| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一章 無印編
  第二十話      『外伝1 なのはのシホちゃん観察記録』

 
前書き
今回は外伝その1でなのはオンリーで進みます。
そして少しクロノやシホをハッチャケさせます。 

 




Side 高町なのは


…あのとても悲しい事件。
突然の出会いから始まる迷いや悲しみ…それと同じくらい嬉しい事や驚いた事。
たくさんあって触れ合う時間なんてそんなになかったのにも関わらずすごい長い時間たったようにも感じる。
フェイトちゃんも最後はお母さんの死という悲しみを味わったけど、それでもそれを乗り越えて前に進もうとしている。
そして友達にもなってくれた私の大事な親友。
たまに送られてくるビデオメールは私の楽しみにもなっていた。

それとは別にもう一人、シホ・E・シュバインオーグ…シホちゃん。
事件が終わってやっと家に帰ってこられた私にシホちゃんは『勇気をかして…』と言ってきたので私もその想いに応えてあげたくて、どんな方法がいいのかわからなかったのでただ手を握ってあげた。
だけどそれでシホちゃんは安心した顔になりお母さん達の事をまだぎこちないながらも家族の呼び方をした。

お母さんの事を『桃子お母さん』。
お父さんの事を『士郎お父さん』。
お兄ちゃんの事を『恭也兄さん』。
お姉ちゃんの事を『美由希姉さん』。

シホちゃんは本当の意味で私達の家族になってくれたとても最良の日だった。
それにその時のシホちゃんは今までの凛々しい態度とか大人顔負けの落ち着きもどこかにいっちゃったのか本当に顔を赤くして照れている姿はとても可愛いという表現がピッタリだった。
お姉ちゃんに「姉さんじゃなくてお姉ちゃんって呼んでー!」と言い寄られてうろたえている姿はとても普段は見られないものだった。
それだけお母さん達はシホちゃんが心を開いてくれた事が嬉しかったらしい。

…でも、それと同時にシホちゃんはこの世界に来る前の話は積極的に話そうとはしない。
アースラの皆さんには事情説明のために、しょうがないといった感じがあったけどきっと話す事すら辛かったと思う。
私以上の孤独を知っている目…。
どうしてそんな眼ができるのか事情を説明している時に聞いていた話で痛いほどに理解させられた。
シホちゃんはずっと一人だったんだ。
それは、シホちゃんの師匠さん達にあたる人達もいただろうけど、きっとシホちゃんは本当の意味で家族というものを知らないと思う。
なぜかはわからないけど、シホちゃんはお母さんの事を生まれて初めて『お母さん』と呼んだらしい。

小さい頃から魔術という世界で争いの中を駆けていたというシホちゃん。
だから戦闘毎になると誰よりも強い…。それはきっとフェイトちゃんやアースラの人達も同じ感想を持っていると思う。
色々な戦いを見てきたけどどれも私の常識…アースラの皆さんもだけど、シホちゃんは一個人の実力を遥かに上回っていると思う。
でも、それと同時に内面はとても臆病なものだとも思ってしまう。
シホちゃんの呪文詠唱は色々あったけどその中で一番不安を煽ったものは、

「I am the bone of my sword………ねぇ、ユーノ君?」
「…ん? なに、なのは?」

私は真夜中でもう全員就寝している時間にユーノ君に話しかけた。
どうしても意味が知りたくてしかたがなかったから。
レイジングハートと会話をしていく内に英語もそれなりにできるようになってきたけど、それでもシホちゃんの呪文は異質なものを感じてしまう。

「シホちゃんの呪文…『I am the bone of my sword』ってどういう意味なのかな?」
「そうだね…僕も色々と調べてみたんだけどね。分かる限りだと『私は我が剣の骨である』って訳になるね。きっと意味は違うと思うけどね。
それにシホに聞いた話だとシホの世界の呪文は自己暗示に近いものも複数存在するって話。
そしてこれは僕の憶測だけどきっとこの呪文には続きがあると思うんだ」
「続き…?」
「うん。確証はないけどね。だからなのはは気にしないで。
それに今のシホは初めて会った時よりもなのはや家族の皆さんに頼るようになったでしょ?
だから心配は要らないと思う。なのはもそこはもう不安とかは感じてないでしょ?」
「…うん。シホちゃんはもう私の大事な家族だから」
「だったら大丈夫だよ。それにきっとシホもその事でなのはが悩んでいるって知ったら心配しちゃうから」
「うん。ありがとう、ユーノ君! 少し元気出たよ」
「そっか。それじゃ今日も色々やっちゃったし…早く寝なきゃね」
「うん。お休みなさい、ユーノ君」

