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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第八十九話 ミザルの最期

             第八十九話 ミザルの最期
「修羅王様」
「何だ」
宮殿の奥深くであった。
「ミザル様ですが」
「あの男のことか」
「はい」
男が前にいる巨大な石像に対して告げていた。
「何やら蠢いておられますが」
「よい」
声はその石像からのものであった。
「既に承知している」
「左様でしたか」
「そうだ」
見ればそれは石像ではなかった。人であった。岩を思わせる顔に巨大な体躯。それが彼を石像に見せているだけだったのだ。だが紛れもなくそれは人であった。
「既にな。そのうえでのことだ」
「そうだったのですか」
「我が座が欲しければそれでよい」
彼は言うのだった。
「それでな。修羅にとって法は何か」
「力です」
男は頭を垂れて答えた。
「力こそが正義であり法であります」
「だからだ。修羅王になりたければ予を倒せばよい」
傲然とした声であった。
「ただそれだけのことだ」
「そうでありましたか」
「そしてだ」
ミザルのことはどうでもいいようであった。
「フォルカ=アルバークだが」
「はっ」
話をフォルカにやってきたのだった。どうやら彼のことも知っているらしい。
「今どうしているか」
「神化しそれからですか」
「アルティスもあの男の下に走ったな」
「はい、それも」
またその傲然と立つ男の声に答える。
「その通りです」
「そして修羅王」
別の男が彼をこう呼んできた。
「私からも申し上げたいことがあります」
「どうしたか」
「そのロンド=ベルですが」
彼が言うのはロンド=ベルについてであった。
「既にこの宮殿の前にまで来ています」
「左様か」
「はい。かなりの数です」
「迎え撃つのは」
「ミザルとアルコだな」
「そうです」
またこの二人の名前が出て来た。
「もう出撃されました」
「わかった」
「そしてです」
「我等もまた」
「わかっておる。出陣の用意だ」
修羅王は厳然とした声で述べてきた。
「よいな。すぐにだ」
「はっ、それでは」
「すぐに」
彼等もそれに応える。
「かかります」
「その様に」
「フォルカ=アルバーク」
修羅王はその重厚な声でフォルカの名を呼んだ。
「来い。我の下へ」
彼を待ち望む声だった。
「そして見せるのだ。その拳をな」
彼もまた戦いを待っていた。そしてこの頃。宮殿を目の前にしたロンド=ベルは出撃準備にかかっていた。そこにはティス達もいた。
「ほら急いで」
ティスがデスピニスを急かしていた。
「敵は待っちゃくれないわよ」
「う、うん」
「こっちだよ二人共」
ラリアーも二人に声をかける。
「早く行こう。皆行ってるよ」
「ええ、わかったわ」
「そっちね」
「よし、御前等」
その彼にジャーダが声をかける。
「今回も頼むぜ」
「安心して任せなさいよ」
ティスがそのジャーダに対して応える。
「戦うのには馴れてるんだしね」
「馴れてるの」
「そうよ」
ガーネットにも答えた。
「だからね。安心してね」
「そうね。あんた達の筋はわかってるし」
「しかしな。油断するなよ」
ジャーダは気さくに三人に述べる。
「修羅の奴等も本気だしな」
「いい加減本気の相手にもかなり疲れてきてるんだけれどね」
ティスもまた軽口を叩く。
「次から次にとよくもまあ」
「けれどティス」
しかしその彼女にラリアーが声をかける。
「修羅との決戦も間近いしね」
「油断できないっていうのね」
「そういうことだよ。やっぱり」
「ふん、じゃあね」
「やるんだね」
「相手が目の前にいたらやってやる」
ティスは言う。
「それがあたしのやり方だからね」
「そうよね。やっぱり戦いだから」
デスピニスはそれを言い訳にしているふしがあった。
「ちゃんとやらないと」
「わかってるじゃない」
ガーネットがデスピニスのその言葉に笑顔になる。
「それじゃあ。今回もやるわよ」
「何かあたし達も何時の間のかロンド=ベルになっちゃってるのね」
「それが普通だぜ」
アラドがティスに言ってきた。
「俺だって最初はな」
「最初は?」
「何でここにいるかわからなかったんだよな」
