スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百五十六話 邪神に魅入られた処女
第百五十六話 邪神に魅入られた処女
「そうだったのか」
「信じて頂けるでしょうか」
「君達は嘘は言わない」
大文字達から話を聞いたうえでまずはこう述べるミスマルだった。
「まずそれがわかっている」
「有り難うございます」
「そしてだ」
このことを述べたうえで、であった。
「君達を見ればな。信じるしかない」
「私達をですね」
「そうだ、君達をだ」
今度はレイヴンの言葉に応えるのだった。
「君達を実際にこの目で見ればな。それで信じる」
「有り難うございます」
「しかし。これはまた」
ミスマルはあらためて言ってきた。
「随分と派手に新戦力が加わったものだな」
「誰もが非常に頼りになります」
「あちらの世界にもモビルスーツがあるとは思わなかった」
こうも言うのであった。
「まさかな」
「はい、ですがタイプは全く違いますので」
スメラギが彼に述べた。
「私もそれにはかなり驚きました」
「お互い驚いたということだな」
「そうなるかと」
「そうか。お互いにか」
ここまで話してミスマルは一旦考える顔になった。
「驚くべきものはあるか」
「それにです」
スメラギの言葉は続く。
「我々の世界と同じく。いえそれ以上に」
「その通りだ。戦乱に覆われている」
ミスマルは彼女が何を言いたいのかすぐに察した。
「この世界もな」
「そうですね。それは」
「むしろ私達の世界以上ではないでしょうか」
今度はテッサが言ってきたのだった。
「この世界は」
「これでも随分勢力が減っているのだ」
ミスマルはここでこうテッサに話した。
「デュミナスに修羅達がいなくなったからな」
「そうなのですか」
「残るは今君達が向かっているアインストと」
最初にその勢力だった。
「そしてシャドウミラー、ゲスト、インスペクター」
「それとバルマー帝国ですね」
「今はその五つの勢力が敵だ」
こう話すのだった。
「彼等がな」
「そうですね。五つです」
「多いと考えるべきか少ないと考えるべきか」
ファーラの言葉である。
「どうなのでしょうか、それは」
「それはわからないが敵が多くそれぞれの勢力が強いのは事実だ」
ミスマルはこのことを否定しなかった。
「どれもな」
「特にバルマー帝国がですね」
スメラギが言ったのだった。
「あの国が」
「その通りだ。その勢力はかなりのものだ」
ミスマルもそれをその通りだと答えた。
「あの国が今のところ最大の敵だ」
「辺境方面軍のうちの一個艦隊でしたね」
テッサは先のバルマー戦役のことを話していた。
「それで地球が今にも攻め落とされるところだったとか」
「その通りだ。あの時は危なかった」
そのことはミスマルもよく覚えていることであった。
「何とかロンド=ベルの活躍で退けたがな」
「そして今も来ているのですね」
「今のところその辺境方面軍の第一艦隊を退けたが」
「ですがまだ」
「ホワイトスターに拠点を置き我々と対峙している」
それが今の状況なのだった。
「予断は許さない」
「だからですか」
「何はともあれまずはアインストだ」
彼等なのだという。
「既にパリに新たな追加メンバーを配しておいた」
「追加メンバーですか」
「そうだ。元々君達に合流してもらうつもりだったがな」
「状況の変化によってですね」
「パリで合流してもらう」
そうだというのである。
「わかったな。それは」
「はい、わかりました」
「それでは」
ロンド=ベルの面々も彼の言葉に頷く。
「パリにおいて合流致します」
「その追加メンバーと」
「そういうことだ。バルキリーのパイロットだ」
「バルキリーですか」
それを聞いてエキセドルの目が動いた。
「そちらでしたか」
「そうだ。三人だ」
「わかりました」
エキセドルはそれを聞いてまずは頷いたのだった。
「それではパリで合流致します」
「頼んだぞ。今ロンドンは危うい」
ミスマルはここでもこのことを話した。
「それもかなりな」
「それでどうなのでしょうか」
ルリが尋ねた。
「そのロンドンは」
「知っての通りストーンヘンジはロンドンから近い場所にある」
「はい」
ロンドンから西に百二十キロばかりいった場所にあるのだ。
「最初はそのままロンドンに向かって来るかと思われたが」
「それより他の場所のですね」
「不意を衝かれた形になった」
こうルリに答えたのだった。
「まずはロンドン以外の地域を占領され」
「そしてそのうえで、ですか」
「ロンドンは包囲されている」
それが今のロンドンの状況なのだった。
「非常に危うい」
「わかりました」
それを聞いて頷いたルリだった。
「では私達は」
