スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百十四話 斗牙とエイジ
第百十四話 斗牙とエイジ
元の世界に戻ったロンド=ベル。しかし今は戦闘は行われていなかった。
「あれっ、時間は経ってない!?」
「一ヶ月は向こうにいたのに」
皆戻ってきてまずそのことに気付いたのだった。まだ東京ジュピターで最後の制圧の最中だったのだ。
「っていうか全然同じ時間だけれど」
「これって一体!?」
「どうやらあれね」
それを見てミーナが言うのだった。
「パラダイムシティとこっちの世界は別次元みたいになってるじゃない」
「ああ」
ジェスが彼女の言葉に頷く。
「それはそうだが」
「だからよ。こっちの世界とは全然違う時間の流れなのよ」
こう言うのだった。
「だからね。違うのよ」
「そういうことか」
「ええ。だからこっちの世界では時間が流れていないのよ」
またジェスは説明する。
「そういうことよ」
「そうだったのか」
ヘクトールはそこまで話を聞いて納得した。
「それで俺達は今ここに時間が経っていないまま戻ったのか」
「そういうことね。じゃあ気持ちを切り替えて」
「東京ジュピターの生活ね」
パットは明るく述べた。
「じゃあこのまま展開しましょう」
こうして彼等は東京ジュピターを制圧した。これでここでの行動は終わった。そのうえで彼等は一旦関東の連邦軍の基地に戻った。そこで休息に入るのだった。
「さて、これからだが」
「今のところ予定はないですよ」
グレースがアーウィンに対して述べる。
「敵は今のところ展開していません」
「そうか。では今は休息の時だな」
「そうですよね」
のどかな返事だった。
「だから皆さん今は」
「外に出ている面々も多いな」
「はい」
そうなのだった。今彼等はかなりの数が外に出ていた。アーウィン達は当直なので残っているだけである。
「それでアーウィンさん」
「何だ?」
「何をしますか?」
穏やかな笑みで彼に問うてきたのだった。
「これから。何を」
「何をか」
「このまま当直をされるだけじゃないですよね」
こう彼に問うのだった。
「だったら何をされますか?」
「何をと言われてもな」
アーウィンも返答に窮していた。
「別に何もないな」
「オセロでもしますか?」
「オセロ?」
「それかチェスでも」
言いながらもうそのオセロやチェスのボードを出してきていた。
「どうでしょうか」
「そうだな。時間もあるしな」
彼は少し考えてからグレースに対して述べた。
「それではだ」
「やるんですね」
「ああ。二人でだな」
「そうですよ」
見れば今のところ部屋にいるのはその二人だけであった。
「ですから」
「時間はあるしな。ゆっくり楽しもう」
「他には将棋もありますよ」
「将棋もか」
「はい、これです」
答えながらこれまたかなり大きな将棋盤を出してきたのだった。
「中将棋です。やりますか?」
「中将棋か」
アーウィンは中将棋と聞いて目を少し動かした。
「話には聞いていたがな」
「これが勉強してみると楽しくて」
言いながらその将棋盤の上に駒を置いていく。駒の数はかなりのものであり普通の将棋にはないものも随分とあった。
「病み付きになりますよ」
「確かに面白そうだな」
アーウィンはその置かれている駒を見て言った。
「やってみてもな」
「はい。それじゃあ」
「ただ。俺はこの将棋のルールを知らないが」
「ルールは基本的には普通の将棋と同じですよ」
こうアーウィンに述べた。
「将棋にはない駒の動きが特徴的なだけで」
「それがわからないのだがな」
「それは教えさせてもらいます」
これまた呑気な言葉であった。
「それでは。二人で」
「ああ。やるか」
こうして二人はこの中将棋を楽しむのだった。その時街ではエイジ達が買い物をしていた。買い物をしながら外を見回していた。
「本当に何時見ても新鮮だよね」
斗牙がその周りを見回して言うのだった。
「外の世界って」
「そうか?」
エイジはその斗牙の言葉に対して首を捻るのだった。
「俺は別にな」
「だから。斗牙は最近まであのお城の外から一歩も出なかったのよ」
ルナはそのエイジに対して話す。
「だったら外の世界を知らなくても当然じゃない」
「言われてみればそうか」
エイジも言われて気付くのだった。
「それもな」
「そういうこと。ってこれ何回か言ってるじゃない」
「それでも信じられねえんだよ」
