【完結】剣製の魔法少女戦記
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第一章 無印編
第二十一話 『外伝2 夜の一族とシホ、真実を語る時(前編)』
前書き
少しとらハ3の設定を入れています。知らない人がいたらすみません。
あと少しで夏休みと言う絶好の炎天下日和。
そんな中でシホ達のクラスは校庭でドッジボールをしていた。
さて、ここでこのクラスには少し込み入った事情がある。
それは、シホ・E・シュバインオーグと月村すずかを一緒の班にしてはいけないという暗黙の了解。
…以前、一度シホとすずかが一緒になってドッジボールが行われた時、それはもう悲劇が起きたからである。
どちらかにボールが回った途端、それは相手側のチームにとって恐怖の始まりであり、狙われたら100%確実にどちらかに当てられてしまうからだ。
そして試合が終わればそこは死屍累々…。
アリサの的確な指示もあったのだろうけど、それでも二人の息が合ったまるでパートナーばりの連携ですぐに総崩れしてしまう。
それからは先生の手腕でシホとすずかは一緒の班になることはなくなった。
しかし、それでホッとしたもつかの間、二組の班に分かたれた二人のチェイサー(追跡者)はそれぞれ皆に指示を与えながらも的確に標的をそれぞれ潰していく。
…当然なのははシホの特訓で多少運動神経のキレは解消されてきてはいるが、それでも早々に退場したのは言うまでも無い。
それで結局コートの中で双方に数人残っている中、最後には息のあったパートナーとまで言われた二人の一騎打ちに持ち越されるのである。
その一部音声としては、
「はっ!」
「やぁっ!」
「そこ!」
「甘いわ!」
と、言った某少林で拳法な人達が出演する映画のようなやり取りが交わされている。
風きり音や空を飛ぶと言った普通のドッジボールではまずありえないようなやり取りに内野、外野組みともに驚愕の表情をしている。
それで結局勝負はというと、人数が多く残っていたすずかの班の勝利と終わった。
「はぁー…負けちゃったわね。やっぱりアリサの指示もあると戦力面ではそちらが上になっちゃうね」
「そんなことないよー…シホちゃんだって一人で色々指示を飛ばしていたからすごかったよ?」
「にゃはは…。でもやっぱり二人はすごいよね」
「…っていうか、あんた達二人とも本当に人間なの?」
そのアリサの物言いにシホは苦笑いを浮かべていた。
(…まぁ、確かに実質もう私の体は成長する人形だから人より一段上の存在になっているのでしょうけど…。
やっぱりすずかもすごいわよね。身体強化は使っていないとはいえ私に着いて来るんだから…)
そう、シホは思っていた。
だけどアリサが発した『本当に人間?』という発言に反応をしたのはシホだけではなくすずかも少し目を見開いて一瞬だけど表情が暗くなった。
それをシホはすぐに察して、
「…すずか。気分が悪いの?」
「え…? そ、そんな事無いよ?」
すずかがすぐに元気一杯の顔をしたけどシホには無理をしている風にしか見えなかった。
それで強引に、
「先生。月村さん、少し気分が悪いみたいなのでちょっと保健室に連れて行きます」
「あ! シホちゃん、私は本当に…」
「嘘つかないの。少し顔が白くなっているわよ?」
「………」
それですずかは反論が出来なくなったので、されるがままにシホに保健室に連れていかれた。
途中なのはとアリサが一緒に行こうとしていたけど、シホはこれは普通の状況じゃないと判断して二人を先に教室に帰らした。
◆◇―――――――――◇◆
Side シホ・E・シュバインオーグ
私はやっぱり無理をしていたらしいすずかを保健室に運んだ。
だけどちょうど運悪く…いや、ちょうどいいかな? 保健室の先生の姿はなかった。
「すずか…どうしたの? さっきまで平気だったのに…」
「本当になんでもないんだよ? ただちょっとだけ―――……」
そこですずかの言葉は途絶えた。
やっぱりなにか訳ありみたいね。
だけど無理に詮索しても碌な事態にならないので今は、
「そう…。それじゃ私は何も聞かない。誰だって聞かれたくない事だってあるものね」
「ごめんなさい…」
それですずかはシュン…としてしまったので元気付けようと、