「ロンドンの救出も目的だ」
それもなのだった。
「わかったな」
「はい、わかりました」
静かに答えるルリだった。
「それではロンドンに」
「頼んだぞ。くれぐれもな」
「はい」
こうして向こうの世界で何があったのかも話されるのだった。ロンド=ベルは地中海からフランスに入った。そうして南から北にフランスを縦断しパリに向かった。
「もうすぐパリですが」
「ええ、そうです」
カワッセがシーラの言葉に応えた。
「間も無くです」
「では。新たな仲間が」
「間も無く来ます」
また言うカワッセだった。
「その予定です」
「三人ですか」
「ですが何機いるかわかりません」
こうもシーラに述べた。
「何機いるのかは」
「バルキリーとのことですが」
「バルキリーだけでなければ有り難いのですが」
「そうですね。マシンは多いに越したことはありません」
これは切実なものだった。ロンド=ベルにおいては。
「それだけ多様な戦術が可能になりますし」
「それにモビルスーツの整備も容易になりますし」
一機が出撃している間に空いているマシンの整備をするということである。
「それが可能なのですが」
「どうなのでしょうか」
「シーラ女王」
ここでエレがグラン=ガランのモニターに出て来た。
「今パリから連絡がありました」
「パリのですか」
「そうです、パリです」
また言うエレだった。
「そこからですが」
「それで何と」
「今からそちらにパイロットを向かわせると」
そうだというのである。
「連絡がありました」
「それではバルキリーがですか」
「その他にもあるとのことです」
こうも報告があるとのことだった。
「モビルスーツとのことです」
「おっ、いいねえ」
モビルスーツと聞いて声をあげたのはジュドーだった。
「やっぱり多いに越したことねえからな」
「そうですね」
ウッソも彼の言葉に同意する。
「それで何ですか?」
「そこまでは言ってこなかったわ」
エレの返答は少しだけ落ち込ませるものであった。
「悪いけれど」
「そうですか」
それを聞いて少しばかり気落ちした声を出すシーブックであった。
「では向こうに着いてからですね」
「それより前にバルキリーと合流してもらいたいと」
「わかりました」
応えたのはエキセドルだった。
「それではそのように」
「マクロス7で着陸を受けてくれるのですね」
「喜んで」
こう答えるエキセドルだった。
「そうさせてもらいます」
「それでは御願いします」
エレもそれを受けて言うのだった。
「バルキリーで」
「わかりました」
こうしてバルキリーの収容がはじまった。来たのはVF-25タイプが三機であった。そしてそれに乗っているのは。
「エリエラ=ジフェンです」
「エイジス=フォッカーだ」
「ブレラ=スーチン。宜しくな」
この三人だった。三人はマクロス7に入り出迎えてきた一同に対して敬礼して挨拶としたのであった。
「うわ、三人共有名なエースですね」
「そうね」
美穂の言葉にサリーが微笑んで応えて頷く。
「有り難いわ。エースがまた三人も来てくれて」
「そう言ってもらえると何よりだな」
エイジスが微笑んで二人に応えてきた。
「こちらとしてもやりがいがある」
「はい、御願いします」
「これから宜しくね」
「それでだけれど」
ミレーヌがここで三人に問うてきた。
「あの、モビルスーツもあるって聞きましたけれど」
「ああ、それな」
ブレラが応えてきた。
「パリにあるからよ。そこで拾えってさ」
「そっちはパイロットはいないんですね」
「そうさ。そのかわりな」
「そのかわり?」
「どうやら凄いのがあるらしいな」
笑ってこう話すブレアだった。
「でかくて強いのがな」
「でかくて強い?」
「そうさ、でかくて強いのがな」
「何だろうね」
「さあ」
そう言われてもさっぱりわからない一同だった。
「モビルスーツででかくて強いって」
「色々あるけれど」
「サイコガンダムですかね」
美穂が出したのはこれだった。
「けれどあれは」
「止めた方がいいわよね」
「そうよね、あれはね」
美穂はサリーの言葉に頷いた。
「フォウちゃんがね」
「それに案外機動力がなくて使いにくいし」
「そうなのよね。だからあの系統は」
「それじゃあ何だろう」
ガムリンもここで考えた。
「ゲーマルクかな。それともドーベンウルフか」
「どちらも既にあるがな」
金竜がそのガムリンに対して言った。
「それはな」
「そうですよね。それも」
「まあっても困るものじゃないですけれど」
「けれど何か違うっぽいな」
今度はフィジカとドッカーが話す。
「デトロイトだとモンスターかなって思うけれど」
「モンスターはもううちにあるしな」
実はデトロイトは一通り持っているロンド=ベルだった。実際にそれに乗って戦っている時もある。バルキリー隊も物持ちなのである。