彼にとってはそうなのだった。
「あの城から出たことねえっていうのがな」
「あんたはあんた」
ルナは言う。
「それで斗牙は斗牙よ」
「だからかよ」
「わかってないみたいだけれどね」
じとっ、といった目でエイジを見ての言葉だった。
「どう見ても」
「へっ、どうせわからねえよ」
鞄を持っている手を頭の後ろにやって居直るのだった。
「俺にはよ」
「全く。最近はすねるし」
ルナはそれでも言うのだった。
「どうしようもないわね、本当に」
「勝手に言ってな。それでな」
「ええ」
「買うもんは買ったよな」
「そうね」
今度は素直にエイジの言葉に頷いていた。
「これで終わりよ。大体買ったわ」
「そうか。じゃあ後どうするんだ?」
「どうするって言われても」
ルナは今のエイジの言葉には首を捻るのだった。
「ちょっと」
「何だよ、何も考えてねえのかよ」
「そういうわけじゃないけれど」
こうは言うが言葉は随分と歯切れの悪いものだった。
「ちょっとね」
「じゃどっか行くか?」
エイジはこう提案してきた。
「どっかにな。どうだよ」
「どっかにって?」
「どっかっていうからどっかだよ」
エイジの言葉は随分と適当なものであった。
「街の何処かによ。どうだ?」
「今何かあったかしら」
ルナはエイジの今の言葉に腕を組んで首を捻った。当然彼女もその手に持っているものはそのままである。
「この街に」
「あれがあるわ」
しかしここでミヅキが前を指差した。
「ほら、あれ」
「あれって?」
「イベントやってるわ」
見れば丁度街の広場で催しが行われていた。犬や猫達が子供達と楽しく遊んでいる。
「あれどうかしら」
「いいじゃない」
ルナは子犬や子猫を見て楽しそうな声をあげた。
「あれ行きましょうよ」
「そうですね」
エイナがその提案に頷く。
「犬さんや猫さんと触れ合うのもいいものですよ」
「そうなの」
しかしリィルはそれには少し懐疑的なようだった。ロロットを腕の中に抱いたままである。
「犬とか猫も」
「フェレットもいいけれどね」
ルナはそのロロットを見ながら彼女にも言う。
「犬や猫もいいものよ。可愛くて賢くて」
「そうなんだ」
斗牙はそれを聞いてもどうにも実感がないようである。
「そんなにいいんだ」
「そうよ。じゃあ行きましょう」
ルナは早速そのイベントに向かって歩いていた。
「今からね」
「そうね。私も」
ミヅキも笑顔でそのイベントに向かうのだった。続いてエイジだった。彼等は三人に引き摺られる形でそのイベントに入った。
イベントに入るとであった。もう集まりは賑やかになっていた。市民達が笑顔で犬や猫と親しんでいる。
「ほら、この猫」
ルナは垂れ耳の顔の丸い猫を持ち上げていた。
「可愛いでしょ」
「ええ」
リィルはその猫を見て頷く。
「何ていう猫なの?」
「スコティッシュフォールドっていうのよ」
こうリィルに説明する。
「この猫はね」
「スコティッシュフォールドっていうの」
「大人しくて優しくてね。とても人なつっこい猫なのよ」
褒めることしきりであった。
「だから人気があるのよ」
「そうなの」
「一度側に置いてみたらもうそれでね」
「おい、また随分入れ込んでるじゃねえか」
今のルナのスコティッシュフォールド絶賛にエイジが突っ込みを入れる。
「そんなに可愛いかって・・・・・・そうだな」
「そうでしょ」
実際にルナの差し出した白いスコティッシュフォールドを見てのコメントだった。
「かなりいいな。けれどよ」
「何?」
「かなり威張った顔してねえか?」
その垂れ耳の猫を見て言うのだった。
「猫ってそんなところあるけれど何でこいつここまで偉そうなんだよ」
「かなり甘やかされているのかしら」
「そうじゃねえのか?大人しいことは大人しいみたいだけれどな」
とりあえずルナに持たれていてもかなり大人しい。
「まあそれでよ」
「ええ」
「暫くここで時間潰すんだよな」
「そのつもりだけれど」
こう言葉を返すルナだった。
「それがどうかしたの?」
「まあ俺はそれでいいんだけれどな」
エイジもエイジで犬や猫に囲まれて楽しげではある。
「けれどな」
「どうしたの?」
「こいつがな」
指差したのは斗牙であった。
「どうなんだよ、さっきから」
「どうかしたの?」
しかも当人はあまりわかっていない顔であった。平然としている。
「この犬とか猫が」
「どうしたじゃねえだろ?」
エイジはそんな彼に呆れた顔で告げる。
