。
「そーーれだよ」
「そうね、私も空耳だけれど」
「俺もだ」
セティだけでなくゼブもそうしたのであった。
「地球人はね。どうやら」
「野蛮でも下等でもない」
彼等もこう判断するのだった。
「それは確かだ」
「そーーの通り」
そしてまた言うゼブだった。
「だーーから何かゼゼーナン卿はーーね」
「間違ってるのかもね」
「これも空耳だがな」
あくまでこう言い繕って話していく。
「だが。今はそれでもね」
「戦わなければならない」
「話し合いにいーーけたらいいんだがね」
そうはいっても今は無理だった。ロンド=ベルとゲストの戦いがサイド6の前ではじまった。
その中でロフは最初に言った。
「いいか」
「はい、閣下」
「何でしょうか」
「コロニーは狙うな」
彼が言ったことはこれであった。
「間違ってもだ。攻撃はするな」
「それは何故ですか?」
「一体」
「あのコロニーの中にいるのは一般市民だ」
だからだというのだ。
「だからだ。攻撃してはならない」
「敵対勢力の一般市民であってもですか」
「それでも」
「そうだ。それでもだ」
まさにそうだというのである。
「我々が戦うのはあくまでロンド=ベルだけだ。いいな」
「はっ、わかりました」
「それでは」
「そうだ。そうするのだ」
また言う彼だった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「その様に」
これで方針は決まった。彼等もそうするのだった。
こうして両軍は正面から激突した。ロンド=ベルはまずは彼等を引きつけた。
「いいわね」
「はい」
「それでは」
皆タリアの言葉に応える。
「今はまだ動かないのですね」
「まだですね」
「そうよ」
その通りだというのである。
「充分に引きつけてそのうえで」
「倒す」
「一気に」
「その通りよ。全軍間合いに入ったら」
さらに言う彼女だった。
「一気に撃つ。いいわね」
「了解です」
「それじゃあ」
「後は中央突破よ」
それからも話すのだった。
「そうして敵陣を二重に混乱に陥れるわ」
「艦長」
ここでアーサーが彼女に問うた。
「その後は」
「中欧突破の後かしら」
「はい、その後はどうしますか?」
それも問うのである。
「それからはどうするんですか?」
「反転よ」
そうするというのである。
「反転してまた攻めるのよ」
「そのうえで、なんですね」
「そうよ」
まさにその通りだという。
「わかったわね」
「はい、わかりました」
アーサーもここまで聞いて頷いた。
「それではそれで」
「あのゼゼーナンというのは大したことはないわね」
タリアも彼は見抜いていた。
「ただ」
「ただ?」
「あの三人の将軍は手強いわね」
彼等についてはというのだ。
「間違いなくね」
「そうですよね。何度も戦ってますけれど」
「強いですよね」
アーサーだけでなくメイリンも言う。
「何度戦っても手強いですね」
「四天王と同じ位に」
「だからよ。油断はできないわよ」
それを確かに言うのである。
「いいわね、だから徹底的にやるわよ」
「はい、それじゃあ」
「わかりました」
アーサーとメイリンも彼女の言葉に頷く。そうしてであった。
ここでレイから通信が入った。
「艦長」
「間合いに入ったのね」
「はい」
まさにその通りであった。
「どうしますか、ここは」
「全機よ」
まだだというのだ。
「全機の間合いに入ってからよ」
「それからですか」
「ええ、だからまだよ」
こう言うのである。
「わかったわね」
「わかりました。それで」
「焦ることはないわ」
そしてこうも言うのだった。
「むしろ焦っては負けよ」
「敗北ですか」
「そうよ」
まさにそうだと。ルナマリアにも返した。
「だからいいわね」
「わかりました」
ルナマリアもそれで頷いた。
「それじゃあ今は」
「待つのよ」
また言うタリアだった。
「もう少しね」
そしてであった。
今度はシンが言ってきた。
「もうですか!?」
「ええ、いいわ!」
ここで遂に指示を出したのであった。
「一気によ。攻めるわ!」
「では艦長!」
アーサーがここで叫ぶ。
「タンホイザーを」