それで私はすっきりした事でぐっすりと眠りにつく事ができました。


◆◇―――――――――◇◆


翌日、休日という事もあり私は運悪くアリサちゃんとすずかちゃんも今日はお家にいないという事で、一日が少しお暇になってしまったのでシホちゃんの一日の行動を観察してみようと思いました。
その事をユーノ君に伝えると「シホのこと、昨日に信じたんじゃないの!?」と言われちゃった。
そうかもしれないけどシホちゃんから今日の修行は絶対禁止されてしまったので、塾と家の手伝いもないし普段シホちゃんはなにをしているのか気になってしまったから。
それを伝えるとユーノ君も興味を持ったらしく賛同してくれた。
………ちなみになぜ修行の禁止を言い渡されてしまったかと言うと先日に、

『スターライトブレイカー誤爆事件』。

…と、いうものを海上で起こしてしまい、制御を怠って津波を起こしてしまって魔力もエンプティしてしまったから。
そしてその事をシホちゃんとフィアちゃんに伝えていなかった事もあり二人の怒りを買ってしまったから。
だから私の鈍い運動神経を鍛えるといって始めた中国拳法も今日は呼吸法と、後は魔導師養成ギプスだけ…。
シホちゃんの怖い笑顔を思い出すだけで体の震えが出ちゃう…!

とにかく朝早くから私とユーノ君はシホちゃんの観察をする事にしました。
だけどそう言ってもシホちゃんの朝はとても早い。
特に早い時には朝日も昇る前に起きてしまうので私もいつの間にか早起きになってしまったものだから。

「あ、なのは。おはよう」

私が着替えていつもの修行場所に着くと既にシホちゃんとフィアちゃんが組み手を開始していた。
ちなみに事前に二人には今日は見学だけといってあります。
それで、二人はやっぱり私やユーノ君と違い本当に接近戦主義でとても普通なら眼で見えない組み手をしている。
基本フィアちゃんがシホちゃんを攻めてそれをシホちゃんが受け止めると言うものだけど…常に瞬動という歩方を使っているので眼に追えません。

「フィア…なぜかもう僕はついていけない気がするよ」

ユーノ君が微妙にへこんでいます。うん、その気持ちは私も十分分かるよ?
そうしてしばらく拳や足のぶつかる音が聞こえてきたけどそれが止んだと思うとシホちゃん達は向かいあって最後に同時に拳をぶつけ合っていました。
…痛くないのかな?

「よし、今日の早朝訓練はこれで終了よ。お疲れ様、フィア」
「ありがとうございます。お姉様!」

とてもいい笑顔でフィアちゃんは拳を合わせてシホちゃんに挨拶をしていました。
もう本当に師弟みたいな図になってきたな…、と思ってきました。
だけどシホちゃんの修行はこれで最後じゃないのが怖いんだよね…。
いつも訓練(魔法訓練もだけど…)が終わった後、シホちゃんが調合したという漢方薬を筋肉が張っている関節の節々に塗るの。
これがとても沁みて少しばかりピリピリ感が抜けなくなっちゃうの。私もそれを塗られた時は最初悲鳴を上げてしまったから。
でも不思議な事にこれを塗った後は筋肉の張りも治まりとても爽快感があって力もみなぎってくる…。
シホちゃんって本当にドイツの人なのかな…?
でも世界を旅していたっていうから色々と知識も豊富なんだろうなと思っておくことにしておきました。

「それじゃ家に帰りましょう。いつも通りにね」
「うん!」

そうして私達は家に帰ることにしました。
でもシホちゃんは大体いつも修行から帰ってくるとお姉ちゃんと一緒にお風呂に入ります。
シホちゃん本人曰く、「別にいつも一緒に入るつもりはないんだけど、姉さんにはどうしても捕まってしまうの…」との事で、いまだに一人で朝のお風呂は入った回数は少ないらしい。
…やっぱりお姉ちゃんも超人の一人かもしれません。
でもシホちゃんも普通に『姉さん』という呼び方が定着してきたらしいので私としてはうれしいです。

