スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百話 月が闇を照らす時
第百話 月が闇を照らす時
「それじゃあグレンはまだまだ先かよ」
「ええ」
シルヴィアがピエールに対して答えていた。
「思ったよりダメージが大きくて」
「ちっ、あいつがいねえのはでかいな」
ピエールはそれを聞いて歯噛みした。
「戦力としては大きいからな」
「そうね。けれど」
ここでシルヴィアはピエールを咎める顔で見てきた。
「このことは麗花にはね」
「ああ、それはわかってるさ」
その問いにはすぐに答えるピエールだった。
「言わないさ。あいつにはな」
「それは御願いね」
「ああ、ところでだ」
ピエールはここで話を変えてきた。
「俺達は今度は何処に向かってるんだ?」
「日本よ」
シルヴィアは答えた。
「何でもまた東京ジュピターに向かうらしいわ」
「ああ、あれか」
東京ジュピターと聞いて頷くピエールだった。
「そういやロンド=ベルはあれの担当になってるんだよな」
「そうよ。あそこを何とかするのも任務よ」
シルヴィアは説明する。
「この部隊のね」
「ガルラ帝国もいりゃ天使達もいるし何かと忙しい部隊だよな」
「それだけじゃないよ」
ここで眼鏡の少年が二人の前に出て来た。
「あっ、あんたは」
「ジュンっていうんだ」
彼は微笑んで二人に名乗ってきた。
「ジュン=リー。宜しくね」
「新規加入のアクエリオンのメンバーよね」
「そうだよ。まさかアクエリオンに乗れるなんて思わなかったけれど」
「そうなの。ところで」
「何かな」
「あんた今それだけじゃないって言ったわよね」
シルヴィアが言うのはこのことだった。
「確か」
「うん、そうだけれど」
「ロンド=ベルってまだ他に敵がいるの?」
「まだ何かいたか?」
「敵じゃないけれどガンダムマイスターとも出会ってるよ」
こう二人に告げるのだった。
「実はね」
「ああ、あれね」
「あいつ等もやっぱり生きていたのかよ」
「早乙女博士とインベーダーの戦いで皆行方不明になっていたけれど」
四年前の話だ。
「それでもね。生きていたんだ」
「そういえばゲッターだってそうだったわよね」
「あの連中は時空を超えてたよな」
「そうだよ。ゲッターも生きていたし」
「それはそれでかなりな話だけれど」
シルヴィアはここまでの話を聞いてこう述べた。
「それでも。ガンダムマイスターとも会ってるの」
「うん。四機共生き残っていたんだ」
「わかったわ。けれど」
ここでまたシルヴィアは言った。
「ひょっとしてあの三機のガンダムも?」
「あの連中はどうなったんだよ」
「あの三機のガンダムについてはまだ行方不明だね」
ジュンはこう二人に答えた。
「まだね」
「そう。生きていなかったらいいけれどね」
「あの連中はな」
二人は嫌悪感を見せた顔でそれぞれ述べるのだった。
「何しでかすかわからないから」
「滅茶苦茶な奴等だからな」
「そんなに酷いのかよ」
横から話を聞いていたトッドが彼等に言ってきた。
「何をしでかすかわからないってよ」
「前に私達が言ったが」
「その通りです」
そのトッドにグラハムとソーマが述べてきた。
「一般市民であろうが構わず攻撃対象にし」
「時としてはまるで気紛れに彼等に攻撃を仕掛けたことも」
「何っ!?」
ニーは今のソーマの言葉に顔色を変えた。
「一般市民を気紛れにだと!?」
「そうです」
ソーマはニーのその問いに対しても答えた。
「そうして彼等は多くの一般市民を殺傷しています」
「おいおい、それはまた」
「随分と外道な奴等だな」
アレンもフェイも言葉はシニカルだが目は笑わせていなかった。
「幾ら俺達でもそんなことはな」
「逆立ちしてもしなかったな」
長い間ドレイクと共にあり多くの戦いを経てきた彼等でもそうなのである。
「それを気紛れにか」
「最悪な奴等みたいだな」
「まあその通りだな」
パトリックもそれに応えて述べる。
「正直なところな。あの連中とも何度も渡り合ったさ」
「やっぱりそうなるんだな」
トカマクは彼の言葉を聞いて納得した顔で頷いた。
「そうした奴等とは」
「で、その三機のガンダムだけれど」
「ああ」
あらためてメリッサの話を聞く。
「出て来たら厄介なのは言っておくよ」
こう彼等に述べるのだった。
「非道な奴等だけれど強いことは強いから」
「だからか」
「そうさ。用心はしておくんだね」
「わかったわ」
キーンがメリッサの言葉に頷いた。
「その連中にもね」
「正直なところだが」
ハワードが言ってきた。
「ここの三機のガンダムの方が遥かにな」
「そうだな」
彼の言葉にダリルが頷きながら述べた。
「まだ愛嬌があるというものだ」
「三機のガンダムというと」
「あの連中か」
リムルとシオンにはそれが何なのかすぐにわかった。
「オルガ達だな」
「そうです、彼等です」
アンドレイが彼等に答えた。
「確かに彼等もかなり滅茶苦茶な戦い方をしますがそれでも」
「少なくとも一般市民を狙ったりはしない」
ビリーも話に入って来た。
「それはないな」
「あの連中は戦いになると他に目が入らなくなるんだ」
ショウは彼等についてこう説明した。
「だから。必然的に」
「味方を巻き添えにしかねないことは多いけれど」
マーベルも彼等に対して述べる。
「それでも一般市民を狙うことはないわ」
「そうですね」
ビリーは二人の言葉を聞いたうえで頷いた。
「それはないですね」
「そういうことだから」
「それは安心してね」