「いきなり配属されて」
ゼオラも言ってきた。
「それで何時の間にか色々な戦いに巻き込まれてね」
「あんた達も大変だったのね」
「そうなんだよ。人も次から次にやって来てな」
「あんた達もその一人だし」
「そうだったんですか」
「そういうことさ。じゃあ特に気にしないでな」
こうラリアーにも返す。
「行こうぜ」
「ええ」
「それじゃあ」
「わかりました」
こうして三人もまた出撃する。そうして出撃するとそこには。もう修羅の軍勢が布陣していた。
「早いですね」
「ちょっとは油断しやがれってんだ!」
ニコルと甲児が言う。
「手前等を倒すこっちの身にもなりやがれ!」
「ほざけ馬鹿共」
しかしアルコが甲児のこの言葉に対して返してきた。
「我等は修羅ぞ」
「その言葉聞いていてもう耳が麻痺してやがるぜ」
甲児も負けてはいない。
「それ以外のこと言えねえのかよこの骸骨蛸よお!」
「何っ、蛸だと!」
「そうだろうが!」
アルコに対してさらに言う。
「禿で骸骨みてえだからな。手前は蛸だ!」
「おのれ、兜甲児!」
既に彼の名前を知っているようである。
「許せん、ここで死ね!」
「死ぬのは手前に決まってんだよ!」
完全に売り言葉に買い言葉だった。
「そこでな。とっとと地獄に落ちやがれ!」
「おのれ!」
「全軍攻撃開始して下さい」
シーラが全軍に指示を出す。
「このまま。正面からです」
「正面からですか」
「そうです」
カワッセの言葉に返す。
「このまま正面からです。一点集中攻撃を仕掛けます」
「わかりました。それでは」
「そしてその突破口に入り込み敵をさらに攻撃します」
「了解」
それもだというのだ。
「それで御願いします」
「よし、じゃあ行くぜ!」
また甲児が前に出る。
「マジンカイザー、ゴーーーーーッ!」
「けれど甲児さんも」
ニコルはここで甲児を見て言う。
「随分とアスカさんに似てきましたね」
「ああ、それはあるな」
凱がニコルのその言葉に頷いた。
「あれだけ口喧嘩してるからな。移ったんだな」
「悪いのは全部あたしってわけ?」
「まあそれは別に」
「そういうわけじゃないけれどな」
「だったらいいけれど」
「しかしアスカ隊員」
ボルフォッグがここでそのアスカに言ってきた。
「ニコル隊員や凱隊長に対してはかなり穏やかに見受けられますが」
「うっ、それは」
「おいおい、らしくないぜ」
ゴルディマーグはそんなアスカに対して言う。
「女ももっとな。ドーーーンと言わねえとな」
「あら、レディはおしとやかにデス」
スワンが横からクレームをつける。
「レディアスカもそうしないといけまセン」
「あたしはそうしたいんだけれどね」
「何せこんなじゃじゃ馬だからな」
火麻も容赦がない。
「こりゃ婿の貰い手に苦労するぜ」
「だからあたしは」
「あたしは!?」
「どうしたのだアスカ隊員」
今度は氷竜と炎竜がアスカに対して問う。
「何かあったというのですか」
「一体何が」
「何でGGG相手には今一つ弱いんだよ」
「生真面目な雰囲気で言われると駄目なんじゃないのか?」
ミゲルがディアッカに対して答える。
「あの雰囲気はな」
「そうか。そういや凱さんには何も言わなかったな」
今はじめてわかるアスカの意外な弱点だった。
「とにかく」
「アスカ隊員」
「ええ」
風龍と雷龍の話も聞く。
「今回は大変な戦いだ」
「健闘を祈る」
「わかってるわよ」
「じゃあどんどんやっちゃってね」
「期待していますよ」
今度は光竜と闇竜の言葉だった。
「アスカちゃんあってのエヴァなんだし」
「四人揃ってですね」
「四人ねえ」
「アスカってナイスガール!!」
マイクもいつもの調子だった。
「そのファイト見てたらマイクもエキサイトするもんねーーーーーーっ!」
「よし、じゃあ行くぞ!」
あらためて凱が叫ぶ。
「このままだ。やるぞ!」
「了解!」
こうしてロンド=ベルは突き進む。その先頭にはフォルカもいた。
「来たかフォルカ=アルバーク!」
「変化のアルコか!」
「そうだ、貴様を倒して将軍になる!」
彼はまだ将軍になることを諦めてはいなかった。
「ここで!今度こそ!」
「よし!ならばだ!」
ここでロンド=ベルから出て来た者がいた。
「俺が相手をしてやる!」
「くっ、貴様は!」
「俺を愚弄したマグナスは倒れた!
