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赤髪の刀使い

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新スキル

「ここか?」

「そうダ」

俺達は迷宮区の一歩手前の街の防具屋の前までやってきた。
ここまで来る途中のモンスターは3人で軽く一掃してきてしまった。


「おじゃましまーす…」

俺は扉をあけ中に入る。
防具屋というからには防具が並んでおり、金属製の防具から布製の防具まで色々置かれている。

「いらっしゃい」

店の奥で椅子に座っていたNPCが声をかけてくる。
俺はとりあえず店の中を見ながら店主のNPCのそばによる。

「あんた…服に興味はないかい?」

NPCが俺に向かって聞いてくる。

「ここでyesを連想する言葉を言ったらクエストの受注完了ヨ」

俺の横についていたアルゴが俺に耳打ちしてくる。

「あ、あります」

すると俺の目の前にクエスト受注のログが現れる。

「うわっ!?」

実はSAOに入って初めてのクエスト受注だったりする。

「ならついてこい」

店主のNPCは立ち上がり、店の奥に進んでいく。
俺達はその後をついていく。

「ここじゃ」

NPCはある扉の前で止まると、扉をゆっくりあけた。

「うわぁぁぁ」

「ほほゥ」

リズとアルゴが扉の向こう側にあるものを見て声をあげる。
俺は…何か嫌な予感がしてきて、冷や汗しか出てこない。
その部屋には現代風の服から中世の貴族が着ていたような服までを一つ一つマネキンに着せられ置かれており、その向こう側には大きな鏡と更衣室、休憩のためなのか椅子と机が置かれている。



「君にはここにある服を着てもらいたい」

店主NPCは部屋の壁にずらっと並んでいる服を指差しながら俺に言ってくる。

「全部…?」

見た感じ100着ぐらいはあるし、男物から女物まである。
ただ軽く見た感じ両方の性別が着ることが出来る設定になっているみたいだ。
リズはなぜか藍色の白でアサガオを描いた浴衣を凝視してたまに俺の方を見てくる。
アルゴは「これは一着10kコルぐらいしそうだナ」と呟いている。

「そうだ。全部だ」

結構大変そうなクエじゃないか…?

「大体1時間で終わるだロ」

アルゴが俺に言ってくる。

「こんなに量があるのにか!?」

女物があるのはまぁ目を瞑ろう。
現実でも無理矢理着さされてたからまぁ慣れたくなかったが慣れてる。

「もしかして現実みたいに一着一着着ていくと思ってるんじゃないだろうナ?」

そうじゃないのか?

「ユウも剣の装備しただロ?
あれと同じそうに装備スロットに入れるだけで着替えれるんダ」

まじっすか…






もうこのクエストしたくない…
だってリズとアルゴが俺が着替える度に評価してきて、
俺が男物の服を着ると「似合わない」「チェンジ」とか言って
女物の服を着ると「ぴったしじゃん」「似合いすぎ」とか言うのだ。
なんで俺は男なのに女物の方が似合うんだろうな…


「これが最後の一着か…」

ようやく最後の一着だ。
最後の一着はリズが見ていた藍色の浴衣。

「おぉ!それだったら髪の色は黒にカスタマイズしないと…」

「黒にしたあと簪(かんざし)つけて巾着を持ってみたら可愛いヨ!!」

…はぁ。

でこれでクエストは終わりのはずなんだが…

「どうだ?気に入ったのはあったか?」

店主NPCが浴衣を着た俺に話しかけてくる。

「い、いや…」

「あたしこの浴衣気に入った!!」

「ほぅ」

なんでリズが答えたのにクエストが進行しているんでしょうねぇ…

「ならここから好きな服を5着持っていきなさい」

「「ほほー」」

リズとアルゴの目が光る。

「それとほれっ」

俺の前にウィンドウが開く。

《『性別超越』を獲得しました》

…性別超越?
これ何て読むんだ?
普通に漢字を読むのか?


