スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百二十七話 テラルの動揺
第百二十七話 テラルの動揺
「馬鹿者が!」
シンクラインはまた怒鳴っていた。
「これで月も完全に地球人共に奪われただと!」
「はっ、申し訳ありません」
「これで」
「貴様等は一体何をしているのか!」
ここでまた怒鳴るのだった。
「これで月と火星が奴等に奪われた」
「はい」
「無論地球もだ。そして今は木星に向かってきているのだな」
「左様です」
「その通りです」
「このままではこの土星も危うい」
やはり彼は本拠地を土星に置いていた。
「いいか。木星に戦力を集中させよ」
「戦力をですか」
「そしてそのうえで奴等を叩く」
彼は言うのだった。
「そしてその指揮はだ」
「はい、それは」
「誰でしょうか」
「テラルに預けることにする」
名指ししたのは彼であった。
「よいな、総司令官はテラルだ」
「あの者をですか」
「そうだ、あの者をだ」
彼はまた言った。
「木星の司令官に任ずる。そして他の将官達も集めよ」
「はっ」
「それでは」
「そしてだ」
彼の言葉は続く。
「クロッペンだが」
「処刑ですか?」
「処刑しても何にもならん」
しかし彼はここではこう言うのだった。
「むしろだ。それよりもだ」
「それよりも?」
「どうされるおつもりで」
「働いてもらおう」
考える顔での言葉であった。
「ここはな」
「では処刑は」
「そうだ。中止してやる」
ニヤリと笑って述べるのだった。
「しかし罪は消えない」
「それでは」
「将軍は」
「そうだ。精々戦ってもらおう」
笑みが酷薄なものになった。
「死ぬまでな」
「わかりました。それでは」
「あらゆる戦力を木星に」
「あの地球の裏切り者達もいるな」
イノベイター達のことである。
「あの者達にもだ。向かわせろ」
「はい、彼等でしたら」
「既に木星におります」
「そうか。ならばよい」
それを聞いてまずは頷くのだった。
「それではだ。戦力を集めだ」
「はい」
「そのうえで」
「ロンド=ベルを殲滅する」
この状況でも彼は敵を殲滅するつもりだった。
「木星にだ。いいな」
「はい、それでは」
「戦力の殆どを」
こうして帝国軍はその戦力の殆どを木星に集結させていた。そしてそこにはあの風間博士もおり彼は早速盛んに主張していた。
「ここはだ。躊躇はならん」
「躊躇とは?」
「博士、それは一体」
「攻めよ」
彼は言うのだった。
「ロンド=ベルを攻める。それだけだ」
「そうだ、その通りだ」
「それしかない」
そして積極派が彼を支持するのだった。
「我等の数は圧倒している」
「ここはその数を頼むべきだ」
「いや、しかしだ」
「それはどうか」
そして慎重派がそれに反論する。
「ロンド=ベルは手強い」
「数で頼んでもだ」
「そうだ、勝てる相手ではない」
彼等は言うのだった。
「現にこれまでもそれで敗れているではないか」
「その通りだ。奴等に数は無意味だ」
彼等はこれまでの戦いから語っていた。
「それでどうして」
「まだ力技など」
「黙れ!それは貴様等の惰弱さのせいだ!」
「そうだ!」
強硬派はここで激昂してきた。
「その惰弱さがそのまま指揮に出ているのだ」
「一気にやれば問題はない!」
彼等は言う。
「踏み潰せはいいだけだ、ロンド=ベル程度な」
「それを臆病な指揮で行うからだ」
「では数で何処までも攻めるというのか?」
「それで今まで以上にか」
「そうだ、その通りだ」
「数は力だ」
強硬派の主張は変わらない。
「それで攻めればどんな相手も恐れることはない」
「それ以外に何がある」
「テラルよ」
そしてここで博士がテラルに対して言うのだった。
「わし等は貴様の考えには賛同せぬ」
「司令官は私だ」
だがテラルはこう言ってそれを退けようとする。
「その私に逆らうというのか」
「その通りだ。わしがロンド=ベルを倒す」
博士もまた引かない。
「そしてあの技術を全て手に入れてやるのだ」
「くっ、その為にか」
「そうだ。その為にわしは帝国についた」
その狂気のことはここでは言わない。