「ううん。いいの、私も色々と訳ありだから。それじゃ少し落ち着いたら教室に戻ろう」
「うん」
元気が出たのかすずかは笑顔を浮かべてくれた。
顔色も先程よりよくなっているようだし、もう心配も無いだろうと思って少し休んでから二人で保健室を出た。
◆◇―――――――――◇◆
そして帰りの事、私はというとすずかと一緒に月村邸に向かっていた。
理由は多岐あるけどファリンさんと色々と料理談義もしたいところだから。
それと恭也兄さんも先に忍さんと向かっているらしい。
なのはに関しては今日は魔法関連はユーノ、武術関連はフィアに任せてあるので修行は大丈夫だろう。
フィアにも私の代わりにストッパー役を任せてあるから問題ない。
「ごめんね、シホちゃん。ファリンがいつもお世話になっちゃって…」
「気にしないで。私も料理関連の話ができる人は少ないから結構楽しませてもらっているし」
私とすずかが他愛の無い会話をしている中、
少し人気の無い場所を歩いていたら…ふと、私達の周りに複数の気配がした。
すずかは気づいていないみたいだけど、どうにも嫌な視線が付き纏ってしかたがない。
「(…とりあえず、魔術回路だけでも開いておこう。)…すずか」
「え…? どうしたの、急に私の前に…」
「出て…」という言葉はすずかもどうやら気づいたらしく、その先は紡がれなかった。
それを察したらしく四方から黒いサングラスをかけたいかにも怪しい男達が影から出てきた。
動きはどうやら素人ではないらしく熟練した歩きをしている。
それで私は片手ですずかを守るようにした。
「…なんですか、あなた達は?」
「…君には用はない。用があるのは隣の女の子の方だ」
「しかし、隊長。その娘もいかにもといった風貌の娘みたいですが…」
「ふむ…そうだな。捕らえておく事に越したことは無いからな」
すると他の待機している男達もじりじりと私達に近寄ってくる。
サングラス越しでも分かるが、その目は性欲に駆られた奴も確認される。
(…下衆な集団か。大方月村に対して私達という人質を捕らえようとしている。そんなところね)
「し、シホちゃん…逃げて!」
「大丈夫よ、すずか。私がすずかを守るから…」
「…へー、強気なお嬢さんな事だ。だがこの人数で内心震えているんじゃないかな?」
「それはそちらの方ではないかしら…?」
すずかにばれちゃうかもしれないけど緊急事態なので私は全員を見回すように威圧をした。
途端、奴等は顔を少し青くしだし、
「!? このガキ、ただモンじゃねーぞ! 夜の一族の力を使われる前に片をつけるぞ!」
「!!?」
「…夜の一族?(すずかの家に関係している言葉かしら? それにすずかの震えも尋常じゃない…早く帰らせないと!)」
そう決断し、私はすずかを両手で抱えた。
お姫様抱っこだが今は我慢してもらおう。
それにすずかは困惑している。周りの男達もそうだ。
「とりあえずここから一端お暇させてもらいますね!」
そういい残してすずかを抱えたまま電柱の上までジャンプした。
男達は全員して『なっ!?』という声を上げたが今は構う必要はない。
そのまま私は電柱を足場に月村邸まで跳んでいった。
「シホちゃん!? これって…!」
「今は話しかけないで! 舌をかむから!」
「う、うん!」
そう言いながらも後ろから凄いスピードで何台もの車が迫ってきている。
くっ…お構いなしというわけね。
「すずか、携帯を出して月村邸まで連絡して! 会話は私がするから!」
「うん!」
連絡をし、程なくしてノエルさんが電話に出てくれた。
『すずかお嬢「ノエルさん!」シホお嬢様!? どうしたのですか! すずかお嬢様は!?』
「大丈夫です。今、私が抱えていますから。それよりすぐに門を開く準備をしてください! よく分かりませんが変な奴等から追われています!」
『わかりました!』
「それと恭也兄さんはもうそちらにいますか!?」
『はい。もう忍お嬢様と到着しておられます!』
「それじゃすぐに戦闘の準備をお願いしてもらってよろしいですか? 実力は分かりませんが厄介な奴等だと思います」
『畏まりました!』
それで携帯は切れた。
「…よし、これで迎撃準備はオッケイね」
「………」
すずかがなにかを言いたげな表情だけど今は一刻も早く月村邸に到着しないと…!