「まあパリに着けばわかるっていうし」
「今は別に気にしなくてもいいな」
ミレーヌとバサラはあっさりとしたものであった。
「もうすぐパリよね、確か」
「ああ、そうだったな」
二人はあっさりとしたまま言葉を続けていく。
「じゃあそれまでは」
「どうするんだ?」
「ちょっと演奏の練習をしておくわ」
それをするというミレーヌだった。
「時間あるし」
「そっか。俺はちょっと昼寝でもすっか」
今はのどかな調子のバサラだった。
「また派手な戦いになるしな」
「ああ、あんたが熱気バサラか」
エイジスは彼の姿を認めて声をかけたのだった。
「話には聞いてる。物凄いことをやってるな」
「そっか?」
「やってるさ。ギター片手に戦場を駆け巡るなんてな」
「それが俺のやり方だからな」
どうということはないという調子のバサラだった。
「別にな」
「そうか。あんたはそれでずっといくんだな」
「そうさ。何があってもな」
楽しげに笑って答えるバサラだった。
「それだけは変わらねえさ」
「最初見た時はびっくりしたわよ」
横でミレーヌがそんな彼を呆れた目で見ている。
「いきなりバルキリー出して戦場でギター鳴らすんだもん」
「音楽の力ってのはな、偉大なんだよ」
バサラはそのミレーヌに対してこう言うのだった。
「それこそな。戦いを終わらせる位にな」
「確かに色々と役に立ってはいるけれど」
それはロンド=ベルなら誰もがわかっていることである。
「あんたのその歌にはね」
「この銀河によ、俺の歌を響かせてやるぜ」
これがバサラの夢だった。
「それも近いうちにな」
「噂以上ね」
エリエラはそんなバサラ本人の言葉を聞いて思ったのだった。
「本当にね」
「こんな奴ですけれどね」
ミレーヌもここで彼女に言う。
「死なないでやってます」
「っていうか死なないんじゃねえのか?」
ブレラはバサラを見てこう言うのだった。
「この人はよ」
「そうさ、俺は不死身さ」
バサラもバサラでもこんなことを言う。72
「何があってもな。死なないで」
「そうだな。じゃあ俺達にも聴かせてくれよ」
ブレラはその彼の言葉を聞いて微笑んで告げた。
「あんたの曲をな」
「ああ、わかってるぜ」
そうした話をしながらパリに着いた。そしてそこでモビルスーツを受け取る。そのモビルスーツは。
「おいおい、まさかと思ったけれどよ」
「これですか」
「しかもこんなものまでかよ」
アストナージとチェーンが唖然としていた。何とそこにあったのはクイン=マンサである。
ノイエ=ジールもあった。ガーベラ=テトラにヴァル=ヴァロもある。他にはメタスや量産型F91にスーパーガンダム、それにゼータやダブルゼータまである。
「ありったけ持ってきましたって感じだな」
「ベルガ=ダラスやベルガ=ギロスもありますね」
「ティターンズやアクシズのもあるな」
他にはガブスレイにバイアラン、それにカプールやザクスリー等であった。
「ニュー以外のガンダムは全部あるしな」
「何でもかんでもって感じになってますね」
「そうだな。あとは」
まだあるのだった。
「ストライク、イージス、デュエル、バスター、ブリッツまで来たな」
「そっちのもですね」
「ザフトからはザク、グフ、ドムか」
ザフトのものもあった。
「本当に色々来たな」
「ここぞとばかりに送ってくれましたね」
「全くだ。しかし」
ここでアストナージは満足したように笑って。そのうえで言った。
「ここまで送ってくれると有り難いものだな」
「ですね。マシンの消耗が気になっていましたし」
「実際連戦だから、俺達は」
常に最前線にいるロンド=ベルならではの言葉だった。
「だからな。これだけあるとな」
「機体のローテーションもできますし」
「まあアムロ中佐とかクワトロ大尉は置いておいてな」
二人の場合はほど専用機と化している。これではどうしようもなかった。
「それでもまあ」
「これだけあれば」
「困ることはないな」
「その通りですね」
二人はその送られてきた夥しい数のモビルスーツを見て満足していた。その満ち足りた気持ちのままイギリスに向かう。しかしドーバー海峡に入ったところで。
「対岸に敵です」
「来ましたね」
カラスはそれを聞いてまずはこう言った。
「予想通りです」
「ではここは」
「すぐに迎撃だな」
「はい」
ザビーネとドレルの言葉にもすぐに応えるのだった。
「その通りです」
「よし、それではだ」
「総員出撃だ」
二人はカラスの言葉を受けてすぐに指示を出した。
「そのうえで迎撃にあたれ」
「いいな」
「さて、そしてです」
その中でカラスはさらに言う。
「カプールがありますが」
「あれか」
「あれをどうするのだ?」