「それにだ。わしもまた指揮権をシンクライン皇太子より貰っているのだぞ」
博士はこのことも言うのだった。
「いざとなればだ。貴様を更迭させることもできるのだぞ」
「そうですな、テラル殿の指揮は軟弱です」
「如何にも」
強硬派は完全に博士についていた。
「それで博士、我等は我等で」
「動くとしますか」
「そうだな」
博士はそれで強硬派をまとめてしまった。
「行くぞ、早速な」
「はい、それではすぐに」
「参りましょう」
こうして木星の帝国軍は完全に分裂してしまった。強硬派はその殆どであり瞬く間に軍をまとめ兵をロンド=ベルに対して向けるのだった。
テラルはそれを見て歯噛みするだけだった。残ったのは僅かだった。
「テラル様、この事態は」
「どうしましょうか」
「まず残った者達は?」
彼はとりあえず自分の下にいる戦力とターツとジーラに問うのだった。
「どれだけですか?」
「殆どの戦力は博士につきました」
「残ったのは我々の直属と戦力と」
「私の戦力だけです」
ローザも残っているのだった。
「後は釈放されたクロッペン司令の軍が向かっています」
「ですが他は」
「そうか。行ってしまったか」
「我等に残された戦力は僅かです」
結果としてそうなってしまったのだ。
「これでは戦うこともままなりません」
「どうされますか?」
「今は仕方がない」
テラルはこう言うしかなかった。
「しかし風間博士は」
「博士は?」
「あまりにも危険だ」
こうジーラに告げるのだった。
「このままでは恐ろしいことをしかねない」
「そうです、確かに」
「博士はあのままでは」
それはターツ達も感じていた。ロンド=ベルも気付いたその危険さをである。
「あのネグロスよりも危険です」
「放ってはおけませんが」
「しかし博士の手には今かなりの戦力がある」
それは事実だった。
「今の我々には」
「何もできませんか」
「くっ・・・・・・」
今の彼等は見ているしかできなかった。戦力の殆どを博士に持って行かれたのだから。歯噛みしてその戦いと狂気を見るだけであった。
博士が率いる大軍はすぐにロンド=ベルにも察知された。レーダーには大軍が映っている。
「二百万です」
「そうか」
ダイテツはエイタの言葉を聞いてまずは頷いた。
「正面からだな」
「はい、そうです」
「本来なら護りを固めるべきだが攻めてきた」
ダイテツは言うのだった。
「ならば正面から来る。数を頼んでな」
「そうですね。それだけ積極的に来るなら正面から力技で来ますね」
テツヤもそれに頷く。
「心理的に分析して」
「その通りだ。確かに数は多い」
ダイテツはそれは認める。
「しかしだ」
「しかし?」
「戦いやすい。正面から来るならばだ」
「どうされますか?」
そしてダイテツに対して問うのだった。
「ここは」
「まずは待つ」
彼の考えた今回の作戦はこれであった。
「戦力を整え陣も組んでだ。いいな」
「わかりました。それでは」
「うむ、待つぞ」
こうして彼等はまずは敵を待った。アステロイド帯に入りそこで陣を整える。左右に伏兵も配しそのうえで敵軍を待ち受けるのであった。
「敵が姿を現わしました」
「ええ」
タリアはメイリンの言葉に応える。
「今のところは順調ね」
「伏兵に気付いたところもありませんね」
アーサーもタリアの横に立って敵軍の動きを見ながら述べた。
「じゃあこのまま待って」
「ええ。それにしても」
タリアは敵軍の動きを見て述べた。
「敵は相変わらず正面から来るのね」
「数を頼んでみたいですね」
「それで勝てないのはわかっていないのかしら」
そうしてここで首を傾げるのだった。
「今までそれで破ってきているのに、こっちも」
「さあ。とりあえず数で押すしか考えてないんじゃないですか?」
アーサーの読みは当たっていた。
「数は力なりってことで」
「だとしたら帝国もあまり考える人材がいないのね」
タリアはこうも言った。
「それに今の敵軍は」
「動きが悪い」
レイヴンがグラヴィゴラスの艦橋から言った。
「ただ数に任せて来ているだけだ。どうということはない」
「指揮官はあれは」
サンドマンも言うのだった。
「そうか。彼か」