それはフェルナンドだった。
「だが貴様がまだ残っている!ここで貴様を!」
「俺を倒すというつもりか」
「不服か?」
構えを取りつつアルコに対して問う。
「この俺で。どうなのだ?」
「ふん、来るのならば拒まん」
アルコもまた構えてきた。
「俺とて修羅。拳で全てを掴む」
「そうか。ならばだ」
「来い」
フェルナンドに対して告げる。
「ここで貴様を。倒す!」
「うおおおおおおおおおおっ!」
二人の闘いがはじまった。その間に両軍は本格的な戦闘に入った。ロンド=ベルは一点集中突破により正面を突き抜け反転する。その勢いは誰にも止められなかった。
「よし、ならばだ!」
「次は!」
ここでロンド=ベルの者達は反転しながらまた叫ぶのだった。
「このまま敵の後方を衝く!」
「よし!」
そこにはアリオンもいた。その拳を縦横無尽に突き出しつつ敵を屠っていく。
「まだだ!この程度で!」
「おのれアリオン!」
ミザルはそのアリオンの闘いぶりを見て忌々しげに呻く。
「修羅でありながら我等に歯向かうとは!」
「ほざけ!」
アリオンはそのミザルに対して言い返した。
「修羅は拳で何かを掴み取るものだな!」
「それがどうした!」
「だからなのさ」
不敵な笑みを浮かべてみせての言葉になっていた。
「俺は俺の見たいものを見る」
「何っ!?」
「だからさ。風が教えてくれたんだよ」
「また風というのか」
「そうだ。だからさ」
また言うのだった。
「俺はフォルカと共にな。俺の見たいものを見る」
「ならば。来るというのか」
「といきたいところだが先約があってね」
「何っ!?」
「俺よりもな。あんたと闘いたい奴がいるんだよ」
「そうか。やはりな」
それを言われても驚くことのないミザルであった。
「そうであろうと思っていた」
「へえ、わかっていたのかよ」
「わしを誰だと思っている」
アリオンを見据えて言い返してきた。
「激震のミザル。修羅の軍師ぞ」
「そうか。そうだったな」
アリオンも彼の言葉に納得するのだった。
「あんたはな。修羅で随一の知恵者だ」
「そうだ。そしてだ」
さらに言うのだった。
「わしの誇りはこの頭脳だけでない」
「いいねえ、その自信」
アリオンもこのことを認めるにあたってはやぶさめではないようだった。
「いけ好かないがそれだけのものは認めるぜ」
「さあ、来い」
傲然と立ちその者を呼んだ。
「フォルカ=アルバークよ」
「よし」
出て来たのはフォルカだった。
「相手をしてやる。来い」
「ミザル」
フォルカはまずミザルの名を呼んだ。
「貴様とこうして闘う時が来るとは思わなかった」
「ほう。何故だ?」
「俺はまだほんのひょっ子だった」
こう言うのだった。
「貴様の前に立つにはな」
「では今はどうなのだ?」
「できる」
これがフォルカの返事だった。
「今ならばな。闘える」
「では。それではだ」
「行くぞ」
ミザルの前で身構えてきた。
「この俺の拳。受けてみよ」
「面白い。修羅王様に挑まんとするならば」
ミザルもまた構えを取ってきたのだった。
「このわしを!倒すがいい!」
「同じ志を持つ者としてか」
「ほう、気付いていたか」
「気が教えている」
こうミザルに言葉を返した。
「御前の気がな。御前は自分が修羅王になろうとしているな」
「ふっ、隠せぬようだな」
ここに至ってミザルも開き直ってきた。
「その通りだ。わしは修羅王になる」
「何っ!?」
メイシスはその言葉を聞き目を鋭くさせた。彼女も戦場にいるのだ。
「何だと、まさか」
「気付かなかったのか?」
その彼女に対して言ってきたのはアルティスだった。
「俺は気付いていた」
「まことですか」
「野心家だ」
こう言うのである。
「野心家ならば。それも当然だ」
「修羅王の座を」
「修羅王にとって必要なものは何か」
メイシスに対して問うてきた。
「何だ。修羅ならわかるだろう」
「はい」
メイシスもまた修羅である。これがわからない筈がなかった。
「それでしたら。無論」
「そうだ。修羅王とは修羅を統べる者」
まさにその通りである。
「そしてそれに至るには」
「力ですか」
「そうだ」
これこそが答えだった。
「修羅王は先の修羅王を倒しなる者だ。だからこそ」
「修羅を。では」
