スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第七十五話 オペレーション=プランタジネット 前編
第七十五話 オペレーション=プランタジネット 前編
何はともあれアインストとの戦いは一段落ついた。しかしそのロンド=ベルにまた作戦が入るのであった。
「中央アフリカですか」
「そうだ」
ダイテツにミスマルがモニターから伝えていた。
「今現在中央アフリカにインスペクターが集結している」
「また急に」
「そうだ。我々もまさかとは思った」
こうダイテツに述べる。
「あの辺りには特に戦略上の要地もない。だからノーマークだった」
「ですがそこに進出していますか」
「あの四機のマシンもいた」
「四天王ですか」
「君達の間ではそう呼んでいるのだな」
「はい」
ミスマルの言葉に対して頷く。
「彼等の言葉から。そう呼んでいます」
「そうだったのか」
「それでです」
彼はさらに言う。
「その四機が一度に集まっていますか」
「手強いですね」
共にいたテツヤの目が鋭くなる。
「四天王が全員ですと」
「それでだ」
そしてミスマルはここで言うのであった。
「君達に頼みたいことはだ」
「その敵基地の攻略ですね」
「そうだ」
話はもうすぐにわかるものであった。だからテツヤにすぐに問うことができたしミスマルもまたすぐに答えることができたのだ。話は早かった。
「アレクサンドリアの守りは連邦軍が引き受ける」
「連邦軍がですか」
「既にそちらに部隊を回している」
この動きの速さは見事であった。
「すぐに中央アフリカに向かってくれ。いいな」
「わかりました。それでは」
「全軍行くのだな」
「はい、それは」
これはもう当然のことだった。ロンド=ベルの基本だ。
「そのつもりですが」
「アキト君もだな」
「ええ、まあ」
彼も参戦するのもまた当然のことであった。
「彼は貴重な戦力ですし」
「では彼に伝えてくれ」
「伝言ですか」
「そうだ。娘を頼むとな」
こう言うのである。
「何しろ私はここにいて動けないのだからな」
「左様ですか」
「ユリカはここにはいないな」
「はい」
これまた即答だった。ダイテツの言葉も実に素っ気無い。
「そのアキト君達とアレクサンドリアの街で休暇を楽しんでいます」
「元気なようだな」
「ええ、それは」
これについては元気過ぎる程であった。
「御心配なく。昨日もアキト君のラーメンを十杯程」
「そうか、それは何よりだ」
「他にもビールを四リットルに餃子を四十個」
「健啖で何よりだ」
「そんなものですか?」
「そうらしいな」
あまりもの食べる量に心配になるエイタにテツヤが答える。
「人間食べられるうちは心配無用だというしな」
「それはそうですが」
それでもであるのだ。
「ですがそれでも」
「まあそう言うな。俺達も同じだ」
テツヤはここで自分達についても言及した。
「昨日だってうどん十五杯にお握り二十個だったな」
「僕達そんなに食べてよく太りませんね」
「動いているからだろうな」
「だからですか」
「ああ、気にするな」
「とにかくだ。元気で何よりだ」
ミスマルはまたこのことを言った。
「ユリカもな。ではこれでな」
「はい」
「ユリカにはくれぐれも言っておいてくれ」
どうやら彼女がここにいないことが非常に残念であるらしい。
「それだけは宜しくな」
「わかりました」
ダイテツがその言葉に頷くと話が終わった。ミスマルはモニターから姿を消し解散となった。そのうえですぐに中央アフリカでの作戦準備に取り掛かるのであった。
「オペレーション=プランタジネットだ」
ブレスフィールドが誇らしげな笑みと共に言ってみせた。
「作戦名はこれだ」
「オペレーション=プランタジネット」
「どうだ、いい名前だろ」
「そうだな」
クォヴレーがそれに応える。
「少なくとも悪い名前ではない」
「ではそれでいいな」
「俺はいい」
素っ気無く答えるクォヴレーであった。
「それで。文句はない」
