スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百六十四話 混戦
第百六十四話 混戦
アクセルが戻ったロンド=ベルは次の日にはまた出撃することになった。
「今度はポーランドかよ」
「グダニスクよ」
そこだと甲児に教えるシモーヌだった。
「知ってるわよね」
「前はダンチヒっていったっけ」
こう返す甲児だった。
「確かな」
「そうよ。まあ歴史的には色々ある街ね」
「ポーランドね」
リューネはポーランドと聞いて少し懐かしいような微妙なような顔になっていた。
「そういえばあたしのルーツはそこにあるんだよね」
「そうだったな。君はポーランド系アメリカ人だったな」
「ああ、そうなんだよ」
こうヤンロンにも返す。
「親父が元々そこの生まれでね」
「そして移住してか」
「そういうこと。まあアメリカだからね」
アメリカは移民の国である。それはリューネも同じだというのである。
「って言っても実際のところポーランドのことは知らないんだけれどね」
「そういえば行くのはじめてだよな」
マサキが言った。
「通り過ぎたことはあったか?」
「それ位ですかね」
デメクサも言う。
「ポーランドは」
「ふむ、行っていない国も結構あるのだな」
ジノはそれを聞いてこう述べた。
「地上においても」
「そうだな。ラ=ギアスでもラングランやシュテドニアス、それにバごニアでは戦ったが」
ファングもジノに続く。
「それでも地域としては限られている」
「けれど自分と広い気がしたな」
トッドはそのラ=ギアスでの二度の戦いを思い出しながら述べた。
「色々個性的なおっさんもいるしな」
「そりゃわいのことか」
ロドニーがすぐに反応してきた。
「その個性的なおっさんっていうのは」
「自分で言うのもどうかと思うけれど」
こう突っ込みを入れたのはマーベットだった。
「自覚はあるのね」
「うっ、しまった」
「閣下、言葉には気をつけて下さい」
横からエリスが出て注意する。
「さもないと」
「わかっとるわ。今のは失敗やった」
自分でもそれを認めるロドニーだった。
「まあそれでもや。ラ=ギアスでも地上でも戦う場所は結構決まってるってことやな」
「そうだな。ポーランドにはあまり大きな軍事基地はない」
「連邦軍の基地はドイツに集中しているからな」
アレンとフェイがこう話す。
「精々そのグダニスク位だ」
「それを考えれば戦場にならないのも当然だな」
「それで今度は何が出て来たんだ?」
「ゲストみたいだね」
ガラリアが彼等だと告げた。
「何か南からうじゃうじゃと来てるみたいだよ」
「そうか、ゲストか」
「今度は連中なのね」
ニーとキーンは彼等と聞いて目を決っしさせた。
「今度も先に街に入りたいな」
「そうよね。街を渡したくないから」
「それではです」
彼等の言葉を聞いたシーラが口を開いた。
「速度をあげましょう」
「わかりました」
カワッセが彼女の言葉に応える。
「それでは全艦」
「そしてですが」
今度はエリがエイブに問うた。
「艦長、ゲストの動きは」
「今は静かです」
こう答えるエイブだった。
「速度も緩やかです」
「そうですか。それでは」
「好機ですね」
リムルが言った。
「それでは今のうちに」
「そうだな。行こう」
ショウはリムルの今の言葉に頷いた。
「何なら先発隊も出した方がいいか」
「いや、そこまではいいだろう」
血気にはやろうとしていた彼をシオンが制止した。
「そこまではいい」
「いいか」
「それよりも周囲に警戒しながら進むべきだ」
彼はそうすべきだというのである。
「何時どういった勢力が出て来てもいいようにな」
「速度をあげながらもだな」
「そういうことだ」
またショウに述べるシオンだった。
「そのうえでそのグダニスクに向かおう」
「何か今度もこれで終わりじゃないんだろうな」
トカマクはこんなことを呟いた。
「またゲスト以外にも出て来そうだな」
「そういえば最近バルマー帝国見ないわね」
「そうだね」
エルとベルがここでこんなことを言った。
「宇宙でじっとしてるのかしら」
「また変なこと考えてなければいいけれどね」
「そうよね。連中のことだからまた物凄い数集めて」
「来てもおかしくないわね」
チャムとシルキーも二人の話からこのことを危惧した。
「いきなり出て来て」
「潰しにかかるとか」
「有り得ることだな」
