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ヘタリア大帝国

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TURN56 ゲイツランドの壁その二

「敗れてもね」
「その場合もですね」
「我々は」
「ドクツを乗っ取り」
 そしてだというのだ。
「そのうえで教団の支配を確立するんだ」
「その為にあの大怪獣も必要ですし」
「あれもですね」
「一番面白いのは」
 ヒムラーは差し出されたファイルにも目をやっている。そのファイルの中のデータを読みながらの言葉だ。
「これだね」
「ヴァージニアですね」
「それのことですね」
「これも使えるね」
 こう言うのだ。
「ベルリンの備えに置けば」
「例え何があろうとも」
「滅びることはありませんね」
「これだけあればソビエトに敗れても大丈夫さ」
「そしてドクツが勝った場合も」
「乗っ取った後に」
 この場合も同じだった。
「我々の剣となりますね」
「このうえなく強力な」
「あの娘をどう篭絡するかだけれど」 
 ヒムラーが懸念しているのはこのことだった。
「それはね」
「お任せして宜しいでしょうか」
「そのことは」
「そういうことは得意さ」
 そうだというのだ。
「だからそのことはね」
「ヒムラー様が直々に」
「動かれますか」
「伊達に法皇じゃないさ」
 宗教的な単語も出る。
「だからね」
「それでは」
「そのことも」
「確かに数えきれない程の特許を手に入れドクツを立て直した英雄さ」
 ヒムラーもレーティアの能力は認めていた。だがこう見ていることも事実だった。
「けれどそれでもだよ」
「所詮は小娘」
「それに尽きませんね」
「そう。おそらく誰とも付き合ったことはないね」
 ヒムラーの読みはその通りだった。実際にレーティアはこれまで異性とは話はしたことはあっても交際したことなぞないのだ。
 それで彼もこう言うのだ。
「だったら篭絡なんてね」
「楽ですね」
「至って」
「任せてくれよ。それにどうもあの娘は」
 ヒムラーの目が光った。妖しい赤い光が放たれる。
「働き過ぎだね」
「過労ですか」
「それですか」
「そう。あのままいけば過労で倒れるよ」
 ヒムラーはこのことも見切っていた。ドクツ第三帝国はレーティアの独裁国家であり全ては彼女が取り仕切っている。
 政治、軍事、経済、科学のあらゆる分野でそうなっている。確かにそれでドクツは復活し今の隆盛があるにしてもだ。
 だが一人で国家を支えている、それではというのだ。
「絶対にね。そして」
「そしてですか」
「さらにですか」
「その時までにあの宣伝相なりを排除しておいて」
 グレシアはヒムラーを警戒している。それは彼も察している。
「俺が次の総統になろうか」
「このドクツ第三帝国の」
「二代目の総統ですか」
「俺にはこれがある」 
 手袋に包まれているその手の甲をぽんと叩いてもみせる。
 
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