「そうか。他の皆はどうだ」
「いいと思います」
「俺も」
クスハとブリットもそれで異論はなかった。
「相手がインスペクターってわかっていますし」
「それでいいんじゃないですか?」
「そうね。相手がインスペクターなのよね」
カルヴィナはそのことだけを考えていたのだった。
「最近なりを潜めていたと思ったら」
「まさかアフリカにいたなんて」
「思いもよらなかったわね」
「はい」
カルヴィナは今度は統夜と話すのであった。そこには三人の娘達もいる。
「しかも四天王全員いるんだっけ」
「そうらしいわ」
テニアにカティアが答える。
「だから戦力もかなりね」
「揃っているってことね」
「大きな戦いになります」
メルアの言葉は真面目なものだった。
「それもかなり」
「大きな戦いはいつものことだけれど」
「それでもね。あの四人が全員いるのねえ」
ジョッシュとリムもまた同じことをマークしていた。
「手強いな」
「それもかなりね」
「けれどそれもいつものこと」
「臆してもならない」
グラキエースとウェントスはかなり冷静だった。
「今回も作戦もいつも通りと思えば」
「いいと思うが」
「そう、いつも通りだ」
ブレスフィールドは今の二人の言葉にここぞとばかり言ってきた。
「いつも通りの作戦だ。攻めてな」
「攻めるのはいいけれどよ、親父」
「何だカズマ」
「問題はどうやって攻めるんだ?」
「そうよお父さん」
ミヒロも言う。
「ただ攻めるってだけじゃ何にもならないわよ」
「北から攻める」
それに応えてブレスフィールドは作戦のことをやっと話してきた。
「北からな。つまりは」
「このアレクサンドリアからまた南下か」
「そう、その通りだ」
このこともカズマに述べたのだった。
「そのまま総攻撃を浴びせる。攻撃目標は」
「攻撃目標は」
「敵軍だ」
まず攻めるのは彼等だというのだった。
「インスペクターの軍勢を叩く。攻撃目標はまずは連中だ」
「基地ではないのね」
「基地は今後の作戦に使うそうだ」
「ああ、成程な」
ユウキがそれを聞いて納得した。
「だからか。基地を狙わないのは」
「納得ね」
カーラにも話がわかった。
「占領した基地を今度は連邦軍が使う」
「合理的って言えば合理的ね」
「その通りだ。だからこそ」
またブレスフィールドが語る。
「敵軍を叩く。いいな」
「ああ、わかったぜ」
カズマが彼に答える。
「それならな。敵を倒せばいいんだよな」
「ただ。基地の施設はできるだけ狙わんようにな」
ここは念を押す。
「仕方ない場合はいいがそれでも意図的に狙わんようにな」
「流れ弾はいいのかよ」
「あくまで最低限だぞ」
また念を押すブレスフィールドだった。
「基地は後から使うのだからな」
「ちぇっ、注文の多い話だぜ」
「けれどお兄ちゃん」
ここでミヒロがカズマに声をかける。
「何だ?」
「いつも通り敵を倒せばそれだけでいいじゃない」
こう考えるミヒロだった。
「そうでしょ?無理して基地を破壊するわけじゃないし」
「そう考えればいいのかよ」
「別にミサイル砲台とかは潰していいのよね」
セレーナはそこを尋ねてきた。
「そういうのは。どうなの?」
「それは構わない」
シナプスがセレーナに答える。
「攻略に邪魔ならば。止むを得ない」
「話がわかるわね。それじゃあ」
「行くか」
トウマが声をあげる。
「アフリカにな。やってやる!」
「よし、じゃあ行こう」
万丈も言う。
「早速ね。攻撃目標は」
「インスペクター軍でございますな」
「その通りだよギャリソン」
ギャリソンの言葉にも頷いてみせる。
「ダイターンのワックスがけを頼むよ」
「畏まりましてございます」
「よし、それではだ」
ダイテツがここで言う。
「全軍出撃、オペレーション=プランタジネット発動だ」
「了解!」
こうしてインスペクターへの作戦オペレーション=プランタジネットが発動された。ロンド=ベルはアレクサンドリアを発ちそこから中央アフリカに向かう。この時その中央アフリカの基地ではインスペクター四天王達が作戦会議を開いていたのであった。