「わかってます。それは」
実はビリーもそれはわかっているのだった。
「よく。確かに破天荒ですが悪人ではないのはわかるので」
「確か元々死刑囚だったんだよな」
クルツがその三人について問うてきた。
「そっちのティターンズか?連中の基地を襲撃か何かして大勢ぶっ殺して死刑判決下りたんだったよな」
「ああ、実はそうなんだよ」
コウがクルツの問いに答えて述べた。
「物凄い暴れようでね。それで三人はそれぞれ」
「凄いね。それで今はあんなのか」
「元々は強化改造の影響でああだと思ってたんだよ」
キースが困ったような顔で述べた。
「けれど実際は」
「元からああだったのか」
「そういうことなんだよ。残念なことにね」
宗介に対してはコウが答えた。
「元からああだったんだ。ロンド=ベルに入ってはじめてわかったことだけれど」
「元からねえ」
「あれが」
闘志也とジュリイは底に大いに思うところがあるのだった。
「うちの博士もそんなところあるしな」
「注意しておくに越したことはないな」
「全くだな」
二人の言葉に謙作が頷く。
「あの博士にしろな」
「ああ」
「それでだけれど」
マリンがここで一同に問うてきた。
「今の俺達はこれから日本に向かうんだよな」
「いや、それが」
「それが?」
マリンはアムロの言葉に顔を向けた。
「予定が少し変わった」
「というと」
「バグダットに寄ることになったんだ」
こう皆に述べるのだった。
「ここでな」
「バグダットに?」
「そうだ。こちらの連邦政府大統領にパーティーに招待された」
「パーティーに!?」
「俺達が?」
「そうだ」
あらためて一同に告げるのだった。
「俺達全員がだ」
「また随分と派手な話ですね」
キラはアムロの話を聞いて言った。
「僕達全員だなんて」
「というと俺達もか」
「ああ、勿論だ」
アムロは今度は宙に対して述べた。
「全員だ。本当にな」
「じゃあ俺達もってことだな」
「そうなるわね」
フェイがハッターに述べた。
「全員ってことは」
「まあ俺達は何も食わないからな」
「居残りにあるでしょうけれど」
「別にそれでいい」
テムジンも言う。
「当直は必要だからな」
「では俺も」
ライデンも残るというのだった。
「残っておこう。用心にもなるしな」
「そうですね。では我々も」
「いいのか?それで」
「はい」
ボルフォッグは凱の問いにすぐに答えた。
「私達が差別されていないのはわかりますがそれでもです」
「用心の為か」
「その通りです。何かあれば私達が出ますので」
「任せておくんだな」
「そうか、わかった」
凱はボルフォッグだけでなくゴルディマーグの言葉も受けたうえで頷くのだった。二人の後ろには他のGGGの隊員達もいるのだった。
「では頼むな」
「はい、お任せ下さい」
「ガルラ帝国でも何でもぶっ飛ばしてやるからな」
「では。艦長としては私が残りましょう」
エキセドルも名乗り出て来た。
「これでとりあえずは大丈夫かと」
「それでは宜しく御願いします」
「はい」
エキセドルはアムロのその問いに対して応えた。こうして当直のメンバーも決まりロンド=ベルはそのパーティーに参加するのだった。皆それぞれ軍服やドレス、タキシードである。
「うわ、万丈さんの格好もいけてるわね」
ルナマリアは万丈の白いタキシードを見て言った。華やかな宴の場には着飾った要人や淑女達が集まっている。当然そこにはロンド=ベルの面々もというわけである。
「ああした格好って着こなすの難しいんだけれどね」
「そういえばルナマリア、御前だって」
「何?」
「最近ミニスカートじゃないんだな」
「ミニはミニよ」
見れば今もそのピンクのミニスカートである。
「ただね」
「ただ?」
「この下はタイツなのよ」
見れば黒タイツも穿いていた。
「最近はね。そうしてるのよ」
「寒いからか?」
「そうじゃなくて」
シンの言葉にすこしムッとなって返す。
「エマさんが厳しくてね。ミニスカートだと下着が見えるからって」
「ああ、だからか」
「ファさんと同じ理由よ」
ファも今は白や黄色のタイツを着用している。
「それに何かあっても服があったらそれで大丈夫じゃない」
「肌はな」
「だからなのよ。最近はタイツも穿いてるのよ」
「だからか」
「それにね」
ここで楽しげに笑うルナマリアだった。
「結構タイツもタイツでいいものよ」
「そうか?」
「脚が奇麗に見えるのよ」
「あまり変わらないように見えるがな、俺には」
「あんたそもそもステラ以外見ないでしょ?」
「まあな」
シンの方でも否定しない。
「そういえばステラも最近」
「タイツよね」
「ちずるさんやめぐみさんだってな」
「下着が見えないからいいのよ」
第一の理由となっていた。
「どんな動きしてもね」
「何かそれで嫌な顔をする奴がいそうだけれどな」
「あんたはどうなのよ」
「俺は別に」
この辺りは素っ気無いシンだった。
「だってよ。ステラがいればそれでな」
「やれやれ」
シンの今の言葉に肩を竦めさせるルナマリアだった。
「本当にあんたも相変わらずね」
「別にそれでもいいさ」
シンも気に留めていなかった。
「だってよ。俺はやっぱり」
「はいはい、わかったから」
ルナマリアの肩を竦めさせる動作は続く。
「それにしても今回のこのパーティーだけれど」
「今度は何だよ」
「御馳走はいいとして」
見ればガツついている面々も多い。オルガ、クロト、シャニといった面々はそれぞれテーブルの上に土足であがって手掴みでその御馳走を喰らっていた。
「妙じゃない?」