それを聞いたゼンガーが述べた。
「どちらにしろ今はだ」
「気が抜ける状況ではない」
アクセルも言った。
「そのことは覚えておこう」
「その通りだ」162
グダニスクに着くともうゲストが南方に展開していた。軍を率いているのは。
「あら、久し振りね」
セティだった。彼等を見て楽しそうに声をあげる。
「ロンド=ベルが相手っていうのも」
「何の用だ」
ジェスがその彼女に対して問う。
「御前達のことは聞いているが」
「こっちも貴方達のことは聞いてるわよ」
セティは楽しそうに笑ってジェスに言葉を返した。
「ロンド=ベルの新戦力ね」
「それがどうしたっていうのよ」
「別に」
パットの言葉には楽しそうに笑って返すのだった。
「ただ。急に出て来たから面白いなって思ってるだけよ」
「面白いっていうのならよ」
ここで言ったのはヘクトールである。
「俺の落語はもっと面白いぜ」
「それは面白いの意味が違うでしょ」
ミーナがすぐに彼に突っ込みを入れる。
「あの人が言うのとは」
「そうみたいですぅ」
グレースはいつもの調子だった。
「あの人結構真面目ですよお」
「それではだ。真面目にやらせてもらおう」
アーウィンは単刀直入だった。
「ゲストとの戦いをな」
「よし、まずは街には入ったしな」
「これでまずは安心できる」
イルムとリンはまずこのことに満足した。
「それならだ。次はだ」
「御前達の番だ」
「全軍北へ」
セティは冷静にこう述べた。
「それであの街を占領するわよ」
「全軍迎撃用意」
ロンド=ベルも迎え撃つ準備に入る。テッサが全軍に告げる。
「それで御願いします」
「了解」
「それじゃあ」
こうしてロンド=ベルとゲストの戦いが幕を開けようとしていた。しかし戦ってすぐに。東から別の軍勢が姿を現わしてきたのであった。
「!?これは」
「バルマー帝国!?」
「まさかここで」
「やはり動いたね」
「はい」
ゴッドマーズとゼーロンもあった。ゴッドマーズに乗るマーグの言葉にロゼが頷く。
「本当に予想通りだね」
「全くです。では司令」
「うん」
ロゼの言葉に頷くマーグだった。
「攻撃はどちらに」
「双方に攻撃を仕掛けよう」
ロンド=ベルにもゲストにもというのである。
「数はこちらが圧倒している。一気に押し潰そう」
「わかりました。それでは」
こうしてバルマー軍も来た。ロンド=ベルはそれを見て。
「糞、来たぜ!」
「どうする!?」
「両方相手にする!?」
「いや、諸君落ち着くのだ」
ここで大文字が全員に告げてきた。
「今はだ。落ち着く時だ」
「!?というと」
「どうするんですか?博士」
「ここは」
「我々はこのままでいい」
こう言うのである。
「市街地の外の軍事基地の中にいるな」
「ええ、そうですけれど」
「それは」
「それならばだ」
さらに話すのだった。
「ここでこのまま守る」
「バルマーもゲストも」
「両方相手にするんですか」
「その通りだ。守りをこのまま固めてだ」
まさにそうするというのである。
「わかったな。そのままだ」
「いけますかね、それで」
「ゲストとバルマー両方相手にして」
「いける!」
こう言ったのはサンシローだった。
「数は問題じゃない。やる気だ!」
「そうだな」
「今はサンシローの言う通りだ」
リーとピートが彼に賛成する。
「ここはどちらかを相手にしてもだ」
「どのみちやられるだけだ」
そう判断してのことでの賛同だった。
「そうですね。ここはです」
「守るのが一番ってことだな」
ブンタとヤマガタケも二人に続く。
「守りを固めましょう」
「守る場所は多いしな」
「そうだな。ここは施設を利用して立て篭もるのがいい」
サコンも大文字の横で頷いた。
「それが吉だ」
「では博士」
「うむ」
あらためてミドリの言葉に頷く大文字だった。
そうしてそのうえで。あらためて指示を出すのだった。
「このまま基地の中に。そこで守り抜こう!」
「了解!」
「わかりました!」
皆彼の言葉に頷き守りに入った。そこにゲストとバルマーの大軍が来た。しかし彼等はその軍事施設の守りに阻まれ満足に損害を与えられなかった。
「くそっ、駄目だ!」
「攻撃が当たらん!」
バルマー帝国のパイロット達が歯噛みする。
「只でさえ守りが上手い連中だというのに」
「これでは尚更だ」
そしてゲスト側も同じだった。中々攻撃が当たらないロンド=ベルの軍勢を見て後方で渋い顔をして戦局を見ているのであった。