「おォそれがこのクエで手に入るエクストラスキルなのカ。
効果は?」

俺はウィンドウをパーティメンバーなら見える設定にしているのでアルゴからも見えたのだろう。

「えーと…自身の性別とは別の性別用の装備をつけることが出来るようになる。
パッシブ効果」

「にゃはは。それはネカマ用エクストラスキルになるわけダ」

だがこれ外見は変わらないから《はじまりの街》で見た元ネカマ達には苦痛かもしれないな。

「ユウー!
これとこれとこれとこれとその浴衣ね!」

リズが俺にどんどん服を乗せていく。
…メイド服(猫耳、尻尾込み)にどこかの学校のセーラー服、ゴスロリ、猫を模したパジャマ、そして俺の着ているこの浴衣か…
服のステータスは何気にゴスロリが一番防御力が高い。
そしてさっきまで両方の性別が着れてた服なはずなのにいつのまにか女専用になっている。

「あはは」

アルゴは俺の腕の中にある服というかもうコスプレ衣装を見て…

「おぃもしかしてお前も俺にこれを押し付けるつもりだったんじゃ!」

「にゃははー何のことかにゃー」

アルゴがおかしい口調になった…完全に図星だろ。











「今日は集まってくれてありがとう!
俺はディアベル!気分的にナイトしてます!」

俺は第一層のボス攻略作戦会議に顔を出していた。
今の俺のレベルは16レベル。
第一層のモンスターではほとんどもうレベルが上がらなくなってきたため上の階層を解放してほしいのだ。
エクストラスキルの≪刀≫も出たところだし、早く2層で売っているという刀がほしい。
俺もボス戦には参加するが…ソードスキルを使わない俺なんかが入ってもダメージディーラーにはならないだろう。
だからこの攻略に参加してもタゲ取りと取り巻きの殲滅ぐらいだろうか。

「ちょぉ待ってんか!」

…イガグリにしか見えないなこの頭。
それに言ってることも、支離滅裂だ。
ここで戦闘になれているだろうβテスターたちの装備やアイテムをとっても戦力が下がるだけでいいことはないだろう。
それにこいつは知らないのだろう。
この一ヶ月で死んだ2000人の中の500人はβテスターだということを。
この情報をアルゴから聞いたときは耳を疑った。
なにせ戦闘になれているからこそ死なないものだと思っていたからだ。
俺がなぜと聞くとアルゴはしっかりと教えてくれた。
βテスト時代は死んでも経験値をなくすだけで何度も生き返って戦闘に向かっていたβテスターは死んでも経験値をなくすだけという固定概念に囚われて無茶な狩りをした結果、死んでいったらしい。
今でも生き残ってるβテスターは茅場の言葉を真に受け、街にこもったままか、安全マージンを取りまくって絶対に安全といった状況で狩る者。
そして危険を犯しながらも生き延びた者、この生き延びた者の強さは只者ではない。
βテストの時と変わってしまっているかもしれないモンスターのAIや地形をβテスト時の概念に囚われずに生き残った者だ。
ただですら現実では絶対に合わなかったであろうモンスターとの戦闘で腰が抜けて何もできないプレイヤーがいる中でめきめきと力を身につけた者たちだ。

「俺はエギルって言う」

おぉっ。
あの人は確か始まって数日目に俺達がガイドブックを配布していると配布を手伝ってくれたスキンヘッドのおっさんだ。
互いに名前も言わずに配っていたから外見しか分からなかったよ。
さすがにクライン達にも手伝って貰ったが1万人に広く配布するにはまだまだ人手が足りなかった。

「この本はキバオウさんも貰ったはずだ。
この本を配っていた人物はβテスターだ」

エギルさんやぁー?その言い方だと俺もβテスターになるのですがぁー?
まぁいいけど。








「このボス戦は《連合(レイド)》で行こうと思う。
周りの人たちとグループを組んでくれ!」

ディアベルさんが声をあげた。
俺もどっかのグループに…

(皆さん知り合い達で集まる感じですか。
そうですか…)