「彼っていいますと?」
「誰なんですか?」
テセラとチュルクがサンドマンの今の言葉に問うた。
「誰かおわかりになられたみたいですけれど」
「一体」
「風間博士だ」
サンドマンは見抜いていたのだった。
「彼が指揮を執っているのだ」
「博士がですか」
コリニアはそれを聞いてまずは頷いた。
「けれど博士は戦闘は」
「そうだ。専門外だ」
まさにその通りであった。
「だが指揮は執っているのだ」
「帝国軍もどうなってやがるんだ?」
エイジですら訳のわからない話だった。
「素人がそんな指揮を執るなんてよ」
「帝国軍にはちゃんとした司令官がいるけれど」
斗牙も言う。
「何でなのかな。それで指揮官があの博士って」
「内部分裂じゃないかしら」
ミヅキの予測もまたその通りだった。
「それで博士が強硬派をまとめて攻めてきたってことじゃないかしら」
「だったらそれってチャンスじゃないの?」
ルナはこう考えた。
「指揮官があれだったらどんな大軍でも怖くないわよ」
「そうですね」
エイナもそれに頷いた。
「少なくとも敵の指揮官が凄い人よりは」
「ええ」
リィルも頷く。
「それならここは」
「全軍このまま待て」
サンドマンはあえて冷静な指揮を告げた。
「その敵を待ちそのうえで射程に入らせる。いいな」
「はい、それじゃあそれで」
「やりましょう」
こうして彼等は帝国軍を待った。そうして敵は今射程内に入った。その瞬間だった。
「よし、撃て!」
「了解!」
木星での最初の戦いがはじまった。ロンド=ベルは派手に攻勢を仕掛けそのうえで帝国軍のマシンを破壊していく。しかし彼等は決してアステロイドから出ようとはしない。
「アステロイドから出る必要はない」
サンドマンはここでも言うのだった。
「まずはだ。護りを固めつつ戦う」
「それでですね」
「敵の攻撃はアステロイドで防げる」
ローザに答えていた。その間確かに敵の攻撃はアステロイドに防がれていた。
帝国軍の攻撃は当たらずそのうえでロンド=ベルの攻撃が続く。帝国軍はそれに苛立ちさらに攻めるが損害ばかりが増えていた。
「くっ、まだか!」
「攻めろ!」
博士はその中で攻撃命令を出し続けていた。
「数は我等の方が上だ。よいな!」
「はい、それは」
「わかっていますが」
「何だ!?」
「敵に攻撃が当たりません」
「近寄ることすらできません」
どうしても攻めきれなかったのだ。
「敵はアステロイドに篭り」
「それでどうしても」
「大丈夫だ」
しかし彼は言うのだった。
「我等の方が数において勝っている。それで押していけばだ」
「いけますか、それで」
「このまま」
「そうだ。全軍前に出せ」
博士の考えは変わらない。
「このままな」
「わかりました。それでは」
「そのように」
「攻め続けよ!」
彼はまた攻撃命令を出した。それにより帝国軍は全て前面に出た。しかしそれで後方がおろそかになり。ロンド=ベルはここでまた動いた。
「よし、今だ!」
「行くぜ!」
その伏兵が出て来た。そうして前面にだけ気を取られていた帝国軍を取り囲んでしまったのだった。完全に包囲してしまったのだ。
「よっし、こうなったらよ!」
「あとは抹殺あるのみ!」
「地獄に落ちろ」
オルガ、クロト、シャニが前に出る。そうして一気に攻める。
二百万の帝国軍は忽ち取り囲まれ殲滅されていく。それは最早戦いではなかった。
ただただ帝国軍だけがやられていく。二百万の大軍は瞬く間に六割を失ってしまっていた。
「くっ、退くな!」
「ですが司令!」
「黙れ!」
博士は撤退を言おうとしたその部下に対して何と鞭を振るった。それも電気鞭である。部下は忽ちのうちに電流に打ちのめされ黒焦げになって倒れる。
「わしが指揮官だ!そのわしに逆らうか!」
「い、いえ」
「それは」
流石にそれを見て何かを言える者はいなかった。
「何もありません」
「ではここは」
「そうだ。戦え」
やはりそれしかなかった。
「よいな戦うのだ。いいな」
「では司令、このまま正面をですか」
「突破するのですね」
「そうだ。包囲なぞどうということはない」
彼は既に何もかもが見えなくなっていた。