「そうだ。だからこそミザルもまた修羅王になるつもりなのだ」
野心故に。そういうことであった。
「その拳でな」
「そうだったのですか」
「その為にもだ」
また言う。
「あの男は闘う。今な」
「フォルカ=アルバークと」
「はじまる」
その闘いがであった。
「両者の闘いがな。いよいよな」
「!?このオーラ」
エレが声をあげた。
「修羅の。気!?」
「はい、まさにそうです」
それにエイブが答えた。彼も感じていたのだ。
「この気配は」
「ハイパー化に似ています」
それははっきりと感じていた。
「ですが」
「そうです。それをコントロールしています」
こう言うのだった。
「この気は。まさに」
「コントロールされたハイパー化」
これはバイストン=ウェルにおいてはまず有り得ないものである。だが修羅達では違うのだった。
「まさにそれです」
「あれだけの力をコントロールできるというのか」
かつてハイパー化したバーンの言葉である。
「あの者達は」
「バーン」
そのバーンにショウが声をかける。
「だとしたらその闘いは」
「そうだ。間違いない」
彼もわかっていた。
「これまでになく激しいものになる」
「だが。フォルカさん」
ショウはそのフォルカを見ていた。
「あんたは・・・・・・勝ってくれ」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
まずフォルカが技を繰り出した。
「喰らえミザル!」
「むうっ!」
「この俺の拳!」
叫びながらその拳を繰り出してきた。
「これで!貴様を!」
「見事だ」
ミザルはその拳を見て言う。
「その拳。確かに神化しただけはある」
「むっ!?」
「しかしだ。その技では」
「何っ!?」
「まだわしを倒すには至らん」
「くっ!?」
何とその拳を。
「受け止めた!?」
「止めただと!」
皆それを見て思わず叫んだ。
「あの拳を!」
「掌で掴み取っただと!」
「何度も言おう」
「くっ!」
「わしは激震のミザル」
不敵に笑って己から名乗った。
「この名は伊達ではないぞ」
「馬鹿な、フォルカの拳を」
「あんなに簡単に」
「いや、実力通りだ」
驚く面々にアルティスが告げる。
「あれもな。実力通りだ」
「実力通り!?」
「そんなに強いっていうのかよあの鎌髭野郎」
「伊達に修羅の軍師ではないのだ」
こう修羅達に言うのだった。
「修羅のな」
「軍師ではないと」
「そうだ」
また一同に言う。
「それはな。修羅だからこそだ」
「くっ、何てこった」
「そんなに手強いっていうのかよ」
「ミザルは軍師というだけではない」
こうも告げる。
「修羅の将軍達の首座でもあるのだ」
「修羅の・・・・・・」
「将軍の」
「そうだ。だからこそあの拳を受ける力もあるのだ」
「ちっ、フォルカさんよ!」
「大丈夫なのかよ!」
見ればフォルカは拳を掴み取られ。そこにミザルの攻撃を受ける。
「うぐっ!」
「そしてこれがわしの拳だ」
ボディーブローを受け身体をくの字にさせた。
「どうだ?」
「まだだ・・・・・・」
フォルカは血を吐きながらもこう返した。
「まだだ。この程度で」
「流石だな」
そしてミザルはその彼を見て言った。6
「神化したというだけはあるか」
「俺は・・・・・・敗れん」
体勢を立て直しミザルから間合いを離しての言葉だった。
「ここで敗れたりはしない」
「そうか。ならばだ」
「むっ!?」
「何だありゃ」
ミザルのグラシャラボラスから二つのドリル状のものが現われた。それは複雑な動きをしつつフォルカのヤルダバオトに迫る。
「これは・・・・・・一体」
「ふふふふふ」
ミザルはフォルカに対してそれ等を放ったうえで不敵な笑みを浮かべていた。
「かき回してやろう」
「来る・・・・・・!」
「いかんフォルカ!」
ここでアルティスがフォルカに対して叫んだ。
「避けろ、それは!」
「!?どうしたアルティス」
「それは双蛇覇動弾!ミザル最大の技だ!」
「何だと!」
「それを受けてはヤルダバオトとて無事では済まん。避けろ!」
「くっ!」
「もう遅い!」
フォルカは咄嗟に避けようとする。しかしそれは間に合わない。その二匹の蛇がヤルダバオトを遮二無二切り刻む。ヤルダバオトは大きく揺れその傷は立っているだけでやっとのものだった。