朝食後、お父さんとお母さんは翠屋の営業に向かっていって、必然的に家にはなにかしら用がない限りお兄ちゃん達もいます。
それで始まる事も必然的に普通の家ではあまり見られないけど剣の修行に入ってしまいます。
これが始まると半日シホちゃんはお兄ちゃん達と打ち合うのが日課らしいけど、今日はフィアちゃんと出かけるようです。
それで私も着いていくことにしました。

「なのは、別に今日は修行以外自由にしていても大丈夫よ?」
「いいの。今日は私も少し手があいているからシホちゃんと一緒に町を散策しようと思ったの!」
「そう? それじゃいきましょう。今日はいい天気だから海岸線でも歩いてみようか?」

私達は二つ返事でシホちゃんに着いて行くことに成功しました。


◆◇―――――――――◇◆


場所は変わって今はみんなで港辺りを歩いています。
空はシホちゃんの言ったとおり快晴。
もう少しで夏という時期もやってくるのでちょうどいい気温帯。
海風も心地よくて、うみねこの鳴き声もより一層寂しさを緩和させてくれる。
文句の付け所もない絶好のロケーション。
でも、
そこにとても意外な人物がいました。

「ク、クロノ君…!?」
「あ…。クロノ、こんなところでなにをしているの?」
「…あぁ、シホになのは達か。なに、見れば分かるだろう?」
「竿に竿掛け…海釣りね?」
「ああ、その通りだ」
「に、しても仮にもあなた執務官でしょう? こんなところでのんびりと釣りをしていてもいいの?」

シホちゃんはクロノ君に自然に話しかけているけど…私とユーノ君、フィアちゃんはそのあまりにも違うクロノ君の姿に混乱していました。

(あの堅物なクロノが…! あんなのほほんとした顔で釣りをしているなんてありえないよ!?)
(で、でも兄さん。人間、誰だって違った一面を持っているものですよ!?)
(でも…少しクロノ君のイメージが変わったかも…)

私達が小声で会話をしているところで、

「…そこ、そこの三人。勝手に話を進めてくれるな」

そこでクロノ君から抗議の声が聞こえてきた。
それで私は意を決してどうしてクロノ君がここにいるのか聞いてみた。

「ああ、それはまだミッドへの航路が安定していないんで当分はここら辺の空間でアースラは待機しているのさ。
それでクルーにフラストレーションをためさせない為にも交代制でアースラから降りてきているのさ」
「でも、それじゃフェイトちゃん達は…」
「さすがにフェイトとアルフに関しては艦長…じゃなかった。母さんでもそうやすやすと許可はできないらしい」
「そうだよね…」

それで少し空気が重くなったけど、それはしかたがないと割り切らないとダメだとシホちゃんに言われているので我慢した。

「なんだ…しっかりと自制はできているみたいで安心したよ」
「当然! そこら辺は心身ともに私が鍛えているから!」
「それはなによりだ。………昨日の事故がなければとても信用できる言葉だけれどね…」

グサッ!

「はうっ!?」
「…やっぱり観測された?」
「そうだな。怪我はなかったとはいえ危険な行為だったと言えるな」
「安心して。昨日のはなのはとユーノの独断だから。それで今日はバツとして修行は一切禁止させているから」
「いい心がけだ。誰かがストッパーになってくれればこちらとしては嬉しい限りだからな」
「むぅ…クロノ君、けっこう酷い事言うよね?」
「当然の結果だから仕方がないだろう…?」

そう返されると私もなにも言い返せません。
ううぅ…いつか見返してあげるんだから!

「…ところでクロノ。釣りの調子はどうなの?」
「まぁまぁってところだな。これでも釣りに関しては結構自身があるのでね。
アースラにも持ち帰らないといけないから…」
「今晩のおかずかなにか…?」
「ああ。さすがにずっと次元空間を漂っていると新鮮なものが恋しくなって食べたくなるじゃないか」
「その気持ちはわかるわ。やっぱり新鮮なものが一番美味しいところよね。…そうだ。今度、私も混ざっていい?」
「ああ、いいとも。さっきもいったけど釣りに関しては結構自信があってね。返り討ちにし、て…?」

…あれ? クロノ君の顔が少し青くなった。
同時に何故か空気に亀裂が入ったような、そんな感じの気分…?
それでどうしたのかと思ったらシホちゃんから異常な魔力が溢れている!?
それになにか黒いモノが体から噴出しているようにも感じるよ!!