「敵の正面を突破しそのうえで反転すればそれで終わりだ。よいな」
「わかりました、それでは」
「このまま突破して」
「反転しそのうえで包囲し返すのだ!」
現実は無視していた。
「よいな!」
「は、はい!」
「それでは!」
電気鞭には逆らえない。そうして今帝国軍は無謀にも護りを固めているロンド=ベルの正面に対して突撃する。しかしアステロイドに籠る彼等を抜ける筈がなかった。
「愚かなことだ」
リーがその彼等を見て言った。
「今の我等を突破できる筈がない」
「じゃあ艦長さんよ」
それを聞いたカズマが彼に問う。
「帝国軍はこのまま殲滅できるんだな」
「確実にな」
リーは既に勝利を確信していた。
「できる。こちらはこのまま攻撃を続ければよい」
「よし、わかったぜ」
「お兄ちゃん、来るわよ!」
「ああ!」
ミヒロの言葉に応えたうえで彼は再び立ち向かう。攻撃は終わることなく延々と続いている。しかし帝国軍は突破できず損害だけが増えている。
「おのれ、何をやっている!」
「司令、駄目です!」
「突破できません!」
激昂する博士に対して部下達がまた告げる。
「敵の護りは堅固です」
「どうされますか?」
「そんなことは言うまでもないわ!」
やはり博士の考えは変わらない。
「突破だ!突破せよ!」
「は、はい!」
「では!」
「何としてもだ」
考えを頑として変えないのだった。
「攻めよ。よいな」
「・・・・・・わかりました」
損害は遂に全軍の七割を超え八割に達しようとしている。しかしそれでも突破はできない。このまま全滅かと思われたその時だった。
「敵の援軍が来たわ」
「えっ!?」
ラッセルはラーダの言葉に思わず声をあげた。
「ここで?」
「ええ。その数は百万」
こう告げるラーダだった。
「来たわ」
「じゃあその援軍も叩き潰すまでだぜ」
カチーナはここでも強気だった。
「一気にな!」
「いえ、それは無理でございますわ」
しかしここでラミアが言うのだった。
「援軍はそれだけではありませんことよ」
「また来た!?」
ラッセルが声をあげたその時間だった。また百万出て来たのだった。
「間に合ったようだな」
「はい」
クロッペンの軍だった。ミヅカ達も共にいる。
「そしてテラル司令の軍もいるな」
「ですが司令」
ボイダーが彼に言うのだった。
「今我が軍は」
「そうだな。数をかなり減らしてしまっている」
「はい」
頷くカブトだった。
「このままでは」
「どうされますか?」
今度はプロザウルスが問うた。
「それではすぐに」
「わかっている。すぐに救援に向かうぞ」
「わかりました」
「テラル司令にも伝えよ」
クロッペンの指示は迅速だった。
「風間博士の軍をだ。いいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
こうしてクロッペンの軍はすぐに全軍に向かう。そしてそれにテラルの軍も続く。彼等は一直線にロンド=ベルの包囲に突き進む。それを見たロンド=ベルは包囲の輪を解かざるを得なかった。
その後は追撃戦だったが帝国軍は何とかその追撃を退け撤退した。木星を巡る最初の戦いはロンド=ベルの勝利だったがそれでもだった。
「勝利は収めたけれどね」
「そうですね」
留美がスメラギに対して応えていた。
「釈然としないわね」
「風間博士を逃がしてしまいました」
「そう、それよ」
彼女が言うのはこのことだった。
「それなのよね。あの人はここで倒しておきたかったわ」
「裏切り者だからですか?」
「違うわ。それも頭にきてるけれどそれだけじゃないのよ」
こう言うのだった。
「それだけじゃね」
「といいますと」
「あの人は危険だから」
こう紅龍の問いに答えるのだった。
「あの人はね。何をするかわからないから」
「そうですね。それは確かに」
紅龍はスメラギのその言葉に頷いた。
「核を放つ程度でもあの博士にとっては」
「些細なことですね」
留美もその顔を深刻なものにさせて言う。
「だとすればあそこで博士を逃がしたのは」
「下手をすれば取り返しのつかないことになるわ」
スメラギはその時のことを危険視しているのだった。