「勿論使います」
返答は実にシンプルなものだった。
「誰が使うのかはわかりませんが」
「それだったらだ」
リュウがここで名乗り出て来たのだった。
「俺が言ってもいいか」
「ホセイ大尉がですか」
「一応以前水中用モビルスーツを動かしたこともあるしね」
ここでこのことも話すのだった。
「経験者が乗るのは一番だろう?」
「はい、それはその通りです」
「よし、ならやらせてもらおう」
カラスの言葉を聞いてその言葉をさらにはっきりとさせるリュウだった。
「カプールに乗らせてもらう」
「じゃあ俺はだ」
今度はスレッガーが出て来た。
「何か他のに乗らせてもらうか」
「他のと言われてもだ」
「だがな」
ザビーネとドレルは彼には難しい顔を見せた。
「何に乗るつもりだ?」
「カプールは今ホセイ大尉が乗ることになったが」
「そうだな。ここはな」152
ここでスレッガーはこれにするのだった。
「メタスにするか」
「メタスか」
「それにするのか」
「たまには後方のフォローもいいだろう」
その考えからなのだった。
「それでいいか?」
「そうだな。丁度メタスも来たしな」
「いいのではないか?」
二人も特に異論はなかった。
「じゃあそれでな」
「うむ、頑張るといい」
「我等はこのままここから戦闘に入る」
完全に艦艇要員となっている彼等だった。
ドーバー海峡の向こう側にはもう敵が待っていた。それは。
「アインストか」
「やはりな」
ザビーネとドレルはその敵を見て言った。
「奴等が来たか」
「我等の行動を察知してだな」
「思ったより動きが遅かったですね」
カラスはこう言うのだった。
「フランスで来るとか思ったのですがね」
「フランスでか」
「そこで我等を」
「はい。ですが今です」
また言うのだった。
「余裕なのか。それとも」
「それとも?」
「何かあるのか?」
「目的はロンドンではないのかも知れませんね」
カラスはこうも考えたのである。
「ロンドン攻略では」
「そういえばな」
「ロンドン攻略ならそれを阻もうとする我等をより早くに迎撃してきている」
「はい、そうです」
まさにそれだと答えるカラスだった。
「ですがそれがなかったのです」
「ドーバーで迎撃とは遅いな」
「それに数も」
レーダーを見る。すると。
「一万か」
「大した数ではない」
彼等にしてみればものの数ではなかった。
「それに指揮官らしき者もいないな」
「アルフィミィだったか」
この女の名前も出されるのだった。
「あの女もいない」
「ロンドンにいるのか?」
いない理由まで考えられた。
「だからいないのか」
「そうなのだろうか」
「おそらくはそうなのでしょう」
カラスも同じ予想を立てた。
「あの娘さんはおそらくロンドンです」
「若しくはストーンサークルか」
「その辺りか」
「さて、どうしましょうか」
カラスはあらためて言った。
「ここは」
「どちらにしろ今は戦うしかないだろうな」
「そうだな」
二人はまずはこう述べた。
「ドーバー海峡を渡らなければイギリスに入ることはできない」
「とてもな」
「その通りです。答えはまず一つ出ました」
教師然としたカラスらしい言葉であった。
「まずは彼等を倒さなければなりません」
「そうだ」
「しかしそれだけではないな」
「はい。それは答えの一つに過ぎません」
カラスの言葉は続く。
「そのうえでロンドンに向かうかどうかですが」
「いや、ロンドンよりはだ」
「そうだな。ストーンサークルに向かう方がいい」
二人はここでこう言うのだった。
「ここはだ」
「奴等の謎がそこにあるのならな」
「そうです。ロンドンに向かうのはこの場合下策です」
こうまで言い切るカラスだった。
「それよりもです。ストーンサークルに向かえばです」
「おのずと奴等もロンドン包囲を解くな」
「これでロンドンの危機を救える」
ロンドンの危機はこれで終わるというのである。
「そしてだ。奴等の謎もだ」
「解けるか」
「解けないまでも大きなヒントは得られます」
カラスはまた述べた。
「ですからここはイギリス上陸を果たしそのうえでストーンサークルに向かうべきです」
「よし、わかった」
「それならだ」
「まずは上陸です」
カラスは告げた。
「皆さん、海中と空中からそれぞれ御願いしますね」
「ああ、わかっている」
カプールに乗るリュウが早速答える。
「このカプールならな」
「リュウさん、どうですか?」
ハヤトが彼に問うてきた。彼の機体はここでも量産型ニューガンダムである。
「カプールは」
「いい調子だな」
こうハヤトに答えるリュウだった。
「動きもいいしな」
「そうですか」
「接近戦もいける」
言いながらそのクローを伸ばして目の前の敵をそれで貫くのだった。