入れません。

「あの…グループ組みませんか?」

ちょっと項垂れていた俺に声がかかる。
俺が顔をあげるとそこには女顔の少年がいた。
はぁ…まだこの少年は少年と分かるが…俺は…とこんなことを考えてる暇はなかった。

「いいよ」

とりあえずグループには入れそうだ。

「えーと…ユウちゃんでいいのかな?」

…もういいです。
もう女の子扱いでいいよ…
ローブの下に着てる服だって今日の朝にリズに無理矢理着ていけといわれたセーラー服だし…ここで男って言っても変態扱いされるだけだし。
外見的には完全に少女だし…

「はい。お願いしますね。
キリトさん」

アルゴ見たいにリズ達といないときはキャラを作っておこう。
俺はグループを組んだキリトという少年に小さく微笑んでおいた。

(おぉ赤くなってら)

キリトは対人にちょっと難があるみたいだが…こいつ…強いな。
なんというか物腰が他の人たちと比べると月とすっぽんだ。
少なくともβテスターでこの中にいる誰よりもレベルが高いし、プレイヤースキルも高いはずだ。
目の中に一瞬見えた意志も確固たるもの。

「あーと…あの子も誘っていいかな?」

キリトは一人でぽつんと座っているフードの女の子を指差す。

「大丈夫ですよ」

ぇ?なんでフードをかぶっているのに女の子だって分かるのかって?
そんなの男として抱きついてくる女の体の形を分からないはずないだろ?その経験からあのフードは女の子だということが分かる。
おい、こらそこ!変態いって言うな変態って!










「ん?」

俺は攻略会議が終わった後、食べ歩きを始めていた。
今日はアルゴは帰ってこれないと言っていたし、食事は別々の予定だ。

(あそこにいるのはアスナとキリトじゃないか)

アスナのフードの中は見てないから分からないが、体つきから結構可愛い方だと思う。
2人で何か喋っているが、何か入りにくいから行かずに適当に街を散策しよう。



「おっアルゴ」

俺は街の中を駆けていた親しい人物を見つけた。
アルゴは色々なパーティに顔を出してはちょこっと話し、離れていく。
忙しく仕事中みたいだな。








「そういやユウは攻略会議で女の振りをしたみたいだナ」

!?
急に後ろから話しかけられて俺は座っていたベンチから落ちそうになった。

「そこまで驚くことはないだロ」

アルゴはベンチの背もたれを飛び越え、ベンチに座る。
手には俺が今さっき食べていた肉の串焼きだろうか。

「いっつも後ろから現れないでくれよ…」

街中じゃ索敵スキル使ってないんだから。

「にゃはは。やダ」

語尾に音符が付きそうなぐらいうきうきとした声で返された。

「それにしてもどこからそんな情報を?」

俺が攻略会議で話した所なんてキリトにグループに誘われたときとアスナと自己紹介をしたときだけなのに。

「企業秘密ダ」

まぁいいんだけどね。
聞いたところによると情報屋で一番有名なのは《鼠のアルゴ》。
まぁ…隣に座っているこいつなのだ。
ソースなんて教えてくれるはずない。

「リズには秘密な」

絶対あいつは俺をからかってくる。

「飯一回」

はいはい分かりましたよー
俺達3人で料理スキルを持っているのは俺だけなのだ。
リズとアルゴはスロットが足りなくて後回しにしてしまったらしい。
俺はソードスキルも基本は使わないし、ダッシュスキルだって瞬動があるから必要ない。
よく使うのは索敵スキルぐらいでそれ以外はほとんど使わない。
一応料理スキルはNPCレストランよりおいしいものが出来る程度にはあげている。






「勝とうぜ!」

俺達はボス部屋の前で最後の作戦の確認を行い、ボス部屋の扉を開けた。

(あんなの蹴破ればいいじゃねぇか)

一々手で丁寧にあけるのは面倒だ。

第一層のボスは《イルファング・ザ・コボルド・ロード》武器は、斧とバックラー。
βテストではHPが少なくなると武器をタルアールに持ち変え攻撃パターンも変わるという情報だ。
だが第一層で攻撃パターンが変わったというモンスターが数多く発見されているからβテストのころとは変わっていると思っておかないといけないだろう。
俺、キリト、アスナのグループはそのボスの取り巻きの《ルイン・コボルド・センチネル》
を殲滅することが今回の作戦だ。