「だからこそって思ったのだけれど」
「けれど逃げたものは仕方ないですよ」
しかしここでミレイナが明るく言ってきたのだった。
「これからのことを考えた方が」
「そうね」
スメラギもそれを聞いて頷いた。
「過ぎたことを悔やんでも仕方ないわね」
「はい」
「考察するのはいいけれど」
それとこれとは別ということだった。
「悔やんでも何にもならないから」
「ですからここは前向きに考えましょう」
ミレイナはまた明るく述べる。
「それでどうしますか?」
「とりあえずは前進よ」
答えるスメラギの顔が微笑んでいた。
「戦いに勝ったことだしね」
「そうですね。それではこれからも」
留美も言う。
「行きましょう」
「ええ。前進よ」
こうしてロンド=ベルは博士のことを危惧しながらもさらに進軍する。そしてこの頃帝国軍ではまたしても騒ぎが起こっていた。
「何故あの時攻めなかった!」
「馬鹿な、攻められる筈がない」
クロッペンが風間博士に反論していた。
「こちらは救出するので精一杯だったのだぞ」
「その通りだ」
テラルもまた博士に対して言う。
「損害が甚大だったのだ。その貴軍を撤退させるだけでな」
「それだけで精一杯だったのだ」
クロッペンとテラルはそれぞれ言葉を出す。
「戦闘の続行なぞとても」
「無理だったのだ」
「無理ではない!」
しかし博士に常識は最早通用しなかった。
「貴様等があらたに連れて来た二百万、それで戦えた!」
「だからそれは無理だと言っている!」
「実際に我等の軍もだ」
救出し撤退する時にかなりの損害を出してしまっているのだ。双方共その軍の半数近くを失いそのうえで何とか撤退に成功している程だ。
「あれだけの損害を出しては」
「とても」
「ふん、四百万で駄目ならだ」
博士の頑迷、いや狂気の言葉は続く。
「六百万だ、そうでなければ一千万だ」
「馬鹿な、それだけの数は」
「そうだ」
二人は一千万と聞いて思わず声をあげた。
「今木星にいる我が軍は一千五百万」
「太陽系に集結させた我が軍の半分だぞ」
それだけの数なのだ。
「それだけの数を送り込んでか」
「戦うというのか」
「そうだ。戦いは数だ」
彼はあくまで己の考えを変えない。
「その数で攻める。それだけだ」
「くっ・・・・・・」
「まだ言うのか」
「そしてそれが駄目ならばだ」
ここで狂気を見せてきた。
「この木星を爆破させそれでロンド=ベルを粉砕する」
「馬鹿を言うのだ、そんなことができるものか」
「そうだ、そんなことをすれば我が軍もだ」
「黙れ!」
やはり彼等の話を聞かない。
「わしがこの木星方面軍の司令官だ!文句を言うか!」
「何っ、指揮権は私にもあるのだ!」
「私にもだ!」
流石に今の言葉にはクロッペンもテラルも呆然となった。さらにだ。
「それは殿下から預けられたものだ」
「そうだ。司令官としての権限は」
「負け犬共が何を言う」
博士は血走った目で二人に言い返してきた。
「悔しかったら勝ってみよ。そして奴等を倒す手段を考えるのだ、わしの様にな」
「友軍を巻き込んでか」
「木星を爆破すれば我が軍とてそれに巻き込まれるのだぞ」
「そんなこと知ったことではないわ!」
博士の狂気は止まらない。
「ロンド=ベルさえ倒せればそれでよいのだ。黙っておれ!」
「テラル殿、最早これは」
「うむ」
もう彼等には打つ手はなかった。
「下がるとしよう」
「そうだな」
「兵を集めよ!」
博士の狂気の言葉が続く。
「集められるだけだ!」
「集められるだけですか」
「そうだ。その全てを集めよ」
部下達に対しても告げる。
「そしてそのうえでロンド=ベルを叩き潰す」
「わかりました」
「そしてだ」
まだ狂気は続くのだった。
「いざとなればだ。よいな」
「木星をですね」
「そうして惑星ごと奴等を消し去ってくれるわ」
「うむ、その通りだ」
そんな話をしていた。そうしてそのうえで戦いに備えていく。だがそれはあくまで彼のエゴに基く戦いであり狂気に満ちたものであった。
第百二十七話完
2009・5・9
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