「困ったわね。ああされたら下手なことはできないわね」
「では司令」
「ここはどうされますか?」
「市街地の一般市民を狙い誘い出す」
セティは不意にこんなことを言ってきた。
「そういうのは駄目よ」
「それはですか」
「駄目ですか」
「そうよ。これはゼブもロフも同じだけれど」
彼等にしてもというのである。
「敵とはいえ一般市民を狙うのは駄目よ」
「それではここは」
「市街地には入らずにこのまま攻めるわ」
そうするというのである。
「いいわね、それで」
「それではですが」
「何?」
部下の一人の言葉に顔を向けるセティだった。
「何か考えがあるのかしら」
「はい、西に回りです。
「市街地の守りを頼んで攻められては如何でしょうか」
「市民達を狙うのはなく」
「そうね」
それを聞いてであった。セティは考える顔になった。
そのうで、だった。こう言った。
「それなら問題ないだわ。空から狙うのならね」
「はい、それでは」
「それによ」
セティはさらに言う。
「このままバルマーの攻撃を受け続けながらというのもね」
「そうですね」
「それは」
彼等にとってもよくなかった。彼等にとってもバルマーは敵であるからだ。
「では西に回って彼等をやり過ごして」
「それで」
「そういうことよ。いいわね」
「はい、わかりました」
「それでは」
こうしてゲストは西の市街地方面から空から攻撃を仕掛けてきた。しかしそれでもロンド=ベルは基地から出ることなく戦い続けるのだった。
「よし。、このままだ」
「はい」
「わかりました」
オズマの言葉にミシェルとルカが頷く。
「このまま守ってですね」
「敵の数を減らしていって」
「そうだ。今はだ」
そうするというのである。バルキリーは今はどれもガウォークやバトロイドになっている。
「それがいい」
「ええ、じゃあ」
「敵の数を減らしていって」
「弾薬やエネルギーですけれど」
ここでアルトも言ってきた。
「基地のがありますからそれを使って」
「そういうことだ。その心配は無用だ」
オズマは彼の言葉にも応える。応えながらガンポッドで攻撃を仕掛け続ける。
「思う存分戦えるぞ」
「ただ。反応弾や他のミサイルが使えないのが」
「少し困りますね」
ミシェルとルカはそれがいささか不満だった。
「まあ贅沢は言っていられませんね」
「今は守りですよね」
「その通りだ。敵の数は確実に減ってきている」
オズマはバルマーのマシンを一機撃墜したうえで述べる。
「堪えていればいい」
「そういうことですね」
「それなら」
「敵の数半分になりました」
アルトが言った。
「バルマーの方はです」
「ゲストはどうだ?」
「今は六割残ってます」
それだけだというのである。
「何とか減ってきましたね」
「そうだな。どちらが先に撤退してくれるかだな」
「そういうことですね」
アルト達は戦い続ける。他の者達もだ。タケルもまたゴッドマーズで東から殺到してくるそのバルマーの大軍を相手にしていた。
剣を縦に横に振るい切り裂いていく。その中で見ているのは。
「兄さん!」
「やはりいたか」
マーグを見ているのだった。
「まだわかってくれないのか、まだ」
「わかるわからないもない」
冷たい言葉で返すマーグだった。
「私はバルマーの司令官だ。それだけだ」
「その通りです」
ロゼが彼の横から告げてきた。
「貴方はバルマー帝国軍銀河辺境方面軍司令官であります」
「そうだね」
「はい、そうです」
まさにそれだというのである。
「ですからあの様な者の戯言に気を取られないことです」
「わかっているよ」
ロゼの今の言葉に対して微笑んで応えるマーグであった。
「それはもうね」
「はい。それでは」
「一度ロンド=ベルに総攻撃を仕掛けよう」
そうするというのである。
「ここはね」
「総攻撃ですか」
「我が軍の消耗が激しい」
彼はそれも見ているのだった。
「このままだとただ消耗するだけだ」
「はい、今は四割にまでなっています」
「これ以上消耗を続けるよりは」
こう言うのである。
「一撃で決めてしまおう」
「わかりました。それでは」
「全軍突撃態勢に入れ」
マーグは指示を出した。
「そして一気にロンド=ベルを突き崩しゲストも一緒に叩く」
「はい、それでは」
「兄さん、何故わかってくれないんだ」
攻撃命令を出す兄にまだ言う弟だった。