貫かれた敵は忽ちのうちに爆発して消える。そして次はミサイルを放つ。
水中ミサイルは的確な動きをして敵を次々と撃破していく。かなりの性能だった。
「へえ、ズゴックを思い出すな」
「そうね」
セイラがカイの今の言葉に頷いた。
「そうした動きね。確かに」
「俺もそういうのに乗ればよかったかね」
カイはここでこんなことも言うのだった。
「こりゃな」
「確かズゴックも貰ってたけれど」
セイラはそのカイに対して言ってきた。
「どうするの?ガンダイバーもあるけれど」
「いやあ、もう出撃してるしな」
いつもの量産型ニューガンダムの中からの言葉であった。
「それもなあ」
「じゃあ止めておくのね」
「残念だけれどな」
実際にかなり残念そうな今のカイの台詞だった。
「そうしておくさ。今は」
「じゃあこのままファンネルでの攻撃を御願いするわね」
「ああ」
セイラの言葉にこくりと頷く。
「じゃあセイラさんは」
「このリ=ガズィだけれど」
彼女は今それに乗っているのだった。
「いい感じね。コアブースターにも似ていてね」
「何かセイラさんは相変わらず戦闘機乗りなんだな」
「その方が合ってるわね」
それを自分でも認めるセイラだった。
「スレッガーさんも」
「俺は結構色々乗ってるけれどな」
メタスからの言葉である。
「それでもまあそうだな」
「そうですね。戦闘機乗りですよね」
アムロからの言葉である。
「スレッガーさんもどちらかというと」
「それで御前さんはガンダムだな」
笑ってそのアムロに返すのだった。
「ハイニューガンダムか。またすげえもんだな」
「こいつは。俺が設計しまして」
アムロ自身の設計であるのだ。
「考えて作ったんですけれどね」
「それでその性能か」
「これならゲストやバルマー帝国のどのマシンにも負けません」
その自信はあるのだった。
「地球を。皆を護る為にも」
「御前さんのタイプは変わってないが御前さんは変わったな」
「そうですか?」
「全く。一年戦争の頃はどうしようもない奴だったのにな」
「そうね。本当に」
セイラもここでおかしそうにくすりと笑うのだった。
「あの時のアムロはね」
「それが信じられないんですけれど」
シンジが話に入って来た。彼のエヴァも水中でアインストの大軍を相手にしている。今はそのナイフで左右の敵を次々に断ち切っている。
「アムロさんがそんな」
「いやいや、本当だったんだよ」
「あの時は大変だったよ」
カイとハヤトがここでそのシンジに語る。
「もうよ。内向的でよ」
「すぐにいじけてね」
「それ何度も聞いてますけれど」
「キラの最初の頃みたいなな」
「手を焼いたよ」
こうシンジに話す二人だった。
「本当に戦争に向いてない性格でな」
「それがかなり変わったけれど」
「確かにアムロは変わったな」
それを最も知るブライトの言葉である。
「あの時はどうにもならないと怒ったものだが」
「いや、艦長さんもよ」
「凄く頼りなかったし」
カイとハヤトは彼に対しても容赦なかった。
「ちょっとしたことでいちいち切れてたしな」
「高慢だったし」
「おいおい、私もか」
ロンド=ベルきっての苦労人は彼等の言葉に苦笑してしまった。
「以前の私はそんなのだったのか」
「よくあれで生き残れたもんだってな」
「運もよかったしね」
「俺は一度死に掛けたな、そういえば」
リュウがここでこんなことを言った。
「ランバ=ラル隊との戦いでな」
「あの時は済まなかった」
このことについては素直にリュウに謝罪するブライトだった。
「いらない苦労をかけた」
「いいですよ。おかげで皆生き残れたし」
そういうことにはこだわらないリュウだった。
「アムロも立ち直れたし」
「あの時で俺少しわかりました」
アムロ自身もこう言うのだった。
「リュウさんのおかげで」
「ははは、そうか」
アムロに言われて顔を崩して笑うリュウだった。しかしそんな彼の言葉を聞いているうちにザズとマリューがこんなことを言うのだった。
「何かリュウさんの声って」
「何処かで聞いたわね」
「そうだよな。何でだろうな」
「ああ、私も前から思ってたんだよ」
何とケーラもであった。
「どっかでな。レース場でだったかな」
「そうだな。私もだ」
今度はダンも出て来た。
「以前からホセイ少佐の声には何処かで親しく聞いた記憶があって考えていた」
「あっ、おいらもだ」
ミケルもなのだった。
「何かさ、妙に親しさを感じるんだよね」
「何でだろうね、本当に」
「あと実はサンドマンさんとかギャブレーさんとかバーンさんとか」
マリューはかなり強引に一くくりにした。
「やっぱり。何処かで」
「それを言ったら私はどうなる?」
レイヴンは今はアヤカではなかった。
「ケーラとは何かあったと思うのだが。レインともな」