「何がだよ」
「雰囲気がよ」
ここでルナマリアの目がすこし鋭くなる。
「何かね」
「何か?」
「メイドさん、多くない?」
彼女が言うのはそこだった。
「何かやけに」
「そういえばそうだな」
シンも言われて気付いた。
「何かな。やけにな」
「妙な感じしない?」
「それだけではない」
レイも話に入ってきた。
「見ろ」
「んっ!?」
「なっ!?ありゃ」
ルナマリアとシンがレイの指し示した方を見て驚きの声をあげた。
「まだちっちゃいぜ」
「幼稚園児・・・・・・小学校低学年かしら」
「そんな感じだよな」10
「そうよね」
「しかもそれぞれの服の色も違う」
「妙なんてものじゃないわ」
「しかもあいつなんか」
シンはその中で一人の男の気付いた。
「仮面じゃねえか。あれは一体」
「ラウ=ル=クルーゼみたいじゃない」
「残念だが違う」
その仮面の男が彼等に応えてきた。
「それはな」
「あれ、ラウ=ル=クルーゼって知ってるの?」
「既に名前は聞いている」
仮面の男はこうシン達に返してきた。
「そちらの世界にいたのだったな」
「ええ、そうよ」
「またの名を変態仮面っていってな」
シンが忌々しげに言うのだった。
「まあもう死んだんだけれどな」
「そうだったな」
「で、あんただけれど」
ルナマリアはその仮面の男に対して述べてきた。
「その仮面は外さないの?」
「そうだ」
こうルナマリアに返してきた。
「私の主の命令でな」
「仮面を着けろって命令する主って」
「変態か?」
シンは思わずこう言ってしまった。
「ひょっとしてよ」
「変態ではない」
「何かそんな気がするんだよな」
「あんたも」
ルナマリアは彼にも言う。
「その声似てる人いるしね」
「他人の空似だろう」
「むっ!?そういえば」
ここでレイが気付いた。
「貴方は見たところ」
「何だ?」
「いや、気のせいか」
レイはその可能性はすぐに打ち消したのだった。
「それはな。俺の」
「そうか。それではな」
「ああ、またな」
シンが彼に別れの挨拶をする。とりあえず彼と三人の会話は終わった。だが今一つはっきりとしないものがある出会いであった。
「しかし。彼は」
「どうかしたの?」
「男の筈だが」
「どっからどう見てもそうじゃない」
「しかしだ」
レイはルナマリアに対して言うのだった。
「女性の匂いがした」
「女性の?」
「そうだ。妙だな」
「気のせいじゃないの?」
ルナマリアはその可能性はまず否定した。
「それって。どう見ても」
「そうだよ。あいつはどう見てもな」
シンもまた言う。
「違うだろう?男だって」
「そうだな」
二人に言われてそうだと思うようになったレイだった。
「考えてみればな」
「そうだよ。それよりもだよ」
「どうしたの?シン」
「何かよ、あの白い服のメイドさんよ」
見れば緑の髪で眼鏡をした胸の大きい少女である。
「えらいドジっぷりだよな」
「そうね。派手に転んでテーブルをひっくり返して」
実際にそうした事態を招いていた。
「凄いわね、あれは」
「何なんだろうな、あの人」
「メイドさんといっても色々か」
レイは冷静にこう述べた。
「ああした人もいるのだな」
「他にも何か一杯いるな」
シンも周りを見回して述べた。
「幼女もいればやたら胸の大きな人もな」
「ってシン」
「んっ!?俺には他の女はどうでもいいぜ」
こう返すシンだった。
「だってよ。俺はステラだけだからな」
「やれやれ。またステラね」
「だが浮気しないのはいい」
レイはそんなシンを認めて述べた。
「それはな」
「だろ?とにかくよ」
シンは本当にどうでもいいという目で周りを見回していた。
「何か。妙な雰囲気だよな」
「あれ見て」
ここでルナマリアはある人物を指差した。
「あれってこっちの世界の大統領じゃない」
「あっ、そういえばそうか」
言われて気付くシンだった。
「そういえばよ」
「まさかあの人まで来ているとはな」
「その周りにいる人達は?」
「連邦政府の要人達だ」
彼等も集まっているのだった。
「どうやらこのパーティーは只のパーティーではないな」
「そうみたいね」
とりあえずそのことはわかるのだった。その間にアレックスの前に一人の黒髪の美女が姿を現わした。彼はその美女を見てすぐに声をかけた。
「お嬢さん、これはこれは」
「!?」
「おっと、怪しいものではありません」
アレックスはにこやかに笑ってこう述べた。
「私はアレックス=スミス。ロンド=ベルの一員でして」
彼だけが語っている。その間美女は一言も発しない。
「お美しいお嬢さん、今から」
そのまま手を取ろうとする。しかしここで。
いきなり手を払われそのうえで平手打ちだった。美女は駆け去りそのうえで仰向けに倒れ伏すアレックスだけが残されたのであった。
「いてえ、効いたぜ」
「変に言い寄るからだよ」
「全く」
ジュセとイワンがその彼に声をかける。
「まあいい薬かもね」
「反省するのだな」
「ちぇっ、何かはたかれ損だな」
「しかし」
ここでハンスはまた別のものを見ていた。
「あの美女の動き。女性にしては速いな」
彼が見ているのはそこであった。美女は何時の間にか会場を出て物陰で髪を剥ぎ取った。そして様々な変装を剥ぎ取る。するとそこから出て来たのは赤髪の少年だった。
彼はそのまま会場の中を走りだした。だがそれを見ている者達もいた。
「やっと出て来たわよ」
「遂にってやつね」
「ええ」
金髪の美女が大きな目の少女に述べていた。
「そんなところね」
「さて、どう動くかしら」