「どうして。俺の言葉が」
「タケル、気持ちはわかるがだ」
レイがここで彼に言ってきた。
「今はその時じゃないということだ」
「その時じゃない」
「そうよ、絶対にお兄さんを取り戻せる時は来るから」
ミレーヌも彼に言うのだった。
「諦めないで、絶対に」
「絶対に」
「おうよ!諦めたらそれで終わりだ!」
バサラは言いながらその手にあるギターを奏でる。やはり今も赤いバルキリーに乗っている。
「だからよ。俺の歌を聴いて踏ん張れ!」
「そうだね」
彼等の言葉で気を取り直したタケルだった。
「それじゃあ」
「来ました!」
「バルマーが全軍で!」
「よし!」
それを聞いた大文字はまずは頷いたのだった。
「このまま防ぐぞ。いいな諸君!」
「はい!」
「わかりました!」
皆それに応えて身構える。そうしてバルマーの矢を受け止めるのだった。
「まだだ!」
「この程度で!」
言いながら攻撃をかわしてその剣を受け止める。それにより相手の攻撃を防いだ。
そのうえで反撃に転じる。一斉に総攻撃を浴びせたのだ。
「今度はこっちの番だぜ!」
「これでどう!?」
一斉にビームやミサイルを放つ。まさに総攻撃だった。
無数のビームやミサイル、ファンネルの類が放たれる。アスランもまたその中にいた。
「よし、これだ!」
ロックオンを伝える音を聞きながら言う。
そうしてインフィニティジャスティスを動かし。その攻撃を放った。
ビームがそれぞれのロックオンした相手を貫く。それによりバルマーのマシンを一斉に潰したのだった。
これでバルマーの攻撃は止まった。そしてすぐに返す刀で。
「次はだ!」
「ゲストよ!」
反転するようにしてその攻撃をそのままゲストにも浴びせた。するとだった。
ゲストも回復不可能なダメージを受けた。それを見たセティはすぐに判断を下した。
「総員撤退よ」
「撤退ですか」
「これで」
「ええ。もうこれ以上の戦闘は無理ね」
だからだというのである。
「だから。撤退よ」
「はい、それでは」
「これで」
ゲストはすんなりと撤退した。そしてバルマーも。
「動きは止められたね」
「損害も八割近くになっています」
「よし、下がろう」
マーグも決断を下した。
「これでね」
「わかりました。それでは」
「それにしても」
撤退を決めたうえでさらに言うマーグだった。
「ロンド=ベルだけれど」
「彼等が一体」
「さらに強くなったね」
こう言うのであった。
「前よりもね」
「はい、確かに」
ロゼもそれは感じていることだった。
「それもかなり」
「やはり全艦隊を集結させよう」
マーグは考える顔で述べた。
「そしてそのうえで」
「まずは彼等を」
「うん、地球圏を攻略するにはまず彼等だね」
そう見ているのであった。
「だから各艦隊に指示を出しておいてくれ」
「はい、それでは」
こう話をしたうえで撤退する彼等であった。こうして戦場にはロンド=ベルだけが残った。
しかしであった。今度は北だった。バルト海にシャドウミラーの軍勢が姿を現わしたのである。
「今度はこの連中かよ!」
「また出て来るなんて!」
「おやおや」
彼等を率いているのはアーチボルトだった。
「ここで御会いするとは。これも何かの縁でしょう」
「縁は縁だな」
ククルが彼に応えた。
「いいか悪いかは別にしてだ」
「おやおや、これは」
ククルのその言葉を聞いても彼の態度は変わらない。
「嫌われたものですね、私も」
「嫌っているのは否定しない」
ククルの返答はきついものだった。
「それはな」
「ではどうされるというのですね」
「戦う」
今度は一言だった。
「それだけだ」
「そうですね。それではです」
「行くぞ」
ダイゼンガーの剣が構えられた。
「それではだ」
「はい、それでは私もです」
彼の後ろにはまたあのイーグレット達がいた。
「参ります」
「我々もだ」
「やらせてもらう」
そのイーグレット達が言ってきた。
「それでいいな」
「覚悟するのだ」
「言われなくても来るんじゃねえか」
アラドは不満そうな声でこう彼等に返した。
「ったくよお、本当に嫌な気分だよ」
「気持ちはわかるわ」
ゼオラがその彼に言ってきた。
「私だってね。自分がああいうふうに使われたら嫌だし」
「ゼオラもかよ」
「当たり前でしょ、それは」
こう返すゼオラだった。
「あんな訳のわからないコピーにね」
「それが普通よ」
こう彼女に告げるオウカだった。