「発射準備はできてるわね」
「はい!勿論です!」
アーサーは威勢よく彼女に応えた。
「何時でもです!」
「了解、それでは」
「タンホイザーを」
「撃つわ!」
高らかに言った。
「いいわね、一気に!」
「はい!タンホイザー、撃て!」
アーサーが叫びタンホイザーが放たれる。それで敵がまとめて消された。
それを合図としてだ。ロンド=ベルは一斉攻撃に出た。
「よし、今だ!」
「これで!」
「まずはその数を一気に減らすわ!」
こう言って口々に攻撃を浴びせるのだった。
「これでまずは減らして」
「次は」
「一点突破よ」
タリアはまた言った。
「いいわね」
「はい、それじゃあ」
「今度は」
彼等もそれに従って頷いた。
その一斉攻撃の後で一気に動くのだった。
敵の中央にこれでもかと攻撃を浴びせる。セティはそれを見て言った。
「正面から突破するつもりね」
「はい、間違いなく」
「その通りです」
部下達が彼女に対して答える。
「これは間違いなく」
「どうされますか?」
「それならそれでやり方があるわ」
だが彼女はこう言うだけであった。
「いいかしら」
「はい」
「それで一体」
「まずは突破させるのよ」
それだというのである。
「いいわね、突破させるのよ」
「えっ、このままですか!?」
「彼等にそれを許すのですか」
「そうよ」
まさしくその通りであった。
「わかったわね、それは」
「ですがそれは」
「そうです」
「あまりにも」
部下達は彼女の今の言葉にそれぞれ難色を示してきた。
「損害が大きくなります」
「しかもそこから陣を引き裂かれてしまいますが」
「陣は堅固でなくてもいいのよ」
しかしまだ言うセティだった。
「ただ」
「ただ?」
「といいますと」
「戦いに適していればいいのよ」
それだけでいいろいうのである。
「それだけなのよ」
「といいますと」
「ここは」
「ゼブ、ロフ」
二人にも声をかけるセティだった。
「いいかしら」
「ああ、わーーーかったよ」
「一旦二つに別れるのだな」
「そうよ」
二人に対しても平然としたままだった。
「わかってくれたらね」
「ああ、りょーーーかいってね」
「それが今のベストだからな」
「かわしましょう」
こう言ってであった。実際に動きはじめる彼等だった、
ロンド=ベルはそのまま敵陣を突っ切る。だがゲストは。
実にあっさりとその突破を許してしまった。
それを見てだった。タリアはすぐに悟った。
「どうやらこれはね」
「どうしたんですか?」
「見破られたわね」
すぐにそれを察したのである。
「どうやらね」
「見破られたんですか」
「ええ、間違いないわ」
こう言うのである。
「これはね」
「くっ、向こうもやりますね」
アーサーもそれを聞いて歯噛みした。
「どうやら」
「突撃はもうしないわ」
そしてこのことを決めた。
「いいわね」
「じゃあこのままオーソドックスにですか」
「そうよ、攻めるわ」
こう言うのであった。
「いいわね」
「はい、それじゃあ」
「見て」
そしてその敵陣を見るように言うのだった。
「動きがね」
「何か何もなかったみたいに元に戻ってますね」
「ああして損害を最小限に抑えたのよ」
そうしたというのである。
「逆らわずに突破を許してね」
「混乱もしていませんね」
「そうよ。だからね」
「ここはこのままですか」
「攻めるしかないわ」
まさにそれだというのである。
「ここはね」
「ではこのまま」
「攻めます」
「ええ、そうして」
二人にも言うタリアだった。
「正攻法ね」
「その正攻法も充分効果がありますけれどね」
アーサーはここでまた言った。
「充分に」
「そうね。何だかんだで向こうも戦力はかなり減ったわ」
「はい」
「それもあるしね」
冷静な戦力分析も為されていた。
「このまま攻めていけばね」
「いけますね」
「とにかくこのまま続けるわ」
これは変えなかった。
「それでいいわね」
「了解です」
「さて、ゲストとの戦いは」
タリアは少し話を変えてきた。
「いよいよ本格的にはじまるけれど」
「問題はあれですな」
エキセドルがミネルバのモニターに出て来て言ってきた。
「彼等の本拠地です」