「ええ、確かにね」
「はっきりとそれは感じるわ」
レインもだった。
「勝てるわね新条君じゃなかったレイヴン君」
「そうだ、そうした言葉だ」
それに思い当たるというのである。
「全く。世の中はわからないものだ」
「考えたら駄目な世界なんじゃないの?」
マリューはこうも言った。
「何かそんな気がしてきたわ」
「そう思うな、おいらも」
ザズもそんな気がしてきたのであった。
「どうもなあ。こんな話多いな」
「その話はまた後でしよう」
とりあえず話を終わらせようとするリュウだった。
「何か俺は前から色々言われてるしな」
「全くですよね」
アムロも言うのだった。
「俺なんてもうそれこそ」
「中佐、左手大丈夫ですか?」
彼に問うたのは弁慶であった。
「あの、この前の俺とのキャッチボールで」
「ああ、大丈夫だ」
それはいいというアムロだった。
「俺は元々右利きだったしな」
「思いこんだら?」
それを聞いたマリューが最初に思い浮かべてしまった言葉である。
「これって。タキシードじゃなくて」
「アムロ中佐って本当に」
「色々ある人なんだ」
ミリアリアとサイがそのことを再認識した。
「何かそういうのって羨ましいけれどね」
「だよなあ、やっぱり」
トールとカズイは素直にそんなアムロを羨ましいと感じていた。
「全く。俺も人のことは言えないけれどな」
「だよなあ、カイさん」
剣人がそのカイに突っ込みを入れる。
「俺もそう思うよ」
「どっちがどっちの声なんだ?」
ハヤトは一瞬カイと剣人の区別がつかなかった。
「一体」
そんな話をしながら戦っていた。彼等は徐々にイギリスの海岸に近付いていた。
「思ったより楽だわね」
「はい、確かに」
ジェーンは愛機のディープフォピドゥンを駆って前の敵をその鎌で左右に切っていく。プレアはその横でやはり接近戦で敵を寄せ付けない。
「まずは、ですけれど」
「そうね。まずは、ね」
言葉は限定であった。
「上陸はできそうね」
「それで向かう先は」
「決まった」
プロフェッサーが二人に言ってきたのだった。
「ストーンサークルだ」
「そこね」
「そこにですか」
「ロンドンには行かない」
このことも話すプロフェッサーだった。
「わかったな」
「はい、それじゃあ」
「そこにですね」
「カラスさんの提案を受けた」
やはり彼の考えなのだった。
「ここはな」
「ストーンサークル」
カナードが最早誰もいなくなった目の前を駆け上陸せんとしていた。敵は殆どいなくなってきていた。
「そこでなのか」
「そういえばよ」
キースが空からその僅かに残った敵を掃討しながら彼に言う。
「あれは何でできたか、誰が作ったか知ってるか?」
「いえ」
首を傾げて答えるカナードだった。
「確か目的も誰が作ったのかも」
「そうだよ、わかってないんだよな」
キースが言いたいのはこのことだった。
「全くな」
「けれどそれは」
ここで言ったのはオルセンだった。
「アインストと関係あるのかな」
「アインストとか」
「ええ、あの連中がいるってことはですよ」
今度はアルフレッドに対して答えるオルセンだった。その間に者こっている敵を倒していく。
「やっぱり何か」
「そう考えるのも当然だな」
アルフレッドも彼のその言葉に対して頷くのだった。
「いるってことはな」
「じゃあやっぱり」
「即断は避けるべきだ」
アルフレッドは今はそれは避けるというのだった。
「しかしな。確実に何かあるな」
「まずはそこに行ってからだな」
キースは既に上空からイギリス本土に入っていた。
「上陸してな」
「上陸できました!」
ここで言ったのはトビアだった。
「僕が一番乗りですね」
「お見事ですよ、トビア君」
カラスはその彼の言葉を聞いて微笑んだ。
「ですがまだ戦いは終わりではありませんよ」
「はい、カラス先生」
今は完全に教師と生徒になっている二人だった。
「周りの敵を倒さないとですね」
「敵はまだいます」
その通りだった。まだ多くの敵が残っていた。
彼等を斬りながら他のメンバーの上陸を助ける。見れば海中では魔装機がかなり健闘していた。
「水の中なら!」
テュッティがそのグングニルを突き出し前の敵を貫く。槍の動きもかなりのものだ。
デメクサやシモーヌ、ジノもいる。彼等もまた周りの敵を次々と倒している。
「やっぱり水属性の魔装機はかなりのものね」
「そうだな」
ベッキーとファングがそれを見て言う。
「水の中だと特に力を発揮するのね」
「おかげでこうした上陸作戦には助けてもらう」
「じゃあファング」
ベッキーはそのファングに対して告げてきた。
「あんたもよ」
「俺か」
「早く上陸しなよ」
微笑んで彼に言うのだった。
「上陸できるのはできるだけ上陸してね」
「そのうえで対岸にいる敵を倒せ、か」