「うう・・・・・・」
「フォルカ!」
「フォルカさん!」
「案ずるな。俺はまだ立っている」
だがフォルカは健在だった。
「そして言った筈だ。敗れはしないとな」
「そうか。そうだったな」
コウタが彼の言葉を受けて頷いた。
「なら。やってみろ!」
「フォルカさん!」
ショウコもフォルカに対して言う。
「見せてもらいます、貴方のその心!」
「無駄よ、無駄なことよ!」
ミザルは彼等の言葉も聞いたうえで叫ぶ。
「この技を受けてまだ立っているのは見事と言おう」
「ミザル・・・・・・」
「しかし!またこの双蛇覇動拳を受けて立っていられるのか!このわしの拳を!」
言いつつ再び構えに入る。
「行くぞ。これで止めだ」
「来い・・・・・・!」
フォルカはミザルの構えを見てこう言い返した。
「ならば破ってやろう」
「ほう」
「この俺が。この手で!」
「面白い!ならば!」
再びその二匹の蛇を放った。
「これで・・・・・・終わりよっ!」
「今だ!」
ミザルが蛇達を放った。そしてそれを見たフォルカもまた動くのだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「技か!」
「あれは!」
「ミザル!貴様が蛇ならば!」
両手から技を放ちながら叫ぶ。
「俺は龍!この二匹の紅蓮の龍で!」
「むうっ!」
「貴様を倒す!受けろ!」
「ほざけ!我が蛇は不敗!」
ミザルもまた負けてはいなかった。
「この蛇達を受けて。死ねいっ!!」
「はああああああああああああああっ!!」
龍が繰り出された。その龍達は螺旋状に絡み合いながら蛇達に迫る。今蛇と龍がぶつかり合った。
「どっちだ?」
「勝ったのは!」
『見ろ!』
ここでロアが一同に対して叫んだ。
『勝ったのは!』
「むっ!?」
「あれは・・・・・・!」
見れば勝ったのはフォルカだった。龍は蛇達を砕きそのまま宙を舞っていた。
「何だと!わしの龍が!」
「おいおい、蛇が龍に勝てるかよ!」
「そうは問屋が卸すもんですか!」
ロンド=ベルの面々はフォルカが勝ったのを見て思わず歓声をあげた。
「ミザル!貴様の技は確かに脅威だ」
受けたフォルカもそれは認める。満身創痍なのは事実だからだ。
「しかし!俺もまた修羅!」
「何っ!」
「修羅に一度見た技は通用しない!忘れたか!」
「くっ!」
「だからだ!貴様の技は見切っていた!」
「おのれ、ならば!」
「遅い!」
また攻撃に入ろうとするミザルに対して叫ぶ。
「これで・・・・・・」
「くうっ!!」
「出た!」
「突撃かよ!」
皆フォルカの動きを見て叫ぶ。見れば彼は龍を放ったうえでそれを追うようにして突進したのである。その腕の拳に紅蓮の光を宿らせて。
「はあああああああああああああああああっ!!」
「くっ!」
ミザルは両腕をクロスさせてその拳を防ごうとする。しかしそれは。
「無駄だ!」
「何っ、無駄だというのか!」
「そうだ、この拳!」
その拳を放ちながらまた叫んでいた。
「かわせはしない!おおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーっ!!」
その拳がミザルを貫いた。そしてそれから二匹の龍が襲う。これが決め手だった。ミザルは動きを止めその場に。静かに崩れ落ちたのだった。
「ぐうう・・・・・・」
「ミザル様!」
「おい、余所見している場合かよ!」
アルコが崩れ落ちたミザルを見て狼狽を見せた。そしてそれは彼にとって命取りとなった。
「俺がいるんだぜ!」
「くっ、しまった!」
「はああああああああああああああっ!」
アリオンもまた攻撃に入る。
「この拳で。地獄に落ちろ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーっ!!」
アルコもまた吹き飛ばされた。これで全ては終わった。既に修羅達はその殆どを倒され今アルコのミロンガが地に落ちた。彼は倒れ伏しながらもまだ呻いていた。
「まだだ・・・・・・」
「無理するな。御前はもう終わりなんだよ」
「俺はまだ闘える」
何とか起き上がろうとしながら呻いていた。
「そして将軍に。修羅の将軍に」