「何処なのかしら」
「それを調べる必要もあります」
まさにそれだというのだ。
「これからは」
「そうね。何処かが問題だけれど」
「今まで戦いのあった場所はです」
「全て調べました」
美穂とサリーがエキセドルに言ってきた。
「それはもうです」
「既に」
「では火星でも木星でもないのですね」
「はい、月でもないです」
「土星もです」
「ふむ」
それを聞いてまた言うエキセドルだった。
「ではそれより外か」
「天王星でしょうか」
「あの辺りでしょうか」
「いえ、そうともばかり限りません」
エキセドルはこう二人に告げた。
「中かも知れませんよ」
「中といいますと」
「地球よりも」
「その可能性はゼロではありません」
そうだというのだ。
「それも考えていきましょう」
「わかりました」
「それでは」
そんな話をしたうえで戦いを続ける。彼等はゲストと正面から戦う。それはロンド=ベルにとって有利な展開のまま進んでいた。
「よし、このままだ!」
カミーユがメガランチャーを構えながら言う。
そうしてそこから一条の光を放ち敵を貫く光の周りで幾つもの光が生じる。
「出て来たからやられるんだよ!」
「カミーユ、エネルギーは大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ」
こうファにも返す彼だった。
「まだいける、充分だ」
「いけるのね」
「そう言うファはどうなんだ?」
「私もいけるわ」
彼女もだというのだった。
「充分ね」
「そうか。それならいい」
「ゲストの数も減ってきたわ」
それも言うファだった。
「大体半分を切ってきたわ」
「そうね」
ファの今の言葉にフォウも応える。
「このまま順調に進めていけばね」
「いけるわ」
また言うファだった。
「充分にね」
「そうね。それでカミーユ」
今度はエマがカミーユに声をかけてきた。
「このまま敵を正面から受けていればいいわ」
「突撃はしないんですね」
「それはかえってよくないわ」
こう言って止めるのだった。
「わかったわね」
「ええ、それじゃあ」
カミーユもエマのその言葉に素直に応えた。
「そうします」
「あれっ、カミーユも変わったわね」
それを聞いて言うファだった。
「前だったら人の話なんか聞かないで出ていたのに」
「戦いがわかってきた」
だからだというのである。
「それで。俺だって」
「そういうことだったのね」
「そうだ。だから俺はここでいい」
また言う彼だった。
「ここで少しずつ戦い続けて敵を減らしていく」
「そうね。それが一番ね」
ファもそれでいいというのだった。
「臨機応変ってことね」
「俺だって伊達にこれまで戦ってきたわけじゃない」
少なくともそれが言えるだけの場数を踏んではいた。
「だからだ」
「そういうことね。それじゃあ」
フォウが応えた。
「今はここで落ち着いてね」
「戦う」
こう言って戦いを進めていく。守りを固めるロンド=ベルの前にゲストは数だけを減らしていく。そうしてその中で遂にロフが言ったのだった。
「これ位か」
「あーーーら、終わりだっての?」
「損害が六割を遥かに超えた」
その損害の話をするのだった。
「このまま悪戯に数を減らしてもだ」
「そうね。何の意味もないわ」
セティも彼の言葉に頷いた。
「それじゃあここでね」
「撤退する」
今度ははっきりと言い切ったロフだった。
「それでいいな」
「まーーーあ、まだまだ後があーーるしな」
ゼブもそれでいいとした。
「撤退だーーーね」
「全軍金星まで戻る」
「何っ!?」
「金星!?」
ロンド=ベルの面々は今のゲストの指揮官の一人の言葉を聞き逃さなかった。
それは三将軍の言葉ではなかった。しかしだった。
確かに聞いた。間違いなかった。
「今確かに金星って」
「そう、確かに」
「言った」
「ああ」
それを確かめ合った。間違いなかった。
ロフもそれを聞いていた。そして内心舌打ちはした。
「まずいな。だが」
「閣下、申し訳ありません」
「いや、いい」
その部下も許したのだった。
「それはだ」
「いいというのですか」
「どのみちわかることだった」