「それじゃあ。今度はシャドウミラーに向かって」
「よし、全軍海岸にまで移動しろ」
ここでブレスフィールドが指示を出してきた。
「そしてそこで食い止めるぞ」
「もう基地には」
「入らない」
フェアリに対しての言葉である。
「敵の勢力が一つだけになったからな」
「わかりました」
フェアリはそれを聞いて納得した声で頷いた。
「それではその様に」
「じゃあ行くか」
「ええ」
ラウルとフィオナが言い合う。
「それで奴等を倒してだ」
「ここでの戦いは終わりね」
「ヴォータンとアーチボルトは俺が相手をする」
ゼンガーが言った。
「あの二人だけはだ」
「二人もって」
「少佐、それは」
「いや、やる」
他の者には言わせなかった。
「あの二人はだ」
「わかりました」
トウマが最初に彼の言葉に頷いたのだった。
「少佐、じゃああの二人は御願いします」
「うむ」
「それじゃあ皆で海岸に出て」
「そこで戦うとしよう」
こうして彼等はすぐに基地を出て海岸に布陣した。そしてそこで北から来るそのシャドウミラーの軍勢を迎え撃つのであった。
先頭にはヴォータンがいた。彼も剣をかざし。
「参る!」
こう言ってゼンガーに突き進むのだった。
すぐに両者の剣と剣が激突する。それがはじまりだった。
ロンド=ベルはシャドウミラーの軍勢と戦闘に入った。またしても激しい戦いとなった。
「いいか、今度はだ!」
「ええ!」
「ミサイルをどんどん使ってですよね!」
「その通りだ」
金竜がフィジカとドッカーに告げていた。彼等はバルキリー形態で戦っている。
「もうな。基地の守りはないからな」
「それはそれで厄介ですけれど」
「やっぱりバルキリーはミサイルですね」
「その通りだ。ミサイル発射!」
叫びながら反応弾を放つ。
それで敵をまとめて炎に包む。バルキリーは派手に暴れ回っていた。
ミサイルが多くの敵を倒してもシャドウミラーは次々に来る。しかしここで。
ふとガムリンが気付いたのだ。
「むっ!?」
「どうしたってんだ?」
その彼にムウが声をかける。
「急に立ち止まった感じになってよ」
「いえ、あのアーチボルトとイーグレット達ですけれど」
彼等を見ての言葉であった。
「動きませんね、全然」
「んっ!?そういえばそうだな」
言われてムウも気付いた。言いながらドラグーンを放つ。
「何か全然動かないな」
「そうですよね。後方に留まったまま」
「どういうつもりなんだ?」
ムウもここで顔を顰めさせた。
「威勢のいいことを言っていた癖にな」
「臆病風に吹かれたとは思えませんし」
「ああ、それはない」
これはもうはっきりとわかることだった。
「それはな。絶対にないな」
「そうですよね、それは」
「だとしたら何なんだ?」
あらためてそのことを考えるムウだった。
「あいつ等、一体何を考えているんだ?」
「見たところ」
キースがエメラルドグルーンのメビウスから言ってきた。
「あれですね。様子を見ているみたいですね」
「様子!?」
「ええ、俺達の戦いをですよ」
こう言うのである。
「何かそんな感じじゃないですか?あれは」
「そうだな」
ロウもその彼等を見て言った。
「何かそんな感じだな、あれは」
「何でだ?連中にとっても正念場じゃないのか?」
ムウは二人の言葉を聞いてまたいぶかしんだ。そうしながらも戦闘は続けている。
「それで何で動かないんだ?」
「そこまではわからない」
イライジャがそのムウに対して述べた。
「しかしだ」
「しかしか」
「そうだ。何かがあるのは間違いない」
彼は言った。
「それは間違いない」
「だとしたら一体」
また言うガムリンだった。
「何の為に」
「さてな、まあどっちにしろな」
ここで言うムウだった。
「これだけは確かだな」
「これだけはとは?」
「その理由と目的は碌なものじゃない」
こう言うのだった。
「あいつのことだからな」
「そうですね、それは間違いありませんね」
キースもそれはその通りだと答えた。
「あいつですからね」
「どうせまた俺達にとんでもねえことをしてくるつもりだ」
「じゃあ今のうちに」
「叩くか」
ロウとイライジャが前に出ようとする。
「ここで潰しておけば」
「それも可能だ」
「いや、残念だがそれは無理だぜ」
エドがここで二人を止めた。
「残念だけれどな」
「くそっ、そうだな」
「今はな」