「…ねぇ、クロノ?」
「な、なにかな?」
「今、聞き捨てならない台詞が聞こえてきたんだけど…私の気のせいかしら? 確か『返り討ち』って言葉…」
「い、言いましたけど…それがなにか?」

クロノ君が敬語になっている…。
でも、私もそれには納得しちゃうかも。
だって、シホちゃんの表情が笑顔なのに眼が、眼が本気で笑っていないんだもの!!?

「フ、フフフ…面白いわね? いいわ、その言葉を嫌というほど後悔させてあげる」
『………(ビクッ!?)』

全員(私含む)がシホちゃんの地の底から聞こえてきそうな低い声にただただ怯えることしかできなかった。
それからシホちゃんは「少し準備をしてくるわ」と言ってその場を後にして堤防の影に入っていった。
…そして数分。
なぜか少し魔力の気配がした。
そして出てきたシホちゃんの姿は…まさしく釣り人だった。
紅いポケット付きのコートに白い帽子。その手にはクーラーボックスにいかにも本場の人が使っていそうな丈夫な釣竿!?
全部魔術で転送してきたもの!?
小さい声で「………今ならアーチャーの気持ちが分かるわ」と呟いているけど、なに!?



…それからはクロノ君が惨めに思えるほどの惨劇の幕が上がった。
シホちゃんは一匹釣り上げるたびに「フィィィシュッ!!」と声高らかに叫んでいた。

「…ふふ、ここはいい海ね。とても新鮮な魚が釣れるわ。おっと、十五匹目フィィィッシュッ!!」
「うるさいぞ! 魚が逃げるじゃないか!?」
「ふっ…腕のなさを他人の所為にするなんて愚かねクロノ。近場の魚が逃げるなら違う場所に移動するかリール釣りに変えればいいじゃない。
もっとも、釣り場選びのなんたるかも理解できていないものにいってもしょうがないでしょうけどね。おっとごめんね、十六匹目フィィィッシュ!!」
「くうっ…!?」

クロノ君の意外な一面に驚かされたけど、シホちゃんはそれを輪にかけて普段の凛々しい姿から遠ざかっている。
でもクロノ君もまんざらでもない様子なのでまだ当分続きそう…。

「フフフ…この分じゃお昼を待たずに勝負がつくわね。軽い準備運動で始めたんだけど様子を見るまでもないわね。
…ねぇ、クロノ…別にこの港の魚を釣りつくしても構わないでしょう?」
「やれるものならやってみろ! 絶対に負けないからな!」
「よく言ったわ、クロノ! どちらが漁港最強か、あなたの心に深く刻み付けてあげるわ! と、十七匹目フィィィッシュ!!」

そしてシホちゃんとクロノ君の熱い勝負は昼過ぎを持って圧倒的数の差でシホちゃんの勝利となった。
クロノ君はそれで少し燃え尽きていたのが印象的だった。
だけどそこでシホちゃんは「ハッ!?」といった顔をして、

「わ、私はなにを…!?」

と顔を赤らめて、

「ごめんなさい、クロノ! 別にあなたの釣りを邪魔するつもりはなかったのよ!?
ただ、なんていうか…その、突然周りが見えなくなったっていうか…それで、そのー…ッ!」

シホちゃんは正気に戻ったらしくとてもあたふたして赤くなった顔を片手で覆って何度もクロノ君に謝罪している。
その必死な姿に私は思わず「可愛い…」と呟いてしまいました。
それがとどめだったのかシホちゃんは「はうっ…!」と可愛い声を上げてその場にへたり込んじゃった。
…だけど、それでなぜか私以外全員が顔を赤らめていたのがなぜか非常にムカッとしたのはなぜでしょうか?