「あのな、斗牙」
「うん」
「御前犬とか猫と遊んだことねえのかよ」
「ないけれど」
これまた随分とあっさりとした返答だった。
「だから僕ずっとお城にいたから」
「まあそれはわかってるけれどな」
エイジもその辺りはわかってはいた。
「けれどな。それでも遊んだりしろよ」
「どうやって遊ぶの?」
やはりわかってはいなかった。
「遊ぶっていっても。ルナやエイナ達みたいにすればいいのかな」
「そうだよ」
やはり呆れた声で話すエイジだった。
「ったくよお。んっ!?」
「あっ、あんた達も来てたの」
エイジとルナがここで気付いた。見ればそこにいるのはチビメイド達であった。
「はい、レイヴンさんに案内してもらいました」
「おかげで」
「私とて遊ぶ時は遊ぶ」
レイヴンは仮面のまま堂々と外に出ているのだった。
「しかし。それにしてもだ」
「それにしても?」
「いい場所だ」
周りを見回して言う。
「犬や猫が可愛い。最高だな」
「そうですよね。ワンちゃんもニャンコちゃんも可愛いです」
「最高です」
チビメイド達も彼の足元で笑顔でいた。
「このセントバーナードさん凄く賢いし優しいし」
「シャム猫さんつんつんしてて面白いですよ」
「面白い?」
斗牙は彼女達の言葉にも何が何だかわからないといった顔であった。
「遊ぶのが?」
「動物達と触れ合うのはいい」
レイヴンは仮面に右の指をやって言う。
「だからだ。斗牙」
「はい」
「御前も楽しむのだ」
こう彼に話すのだった。
「是非な」
「わかりました。それでは」
レイヴンの言葉に頷きそのまま犬や猫達の中に入る。しかしそれで話が終わったわけではなくただその中にいるだけの彼であった。
「何かよ」
「やっぱり変だっていうの?」
「っていうかあからさまに変じゃねえか」
エイジはまたルナに話していた。
「あいつよ。まじで何もしてねえだろ」
「遊んでるじゃない」
「そうか?」
ルナの言葉にも首を捻るのだった。
「とてもそうはよ。何か」
「何か?」
「人間じゃねえみてえだ」
エイジの今度の斗牙を見ての言葉はそれであった。
「人形か?」
「だからそれはちょっと考え過ぎじゃないの?」
「だといいけれどな」
こうは言っても納得していない顔のままであった。
「まあいい。それでもだよ」
「何?」
「俺達も遊ぶか」
考えを転換させてきた。
「気持ちを切り替えてな」
「そうね。セシル達もいるし」
「ああ、そうするか」
そんな話をしながら彼等はまた遊びに入った。そうして暫く彼等なりに楽しい時間を過ごしていたがそれは急に破られたのであった。
「!?」
「何だ!?」
急に街の気配が慌しくなった。そして。
「何っ、ガルラ帝国!」
「出て来たのね!」
「諸君」
ここでサンドマンが宙に映し出された巨大モニターから出て来たのだった。
「済まないがこれで余暇は中断だ」
「はい」
ルナが強い声で彼に対して応えた。
「それじゃあすぐに」
「グラヴィオン出撃せよ!」
彼はすぐに出撃を命じた。
「そしてロンド=ベルの諸君」
今度はロンド=ベル全軍に対しての言葉だった。
「総員出撃せよ。これより戦闘を開始する!」
「よし!出るぞ!」
「出撃だ!」
こうしてロンド=ベルも出撃する。グラヴィオンのパイロット達も側に出て来た棺に入りそこからグラヴィオンに乗る。いよいよ戦いのはじまりであった。
「さて、皆」
「ええ」
ミヅキがいつもと変わらない斗牙の言葉に応える。
「戦おう」
「わかったわ」
「!?待って」
だがここでルナが声をあげてきた。
「どうしたの?」
「まだ皆が残ってるわ」
見れば先程の広場でまだ犬や猫達が残っていた。当然市民達もだ。
「彼等を守って」
「いや、それよりも今は」
ところが斗牙はここで言うのだった。
「戦いを先にしないと」
「戦い!?」
「うん。もう敵は目の前にいるよ」
実際にグラヴィオンは既にその目の前に多くの敵に囲まれてしまっていた。
「だから。今は」
「おい、待てよ」
その彼の判断に文句をつけてきた者がいた。
「まだ皆いるだろうがよ」
「わかってるよ」
「セシルだっているんだぞ」
見ればその通りだった。セシルは逃げ遅れたのかまだ広場に残っているのだった。多くの市民や動物達と一緒に残っているのだった。
「どうするんだよ、見捨てるっていうのかよ」
「今は戦うことが先だよ」
斗牙の言葉は変わらない。
「だから今は」
「ふざけんじゃねえ!」