「来たぜ、連中」
「うむ」
ヴィガジがメキボスの言葉に頷いていた。作戦会議といっても広い会議室で紅茶を飲みながらくつろいだ雰囲気である。見れば地球の紅茶である。
「全軍でな。どうするんだい?」
「当然迎え撃つ」
ヴィガジの考えはもう決まっていた。
「戦力も充分だしな」
「充分かね」
メキボスは今のヴィガジの言葉には少し懐疑的な雰囲気を見せた。
「俺はそうは思えねえけれどな」
「不安だというのか?」
「来るのはあのロンド=ベルだぜ」
彼が言うのはこのことであった。
「そうそう簡単にな。勝てる相手じゃねえぜ」
「この戦力で無理だというのか」
「今までだって負けが続いているよな」
今度はこのことを言うのであった。
「それもかなりな」
「・・・・・・確かにそれはそうだが」
「だからだ。油断は大敵だぜ」
「では何か考えがあるのか?」
「ああ、一応はな」
ここで紅茶を飲むメキボスであった。
「ミサイル砲座を増やしておく」
「それか」
「少なくともないよりはましさ」
今度は素っ気無く述べたのであった。
「用心にな。どうだ?」
「わかった」
メキボスの言葉に頷くヴィガジであった。
「ではそうしよう。まずはミサイル砲座だな」
「ああ、それだ」
「まずはあたし達が出るよ」
今度はアギーハが名乗り出て来た。隣にはシカログもいる。
「それでいいね」
「前線で食い止めるってわけか」
「駄目かい?」
「いや」
アギーハの言葉を退けないメキボスであった。
「是非頼む」
「相変わらず頭が柔らかいね」
「それが俺の長所さ」
笑って言うメキボスだった。
「それじゃあそれでな」
「ああ、行くよ」
「さてとだ」
ここでメキボスはまた言うのだった。
「ヴィガジ、俺達だが」
「うむ」
「この基地中枢の護りを固めるぞ」
「わかった。それではな」
「二人共これは用心だが」
メキボスは今度はアギーハとシカログに声をかけた。
「今度は何だい?」
「気を悪くするなよ。負けた時だ」
「随分言いにくいことをあっさりと言うね」
「だから用心さ。いいか」
「ああ」
アギーハが応えていた。
「負けた時は迷わず後ろに下がれ、いいな」
「この基地中枢までだね」
「そういうことだ。あくまで前線で迎え撃つんだな」
「そのつもりだけれどね」
「だったらだ。余計にだ」
「一度負けても次を用意しておく」
アギーハも彼の考えがわかった。
「成程ね、そういうことかい」
「わかったな。じゃあそれで行くぞ」
「ああ、了解」
「よし」
「行くよ、ダーリン」
「・・・・・・・・・」
シカログは相変わらず一言も話さない。メキボスはそんな彼を見て言う。
「喋られないな、相変わらず」
「・・・・・・・・・」
「いい加減慣れたが。なあアギーハ」
「何だい?」
「御前さん本当にシカログの考えがわかるのか?」
少し真剣な顔になってアギーハに問うた。
「そこんところはどうなんだ?」
「俺も不思議に思っていたが」
ヴィガジも怪訝な顔になっている。
「話をしているところを見たことがないからな。流石にこれは」
「わかるよ」
しかしアギーハは笑って答えるのだった。
「ダーリンのことは何でもね」
「本当かね」
「疑問だな」
メキボスもヴィガジも相変わらず言葉に疑問符を付けている。
「少なくとも俺にはわからない」
「俺もだ」
「とにかく。出撃するよ」
アギーハはわからないままの二人に対して少しうんざりとした調子で述べた。
「もうすぐ連中も来るんだしね」
「ああ、それはな」
「頼む」
このことは決まっていた。二人にも異存はなかった。
「じゃあ俺はヴィガジと一緒にな」
「ここの護りを整えておく」
ヴィガジも言う。
「今のうちにだ。頼むぞ」
「ああ、わかってるさ。行こうダーリン」
「・・・・・・・・・」
相変わらず一言も話さないシカログであった。しかし戦いに向けて彼も出撃するのであった。これだけは確実にわかることであった。