「見たところ単純そうだけれど」
「そうね」
少女はその単純という指摘にやけに頷いていた。
「それはわかるわ」
「けれど中々可愛いわね」
「そう?何か頭悪そう」
「それがいいのよ」
見れば美女は微笑んでいた。
「そのお馬鹿そうなところがね」
「やっぱり斗牙の方がいいじゃない」
少女の考えではそうであるのだった。
「クールで知的でね」
「そればかりじゃ駄目じゃない」
「そうなの?」
「そうよ。それよりもよ」
美女はまた彼女に言ってきた。
「お城の中にも入ったわよ」
「何時の間に!?」
これには少女も驚いていた。
「何か動きが滅茶苦茶早いじゃない」
「早いだけじゃないわ」
美女はさらに言うのだった。
「何かね。もう」
「もう?」
「凄いスピードとパワーよ」
彼を見てまた言う。
「データを見ても」
「そんなに?」
「流石に斗牙程じゃないけれど」
「当然よ。斗牙よ」
少女はやけにその斗牙を持ち上げていた。
「それ位当たり前じゃない」
「それもそうなの」
「そうよ。あんな奴が斗牙に勝てるもんですか」
「勝てはしなくても面白いかもよ」
「面白いって?」
「そうよ。ああいう感じの子が伸びるのよ」
「そうは思わないけれど」
少女は彼はあくまで否定する。
「どうだか」
「まあとにかく来たのは事実よ」
「そうね」
そのことには少女も頷いた。
「それはね」
「さて、これで全員ね」
また言う美女であった。
「ようやく。グラヴィオンが動きだすわ」
少年はその間に城の奥深くに入っていく。彼はそこでふと周りを見回すのだった。
「何だ、ここは」
彼が見たこともない場所だった。
「ここは一体。何処なんだ?」
「お城の中だよ」
ここで少年の声がした。
「ここはね」
「城!?」
「そうさ」
そして次に中性的な顔の少年が出て来た。声の主らしい。
「ここはね。ああ、君は」
その少年は彼の顔を見て言った。
「僕と同じなんだ」
「俺と同じ!?」
「男の子だよな」
「あ!?ああ」
最初はその言葉の意味がわからなかった。
「何だよ、それって」
「僕は天空侍斗牙」
彼は名乗ってきた。
「君は?」
「俺は紅エイジだ」
彼も名乗るのだった。
「それが俺の名前だ」
「そうなんだ。紅エイジっていうんだ」
「そうさ」
その斗牙に返すエイジだった。
「それで御前が斗牙っていうのか」
「宜しくね。ところで君はどうしてここに来たの?」
「人を探してるんだよ」
「人を?」
「ああ、そうさ」
そう斗牙に述べるのだった。
「姉ちゃんを探しているんだよ」
「お姉さんを?」
「そうさ。紅アヤカ」
その姉の名を告げた。
「胸がよ。こう」
まず胸を思いきり持ち上げてみせる。
「それでお尻がな。こうで」
背中を向けてそのうえで尻を見せるのだった。何処かあげて。
「こんな感じなんだよ」
「ふうん。アヤカさんねえ」
「この城にメイドに入った筈なんだよ」
エイジは言うのだった。
「知らねえか?」
「ちょっとね」
だが斗牙は首を傾げるだけだった。
「そういう人は」
「すっごい美人なんだよ」
エイジはさらに言う。
「もうな。それでも知らねえか」
「美人の人なら一杯いるけれど」
斗牙はまた首を傾げさせて述べた。
「やっぱり」
「この城にいる筈なんだよ」
「絶対にだよね」
「ああ、それは間違いねえ」
「だったらそのうち会えるよ」
にこりと笑ってエイジに述べるのだった。
「このお城にいればね」
「そうか」
「それにしても君って」
「何だよ」
「僕より硬そうな顔をしてるね」
「何っ!?」
「何かね。そんな感じがするけれど」
「そりゃどういう意味だ?」
「肌がだけれど」
「へっ、そりゃ元々だ」
こう言って別に気にはしないエイジだった。
「まあいいさ。また来るぜ」
「帰るの」
「ああ。またな」
「それはいいけれど」
「今度は何なんだよ」
「そっちに行ったら」
「こっちだと何かあるのかよ」
話しているうちにある扉の前に来ていた。
「この扉を開けてもう外に行くんだろ?」
「だからその扉は」
「何だっていうんだよ」
斗牙の話を碌に聞かずに開けた。するとそこは。
何と更衣室であった。今丁度着替えている女の子達がいた。扉を開けてしまったエイジはそこで全身を硬直させてしまった。
「あいつ、何やってんのよ」
「お約束ね」
それを監視カメラから見続けている二人は呆れてしまった。
「あそこを開けるなんて」
「さて、どうなるかしらね」
「あっ」
「ほら、そこは」
「こりゃどうも」
とりあえずその扉を閉めようとする。しかしそれより前に。
女の子達が騒ぎ出した。それと共に色々なものが飛んで来る。エイジは咄嗟にそれから逃げるのだった。何故か斗牙も一緒にである。
「何で御前まで一緒なんだよ」
「何でだろうね」
斗牙の返事はかなり天然なものだった。
「まあ成り行きかな」
「成り行きかよ」
「斗牙様!」
二人が走る廊下の向かい側からメイド達が駆けて来た。
「その人は不法侵入者です!」
「私達が取り押さえます!」
「げっ、何だよありゃ」
「この城の警備担当の人達だよ」
「警備担当っておい」
「それがどうかしたの?」
やはり天然な調子での返答だった。
「普通じゃない」
「何処に警護のメイドがいるんだよ」
彼が言うのはそのことだった。
「ったくよお、どんな城なんだよ」
「それでエイジ」
エイジの驚きをよそにまた彼に問うてきた。
「これからどうするの?」
「どうするって帰るんだよ」
それは変わらないのだった。
「今はよ」
「そうなの」
「ちっ、こっちだ!」
右手に曲がった。