「スイッチ!」

キリトが叫ぶとアスナが飛び込んでいく。
アスナも只者ではない。
剣に迷いがなく、モンスターの急所を連続でついていく。
とてもじゃないが初心者とは思えない。

まぁ俺はキリト達を見ながらなるべく大太刀に似た剣でセンチネルを通常攻撃の連撃で確実にしとめていく。
スキル一発打つ間に俺は通常攻撃を5回当てることが出来る。
スキルを使用したときよりも威力は低いが、硬直がないという点では有利に働く。
硬直がないからこそ次の動作にすぐ移れる。数体相手にしてもすぐに攻撃を繰り出すことが出来る。
俺は適度にスイッチをしながらセンチネルの殲滅にかかる。


ボスのHPが最後の一段となった。
まぁ皆が安全マージンを多く取っているためか結構HPの減りが早かったのだろう。

(終わったな)

ここから巻き返すなんてことはないだろう。

「俺がでる!」

急にディアベルが躍り出てボスに特攻していく。
ボスの手に持つ武器が斧から…

「刀だとぉ!?」

つい俺も変な声をあげてしまった。

「戻れ!!」

キリトも気がついたのかディアベルに声をかけるが、ディアベルは聞こえてないかの様にボスに向かって走っている。

(…仕方ない)

俺は目の前にいたセンチネルをとりあえず倒すと、瞬動を使ってディアベルの前まで躍り出る。
ボスの獲物が刀になっていることに今更気がついたディアベルは動けなくなっている。

「はぁぁぁぁぁぁぁ」

俺はボスが振り下ろしてきた刀にソードスキルを使いながら剣で捌く。
耐久値があまり減らないようにソードスキルを用いて剣を強化したつもりだったが耐久値が残っていた分の3分の2ほど持っていかれてしまったが、無事に刀を弾くことに成功した。

「ユウちゃん!スイッチ!」

キリトがソードスキルの硬直で動けない俺の横を疾走していく。
その後ろにアスナも続いていく。
相変わらず俺は女の子扱いなんだな…まぁいいけど。

「大丈夫ですか?」

「…す、すまない」

「失敗は取り戻して見せてくださいね」

勝手な行動を謝ってきたディアベルにとりあえず声をかけてからキリトとアスナの援護をしようと2人を見ると、アスナがボスに弾かれボスがアスナに向かって刀を振り下ろそうとしているところだ。

(ここはもう一回瞬動で…)

と思ったら間にエギルが入り刀を斧で弾いていた。

「ひゅぅ…」

見事な斧捌きだ。

俺がもう一度ボスを見るとディアベルがボスと対峙しているキリトは回復のためか一時下がっている。
俺もいったほうがいいのだろうが…正直剣の耐久値が危うい。
後数回斬れば剣の耐久値がなくなるといってもいい位減っている。
仕方なくこちらに向かって来ていた人たちに向かって耐久値が危ないといって下がると
数人から「無茶はするなよ」と言う言葉と一緒に頭を撫でられた。
その時の感触で俺はフードが取れてしまっていることに気がついた。

(瞬動の時か…)

「すいません。一旦街に戻っておきます」

俺はボス部屋から出て行く。
後ろからは「気をつけてな」や「きぃつけぇや」などといった声が聞こえてくる。
一旦後ろを向いて礼をしてから俺は街に向かって走りだした。

べ、別に顔を見られたから逃げたわけじゃ…ないんだからね!




男のツンデレって多分需要ないよな。
自分で言ってみて虚しくなった。 
 

 
後書き
実は…タイトル考えるのに5分ぐらいかかってるんですよね…

それとこのネカマ用スキルの名前を少し募集中です。

自分のネーミングセンスのなさに全俺が泣いた。

それとそろそろストックが切れそうです…早(ボソッ 
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