転生者達による神世界開拓記
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閑話
第十四話
ゲートポートで移動した後も気持ち悪さが続く。暫く足止めを喰らわされましたよ。
「アイシア……」
「な、何でそんな恨めしそうに見てるのかな?」
「分かんないの?ホントに?」
「ご、ごめんなさい……」
「はい、よく出来ました。二度としないでよね」
「うん」
サクラとアイシアのやり取りを余所に、俺は辺りを見回す。見覚えのある場所、原作で描写の合ったゲートポートといえばウェールズだけだった筈。
「ここはウェールズか……?」
「うぇーるず?」
「地球にはオスティアみたいな国がいっぱいあるんだ。ウェールズはその一つって訳だ」
「へ~」
「地球は魔法世界と違って亜人も竜も魔獣も極端に少ない。だから不用意に竜化するなよ」
「うにゃ~」
「それは残念だね……」
神代の時代にはそれなりにいたんだろうが殆どが討伐の対象だ。ジークフリードやゲオルギウスは竜を討伐して英雄になったんだし。
「それじゃ地道に日本を目指していくか」
「にほん?」
「俺の故郷、ていえばいいのか。そんな感じだ」
「お兄さんの故郷……」
「お兄ちゃんが育った所……」
「途中で寄り道するから着くのは二百年ぐらい先になるだろうけどいい?」
「お兄ちゃんが行くならボクは着いて行くよ」
「あたしも。除け者にしようだなんて許さないんだから」
「……ククッ」
「「あ~!」」
全く……可愛い奴等だよ。 (※やっぱり幼女の怒り顔には勝てなかったよ)
「何で笑うの~!?」
「うにゃ~!」
「何でもない。それじゃ行くぞ~」
こうして一行の徒歩と飛行と、ときどき暴走の珍道中は始まった。日本に着くまで終わりそうにない。
「……んで、どうしてこうなるのかな……?」
……早速躓きそうになったがな。
~~~ローマ・森の奥地~~~
余の半生は波乱と陰謀に塗れた人生だった。
余は皇帝の嫡子としてではなく、その一族の末端として生を受けた。後ろ盾もなく、皇帝の座など望めるべくもない父の子として。
そんな余が皇帝の座に就いたのは母の淫蕩さ故だった。皇帝の再婚した母は余を皇帝にする為、様々な姦計を行ったらしい。その中で最もたるものは皇帝暗殺。四代皇帝クラウディウスは何者かの手によって倒れ、義父から相続で余は五代皇帝の座に就いたのだ。
我が子を道具としてしか見ぬ家庭で育った反動か、余は名高い貴人よりも名もない市民を愛した。腐りきった国政にも、特権化した元老院にも真っ向から立ち向かってやった。後に余は暴君として罵りあげられよう……しかし、譲れぬ改革を貫いた結果に後悔はない。
全ての間接税を廃止し、減税し、国民に祝い金も与えてやった。元老院から感謝の言葉には皮肉を返してやった。
勿論、全ての改革が易しい道であったという訳ではない。元老院州属と皇帝州属を統合し、国庫を一本化し始めた時から、元老院との対立はより激しいものとなった。
それに加え、母であるアグリッピナの問題も年々肥大化していった。やはり余を“皇帝の母にする”為の舞台装置としか見ていなかったらしい。
一向に進まない元老院との和解、私欲で政策に口を出す母。それが余の道を踏み出す切っ掛けだったのかもしれぬな。
最初に余は母の暗殺を決意した。元老院との対決前にどうしてもやっておかねばならぬ案件だった、しかし、暗殺は悉く失敗に終わり、とうとう公然の場で斬り捨てるしか他なかった。
「―――この者は余に毒を盛った。母であれ、皇帝に反する者は死罪である」
この出来事が暴君と評されるに値するものだったのだろうな。
それと頭痛が症状として出始めていた。原因は分かっている……母だ。幼い頃から逆らえぬよう毒と解毒薬を一緒に飲まされていたのだろう。母を斬り殺し、解毒薬の入手方法を失った余は常に熱に浮かされるようになった。
その頃から余の歩んだ道は随分と捻くれてしまった。母に強制的に婚姻させられた妻、オクタヴィアの自殺。自身の権力をより強固にする為の、義弟の殺害。そして―――唯一の師であり、心から頼りにしていた、哲学者セネカの自殺。確かな父を持たぬ余にとって父のような存在だったセネカの自刃には堪えざるを得なかった。