「そういうことさ。あたしが援護するよ」
言いながら砲撃を繰り出し対岸にいるアインスト達を撃破していく。それで道を開けていくのだった。
「ほら、こうしてな」
「よし、それではだ」
前に出るファングだった。彼は見事上陸を果たした。そのうえで周りの敵を倒していく。
「よし、次はよ!」
「わいが行くで!」
「拙僧もよ!」
今度はロドニーとティアンが上陸した。
「さあ、どんどん続けや!」
「さもなければ拙僧が敵を倒し尽くしてしまうぞ」
「それならそれでいい」
アハマドはティアンのその言葉を聞いて述べた。
「俺も今から行かせてもらうだけだ」
「アハマドは相変わらずね」
シモーヌは海中で戦いながら彼に言った。
「それがらしいっていえばらしいけれどね」
「そうですね。本当に」
ザッシュは火属性の魔装機が苦手な水中戦を避けて空から攻撃を加えていた。
「僕も早いうちに上陸して」
「早く行け!」
コクピットの中のエリスは強気だった。
「さもなければやられちまうだろ!」
「エリス嬢の言う通りだな」
ジノは水中で戦い続けている。
「行ける者は早く行くべきだ」
「その通りだ」
ヤンロンもまた空にいた。
「火や風の属性の者は特にだな」
「じゃあ私はまだここですね」
デメクサは口調は呑気だが目の前の敵をそのダもクレスの剣で両断していた。
「自分のペースで戦わせてもらいます」
「はい、ゲンちゃん」
ミオがハイファミリアで前の敵を倒してゲンナジーに告げてきた。
「道開いたわよ」
「・・・・・・わかった」
こう応えるゲンナジーだった。
「それではな」
「あの、ゲンナジーさん」
プレシアは今のゲンナジーを見て少し引いていた。
「何でミオさんと漫才ができるんですか?それで」
「俺もそれがすげえ不思議なんだけれどな」
マサキもぼやくようにして言う。
「この二人。何で馬が合うんだ?」
「あたしもそれがわからないんだよね」
それはリューネも同じだった。
「どういう組み合わせなんだろうね、あれって」
「凸凹なのは間違いないね」
ベッキーが言った。
「あの二人は」
「凸凹だからいいのよ」
ミオの弁である。
「それでね。ゲンちゃんとあたしは」
「っていうかゲンナジー喋らないだろ」
マサキは誰もが思っていることをあえて言った。
「滅多によ」
「何処のスナイパーなんだろ」
今言ったのはプレシアだった。
「ゲンナジーさんって」
「そこに御前が突っ込むのかよ」
「そういうことよ」
胸を張って答えるミオだった。
「この天才ミオちゃんの突っ込みに応えられるのはまさにゲンちゃんのみよ」
「そのゲンちゃんっていうのもなあ」
こう言ってまたぼやくマサキだった。
「まあよ。ゲンナジーよ」
「どうした」
「早く上陸しな」
こう彼に告げるのだった。
「折角道開いたんだからよ」
「わかった」
マサキのその言葉に頷くのだった。
「それではだ。行くとしよう」
「ああ、俺も行くからな」
「お兄ちゃんの後で私も行くから」
プレシアは今は目の前の敵を倒していた。水中からリニアレールガンを放ってそのうえで対岸にいる敵を次々に倒していくのだった。
「今からね」
「ああ、わかった」
妹のその言葉に頷くマサキだった。
「じゃあな」
「御前もすぐに来るんだろ?」
マサキはこう妹に対して言ってきた。
「そうだろ?」
「うん、今行くよ」
言いながら早速上陸しはじめているプレシアだった。既に半数以上のメンバーが上陸している。
そしてだった。遂に海中の敵がいなくなった。最早彼等を阻むものはなくなった。
「今です」
「ですな」
ショーンがレフィーナの言葉に頷いた。
「総員上陸を敢行です」
「対岸にいる敵は一割を切りました」
ユンがここで報告する。
「今掃討中です」
「このまま総員上陸し一気に決めましょう」
「はい、それでは」
こうして上陸が行われそれにより勝敗は決した。ロンド=ベルは無事上陸を行うことができたのだった。作戦は成功に終わった。
「それではです」
「ストーンサークルにですね」
「はい、そこに向かいます」
またショーンに答えるレフィーナだった。
「ロンドンではなくです」
「はい、では行きましょう」
カラスがレフィーナに対して述べた。
「今から」
「ストーンサークルですか」
ユンはそれについてここであらためて考えたのだった。
「あそこにアインストの拠点があるんですね」
「少なくともこのイギリスではね」
そうだというレフィーナだった。
「その通りよ」
「ではそこを直接攻撃してですね」
「ロンドンを救うわ。それに」
「アインストも謎も」
そのこともあるのだった。
「解くんですね」
「アインストですか」
ショーンはそのアインストについても考えるのだった。