「こっちに行くぞ!」
「そう。それじゃあまたね」
「とりあえずな!」
斗牙を置いてその右手を突っ切った。するとその先にエアーバイクがあった。
「よし!これを借りてな!」
帰ろうとした。ところがであった。
「なっ、何だよこりゃ!」
何とそれは戦闘機だった。そのままそれに乗って空を出る。すると外は夜のバグダットだった。
「こっから東京に帰るか、とりあえずな」
「ちょっと待ちなさいよ」
モニターに少女が出て来た。
「君、それに乗って東京に帰るつもり!?」
「誰なんだ、あんた」
「とにかく。それは返しなさい」
こうエイジに言うのだった。
「いいわね」
「いいも何も」
「とにかくよ。それは貸せないのよ」
またエイジに言ってきた。
「わかったわね」
「わかったも何もよ」
「何なのよ」
「これ勝手に動くんだけれどよ」
「えっ!?」
「何なんだよ、これ」
エイジは驚く他なかった。その頃パーティーでは紫の髪の男が一堂の前に姿を現わしていた。
「誰だありゃ」
「一体」
「私の名はサンドマンといいます」
彼は参加者の前で名乗ってきた。
「この城の主です」
「っていうとあの兄ちゃんがあれかよ」
「そうだね」
雅人が忍に対して述べる。
「このパーティーの主催者だよね」
「そうだな」
「また変な持ち主みたいだけれどね」
沙羅はサンドマンをこう評した。
「こんなにメイドを一杯置いてるんだから」
「だが。只者ではない」
亮はそのことを見抜いていた。
「尋常な身のこなしではない」
「今地球に危機が迫っています」
「その通りだ」
大統領は彼の言葉に頷いた。
「ガルラ帝国にドーレム、そして天使達だな」
「それだけではありません」
だがサンドマンはこう大統領に返すのだった。
「危機はまだいるのです」
「危機が!?」
「そうです」
彼は言うのだった。
「まだ危機は存在しているのです」
「危機!?」
「まだあるのか」
「そう。その名はゼラバイア」
「ゼラバイア!?」
「それは一体」
「彼等が今地球にも迫ろうとしています」
サンドマンは驚く彼等に対してさらに言葉を続ける。
「そう、今」
「今!?」
「嘘だろ!?」
「嘘ではありません。何故なら」
「!?大統領」
ここで大統領の側近の一人が声をあげた。
「緊急通信です」
「何っ!?」
「このバグダットに敵襲です」
「何だとっ!?」
「しかもガルラ帝国でもドーレムでもありません」
側近は言葉を続ける。
「これは。全く新しい敵です」
「馬鹿な、それでは」
「そうです。彼等こそゼラバイア」
サンドマンの言葉はここで絶対の説得力を持ったのだった。
「今まさに地球に来ました」
「あんた、まさかそれを」
「予測していたのか」
「その通りです。そして」
「そして!?」
「私はこの時が来るのを知っていました」
さらにこう言うのだった。
「そう、今こそ」
「むっ!?」
「それでは」
「グランンナイツ発進!」
彼がいきなり指示を出した。
「今こそこの時が来たのだ!」
「わかりました」
あの緑の髪のメイドが応えた。
「それじゃあ」
「なっ!?」
「何だよこれ!」
いきなりその緑の髪のメイドの前に棺桶が出て来た。
「棺桶!?」
「何だよ悪趣味だな!」
メイドはその言葉の間に棺桶に飛び込む。そしてその中に消えたのだった。
「消えた!?」
「一体」
「とにかくです」
ここでテッサが彼等に述べてきた。
「敵集です」
「あ、ああ」
「そうだな」
「ですから私達も」
「よし!」
「それなら!」
「ロンド=ベル総員出撃です」
テッサはここで指示を出した。
「それでは」
「了解!」
「やってやるぜ!」
こうして彼等もまた出撃にかかるのだった。戦いはここで新たな局面に入ろうとしていた。
そしてエイジは。相変わらず戦闘機で空を駆っていた。
「何だよ、こりゃ!」
「ちょっとどうなってるのよ!」
ここでまた戦闘機が出て来た。エイジの機の横に来た。
「君の戦闘機。一体何が何なのか」
「それがわからねえって言ってんだろ!」
エイジはまた少女に怒鳴り返した。
「俺が一番知りてえんだよ!」
「全く。しかもここで出撃だなんて」
「何だと、出撃だと!?」
「そうよ」
少女は少しふてくされた声で彼に返した。
「私もね。こうして」
「じゃあその戦闘機に乗ってるのは」
「そうよ、私よ」
またエイジに対して述べた。
「城琉菜っていうのよ」
「ルナ!?」
「そうよ。まあルナって呼んだらいいわ」
またエイジに告げた。
「そうね」
「そうかよ。しかしあんたよ」
「どうしたの?」
「また随分と気が強いな」
「そうかしら」
「ああ。ところで出撃だよな」
「そうよ」
またエイジに対して答えた。
「それは私だけじゃないわ」
「何っ、今度は何なんだよ」
「ほら」
ここでそのルナが言うと。もう二機出て来た。
「また出て来やがった!?」
「待たせたわね」
「すいません、遅れました」
それぞれあの美女と緑の髪のメイドがいた。
「さて、初陣だけれど」
「何かドキドキします」
「心配することはないわよ」
ルナはそのメイドに対してにこりと笑って述べた。
「落ち着いてやればね」
「そうですか」
「それではだ」
ここでサンドマンの声が入った。
「グランナイツの諸君」
「はい」
「何っ、グランナイツ!?」
エイジは今のサンドマンの声にまた驚きの声をあげた。
「今何て言ったんだ!?」
「だからグランナイツよ」
ルナがそのエイジに対して言う。
「グランナイツ。あたし達のチームの名称よ」
「チームって何時の間にそうなったんだよ」