アレクサンドリアから向かうロンド=ベル。その前に多くのレーダー反応を確認した。
「敵です!」
マヤが報告する。
「我が軍の進路上に集結しています。かなりの数です」
「ああ、やっぱり」
シゲルがそれを聞いて納得したような顔を見せていた。
「来るんだ」
「わかっていたらやることはわかってるわね」
「ええ」
マヤは今度はミサトの言葉に頷いた。
「迎撃ですね」
「そういうこと。見たところ戦力は相変わらずね」
「はい。彼等のマシンです」
見ればインスペクターのマシンが前方に展開していた。
「ではここは」
「正面突破よ」
ミサトの作戦は単純明快なものであった。
「ここはそれしかないわね」
「はい。それでは」
「全軍に告げます」
ミサトが言う。
「このまま正面にいる敵に攻撃を仕掛けます」
「わかりました。それでは」
「それにしてもねえ」
ここでミサトは少し首を捻って苦笑いになった。
「マヤちゃん達も頑張ってるけれど」
「何かありますか?」
「人が増えたしね」
彼女はまずこのことを言った。
「オペレーターとかも。もっと欲しいわね」
「オペレーターもですか」
「そう、二人か三人」
こう言うのであった。
「欲しいんだけれど。いるかしら」
「そうですね。連邦軍はもう出してくれるメンバーギリギリですね」
「遊撃隊出してくれたしね」
ハガネやクロガネだけでもかなりのものであるのだ。
「だからこれ以上はね。やっぱり」
「他の組織も」
「ううん、ネルフはどうかしら」
「私達ですか」
「誰かいるかしら」
こうマヤに問うのであった。
「オペレーター。誰か」
「そんなのは引っ張って来るものよ」
ここでリツコが話に入って来た。
「リツコ」
「誰でもね。まず引っ張って来るのよ」
「誰でもいいっていうの?」
「素質のある子はもう見つけているわ」
意外と目の早いリツコであった。
「彼等に声をかけておくわ」
「誰なの?」
リツコに対して問う。
「それって」
「それもすぐにわかるわ」
楽しげに笑って秘密とするのだった。
「すぐにね」
「誰かしら」
「とにかく。声はかけておくから」
既に話を動かしているリツコであった。
「楽しみにしておいて。いいわね」
「よくわからないけれどわかったわ」
実にミサトらしい言葉であった。
「それじゃあ。頭を切り替えて」
「インスペクターね」
「ええ。ただ」
ここであらためてインスペクターの軍勢を見る。すると。
「向こうのマシンだけでなく色々入ってるわね」
「ありゃ何だ?」
マサキが声をあげる。
「連邦軍のモビルスーツもあるし他のマシンだって一杯あるな」
「ティターンズのもあるぜ」
ジェリドが言った。
「連邦軍つったら連邦軍だけれどな、一応」
「あとバルマーのものもです」
ラーダが言う。
「それもかなりの数が」
「ごちゃ混ぜってやつね」
リューネはこう表現した。
「よくもまあこれだけの数を集めたものだよ」
「オーダーミックスか」
ヤンロンはその軍を見て述べた。
「様々な兵種を揃えたというわけだな」
「そうなってしまったんだがね」
アギーハが彼等に応えた。シルベルヴァントに乗っている。
「結果的にね」
「貴女は」
「利用できるものは何だって利用する」
テュッティに応えるようにしてさらに述べてきた。
「それがあたし達のモットーだからね」
「アギーハ!手前かよ!」
「おや、あたしの名前は覚えていたんだね」
「忘れかけてたぜ!」
マサキは見事に言い返した。
「最近会ってなかったからな!」
「会いたくもなかったね」
彼女もまた見事な本音であった。
「正直なところね」
「だが会ったな。こうなったらよ!」
「こっちだってねえ!」
アギーハもまた話に乗ってきた。
「あんた達にやられっぱなしじゃ格好がつかないんだよ!」
「そういえばインスペクターに負けた記憶ないわね」
「師匠、それ言うたら」
「あきまへんで」
「ああした御人にはホンマのことが一番きついんやさかい」
「それもそうね」
使い魔達の言葉で納得するミオであった。