それから追っ手は来たもののなんとかノエルさんが月村邸の扉を開いてくれていたらしく私は転がり込むように敷地に入り込んだ。
そしてすぐに扉が閉まり私が一度体験したレベル5の防衛装置が作動した。
「すずか! シホちゃん!」
「あっ! お姉ちゃん!」
すずかは忍さんの声が聞こえた方に振り向きすぐに抱きついた。
その隣で兄さんが小太刀を装備しながら、
「シホちゃん、大丈夫だったか?」
「はい、なんとか…。でもこうも堂々と追ってくるなんて奴等はもう正気じゃないと思います。だから少し牽制してきます」
そう言って私は塀の上にジャンプして登り左手に洋弓と矢を投影し、追ってきただろう車のタイヤ部分をすべて射抜いた。
それで車達はたちまち往生してお互いに接触しあい急停止した。
そこからすぐさま先程のサングラスの奴等が這い出てきた。
その手には普通物騒極まりない拳銃やマシンガンなどを装備している。
…どうやら月村邸の周りはもう一般人の人払いは完了済みのようである。
「やってくれるじゃない…! でも…」
そっちがそのつもりなら覚悟しなさい。
その心算で一番奥に止まっている車を動力部分ごと射抜いた。そしてその車は爆発、炎上…そのまま近くの車も巻き込んでの連続爆発を引き起こした。
さすがに奴等も移動手段が消失した為に焦っているが、しかし各自それぞれ手馴れた動きをして即時撤退していった…が、一匹くらい捕まえておかないとね。
なので、マグダラの聖骸布で一番偉そうな奴をフィッシュして月村邸まで強制連行させた。
「恭也兄さん。一応撃退しました。…それと、たぶんあの中では一番発言力を持ってそうな奴を捕まえたので連れてきました」
「ナイスだ、シホちゃん。…それにしてもずいぶん大きな爆発の音がしたが…なにをしたんだ?」
「いえ、別に大した事じゃないんですけど一台の車を爆発させてそれが他の車にも飛び火したからです」
「そうか。でも改めて無事でよかった」
「本当にね…すずかの事守ってくれてありがとう、シホちゃん」
「はい! それで…そろそろ尋問タイムといきましょうか?」
「そうね…」
「そうだな…」
すずかは一応という事もあり別の部屋でファリンさんと一緒にいてもらっている。
それから私、忍さん、恭也兄さん、ノエルさんの四人で捕まえた男を尋問したが一向に口を開こうとしない。
話すことなどなにもないの一点張り…。
それで仕方なく私は男の前に出て、
「な、なんだ…本当になんなんだ? お前も人外の一味なのか?」
「何のことか知らないけど…正直に白状させてもらうわよ。私の目を“見なさい”…」
「?…、……ッ!?」
男は私の目を見た途端、まるで気絶するようにガクリッ!と肩を落とした。
そして次第にブツブツと呟き始めたので。
「あなた達の目的は…?」
「…はい。月村の次女を誘拐…その後にある組織に引き渡す予定でした…」
「その組織と言うのは…?」
「…組織名は聞いておりません。俺は下っ端なので知っているのは上の連中くらいかと…」
「そう…それで他になにか情報は…? あるだけいいなさい」
それから色々男から搾り取った。
『夜の一族』という謎の種族を研究。及び月村邸にたいして脅迫。
アジトの位置。メンバーの数。武装。
…他にも主にすずかには聞かせたくない内容ばかりだった。
あらかた聞き終えた私は「もういいわ。だからもう眠りなさい…」という言葉に男は無言で頷きそのまま横に倒れて眠りについた。
「シホちゃんの魔術ってすごいわね。こういった催眠もできたのね」
「はい…まぁ以前はモノを作り出す以外はてんでダメでしたけど…」
「以前…?」
「…いえ、なんでもありません。それより少々気になる単語があったんですけど…聞いても構いませんか?」
そこで全員表情を少し暗くしたけど忍さんが代表をして話してくれた。
話によると月村の家系は『夜の一族』という突然変異の吸血種の一種だと言う。
「はぁ…吸血種、ですか」
「あまり驚かないのね…?」
「まぁ、私の世界には忍さんが教えてくれたモノより性質が悪いのがわんさかいますから。
こっちでは血を吸っても吸血鬼化しないそうですけど…、私の世界では一度吸われればそれでもう死は確実。
そしてそのまま死徒という種族の吸血鬼の操り人形にされて仲間を増やしていきますから」
「う…確かにそれはいただけないな」
「そうですね。この世界とは根本的に違いがあるようです」
「それに私の師匠もその死徒でしたから別にもう驚きはないです」
『は…?』
途端、三人とも固まってしまった。
いけないなぁ…少し話が飛びすぎたみたい。
それで私の世界の吸血鬼について色々説明を入れた。
だけど内容が長いのでここは割合する。
「真祖に死徒…それに最古参の死徒を総称して死徒二十七祖。
それでシホちゃんの師匠の人は元人間だったけど真祖の王…『朱い月のブリュンスタッド』というものと対決して勝ったものの、その時に噛まれてしまって死徒化してしまったと…」
「はい。それで魔術協会では生きた伝説とまで言われていますね」
「確かに頷けるわ。こっちの吸血鬼は人間の突然変異からなったもの。
だけど、そちらは星が作り出してそのまま増殖していったもの…本当にシビアな世界で聞いているだけで嫌になってくるわ」
「まったくですね。真実は小説より奇なり…と申しますが真実以上のものですから性質は確かに悪すぎます」
三人はそれぞれ意見を言い合っては私の世界の死徒に嫌悪感を顕わにしていた。
いい人も大師父を含めて何人かいたんだけどな…。
「あはは…それより本題もずれて来たのでそろそろ話し合いましょう」
「そうね。ごめんなさい、両方の世界の相違を検証している時ではなかったわね」
そして四人でどうやってアジトを襲撃するか話し合い、私と恭也兄さんが泊まる事になったのを家に報告した。
なのは達が別で連絡してきたけど大した内容じゃないからと、一応話は通しておいた。
あれで三人とも首を突っ込みたがりだからしょうがないけど…今回はさすがに内容が裏過ぎるのでつき合わせるのは忍びない。
後書き
前半です。後半は明日また載せます。
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