今の斗牙の言葉に遂に激昂するエイジだった。
「セシルや街の人達や動物を見捨てるっていうのかよ!」
「戦いだから」
「ふざけんな!誰かを見捨てて戦えるか!」
「ちょっとエイジ」
激昂し続けるエイジに対して言ったのはルナだった。
「あんた何考えてるのよ」
「何だって!?」
「そうよ。今は戦闘中よ」
彼女が言うのもこのことだった。
「それでここで喧嘩して何になるのよ」
「じゃあ御前もセシルや他の人達や動物を見捨てろっていうのかよ!」
「そんなこと言ってないでしょ!」
「同じだろうが!」
エイジも引かない。
「とにかくここはセシル達を助ける!いいな!」
「だからできるわけないでしょ!」
ルナもかなり感情を露わにさせていた。
「今は戦闘中なのよ!」
「戦いだからだ!見捨ててられるか!」
「おい手前等!」
ここで甲児が彼等に怒鳴ってきた。
「一体何やってんだよ!皆を助けるぞ!」
「甲児・・・・・・」
「街の皆は僕達に任せてくれ」
大介も言ってきた。
「君達はガルラ帝国の相手を頼む」
「あ、ああ」
「斗牙君」
鉄也も来たのだった。マジンガーチームが揃った。
「俺達がここを引き受けよう」
「有り難うございます」
「よっし!皆逃げろ!」
甲児は早速マジンカイザーで目の前の敵を倒しながら市民達に告げる。
「そのままな!」
「動物達を戦いに巻き込んではいけない」
大介もまたダブルハーケンを振るう。
「だからこそここは」
「セシルちゃんはこのまま下がってくれ」
鉄也がセシルに対して声をかける。
「それでいいな」
「はい、わかりました」
こうしてセシル達は戦場を離脱することができた。戦い自体はロンド=ベルの面々の活躍によりすぐに戦局は彼等に有利になった。
グラヴィオンも戦う。しかし。
「ふんっ」
「どうしたの?エイジ」
リィナが不機嫌そのものの彼に対して声をかけてきた。
「何か。機嫌が」
「何でもねえよ」
一応はこうは言う。
「けれどな。・・・・・・まあいいさ」
「いいの?」
「後だ、後」
やはり不機嫌なのは明らかであった。
「後で話すからな。いいな」
「わかったわ。それじゃあ」
「・・・・・・どうでもいいっていうのかよ」
エイジはまだ呟いていたがこの声は聞こえはしなかった。
「セシルは一番慕っていたっていうのによ。他の何の関係もない人達までもよ」
こうしたことを呟きながら戦う彼だった。その戦いが終わるとエイジはすぐにレイヴンに呼び止められることになった。
「何を言われるかはわかってるな」
「ああ、わかってるさ」
その不機嫌そのものの声をレイヴンにも返した。
「御前の戦闘中の行動は許されるものじゃない」
「それをわかったうえで言わせてもらうぜ」
その言葉がさらに荒いものになっていた。
「それでいいか?」
「何だ。言ってみろ」
「確かに俺は命令違反をした」
エイジ自身もそれは認める。
「しかしよ。あの時下手をしたらセシルや市民達はどうなっていたんだよ」
「あの時はあれで正しいんだよ」
ここでまた言う斗牙だった。
「だって。戦闘に勝利を収める為にね」
「その為にセシルを見捨てたっていうのかよ!」
「何度も言うから戦闘だから」
斗牙の表情は全く変わらない。
「それがどうかしたの?」
「斗牙、手前!」
彼の言葉をついて彼は遂に激昂した声をあげた。
「それでセシルが死んでもよかったってのかよ!」
「セシルが?」
「街の皆も動物達も。どうなってもよかったのかよ!」
「戦闘に勝利を収める為だから」
また言う斗牙だった。
「それも仕方ないじゃない」
「手前!」
遂にエイジが切れた。そうして左拳で斗牙を殴り飛ばした。斗牙はまず壁に叩きつけられてしまった。
「えっ、エイジ!?」
「今何を」
「俺達は確かに他の星の奴等や天使や得体の知れねえ化け物と闘ってきている」
エイジは斗牙を殴り飛ばしたうえで言う。
「けれどな。俺にとっちゃ御前の方が化け物に見えるぜ!完全にな!」
「エイジ、落ち着け」
レイヴンも何とか彼を落ち着かせようとする。しかし無駄だった。
「こんな奴と一緒にやってられるかよ!」
今度はこう言うのだった。
「俺は降りるぜ。もうな!」
こう叫んでその場を駆け去った。こうして彼はロンド=ベルを跳び出てしまったのだった。
第百十四話完
2009・3・21
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