「アルコ、手前・・・・・・」
「修羅の将軍になるのだ。貴様等如きに俺の夢を・・・・・・」
呻きそのうえで倒れ伏した。そしてそのまま爆発した。アルコも遂に倒れたのだった。
倒れ伏したミザルもまた。今彼は両膝をつきそのうえで何とか生きようとしていた。しかしそれも最早適わぬ夢となろうとしていた。
「おのれ、まさかこのわしがこの様な場所で・・・・・・」
「勝者は俺だ」
フォルカはその彼に対して振り向きクールな声で述べた。
「貴様は敗れた。それだけだ」
「おのれ・・・・・・」
「最後に何か言い残すことはあるか」
ミザルに対しての問いだった。
「聞いておくが」
「末期の言葉か」
「そうだ。何かあるか」
「ふん、では言っておこう」
まだ不敵な笑みを崩してはいない。その笑みでの言葉だった。
「まずは褒めておこう」
「んっ!?あいつが褒めるのかよ」
「珍しいなんてものじゃないわね」
「しかしだ。わしを倒してもまだ」
「修羅王か」
「そうよ。修羅王様には勝てんぞ」
口から血を出しながらの言葉であった。
「その程度ではな。言うのはそれだけだ」
「・・・・・・・・・」
「さらばだフォルカ=アルバーク」
いよいよ死期が迫ろうとしていた。
「地獄で待っているぞ」
こう言い残し爆発の中に消えた。ミザルがこれで散った。
「ミザル・・・・・・貴様もまた」
「フォルカ・・・・・・」
「フォルカさん・・・・・・」
「俺の強敵だった。忘れはしない」
こう言い残したのであった。
「ではフォルカ君」
「うむ」
グローバルの言葉に応える。
「これで王宮への道は開けた」
「そうだな」
「いよいよだな」
「はい、その通りです」
シュウもまたここで言った。
「これで。遂に修羅王に向かうことができます」
「長かったっていうべきか?」
アリオンがここで言うのだった。
「ここまでの道はな」
「どうかな。少なくとももうすぐ終わる」
フォルカはアリオンのその言葉に応えた。
「いよいよな」
「よし、では全軍まず集結せよ!」
グローバルは闘いが終わったのを見て全軍に告げる。
「王宮に突入する。いいな」
「はい!」
「わかりました!」
皆それに頷く。いよいよ修羅との最後の戦いがはじまろうとしていた。
「御主人様」
「何ですか、チカ」
「この戦いが終わったら元の世界に帰れるんですよね」
チカが問うのはこのことだった。
「元の世界に。そうですよね」
「一応はそうなっていますが」
「一応って?」
「さて。どうもおかしいのですよ」
ここで彼は思わぬ言葉を口にした。
「こんなことはなかったのですがね」
「何かあったんですか?」
「時空の力が乱れています」
こうチカに言うのだった。
「ここで。こんなことはなかったのですが」
「時空のですか」
「妙ですね。また何かが起ころうとしています」
「またっていいますと」
「どちらにしろ修羅王との戦いまではもちそうです」
それは確かだと言う。
「ですがその後。特に」
「特に?」
「修羅王はかなりの力の持主の筈です」
彼は次にこのことを指摘した。
「ならば。その力が時空に影響した場合」
「また何かあるっていうんですか」
「まだそこまではわかりませんが」
しかしシュウの目はいぶかしげなものであった。
「どうも。気になります」
「そうなんですか」
「そしてです」
ここでシュウはまた別のことを言ってきた。
「地上で動きがありましたよ」
「シャドウミラーですか?アインストですか?」
「いえ、連邦です」
とりあえあずは敵勢力に関するものではなかった。
「地上で新型戦艦が就航しましたよ」
「新型っていうと」10
チカはシュウの言葉に考える顔になった。
「あれですか?マスロスとか」
「はい、それです」
チカの予想は当たった。
「マクロスの最新鋭戦艦。名付けてマクロスFです」
「今度はFですか」
「それが就航しました」
このことをチカに話すのだった。
「それがロンド=ベルに配属されるとのことです」
「へえ、また一隻なんですね」
「いえ、二隻ですよ」
シュウはここで微笑んでチカに述べてきた。
「二隻なのですよ」
「マクロスだけじゃないんですか」
「キングビアルも配属されることになりました」
それもであるというのだ。
「キングビアルもまた」