見れば彼等は後方にいる。ロンド=ベルの前にはシャドウミラーの軍勢が何重にも展開している。それを突破してすぐに彼等のところに行くのはどう見ても不可能だった。
「無理か」
「今は戦うだけしかできないか」
「戦うしかないが」
ここでまたククルが言った。
「それこそが思う壺なのかも知れない」
「ちっ、忌々しい奴だ」
ムウにしろ今は歯噛みするしかなかった。
「こっちからはどうしようもねえってわけか」
「今はそうでもですよ」
今度はフレイが出て来た。彼女は今もアカツキに乗っている。
「後でどうにかしないと」
「どちらにしろシャドウミラーとは近いうちに決着をつけることになる」
今言ったのはアルフレドである。
「その時にわかっても遅くはない」
「そういうことですか」
「そうだ。時として簡単に考えろ」
生真面目なガムリンに対しての言葉であった。
「さもないと額がだ」
「ですからこれは生まれてからです!」
額についてはすぐに反応する彼だった。
「何の問題もありませんから!」
「いや、それはどう見てもよ」
「危ないな」
ロウとイライジャがすぐに彼に突っ込みを入れた。
「そのままいけばな」
「出家だ」
「出家って何ですか出家って!」
「つまりは」
「言わなくていいです!」
フレイにも言い返す。
「そこから先は!説明不要です!」
「ストレスと食べ物には注意しろ」
アルフレドがまた言ってきた。
「いいな、それは」
「ですから私は」
「あと清潔にしておけ」
アルフレドの言葉は続く。
「くれぐれもだ。いいな」
「ううう・・・・・・」
「世の中二十代にしてくる場合もある」
「怖い話だな」
「そうだよな」
それを聞いている男組は気が気ではなくなってきている」
「三十代になれば余計にだ」
「三十代で来るのか」
それに驚いているのはドモンだった。
「髪の毛は」
「ああ、貴方は大丈夫よ」
しかし彼にはレインがいた。
「お父さんもお兄さんも禿げてないでしょ」
「それは確かだが」
「あと私のお父さんも大丈夫だったし」
「では俺達の子供もか」
「そうよ、大丈夫よ」
こんな話もするのだった。
「それはね」
「だといいな」
「髪の毛は長い友達でないとね」
「そうだな」
ハイネも二人のその話に頷く。
「俺も気をつけないとな」
「全くだ。そうだなアスラン」
「うっ、また俺か」
アスランはミゲルの言葉に困った顔になった。
「髪の毛の話になると」
「あんた本当に最近凄いけれど」
メイリンがミネルバから言ってきた。
「本当に大丈夫なの?」
「俺は禿じゃない!」
自分ではこう言うのである。
「これは元々だ!薄くなってなんかいないぞ!」
「薄いっていうのは誰も言ってないけれど」
「確かに」
メイリンだけでなくアーサーも言ってきた。
「あんた、今のは」
「完全な自爆じゃないか?」
「うっ、しまった」
言ってようやく気付いたのだった。
「髪の毛はつまり」
「まあ安心しなさい」
タリアが優しい声で彼に言ってきた。
「今は育毛剤があるから。いいのがね」
「後でそれ下さい」
何気なくこんなことを言うアスランだった。
「御願いします」
「わかったわ。じゃあ後でね」
「私もです」
ガムリンも来た。
「その育毛剤下さい」
「やっぱり貴方もなのね」
「うっ、しまった」
ここで自らの失態に気付いた始末だった。
「これはですね。つまり」
「いいわ。どうぞ」
しかしタリアは微笑んで彼にこう告げたのであった。
「後でね。戦闘の後で」
「はい、すいません」
「戦死はできないな」
アスランの顔も何時になく真剣であった。
「ここでは絶対に」
「やっぱり自覚あったのね」
メイリンがそれを聞いて述べた。
「何か凄い気迫感じるし」
「確かに」
アーサーもそれははっきりと感じていた。
「何時になくね」
「じゃあ期待できるでしょうか」
「いいと思うよ」
それは確かなものを感じているアーサーだった。
「アスランはやる時はやってくれるからね」
「そうですよね。キラとかシンと同じで」
「シンもねえ」
アーサーは苦笑いを浮かべて今度はシンについて述べた。
「あの激しい性格が吉に出る時もあれば凶に出る時もあるからね」
「何するかわかりませんからね」
「それが問題なんだよね」
シンのそういった性格はもう把握しているのだった。誰もが。
「まああの気性がパイロットとしての彼を引き出しているんだけれどね」
「まさに諸刃の剣ね」
タリアはシンのその性格をこう評した。