「説明したら長くなるけれど」
「けれどしろよ」
かなり乱暴に言い返すエイジだった。
「こんなんだったら全然わからねえだろうがよ」
「大体何であんたみたいなのがグランナイツになったのよ」
「そんなの俺が知るかよ」
エイジの方こそ聞きたいことであった。
「気がついたらここにいるんだからな」
「全く。こんなことになるなんて」
「今それを言っても仕方ないのじゃないかしら」
だがここでミヅキがルナに言うのだった。
「それはね」
「ミヅキ」
「それよりもルナ」
「ええ」
「斗牙も来たわよ」
こうルナに告げるのであった。
「ゼラバイアももう来てるしね」
「斗牙はいいけれどあいつ等、早いわね」
「敵は待ってはくれないわ」
よく言われる言葉である。
「そういうことよ」
「わかったわ。それじゃあなのね」
「そういうことよ。いいわね」
「ええ、わかったわ」
あらためてミヅキの言葉に頷くのだった。
「それじゃあ」
「ルナさん」
「ええ、エイナ」
ルナはその緑の髪のメイドの名を呼んだ。
「行くわよ。はじめてだけれどね」
「はいっ」
「何か俺にとっちゃ何もかもがはじめてなんだけれどな」
「あっ、君はそうだったね」
ここであの斗牙の声が聞こえてきた。
「そういえばね」
「斗牙!?御前もかよ」
「うん、だって僕がメインだから」
「メイン!?」
「そうさ。グラヴィオンのメインパイロット」
穏やかな笑みで述べた言葉だった。
「それが僕の役目だから」
「グラヴィオンって」
「話せば長くなる」
またサンドマンが話に入って来たのだった。
「だからだ。それはいい」
「何かかなり強引に話を進める人だな」
「サンドマンはそれでいいの」
「そうよ」
首を捻るエイジにまたルナとミヅキが言ってきた。
「それよりも。いいわね」
「合体よ」
「合体って」
これまたエイジにはわからない言葉であった。
「今度は何なんだよ」
「それではグランナイツの諸君」
彼が考えるよりも先にサンドマンがまた言ってきた。
「超重合神!」
「了解!」
エイジ以外のメンバーがそれに応える。特に斗牙が。
「はあああああああああああああっ!」
斗牙の身体がきしむように歪む。彼はその中で合体の衝撃に耐えていた。
今四機のマシンが彼のグランカイザーと一つになりそして。新たな巨大ロボットが姿を現わしたのであった。
「なっ、あれは」
「一体・・・・・・」
「これこそ私が用意しておいた剣」
サンドマンは目の前にいる客達に対して述べた。
「グラヴィオンです」
「グラヴィオン・・・・・・」
「剣!?」
「そうです。今世界はゼラバイア達によって脅かされようとしています」
彼は言うのだった。
「それに対する剣。それこそがあのグラヴィオンなのです」
「そうだったのか」
「そう。そして」
彼はさらに言葉を続けるのだった。
「彼等が今。そのゼラバイアを倒すでしょう」
「それではだ。サンドマン君」
「はい」
サンドマンは大統領の言葉に対して顔を向けてきた。
「頼めるな。彼等に対して」
「お任せ下さい」
落ち着いた声で述べたサンドマンであった。
「ここは。是非」
「よし、わかった」
サンドマンの自信に満ちた返答に彼も頷くのだった。
「任せよう、君に」
「有り難き御言葉。ではグランナイツの諸君」
再び彼等に対して声をかける。
「今こそのその剣を見せるのだ!」
「剣を見せろつってもよお!」
グラヴィオンの右脚に位置しているエイジがここで叫んだ。
「何なのか今だにわかんねんだけれどよ!」
「あんたはわからなくていいのよ」
またルナが出て来て彼に告げた。
「そんなことはね」
「おい、また言うのかよ」
「何度でも言うわよ」
ルナも容赦がない。
「それこそね。何度でもね」
「ちっ、口の減らねえ女だな」
「何ですってぇ!?」
今のエイジの言葉にすぐに怒った顔を見せて反応するのだった。
「今何て言ったのよ。もう一回言って見なさいよ」
「だからよ。口の減らない女だって言ったんだよ」
最早売り言葉に買い言葉である。
「おめえがよ!」
「もう許さないからね!」
その怒った顔でまたエイジに言うのであった。
「何が何なのかわからないだろうから優しくしてあげたのに!」
「そんなのこっちから払い下げだよ」
「くっ、何て奴なのよ!」
「これこそが」
ここでまたサンドマンが言うのだった。
「我等アースガルツの切り札」
「切り札!?」
「そうだ」
今度はエイジに対する言葉である。
「地球を守る盾と矛、グラヴィオン」
「グラヴィオン・・・・・・」
「そう、超重神グラヴィオンだ!」
これが宣言となった。そうして今敵と対峙し彼が次に言った言葉は。
「よし、それではだ」
「はい!」
またエイジ以外が応える。
「グラヴィトン=プレッシャー=パンチを発射する!」
こう指示を出すのだった。
「いいな」
「わかりました!」
「それじゃあ!」
「何っ!?まさか腕をぶっ放すのかよ」
「まさかじゃなくてそうよ」
驚くエイジにルナが言う。
「それ位普通でしょ」
「何だっていうんだよ」
「では行くのだ!」
「ええ!」
サンドマンの言葉に斗牙が応える。
「グラヴィトン=プレッシャー=パンチ!」
「なっ!?技の名前を叫んだ!?」
「グラヴィオンはそういうシステムなのよ」
またしても驚くエイジにミヅキが説明する。
「武器操作は操縦と同時にね」
「どうするんだよ」
「音声入力もするのよ」
「そうだったのかよ」
「そうよ。だから技の名前を叫ぶ必要があるのよ」
そういうことであった。
