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八条学園怪異譚

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第十八話 トイレの花子さんその九

「一番弱い奴なのよ」
「そうなのよね」
「あんた達は今のところ大丈夫みたいだけれどね」
 花子さんは二人の目を見て言った。
「そういうことする奴って目に出るから」
「目になの」
「目はそいつの心を出す鏡よ」
 よく言われることだが花子さんはあえて言った。
「そういうものだからね」
「目なのね」
「聞いたことあるでしょ。目は人の心を出すのよ」
「ええ、時々だけれど」
「目に出るのよ、心ってのは」 
 花子さんも妖怪として長い間生きてきて様々な人間を見てきた、それで言えることだった。
「嫌な奴は嫌な目をしてるのよ」
「いじめをする人も」
「そう、あんた達は普通の目ね」
「いい目?」
「まあそう言っていいわね」
 花子さんは実際に二人の目を見ながら述べる。
「悪い目はしてないわ」
「だったらいいけれど」
「私もね」
「そっちの小さい方、あんた結構面倒見いいでしょ」
 愛実を見ての言葉だ。やはりその目を見ている。
「お母さんみたいに」
「お母さんって」
「何か食堂のおかみさんみたいな顔をしてるけれどね
「だって私食堂の娘だし」
 自分でも言う愛実だった。このことに誇りさえ感じている。
「それもね」
「成程ね、あんた食堂の娘さんなの」
「そうよ。カツ丼とかカレーが得意だから」
 花子さんはトイレからあまり離れられないがあえて言う。
「今度作る?夜の飲み会とかで」
「別にいいわ、飲み会は適当に食べてるし」
「そうなの」
「というかわざわざ材料持って来てそれで作ってもらうのもそっちに手間だしね」 
 だからいいというのである。
「どうしてもっていうのならお店で作ったの持って来てくれていいから」
「じゃあコロッケとかも」
 トンカツと同じ洋食の揚げものである。96
「作って持って来て」
「それならいいけれどね
「そうなのね」
「で、そっちの娘は」 
 今度は聖花を見て言う花子さんだった。
「頭いいわね」
「私はそうなの」
「二人共優しい娘ね」
 花子さんはこのことは二人共だと見抜いた。
「いい娘達みたいね。そうね」
 花子さんは聖花を見て言う。
「あんたはお姉さんね」
「私はそれになるの」
「そう、そっちの小さい娘がお母さんでね」
「私がお母さんなのね」
「で、私が妹ね」
「いや、それ違うでしょ」
 愛実は花子さんの今の言葉には眉を曇らせてすぐに突っ込みを入れた。
「あんた私達よりずっと長生きしてるでしょ」
「いや、最近生まれた妖怪よ」
 花子さんの学校怪談が出て来たのは意外と早い。少なくとも口裂け女よりは若い。
「二十年位前かしら。いや、二十五年かしら」
「普通に私達より年上だから」
「私達十代だから」
 十代から見て二十代が年上であることは常識のことだ、二人から見て花子さんはどう考えても年上の存在である。
 それで二人も言うのである。
「花子さんの方が年上だから」
「外見だけで妹って言うのはよくないわよ」
「二人共中々賢いわね」
「いや、賢いとかじゃなくて」
「普通に思うことだから」
 二人苦い顔になった花子さんにさらに突っ込みを入れる。 
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