「デスティニー、インパルスデスティニーには合ってるけれど
「デスティニーっていえば」
メイリンはここでその前線で戦っているデスティニーを見た。今それに乗っているのはシンではない。彼は既にインパルスデスティニーに乗って暴れている。
「ニコル君も頑張ってますね」
「これで!」
その両手からのビームを至近で放ち敵をまとめて吹き飛ばしていた。
「まだです!」
そして今度は剣で切り裂く。デスティニーの力を完全に引き出している。
「まだまだ!」
「性格はシンと全然違うのに」
「そうだよね。ニコル君にも合ってるのかな」
アーサーは今度はニコルを見ていた。
「デスティニーのそのタイプに」
「彼は元々ブリッツに乗っていたからかしらね」
タリアはそこに答えを求めた。
「あれは接近戦が主だから」
「それにミラージュコロイドもありますし」
「じゃあ合ってるんですかね」
メイリンとアーサーもそこを見る。
「それであそこまで見事に能力を引き出して」
「戦えるんでしょうか」
「別にシンみたいな性格でなくてもいいのでしょうね」
こう言うタリアだった。
「だからね」
「成程、だからニコル君も」
「デスティニーを使えるですか」
「そういうことね。ただ」
タリアはここでインパルスデスティニーに乗り戦場を駆け巡るシンを見る。その強さはまさに鬼神であり接近戦ではアスランもキラも及ぶものではなかった。
「うおおおおおおおおおおっ!」
縦横無尽に前に展開するシャドウミラーの軍勢を薙ぎ倒していく。
「来い!どんどん倒してやる!」
「あの強さはね」
「ええ、性格なんですね」
「やっぱり」
「今回は吉になってるわね」
吉か凶かというとそれであるというのだ。
「いいことにね」
「よく考えてみればあの性格が凶になったのは」
「ステラの時だけですかね」
メイリンとアーサーはこのことにふと気付いたのだった。
「あの時以外はまあ」
「今みたいな感じですし」
「彼はある程度以上好きにさせるべきなのよね」
既にそれはわかっているタリアだった。
「それで力を発揮するタイプだから」
「アカデミーからなんですよね」
メイリンは困った顔も出した。
「チームプレイは苦手ですけれど一人になったら物凄くて」
「パイロットとしてね」
「それでインパルスのパイロットになってんです」
そうだったというのである。
「とにかく戦闘力が桁外れで」
「その彼だけれど」
あらためて言うタリアだった。
「今敵の第二陣を叩き潰したわ」
「はい」
その言葉に頷くアーサーだった。
「あともう一陣ですけれど」
「それについては」
指示を出すタリアだった。
「このままよ」
「このままですか」
「ええ、海岸に布陣したまま迎撃よ」
それを続けるというのである。
「わかったわね」
「わかりました」
「ではミネルバもこのまま」
すぐに応える二人だった。
「アビー」
「はい、艦長」
アビーがタリアの言葉に応える。
「ミネルバの位置はこのままでね」
「わかりました」
「ただ。前方は開けてもらって」
「タンホイザーですね」
「ええ、そうよ」
まさにそれだというのである。
「それを撃つわ」
「わかりました、それでは」
「前方コースクリア」
すぐにメイリンが各機に通信を入れる。
「タンホイザー発射します」
「わかったぜ」
それに頷いたのはヤザンだった。
「じゃあどけるか」
「はい、わかりました」
「それでは」
すぐにラムサスとダンケルが応える。
「そしてその後で」
「我々も」
「敵に大穴開けたところでだ」
最初からそのつもりのヤザンだった。
「派手に行くぜ!」
「よし、俺もだ!」
ここでタップも叫んだ。
「やってやりますか!」
「んっ!?」
「今声がおかしくなかったか?」
ケーンとライトがそれに気付いた。
「ヤザン少佐、タップの真似しなくても」
「別によかったんじゃないですか?」
「おいダンケル」
ところがヤザンはヤザンでダンケルに言うのだった。
「何ケーンの真似してるんだ?」
「いえ、自分は何も」
だがダンケルもきょとんとした顔で返すのだった。
「言っていませんが」
「!?どうなってやがるんだ?」
「訳がわからぬな」
「おいマシュマー」
ヤザンは今度はマシュマーに対して言うのだった。
「何かライトの真似してないか?」
「いや、私は何も」
「今度は何を言ってるんだ?少佐は」
「訳がわかんねえんだが?」
ケーンも首を傾げさせる。