「これでわかったかしら」
「あ、ああ」
驚いたままではあったが何とか頷くことができたエイジであった。
「それはな」
「そう、よかったわ」
「けれどよ」
だがここでまた彼は言うのだった。
「それでもよ」
「どうしたのかしら」
「今あいつがよ」
「あいつって誰のことよ」
ここでルナがまたモニターに出て来た。
「ひょっとしてあたしのことなの!?」
「今御前ごとぶっ放したじゃねえかよ、腕よ!」
「そんなの普通よ」
そのルナは平然とした調子であった。
「だってそういう構造だから」
「おい、普通じゃねえだろうがよ」
そう言われても全く納得しないエイジだった。
「御前ごと撃つなんてよ。何てマシンなんだよ」
「あら、心配無用よ」
しかしここでまたミヅキが彼に説明するのだった。
「そのことはね」
「何でだよ」
「Gドリラーは頑丈だから」
「Gドリラーっていうとよ」
「そうよ。今グラヴィオンの両腕になってる戦車よ」
ルナが彼に説明する。
「そのグランディーヴァなのよ」
「そんなに頑丈なのかよ」
「はい、ですから」
今度はエイナが彼に言ってきた。
「心配しないで下さい。私達は大丈夫ですから」
「ああ、それならいいけれどよ」
本人達に言われてはエイジも納得するしかないのだった。
「しかし。それでもとんでもねえマシンだな」
「それでは止めだ」
その間にもサンドマンは指示を出し続けるのだった。
「斗牙」
「はい」
「次はあれだ」
「あれですね」
「そうだ。決められるな」
「勿論です」
毅然としたこ言葉でサンドマンに答える斗牙だった。
「それじゃあ今から」
「うむ。それではだ」
サンドマンは一呼吸置いてからまた述べた。
「グラヴィトン=アーク!」
「了解!グラヴィトン=アーク!」
斗牙もまたその技の名前を叫んだ。
「発射!」
「うおおおおーーーーーーーーっ!」
胸からビームらしきものを放ちそれでその敵を撃った。それで終わりであった。
敵が倒れそこには何も残ってはいなかった。これがグラヴィオンの初陣であった。
「すげえ・・・・・・」
戦いが終わってエイジは呆然としたままだった。
「これがグラヴィオンかよ」
「その通りだ」
またサンドマンが彼に答える。
「これこそが人類のゼラバイアに対する切り札」
あらためてこのことを宣言するのだった。
「超重神グラヴィオン!」
「超重神グラヴィオン・・・・・・」
「そしてだ」
「そして?」
サンドマンの言葉をさらに聞くのだった。
「君達こそがこのグラヴィオンを操る選ばれた戦士達なのだ」
「俺達がかよ」
「そうだよ」
斗牙がエイジに対して告げる。
「僕はその為に幼い頃から育てられたんだ」
「何っ!?」
「このグラヴィオンで戦う為に」
「何っ!?嘘だろ!?」
「嘘じゃないわ」
また驚くエイジにルナが告げた。
「それはね。斗牙は本当に」
「そうして育ってきたのかよ」
「実はお城から出たのも今がはじめてなんだ」
「おい、そうだったのかよ」
「そうなんだ。君がサンドマンさん以外に出会ったはじめての男の人なんだよ」
「なっ・・・・・・」
また一つ驚くべき事実だった。
「一体どういう生活だったんだよ」
「どういうって」
しかし斗牙にはわかっていなかったのだった。
「それがどうかしたの?」
「どうかしたのかってな」
それでもエイジは言うのだった。
「男に出会ったことがないのかよ」
「何がおかしいの?」
「やっぱりわかっていねえじゃねえかよ」
「だからそれはね」
今度はミヅキがエイジに言う。
「彼にとっては普通だったのよ」
「普通っておい」
「まあ理解しろとは言わないけれどね」
「理解できるかよっ」
あくまで自分の理解の範疇で考えるエイジだった。
「そんなことよ」
「とにかく。また来るわよ」
「むっ!?」
「今度はガルラ帝国ね」
「ガルラ帝国だと!?」
今度は彼等なのだった。
「来るわよ」
「ちっ、今度はあいつ等かよ」
もう来ていた。その数はかなりのものだった。
「サンドマンさんよ」
「どうした?」
エイジに声をかけられ彼に応えた。
「やっぱりガルラ帝国とも戦うんだよな」
「そうだ」
はっきりと彼に答えるサンドマンだった。
「確かにグラヴィオンはゼラバイアへの剣であり楯だ」
「プラスアルファってわけだな」
「その通りだ。ガルラ帝国、そしてドーレムや天使達もまた」
「倒すべき相手ってわけか」
「わかったな」
「ああ」
エイジはサンドマンのその言葉に対して頷いた。
「それじゃあよ。やってやらあ!」
「いいか、斗牙」
レイヴンが斗牙に指示を出す。
「ガルラ帝国にもまたその剣を振るうのだ」
「はい」
斗牙は彼の言葉に対して頷いてすぐに構えに入った。
「それでは。すぐに」
「行くのだ」
「よし、皆行こう!」
レイヴンの言葉を受けた斗牙が仲間達に声をかけた。
「彼等との戦いにも!」
「よし、これは話がわかるぜ!」
エイジもガルラ帝国との戦いにはすぐに乗った。
「行くぜ、奴等をな!」
「倒すわよ!」
「ええ」
ルナとミヅキがそれに応えた。
「ただ」
「ただ。どうしたの?」
「いえ、ちょっと気になることがあってね」
「ああ、あれね」
「そう、あれよ」
これはミヅキとルナだけがわかることだった。
「胸のあのステルスの戦闘機は」
「一体。誰が乗っているのかしらね」
二人はそれを疑問に思っているのだった。
「誰かが乗っているのかは間違いないけれど」
「だったら一体誰が」
ここで一つ謎が生じていた。しかしその謎を解く間もなく戦場に新たな者達が姿を現わしたのであった。