市民に絶大な人気を誇った余は、同時に親族達に死と恐怖を撒き散らす悪魔となっていたのだ。
チルコ・マッシモから起きた火災で火災跡に黄金宮殿の建造を行った余は市民達に火災犯だと囁かれる様になった。真犯人を断罪したとしても、一度たった煙はそう簡単に消えぬ事を思い知った。
その後、ガリアで反乱が起きた。余はそれを放っておいた。熱に浮かされた身ではもう正しい判断が出来なかったのだろうな。時が経ってまたガリアで反乱が起きてしまった。元老院に皇帝の座を追われ、国賊として裁かれる身となってしまった。
余は市民達に尽くした。市民達も余の政策を喜んでくれた。だから―――市民達が、余の退位を許しはしないと考えていた。
―――だが、何もなかった。彼らからは、何もなかった。そして―――今に至る。余の目の前には珍妙な格好をした男がいた。
~~~~~~
俺は目の前で珍妙な格好をした女性?に出会った。ある~日♪ 森の中♪ 痴女~に♪ 出会った♪ 花咲く森の道~♪ 痴女に出会った~♪
「貴、様は……?」
「森の熊さんです」
「戯け……」
因みにサクラとアイシアは俺の後ろに隠れてます。俺を盾にする気か!?
「君は何をしてるの?」
「分か……らん……か……?」
「う~ん……野外プレイ?」
「馬鹿、者……外でなど、する……か……逃げ、て……お、るの……だ……」
「……君の名前は?」
「ネ、ロ……ク、ラ……ウ、ディウ、ス……」
ネロ、逃げている、ローマ、女性……という事はコイツは赤セイバー!?年取ってるから分からなかったよ(失礼)
「貴、様……何か……失礼、な事……考え……て、ないか……」
「……ソンナコトナイアルヨ」
「後……で、覚え……て……おく、のだ……ぞ」
「後があるのか?そんな状態で」
「…………」
「……しゃーないな」
ひょいっとネロを担ぎ上げる。結構軽いな……サクラやアイシア程じゃないけど。
「止め……ろ……何、を……する……?」
「旅は道連れ余は情け、ってね。追手も来そうな感じだし、少しショートカットしようかね」
目の前にスキマを開け、潜ろうとする。ふと後ろを振り向くとサクラとアイシアは歩みを止めている。躊躇しているようだった。
「何してるんだ?早く行くぞ」
「だって……」
「目玉がたくさん……」
「すまんが慣れてくれ」
ローマからアンカラまで直通のスキマでLet's go! (※ローマ:イタリアの都市 アンカラ:トルコの首都)
~~~アンカラ・開けた草原~~~
スキマを潜った後、ネロは眠っていた。衝撃を与えないように前を進んでいたら、いつの間にか夜になっていた。この時代に上等な宿屋なんてないし、こりゃ野宿かな。
「おーし、今夜はここで野宿にすっぞ」
「OKだよお兄ちゃん」
「了解ですお兄さん」
「サクラはテント建て、アイシアは料理を頼む」
「うん!」
「にゃはは、任せて~♪」
二人ともやる気に満ち溢れてんな……やり方は前もって教えてあるから大丈夫だろう。それよりも問題はコイツだ。
「うぅ……」
能力で作った布団で寝ているネロ。今も魘されてる。
「大魔導転籍、14ページの魔法参照、詠唱開始……異常回復」
光が彼女を包み込む。発光が終わると穏やかな顔に戻っていた。彼女を悩ませた頭痛も多分治ると思う。
「後は服を脱がせて……」
汗の染み込んだドレスっぽい服を脱がせ……そういやこの時代に下着という概念はなかったな。適当に寝間着でも着せとくか。
「すぅ……すぅ……」
これでよしっと。あのドレスは12ページの澄み透る白で清潔にしたし、大丈夫だろう。
「お兄さん、料理出来たよ~」
アイシアの手料理は野性的でした。材料も肉類しか減ってない。急いでサラダも作り、二人に食べさせた。竜は野草は食べないのか初めて食ったかのような顔をしていた。直後に美味しいと言ってたので良かったと思う。風呂は……明日に天満神で雨でも降らせるか。今日はもう寝よう。
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