「彼等の正体もよくわかりませんな」
「そうですね。まだよくわかっていません」
レフィーナもこのことはよくわかっているのだった。
「最初はバルマー帝国についていましたが」
「今は違います」
すぐに袂を分かった。そして今に至るのである。
「我々の敵であることには変わりがありませんが」
「目的は何だ」
キョウスケはそれについて言及した。
「奴等の目的は」
「案外簡単なことだったりして」
エクセレンもまたここで上陸したのだった。空からであるが。
「簡単なね」
「簡単な、か」
「例えば今は誰かをデートに誘うとか」
いきなりこんなことを言い出すエクセレンだった。
「ひょっとしたらだけれどね」
「ふざけての言葉ではないな」
「結構真面目よん」
本人はそう言いはする。
「実際のところ何なのかはわからないけれど」
「本当に何なのでしょうか」
ショーンはここでも首を傾げさせた。
「本当に」
「それを見極める為にもだ」
リーは単刀直入だった。
「行く必要があるということだな」
「ストーンサークルに」
「よし、敵はいなくなったな」
リーはいつも通り冷静に戦局を見ていた。
「ならばだ。マシンを回収しストーンサークルに向かう」
「何だ、もうなのか」
ブレスフィールドは彼のことばを聞いて少し詰まらなさそうに述べた。
「もう少しこの白い岸壁を見ていたかったのだがな」
「それは戦争から終わった時にゆっくりと見るのだな」
リーは憮然とした顔で彼に返した。
「好きなだけな」
「随分と冷たい言葉だな」
「今は戦争中だ」
彼の方が正論であった。
「悠長なことを言える状況ではない」
「少し余裕が欲しいものだがな」
「その余裕は戦場で見せてもらおう」
ここでも売り言葉に買い言葉の二人だった。
「次の戦いでな」
「ふむ。それではだ」
ブレスフィールドもまたリーのその言葉を受けるのだった。
「そうさせてもらうか」
「進撃中に食事を採っておくのだ」
この指示を出すことも忘れないリーだった。
「今のうちにだ」
「わかりました」
シホミがその指示に頷いた。
「それではカレーでも」
「そうね。カレーならいいわね」
アカネも姉のその言葉に賛成してきた。
「レトルトですぐに食べられるしね」
「カレーか」
だがリーはカレーと聞いて今一つ面白くなさそうな顔になっていた。
「どうもな」
「あら、嫌なの」
「ラーメンがいいのだが」
彼はそれがいいというのである。
「どちらかといえばな。若しくは炒飯かな」
「インスタントならともかく時間がかかりますよ」
ホリスが横から艦長に告げてきた。
「特に炒飯は」
「では駄目か」
「あっさりカレーにしましょうよ」
またこう言うホリスだった。
「ここはですね」
「わかった」
リーも渋々ながら頷くのだった。
「それではな」
「御飯はもう炊いてありますよ」
シホミはにこりとしてこのことを言い加えてきた。
「ちゃんと」
「それならばそうしよう」
御飯が炊けていると聞いてリーも納得したのだった。
「それでな」
「それでいいんですか」
「冷めた御飯かどうか心配していたのだ」
リーはだからだというのだ。
「日本人はよく冷めた御飯にカレーをかけるな」
「ええ、そうですね」
「あれは絶対に駄目だ」
彼は忌々しげに述べた。
「何があってもな」
「何でですか?それは」
「中国人は冷や飯を食べないのだ」
だからだという。言うまでもなくリーは中国出身である。
「それは罪人の食べるものだからだ」
「それでなんですか」
「そうだ。だからだ」
そうだというのである。
「だから私はだな」
「カレー自体はいいんですよね」
ホリスはその点をリーに対して問うた。
「カレーそのものは」
「基本的に豚肉のものがいいがな」
これもまた中国人らしい言葉であった。
「基本はどれでもいい」
「冷や御飯を使っていなかったらですか」
「そうだ。それ以外ならな」
やはりいいというのである。
「そういうことだ」
「わかりました。それじゃあ」
それで納得するホリスだった。
「そういうことで」
「うむ、頼む」
「食ベ終わったらストーンサークルですね」
「そうなるな。時間的にな」
この間も時間を測ることを忘れないリーだった。
「さて、それではだ」
「はい」
「向かうとしよう」
食事を採りながらストーンサークルに向かう彼等だった。そしてその頃そのストーンサークルでは。
「もうすぐですのね」
アルフィミリィが一人微笑んでいた。
「もうすぐはじまりますの」
不気味に微笑んでいた。そうして何かを待っているのだった。その何かは彼女にしかわからない何かであった。
第百五十六話完
2009・10・6
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