「やっと戦場に到着かよ!」
「しかしあいつ等」
ここでロンド=ベルの面々が戦場に姿を現わしたのだった。
「何者なんだ?」
「グラヴィオンだといったな」
「その通りだ」
サンドマンはロンド=ベルの面々に対しても答えた。
「そして戦士達の名をグランナイツという」
「グランナイツか」
「彼等が」
「そうだ。そしてだ」
「そして?」
「一つ言っておこう」
サンドマンはロンド=ベルの面々に対して言葉を続ける。
「私は諸君等の味方だ」
「味方だっていうのかよ」
「何かよ、いきなり言われても」
「そうよね」
だが彼等はここで顔を見合わせて言い合うのだった。
「何か胡散臭いっていうか」
「怪しいっていうか」
サンドマンを見ての言葉である。
「そういう感じだし」
「特にあの仮面の人」
「私のことか」
「そうだよ。俺に声が似てるけれどよ」
マサキがそのレイヴンに対して言うのだった。
「何者なんだ?只者じゃねえのはわかるけれどよ」
「私についての詮索は止めてもらおう」
「いや、それはやっぱり」
「ちょっと以上に」
「無理だっていうか」
これは誰にも無理なことであった。
「そんなことはね」
「やっぱり。変だし」
「くっ・・・・・・」
変と言われては流石のレイヴンも気分が悪かった。
「とにかくだ。それでも」
「何だっていうんですか?」
「我々は君達の味方だ」
それははっきりと言うのだった。
「それはわかってくれ」
「とりあえずは信じていいんだな」
「私は嘘はつかない」
それははっきりと言うサンドマンだった。
「その証拠に今グランナイツを諸君に預けよう」
「っておい!」
この言葉に驚いたのはエイジだった。
「いきなりそこまでいくのかよ!」
「私の決断は迅速だ」
だからだと言い切るサンドマンだった。
「今もまた」
「何が何だかよくわからねえけれどよ」
「それでも」
「仲間だっていうんなら」
彼等にも反論はなかった。何はともあれロンド=ベルの面々はグラヴィオンと共闘することになった。
その戦いはガルラ帝国の面々が少ないこともありあっさりと終わった。そしてグラヴィオンとグランナイツが加わることになったのだった。
「何て言うかなあ」
「今度はメイド!?」
「もう何が何だか」
ロンド=ベルの面々は居並ぶメイド達を見て言うのだった。
「幾ら何でもこれは」
「ねえ」
「あれでしょ、あれ」
「無理よ」
「何が無理なのだ?」
サンドマンは呆れる彼等に対して平然と言葉を返す。
「彼女達の何処が妙なのか」
「くっ、この人・・・・・・」
これにはカミーユも引いた。
「只者じゃない」
「っていうか変態!?」
「間違いないわね」
ファとエマはこう判断した。
「何か声といい」
「外見といい。そうだし」
「あまり声については言ってもらいたくないのだが」
「私もだ」
声についてはギャブレーとバーンが反論する。
「どうも私にな」
「似ているからな」
「しかしあの人は間違いなく」
カミーユはそれでも二人に食い下がる。
「やっぱり。どう見ても」
「私は変態ではないと言っておこう」
サンドマン自身の言葉だ。
「サンドマン。これは私の名前だ」
「そうなのですか」
「そうだ」
あくまでこう言い切るのだった。
「では諸君」
「は、はい」
「何でしょうか」
完全にサンドマンのペースになってしまっていた。
「これから宜しく頼むぞ」
「そうですか、貴方も」
「当然だ」
こうブライトに対しても返すのだった。
「グラヴィオンは私がいなければ動きはしない」
「はあ」
「それならば当然のことだ」
「そうですか」
「そして安心していい」
彼はさらに言う。
「私のことならな。既に艦もある」
「戦艦もあるのですか」
「そうだ」
今度は戦艦であった。
「それもだ。だから居場所については安心してくれ」
「そういうことでしたら」
「我々はもうそれで」
アムロもかなり引いていたがそれでも応えられたのは流石であった。
「それではな。諸君」
「宜しく御願いします」
こうしてサンドマン達もロンド=ベルに正式に加わることになったのだった。何はともあれまた仲間が加わったのであった。
しかしであった。まだロンド=ベルの面々は釈然としないものを感じていた。
「わからないな」
「そうよね」
シローとアイナがぼやいていた。
「また何でメイドなんだ?」
「それがよくわからないけれど」
「それでは諸君」
やはりそんな話はサンドマンの耳には入らない。ここでまた一同に告げてきたのだった。
「まずは私からの挨拶だが」
「んっ!?」
「挨拶!?」
「そう、まずは皆をこのパーティーに招待しよう」
こう言って彼等を美酒美食に満ちた宴に案内するのだった。皆これには驚きの声をあげた。
「なっ!?これは」
「前のパーティーよりも」
「私からのささやかな贈り物だ」
「ささやかなって」
「キャビアやフォアグラもあるし」
「それに。ワインだって」
「おい、ロマネコンティかよ」
ヤザンがワインを見て言う。
「こりゃまたよ」
「ささやかなって」
「サンドマン様にとってはささやかなことだ」
レイヴンが驚く彼等に告げた。
「だからだ」
「うわあ・・・・・・凄い人なんだ」
「何はともあれ」
皆とにかくサンドマンに驚くことしきりだった。何はともあれサンドマンとグランナイツ、それにメイド達もまたロンド=ベルに参加するのだった。
第百話完
2008・12・22
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