「それもなんですか。また随分と賑やかになりましたね」
「さらにですね」
「ええ。手狭だからですか?」
確かに今の時点でもロンド=ベルは実に多くのマシンを抱えている。
「だからですかね」
「それもありますね。それに」
「それに?」
「ロンド=ベルは今や人類最強の戦力です」
この現実もあるのだった。
「戦力集中は戦略戦術の基本ですね」
「ええ、まあ」
「だからなのですよ」
「だからまた二隻配属ですか」
「そういうことです。これでマクロス級が三隻」
かつてない大戦力である。
「どうやら。あちらに戻っても激戦に向かうことになりそうですね」
「そうですね。けれど御主人様」
「はい」
チカの言葉に顔を向ける。
「どうしました?チカ」
「ここでの戦いが終わったらあたし達はまたロンド=ベルとお別れですよね」
彼女が言うのはこのことだった。
「これでまた」
「そうです。また調査に入ります」
シュウもそのつもりであった。
「また。色々と」
「そういえばバルマーも大人しいですしね」
「どうやら戦力の回復に務めているようですね」
火星での戦いの後の傷がまだ癒えていないということであろうか。
「それか若しくは」
「若しくは?」
「決戦の用意をしているかです」
シュウの目が光った。
「どちらかでしょう」
「決戦ですか」
「マーグ司令は銀河辺境方面軍司令官」
マーグの役職についても述べる。
「彼の下には七個艦隊があります」
「今まで第七艦隊と第一艦隊がありましたよね」
「その通りです」
「あと五つですか」
「第七艦隊はオリジナルのラオデキア卿が倒れましたが」
既に彼はいないのである。
「まだクローンがいればあるいは」
「じゃあ第一艦隊も」
「バルマーの戦力は底知れぬものがあります」
伊達に銀河の覇者を自認しているわけではないのである。
「ここで七個艦隊を全て再編成させて地球に向けて来るのも不可能ではありませんよ」
「うわ・・・・・・」
それを聞いて思わず声をあげるチカだった。
「何かとんでもないことになりそうですね、これから」
「そうですね。ですがまずは」
「目の前のとんでもないことですか」
「そうなります」
つまり今向かおうとしている修羅王のことである。
「まずは彼です」
「修羅王ですか」
チカはあらためて修羅王のことを言った。
「物凄いですよね、やっぱり」
「修羅達の頂点に立つ存在」
シュウもまたチカに応えて述べる。
「その力はまさにこの修羅界そのものです」
「勝てるんですかね」
チカはその小さな首を右に捻った。
「そんな物凄いのに」
「何、勝てなければここにまで導いていませんよ」
しかしシュウの言葉は至って落ち着いたものであった。
「彼等をね」
「そういうことですか」
「そうです。それでは」
「はい」
「まずは戻りましょう」
こうチカに告げるのだった。
「とりあえずここでの戦いは終わりです」
「そうですね。修羅の将軍達もこっちにつくか倒れていますし」
「後は修羅王だけなのは確かです」
「ですよねえ。まあ帰ったら帰ったで大変ですけれど」
だがそれはもうとりあえずと考えてもいるチカだった。
「とりあえず今は」
「そうです。今は」
「次の戦いに備えますか」
「それでチカ」
シュウはここでチカに声をかけてきた。
「帰ったら御馳走がありますよ」
「あっ、何ですか?」
「チェリーです」
微笑んでチカに言ってみせた。
「チェリーを用意しておきましたので」
「あっ、気前がいいですね」
「貴女も最近随分と頑張っていますしね」
「そうでしょ。御主人様の為なら例え火の中水の中」
これは多分にはったりである。
「このチカちゃん何でもしますよ」
「頼りにしていますよ。何かと大変な戦いが続きますしね」
「そうですよね。ところで御主人様」
「今度は何ですか?」
「いえね、バルマーのことですよ」
彼女が今度言うのはバルマーに対してだった。
「バルマーの本国は銀河の中心にあるんですよね」
「その通りです」
「じゃあ連中の介入を最終的に解決するにはそこまで行かないと駄目ってことですよね」
「そうですね。彼等に妥協の意志がない状況では」
既に彼等とも全面戦争に入っているのである。
「それしかないでしょう」
「それじゃあ無理じゃないですか」