「っていうか前から俺とダンケルさんって声が似てるとは思ってたがな」
「俺も少佐と他人の気がしねえしな」
「俺はマシュマーさんとな」
「くそっ、訳がわからなくなってきやがったな」
ヤザンもこうなってはお手上げだった。
「っていうか俺もヂボデーとか他人の気がしない奴が多いぜ」
「それを言ったらきりがないですから止めましょうよ」
アーサーがミネルバの前であれこれ言う彼等に言ってきた。
「それにもうすぐタンホイザー撃ちますし」
「んっ、ヒューゴか」
「そうだな、金竜大尉の言う通りだ」
「私はアーサーです」
アーサー自信もこうヤザンとマシュマーに返した。
「間違えないで下さいね」
「そうよ。幾ら声や雰囲気が似ていてもね」
「そうですよね、レミーさん」
「私は艦長よ」
今のアーサーのミスに思わず苦笑いになったレミーだった。
「前も間違えてたわよ」
「はっ、すいません」
「もう何が何だか」
メイリンにもお手上げの状況だった。
「クスハ、何かもうわからないわね」
「そうですね」
この二人にしろどちらがどちらなのか実にわかりにくいものがあった。
「とにかく。早くタンホイザーを撃たないと」
「戦局に差支えが」
こうしてであった。何はともあれミネルバの前方が開けられた。そうしてそのうえで一気にタンホイザーが放たれるのであった。
「タンホイザー、撃て!」
「撃て!」
凄まじい光の帯が放たれて前方の敵が一掃される。そしてそれに続いてロンド=ベルはその敵の最後の陣に一斉攻撃を浴びせるのであった。
「これで!」
「やってやる!」
呼吸を合わせる。そのうえで攻撃を浴びせる。敵はそれで終わった。
第三陣の崩壊はすぐであった。これでシャドウミラーの軍は総崩れとなった。
しかしアーチボルトはそれを見ても態度を崩さない。平然とこう言うのであった。
「ふむ、頃合いですね」
「頃合い?」
「というと」
「貴方達、全て見ていましたね」
自分に問うてきたイーグレット達への言葉である。
「全て」
「その通りだ」
「見ていた」
「全てな」
「なら問題はありません」
落ち着いた声での言葉であった。
「後はです」
「後は」
「どうするつもりだ」
「撤退です」
ここでアーチボルトが言った言葉は意外なものだった。
「全軍撤退です」
「撤退だと」
「これでか」
「次で決めればいいだけです」
やはり落ち着き払った声であった。
「ですから今はこれで」
「そうか」
「わかった。それではだ」
「ヴォータン=ユミル」
アーチボルトは彼にも声をかけてきた。
「貴方もこれで」
「下がるというのか」
「はい」
そうだと告げるのであった。
「これでです。宜しいですね」
「わかった」
彼は反論することなく頷いたのだった。
「それではだ」
「では全軍撤退です」
今度は全軍に告げたのであった。
「去りましょう」
こうしてシャドウミラーは退いた。これはロンド=ベルにとっても意外なことだった。
「!?イーグレットの奴等を出さなかった!?」
「何故だ?」
「ずっとあそこに置いたままで」
「次だっていうのかよ」
アラドはいぶかしむ皆の中で呟いた。
「だからだっていうのか?」
「次でっていうと」
「ああ、そうだろうな」
ゼオラに対しても答えるのだった。
「次でな。間違いなくな」
「仕掛けて来る」
「あのイーグレット達でな」
彼はこう確信していた。
「どういうやり方かはわからねえけれどな」
「だとしたら一体」
「それはわからねえさ」
「けれどなのね」
「ああ、間違いないだろうな」
アラドの確信による言葉が続く。
「その時にこそだ」
「やりましょう、冗談抜きでね」
「そうよ。シャドウミラーともそろそろ決着をつける時が来るわね」
オウカも二人に言ってきた。
「そしてアインスト達ともね」
「そうですね」
ラトゥーニもその通りだというのだった。
「そしてゲストやインスペクターとも」
「戦いはまだ続くわ」
しかしなのである。
「それでも彼等との戦いはね」
「じゃあ」
また言うラトゥーニだった。
「その戦いに向けて今は」
「キールに戻りましょう」
最後にオウカが言ったそうして今はキールに戻る。それは新たな戦いへの休息に過ぎなかった。ほんの一時の。
第百六十四話完
2009・11・8
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