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戦国異伝

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第百十三話 評定その四

「人の為とは違い」
「そういえば己のことしか考えぬ奴は所詮小者じゃ」
 滝川は竹中の話からこう考えた。袖の中で腕を組み述べる。
「強欲であっても知れている」
「それが他の方の為ならば」
「他者の為に動く者は強い」
 滝川はこうも述べる。
「それもかなりのう」
「はい、ですから」
「猿達は強欲となるか」
「そう見受けます」
「そうじゃな。言われてみればな」  
 滝川は竹中の言葉に頷く、まさにそうだというのだ。
 そうした話もして評定は終わった。織田家は一門衆も含めて主だった家臣達は皆思いも寄らぬ栄達となった。そうしてだった。
 池田と森もそれぞれ思いも寄らぬだけの石高を貰った。それで彼等も評定の後で唸る様な顔になりこんなことを話していた。
「やはりこれだけ貰うとのう」
「そうですな」
 池田は森のその言葉に確かな顔で頷く。
「正直驚くものがあります」
「全くじゃ。わしは十五万石でのう」
「それがしは十一万石です」
 池田もそれだけの禄の持ち主となっているのだ。
「これだけ貰えるというのは」
「予想もしておらんかったわ」
「しかもです」
 ただ石高を貰っただけではなかった。さらになのだ。
「茶器も弾んでくださいましたし」
「うむ、わしも貰った」
「権六殿達は茶会を開くことも出来る様になりました」
 これまでは信長しかできなかったが柴田達主だった家臣達はそれを開くことも許されたのである。これまた大きなことだった。
「かなりのものですな」
「織田家がそれだけ大きくなったということでもあるし」
「はい」
 池田も頷いて答える。
「よいことじゃ」
「そうですな。それでなのですが」
「殿か」
「今人を呼んでいますが」
「大谷とかいったのう」
 森もこのことは知っていた。
「確か」
「はい、大谷吉継といいます」
「殿はとかく優れた者を求められる」
 このことにはとかく貪欲だ。それで織田家には多くの人材が集まり存分に力を発揮してもいるのである。
「そして見事に使われておる」
「ではその大谷という者も」
「使われるであろうがどうやら」
「はい、その者だけではありません」
「他にもまだ探しておられる様だが」
「といいますとやはり」
 池田はここでおの者の名前を出した。
「島左近ですか」
「あの者を諦めておらんのではないか」
 森はこう察していた。
「そうではないだろうかのう」
「鬼左近まで入れるとなると」
 ここで池田はこう言った。
「相当なものになりますな」
「うむ、噂では戦場で自ら鬼の如く戦い」
 それで鬼と呼ばれている、そこまで強いというのだ。
「そして策も練るという」
「戦う軍師か」
「滅多にない御仁でありますな」
「うむ、その者をどうして用いるのか」
 また言う森だった。
「気になるが」
「しかし当家に来るでしょうか」
「まずそれはない」
 森は結論から言った。
「幾ら何でも織田家の石高の半分も出せるものではない」
「はい、三百八十万石になりますと」
「わし等が貰った石高を全て合わせたよりもまだある」
 彼等のそれを合わせて三百六十万石だ。それと比べて二十万石も多い、それだけの石高を出せるかというと。 
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