チカは元々尖っている口を尖らせた。
「こっちはこんな所にいてそこまで行けないんですから」
「いえ、そうともばかり言えませんよ」
だがシュウはこうチカに言うのであった。
「あの刻印を使えばおそらくは」
「刻印!?」
刻印と聞いてまた首を傾げさせた。
「何ですか、それって」
「グラドスの刻印ですよ」
シュウはこうチカに答えるのだった。
「それを使えばおそらくは」
「おそらくはって」
「どちらにしろ全てはあちらに戻ってからです」
ここで話を切ってしまったシュウだった。
「全てはそれからです」
「そうなんですか」
「ではチカ」
「はい」
「まずは母艦に戻りましょう」
「わかりました」
こうしてチカは母艦に戻った。ところがここでまた彼女は不要な騒動を起こすことになるのだった。
「わわっ、何だこりゃ」
「何だって言ってもねえ」
「ねえ」
ルナマリアとメイリンがそれぞれ言う。
「デボスズメっていうんだけれど」
「ミネルバには前からいるわよ」
「そう、ザフトのマスコット」
「知らなかったの?」
「そんなでかい雀がいたなんて」
チカも驚きだった。
「何でこんなものが?」
見れば巨大な雀達が十羽近くミネルバの艦内を飛び回っているのだ。かなり異様な光景である。
「何でって品種改良でできたのよ」
「あんた知らなかったの」
「知ってるわけないでしょうが。あたしが」
「そういえばあんた殆ど別行動だしね」
「シュウさんもミネルバははじめてでしたっけ」
「ええ、そういえばそうでしたね」
シュウも実はそうなのだった。
「ここに来たのは」
「じゃあこの子達のことも」
「御存知なかったですよね」
「いえ」
だが二人の問いには首を横に振るシュウだった。
「知ってはいましたよ」
「あれっ、そうだったんですか」
「プラントにも出入りしていましたので」
プラントにまで顔が行き届いているシュウであった。
「それで。一応は」
「そうだったんですか」
「それにしてもここにいるとは思いませんでしたよ」
「皆のヒーリングってことで」
「アニマルヒーリングですね」
「そうですか。それでですか」
つまり癒しである。
「成程、いいと思いますよ」
「いいって御主人様」
しかしチカはそうは思っていないようである。
「こんな不自然な雀がいるなんて」
「じゃああんたは何なのよ」
「そうよ」
ルナマリアとメイリンは冷めた目でチカを見つつ言った。
「喋る鳥なんてね」
「そうはいないわよ」
「そりゃあたしはファミリアですから」
「九官鳥じゃねえのか?」
シンがまた余計なことを言うのである。
「色を青くしてよ。そんなんだろ」
「あたしを九官鳥と一緒にしないでもらいたいね」
「じゃあ烏かよ」
相変わらずの調子のシンである。顔を見上げて悪態をつく。
「何なんだよ、それじゃあよ」
「あたしはラングランにいる由緒正しき」
「青い九官鳥なんだな」
「何言ってやがるこの赤トランクス男」
チカも反撃に出て来た。
「赤ならまだしも趣味の悪い下着ばかり持っているなんてセンスを疑うよ」
「何で俺のトランクスの柄知ってるんだ?こいつ」
「わかったら黙ってろ」
「鳥に言われる筋合いはねえ!」
鳥にも言葉を返すシンだった。
「何なら焼き鳥にしてやろうか!」
「やってみれるのならやってみろ!」
チカもチカでまた言う。
「このオカメチンコ!」
「オカメチンコ!?」
「ヘタレガン使い!年上好み!」
「手前!それを言うな!」
何故かこうした言葉には異常に反応するシンだった。
「俺はステラ一筋だ!それに格闘系だぞ!」
「五月蝿い!紫野郎!」
「紫の何が悪いってんだ!」
「何かあれよね」
「そうよね」
ルナマリアとメイリンは二人の喧嘩を見て言う。
「シンってねえ」
「本当に誰とでも喧嘩できるのね」
「凄いっていえば凄いわね」
「尊敬はできないけれどね」
「たまには勝ってみやがれ!」
「何を!」
こうしてチカとシンは本格的に喧嘩に入った。何はともあれロンド=ベルはこの世界での最後の戦いに入るのであった。このことだけは確かであった。

第八十九話完

2008・11・3
 
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