それから結局、シホちゃんはもう吹っ切れたのかクロノ君に魚をクーラーボックスごと譲って「美味しく食べてね…」と爽やかな笑顔で渡していた。
とうのクロノ君はただただ頷くばかりだった。
そしてクロノ君は、

「そ、それじゃ僕はもう帰るとしよう。また…」

と言ってすぐにどこかに行っちゃった。


◆◇―――――――――◇◆


「はぁ…恥ずかしいところを見せちゃったわね。二重な意味で…」
「そんなことないよ? シホちゃんの意外な一面も垣間見れたし…」
《はいです!》
《そうだね》
「もう…だからそれが恥ずかしいっていうのよ」

それでソッポを向いて拗ねちゃったけど、でも内心とても楽しそうに見えるのは私だけかな?

「それより、もうお昼過ぎだからそろそろ食事にしましょう。もともと出かける予定だったから軽食だけどサンドイッチと母さん仕込みのシュークリームを持ってきてあるの」
「わぁ…!」

シホちゃんはいつも通りという顔をしているけど私から見たらとても普通のサンドイッチに見えないよ…。
それでフィアちゃんに手渡しで食べさせているシホちゃんはとても笑顔を浮かべているので絵になります。
…大人らしい態度をとっていてもやっぱりこういう所もあるからシホちゃんは魅力的に見えるんだね。
ふと、私は食事を食べ終わってみてから周りを見回してみると、

《あ、やっぱり来ました》
《え? なにが、フィア…?》
《動物さん達がいっぱいだね》

そう。いつの間にか公園の私達がいるベンチの周りには野性の鳥や、飼われている動物さん達で溢れかえっていました。
遠くを見ると動物の散歩をしているらしい飼い主の人達もこちらの様子を窺っているみたい。
なんだろう…?
だけど、ここでなにが始まるのか分かりました。

《さぁ、お姉様。いつもの日課、お願いします!》
《わかったわ。…でも、最近注目が前より集まってきたから恥ずかしくなってきたわね…》

シホちゃんはそう言いながらも目を瞑ってフェイトちゃんとの別れの際に歌ったローレライというドイツの歌をまるで楽器で出しているようなメロディを口で奏でだした。
とても静かな、でも惹かれる歌声でやっぱり聴き入ってしまいます。
それから数分してシホちゃんは歌いきると動物達がシホちゃんに群がり観客が拍手を送っていました。
どうやらシホちゃんはこの公園では一種のアイドルと化しているようです。

「それじゃもうお暇しましょう。ちょっと残り時間は弓の練習をしたいから」
「あ、山の方にいくんだね」
「ええ。最近あまりしていなかったから勘が鈍っていないか心配になっちゃってね…」

そして山の中に私達は入るとフィアちゃんに結界を頼んでいました。
だけど本当にシホちゃんはすごい…。
初めて聞いたのは事件後の事だけどシホちゃんは目を魔力で強化することで最高4キロ先まで目視出来ちゃうっていうの。
私はあまりの現実味の無さにちょっと疑っちゃったけどそれを間近で見せられた時には口が開きっぱなしになっちゃったから。
私がそんな事を思い出しているとすでにシホちゃんは構えをしました。
すると結界の中だと言うのにさらに場の空気が一変して周り全ての音が消えてしまい、知らずの内に私の手に汗が浮かび緊張感に駆られてしまう。
でも、別に嫌な物じゃなくて逆にとてもいい心地よさを感じる…。
それから射法八節という弓道の基本らしい動作をして矢を弓に番えて、引き絞られた弦から矢が放たれる。
それを計十回放ち、その全てが的の木に吸い込まれていった。
でも確認をしに行くと見る限り矢は一本しかない。

「シホちゃ~ん、一本しか刺さっていないけど…他の矢は?」
「なのはさん、よく見てみて」

フィアちゃんにそう言われてまじまじと見てみると残り九本の矢が最後の一本に押し潰されて木の幹に埋まっていました。

「すごい…!」
「まさに百発百中だね!」

私とユーノ君でシホちゃんに賛美の言葉を送るけど、どうにもシホちゃんは不満そうな様子。なにが不満なのかな?
その理由を聞いてみると、「当たる事が既に分かっていたから別に嬉しくない」との事。
どうにもシホちゃんは『結果が見えてから矢を放つ』という…私達からしたらとんでも技術を持っているみたい。
シホちゃんがいうに、

「私の矢は他の技能に比べて達人の域に近い代物らしい。もともと心を空にする事が得意だったから大師父がいうには無の境地というものに至っているみたいなの」

と、別段気にせず言っていたけど、心を空にするって…。
よくわからないけど、それってとても普通じゃできることじゃないよね?
でも、シホちゃんはそれを体得しているわけで…。
やっぱり、すごいという言葉しか浮かんできませんでした。