「御免なさい、おばさん」
「どうやら死にたいらしいねえ」
今のミオの言葉がアギーハにとって最大の急所であった。髪を立たせてワナワナと震えている。
「全員死にな、いい度胸だよ!」
「本当のこと言われたからって怒るんじゃねえ!」
カチーナもまた言わなくていいことを言う。
「おばさんなのは事実だろうが!」
「そうだぜ、おばさん!」
今度はディアッカが。
「怒ったらかえって皺が増えるの知らねえのかよ!」
「殺す!」
遂に怒りが頂点に達した。
「あたしの一番気にしてることを言ってくれたね!枢密院に報告して抹殺対象にしてやろうかい!」
「枢密院!?」
イルムが今の言葉に反応する。
「それは一体何だ?」
「まさかとは思うが」
リンも考えだしたところでアギーハはまた言うのだった。
「最も枢密院はこの星系を隔離しようとしていたっけね」
「隔離だと」
リンの目がさらに光った。
「どういうことだ!?隔離?」
「若しかしてだ」
レーツェルが予想を立ててきた。
「彼等の目的は地球圏の制圧ではないのか?」
「そういえばだ」
ギリアムも言う。
「四天王の一人ヴィガジだ」
「うむ」
「彼は我々が銀河の秩序を乱すというようなことを言っていなかったか」
「そういえばな」
「確かに」
ロンド=ベルの面々で頭が動く連中は彼の言葉に頷いた。
「どうやらそれと関係があるようだが」
「まあそれはあんた達は知らなくていいことさ」
「おいおい、秘密主義かよ」
「それはねえだろ」
アギーハの今の言葉にすぐ言い返す面々であった。
「そこまで言ってよ」
「言わないってのはねえだろ」
「謎は謎のままが面白いんじゃないか」
「まあそれはそうとだよ」
アギーハは今は余裕のある態度でマサキに目を向けてきた。
「そこの銀色の鳥みたいなの」
「ああ、俺か」
「そうだよ、確かサイバスターとかいったね」
「まだ覚えていなかったのかよ」
「ロンド=ベルは覚えていなきゃいけないのがやたら多くて大変なんだよ」
実に手前勝手な言い分であった。
「形だけでも覚えているだけ有り難いと思いな」
「凄い勝手だニャ」
「おいらもそう思うニャ」
クロとシロもそこを突っ込む。
「大体よ、おばさんよお」
「こら、そこの白猫!」
アギーハはすぐにシロに対して言い返す。
「折角その鳥みたいなのが目障りだから念入りにしてやるって言おうとしていたのに!」
「だったらせめて名前だけ覚えているニャ」
「全くニャ」
クロとシロは相変わらず冷めていた。その声でさらに言うのだった。
「それでニャ」
「おばさん、まだ怒ってるニャ?」
「あたしはまだ二十代だよ!」
「あら、意外と若いのね」
ケーラがそれを聞いて言った。
「あたしもっと歳いってるかって思ってたよ」
「しかし。ケーラが言うとだ」
アムロはケーラが話に加わってきて微妙な顔になった。
「どっちが言っているのかわからないんだが」
「まあいいじゃないですか」
しかしケーラは明るいものであった。
「それは言うとややこしくなりますし」
「それもそうだな。俺も出し」
「そういうことです。それでさ」
「何だい?」
似たような声のケーラに返すアギーハであった。
「二十代だよね」
「そうだよ」
「四捨五入したらどうなるんだい?」
ケーラが問うのはそこであった。
「あんた、ひょっとして」
「五月蝿いね!」
アギーハの逆鱗にさらに触れる言葉であった。
「あんたはどうなんだよ!」
「私はあんたと同じだったかな」
「じゃあ一緒じゃないかい」
「まあそうだね」
「ふん、あんたとは敵同士だけれど上手くやれそうだね」
「っていうか声一緒じゃないのか」
「光、だからそれは言わないの」
光の身も蓋もない突っ込みを海が注意する。
「さっきアムロ中佐も仰ってたでしょ」
「そうか」
「私達は宜しいですけれど」
風に似ている声の人間はいないのであった。
「あの方はそうではないですし」
「複雑だな。そういえば何かアスランさんと敵の四天王の」
「メキボスさんですね」