ここでもロンド=ベルを侮っていない彼だった。
「仕方がない。それではだ」
「金星に戻りましょう」
「それじゃーーーな」
セティとゼブはまた頷いた。そうしてだった。
ゲストは撤退していった。ロンド=ベルはサイド6での戦いにも勝利した。
しかしであった。後に残った彼等はだ。すぐに次の戦いの準備にかかることになった。
「金星だな」
「はい」
「間違いありません」
シナプスの言葉にパサロフとジャクリーンが応える。
「ではこれからは」
「金星に向かって」
「そうなる。では全軍に告ぐ」
彼の指示は素早かった。
「補給を受けた後で金星に向かう」
「了解です」
「それでは」
こうして次の方針が決まった。ロンド=ベルは金星に向かいそこでゲストを戦うことになった。
サイド6で補給を受けながらだ。彼等はその話をしていた。
「そういえば金星ってな」
「ああ、そうだよな」
「行くのはじめてだぜ」
「全くだな」
闘志也の言葉に弾児と豹馬、そして健一が応えていた。
「金星での戦いっていいったら」
「どういう感じだ?それで」
「いや、俺は知らないぜ」
「悪いが俺もだ」
それで困っているとだった。ここでクワトロが出て来て四人に言ってきた。
「深く考えることもない」
「あれっ、大尉」
「そうなんですか」
「そうだ。月や火星での戦いと同じだ」
そういったものと同じだというのだ。
「特に思うこともない」
「そうなのか、それじゃあ」
「特に不安になることもなく」
「行けばいいんだな」
「むしろ不安に感じる方が問題だ」
クワトロはその方を警戒しているのだった。
「例えはじめての戦場であってもだ」
「じゃあ今はだ」
「補給を受けてそれで」
「向かうか」
「リラックスしてだな」
四人もそれで納得した。こうして彼等はリラックスして金星に向かうことになった。
その頃金星に戻ったゲストの三人は。彼等の部屋の中で難しい顔をして話をしていた。
「インスペクターは地球人達との講和をはじめているらしい」
「そうなの」
「まーーーあそれで当然だーーーね」
セティとゼブはロフからそれを聞いてこう言うのだった。
「それもね」
「強硬派のウェンドロがいなくなったーーーんだ」
「我々も同じか」
ここでロフはこんなことも言った。
「強硬派こそがだ」
「ゼゼーナン司令ね」
「あの人だーーね」
「説得は無理か」
ロフはそれはもう最初から諦めていた。
「やはりな」
「言って聞く人ではないわよ」
「諦めるこーーーとだね」
「そうだな。それではだ」
「どうするの?」
セティはあらためて彼に問うた。
「それで」
「やはり戦うしかない」
これがロフの考えだった。
「そのゼゼーナン司令に従ってだ」
「それしかないのね」
「そうだ。例えインスペクターが地球人と講和を果たしてもだ」
それでもだというのだ。
「我々は軍人だ。命令に従うしかない」
「そーーいうことだーーーね」
ロフのその言葉に応えるゼブだった。
「そんじゃーーーーまーーーあやりますか」
「そうね。それしかないし」
セティも結局のところこう結論を出すしかなかった。
「戦い続けましょう。ただ」
「ただ。何だ?」
「最近本国、特に元老院でゼゼーナン司令の評価が低いそうね」
「その様だな」
それはロフも知っていたことだった。
「その強硬路線がな」
「無理もないわね」
そしてセティはまた言った。
「ウェンドロもそうだったけれどね」
「あの男も同じだった」
ロフはウェンドロに対してこう評した。
「所詮はな」
「それーーー言ったら未来わかーーーったよ」
ゼブがここでまた間延びした声を出してみせた。
「同じーーー結末ってことーーだよな」
「そうなるわね」
そしてセティも言った。
「少なくとも私は地球人はね」
「そーーだな。俺達と変わりないーーさ」
「偏見はかえって自身の破滅を招く」
ロフも言った。
「そういうことだな」
「その通りね」
彼等も見えていた。あらゆることがだ。そうしてその中で言い合うのであった。

第百七十九話完

2010・1・4
 
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