「そうだ。今の話しで思いついた事だけど、なのはの砲撃系や操作系の修行にもっと精密さを出させるように撃つ前にしっかりと目標を定めることにしましょう。
それで少しでも狙いが外れていたら一回バツを与えるっていうのはどう?」
「え? なんで!?」
「なにかしらペナルティがあった方がより集中できるでしょう?
安心しなさい。別に怖いことはしないから………別にね」

ゾワッ!
最後に付け足すように言った一言がとても私の心に恐怖を与えました。
これじゃこれからは一つの失敗も命取りかもしれません! 気合を入れてやらないと…!


◆◇―――――――――◇◆


日が傾いてきた頃に私達は翠屋に向かっていました。
その途中、おもむろにシホちゃんは携帯を取り出してメールを打っていました。

「シホちゃん、誰とメールをしていたの? アリサちゃんかすずかちゃん?」
「いいえ、ちょっとした私の友達…あまり会えないからメール友達って奴ね」
「そうなんだ。ね、なんていう名前なの…?」
「はやて。八神はやてっていうの」

私達とは別に友達が出来ていたんだ…。
いつか紹介してくれたら嬉しいな。
それから色々とお話をしながら翠屋につくとそこには本日二度目の意外な人達がいました。

「あら。なのはさんにシホさん」
「あ、やっほー、四人とも元気そうだね」
「クロノ君がいたからもしかしたらと思ったらやっぱりリンディさん達もいたんですね」

リンディさんとエイミィさんが翠屋のケースを持って出てきたところで私達と出くわしたみたいです。
エイミィさんが四人と言っているけど今は二人と二匹なんですけど大丈夫かな?

「フェイトにお土産ですか?」
「ええ。ずっとアースラの中で居座っていたら退屈でしょう?
出してあげたいけどまだ結果が出ていないからせめて料理とかで楽しんでもらおうと思いまして」
「フェイトちゃんは元気ですか?」
「うん。最近はもう元気いっぱいでよくクロノ君とトレーニングをして鍛えているよ」
「そうなんですか…よかったです」

安心しているところでシホちゃんが、

「あ、そうそう。リンディさん、今日の晩御飯ですけど魚が一杯だから是非味わって食べてください」
「え? クロノ君、そんなに釣れてた!? いつもは十匹にも満たないのに…」
「あ、あはは…少しありまして」
「お姉様と勝負をしていたんですよ。ま、あっけなく敗れていましたけどね」
「それで、つい釣りの邪魔をしちゃったお詫びに三十匹くらいかな?
それをクロノにほとんど分けてあげたんです」
「はぁー…それじゃ今日はとても豪勢なものになるねぇ…」
「それじゃエイミィさん。少し…」
「ん? なになに…?」

それでシホちゃんとエイミィさんは内緒話をして少しして二人とも笑顔を浮かべていた。
でもそれは決していい笑顔じゃなかったと思いました。
後、シホちゃんは手帳を取り出して、

「こんなメニューがいいんじゃないでしょうか?」

と、リンディさんに簡易だけど料理と調理の内容を書いたメモを渡していた。
後日、アースラから携帯に「厨房係をやってみない?」というお誘いが来たらしくシホちゃんはとても苦笑いを浮かべていたけど…。

「ありがとうね、シホさん。それじゃまたなにかあったら連絡します」
「ばいばーい!」

リンディさん達も帰っていって少し翠屋の手伝いをして家に帰りいつも通り全員で食事をとって一日が終わりました。
シホちゃんがお風呂に入っていった後、お姉ちゃんが乱入していったのは、もうご愁傷様としか言えませんでしたけど。


◆◇―――――――――◇◆


「…それで今日一日、シホを観察してみてなのははどうだった?」

ユーノ君がそう問いただしてきたので私は笑顔を浮かべて、

「うん。また色々なシホちゃんの一面を知れたとても楽しい一日だったよ!」
「それはよかったね」
「うん!」


これは私、高町なのはがシホちゃんを一日観察したとても楽しい一幕でした。マル。

 
 

 
後書き
なのはをうまく書けていればいいのですが。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