IS インフィニット・ストラトス~転生者の想いは復讐とともに…………~
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number-19 seaside school
前書き
臨海学校。
「見えたあっ!! 海だあっ!!」
学園のチャーターしたバスに乗って揺られること数時間。
ようやく見えた海にテンションが上がる生徒たち。
だが、麗矢のテンションはダダ下がりであった。
生徒が海のほうを向いているのに麗矢ともう一人は見ていなかった。
麗矢は、土砂崩れが起きることの無い様に補強された山の方を見ていた。
ではもう一人は?
そのもう一人――――セシリア・オルコットは昨日何をしていたのか、麗矢にもたれるようにして寝ていた。
ラウラは海を見ようとした時に気付いて、それを羨ましそうに見ている。
この状態になってもう一時間は経つだろうか。
なるべく意識しないようにしていたが、時折身じろぎをするたびに女子特有の甘いにおいが漂ってきて、意識してしまう。
男としては思うところがあるのだが、決して手を出すようなことはしない。
「うーん……はわっ……。」
まだ眠いのか目を擦りながらようやく起きたセシリア。
ふと、麗矢の方を見て距離が近いことに気付き、顔を赤くしてパッと離れた。
そして恥ずかしかったのか、麗矢と顔を合わせることが無い様にそっぽを向いていた。
それを見て、苦笑しながら再び景色に目を戻す。
目的地はすぐそこだ――――。
◯
臨海学校の間は、あたり2キロから3キロほど封鎖される。
ISの中には機密事項を含むものもあるから、そういう措置が取られているのだ。
その封鎖区域のほぼ中心地にある旅館が一年が泊まるところだ。
荷物をすべて降ろし、女将さんに挨拶をする。
その時に一夏が何か注意を食らっていたが、麗矢はそんなことなかったので割り当てられている部屋に向かう。
その部屋は教員の部屋があるところで、これも女子が押しかけて来ない様にとした措置だろう。
その部屋の中の一室、ほかの部屋より狭いと言っていたが、この大きさで一人部屋は贅沢だった。流石国立。
和室の部屋の奥にある障子を開けて、開けた先にあったちょっとしたスペースを横切り、窓を開ける。
すると一気に部屋の中に潮風が入ってくる。
海の近くというのもあって過ごしやすい。
都心部のヒートアイランド現象による暑さよりもこの心地いい風が吹いてくる方がいい。
ここから砂浜も見える。
そこにはもう人がいた。待ちきれなかったのだろう。
だが麗矢は行かない。
海ではしゃいで遊ぶよりも、静かなところで落ち着いて過ごしたい。
ここ最近面倒事に巻き込まれっぱなしだった麗矢の休息の時間。
波立つ音が潮風に乗って聞こえてくる。
どのくらい窓のふちに腰掛けて外を眺めていただろうか。
まだ日は高いから自由時間だ。
午後五時まで自由にしていいと言われていた。――――今は、午後一時。
昼食を食べていないが、一食抜いて食べないぐらい大丈夫である。
今はただ何も考えずに静かにしていたかった。
不意に部屋の扉をガラガラとあける音が聞こえてきて、誰かが入ってきた。
その人はまっすぐに麗矢のもとへ歩くとその隣に腰掛けて、麗矢と並ぶ。
二人は顔を合わせることはない。
「…………久しぶり、束。」
「うん! 本当だよー。束さん、れーくんに会えなくて寂しかったんだから。」
入ってきた人物――――ISの発明開発者である篠ノ之束は嬉しそうに麗矢と話す。
まるで愛しい人にあったかのように。
事実である。
麗矢は束から依頼を受けていたことがある。
その時に麗矢が束の命を何回も救っていた。麗矢がいなければ、今ここに束はいなかったと言わしめるほどに。
だから麗矢は裏の世界で束に負けずとも劣らないほどの有名人になったのだ。
闇の組織に所属する者、軍・政府上層部は必ずと言っていいほど麗矢の存在を知っている。
そんなに有名だとは知らない麗矢は束にここへ来た目的を聞いた。
「……どうしてここに?」
「簡単なことだよ。一つはれーくんに会いに来たの。でね、もう一つが箒ちゃんにISをあげようと思ってきましたっ!」
そんな麗矢の問いに間髪入れずに答える束。
妹――――篠ノ之箒に頼みごとをされたのがそんなに嬉しかったのか。
麗矢にとって箒は関わり事態がそんなにないため、よく知らないのだ。
だが、束が嬉しそうにしているんだから、麗矢は何も言わない。言う必要がないのだ。
束が麗矢の肩に頭を預ける。
それに麗矢は既視感を覚えたが、気にしないことにした。
二人は座り続け、離れることはない。
結局、夕食時までずっとくっ付いていたのだ。
◯
夕食の時間になって、束は嵐のように去っていった。
その時にぎゅっと抱きしめられて息が苦しかった。
どうしてこんなことはと麗矢は聞いたが、『れーくん成分の補充だよっ!』と言ってどこかへ行った。
夕食の場所は宴会場みたいな広い所だった。
もうすでにほとんどの生徒が席について食べ始めている。
入る前に千冬にあったが、その時に何か良く分からないことを忠告された。
まあ、問題をというより騒ぎを起こすなということだろう。
現にさっきまで廊下にまで声が響いてきたのだ。
ようやく開いている席を見つけて座る。
その正座をして座る方だったが、運の悪いことに一夏の前だった。
「おっ、麗矢。どうして海に来なかったんだ?」
麗矢は無視する。
無視された一夏は、ちょっと拗ねていたが気にしない。男が拗ねていても気持ち悪いだけである。
それよりも麗矢にとってさらに運の悪いことに、一夏の隣がシャルロット・デュノアだった。
なるべく目を合わせないようにしてさっさと夕食を食べ終わる。
誰よりも遅く来て、誰よりも早く出ていった麗矢。
麗矢は今日一日をほとんど一人で過ごした。
みんなといるよりも一人のほうがいい。
寂しさも感じる孤独のほうが麗矢は好きなのだ。
こうして臨海学校一日目は過ぎていくのであった。
後書き
束さんってこんな感じで良かったっけ?
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