「あの人達の声を聞くと蝿を思い出すんだ。何故なんだ」
「俺は蝿じゃない!」
そのアスランが力説する。
「何でずっとそう言われるんだ」
「まあよくあることだ」
レイがそんなアスランに声をかける。
「俺も同じだしな。クライマックスだ」
「ああ、俺もわかるぜ」
「私もだ」
「俺も」
何故か甲児とクワトロ、おまけにタケルまで話に加わってきた。
「修行修行でよ」
「随分とそれが楽しい響くだが」
「悪い気はしないものだ」
「何か話がどんどんカオスになってない?」
海はこの三人が出て来たところで述べた。
「このままいったら余計に」
「あんた達はまだ十四だったわよね」
「はい、そうですけれど」
敵のアギーハの問いに答える風であった。
「それが何か」
「若い奴は許さないよ!」
完全に話が無茶苦茶になっていた。
「誰一人としてね!ロンド=ベルはここで壊滅だよ!」
「だからそれが作戦じゃねえのか?」
「なあ」
甲児とボスが言い合う。
「ずっと歳がどうとか言ってるけれどよ」
「速くはじめるだわさ」
「言わなくてもやってやるよ!」
殆ど売り言葉に買い言葉であった。
「容赦しないよ!シカログ!」
「・・・・・・・・・」
当然ながらシカログも戦場にいたのであった。
「やるよ!正面から迎撃するからね!」
「・・・・・・・・・」
「本当に一言も話さねえな、あいつは」
フォッカーが無口なシカログを見て言う。
「何なんだ一体」
「わからないですけれどかなりのパワーを持っていることは事実です」
それは把握している輝であった。
「ですから用心して」
「そうだな。とにかく正面突破だ」
「はい」
「全軍このまま突っ切ります」
ミサトもまた指示を出す。
「それで宜しいですね」
「わかりました。それでは」
「全軍進撃開始!」
こうしてロンド=ベルは前進をはじめた。それを見てアギーハも指示を出すのであった。
「よし、こっちも行くよ!」
「・・・・・・・・・」
シカログも前に出る。両軍互いに前に出て戦いに入ろうとする。しかしここでロンド=ベルは何故かその前進速度を緩めるのであった。
「!?何だいあいつ等」
アギーハはロンド=ベルの動きが鈍ったのを見て声をあげた。
「動きが遅くなった。これは一体」
だが彼等はそのまま進む。そうして先に進むがロンド=ベルの動きはさらに鈍くなる。インスペクター軍が出た時ここでロンド=ベルが一斉にまた激しく動きだした。
「よし、今だ!」
「行くぞ!」
「!?ここで動いた!?」
ロンド=ベルの動きが活発化した。そしてここでアギーハは気付いたのだった。
「くっ、やってくれたね!」
「そうさ、かかったな!」
「これがあたし達の戦術だよ!」
ユウキとカーラが叫ぶ。見ればインスペクター軍の射程ギリギリに彼等はいた。そしてその動きが止まった瞬間に一斉に動きだしたのだ。
「名付けて後打ちだ!」
「ただ単に正面突破するだけじゃないってことよ!」
リョウトとリオもいた。彼等はまずは突き進みそこからインスペクター軍に攻撃を仕掛ける。先制攻撃を受けた形の彼等はここで大きなダメージを受けることになった。
「これなら!」
「いっけえええええーーーーーーー!」
勇とヒメがまず攻撃を敵の小隊に浴びせる。それにより三機いきなり吹き飛ばされた。
「ちっ、いきなり三機かよ」
「三機だけで済まないぜ!」
「まだこれからだ!」
ジョナサンとクインシィが二人に続く。彼等もまた攻撃を浴びせインスペクターの軍勢を次々と倒していく。これによりロンド=ベルは戦いの主導権を完全に握った。
「ちっ、そう来たのかい!」
「これならどうだ!」
エイジが彼女に問う。
「例え数劣ろうとも」
「それは戦術次第です」
ルリが冷静に述べた。
「勢いをそのまま。攻撃をさらに強めます」
「了解!」
ルリの言葉にハーリーが応える。ナデシコもまた前に出てグラビティ=ブラストを放ち前にいる敵をまとめて屠っていくのであった。
勢いは完全にロンド=ベルだった。アギーハはそれを見て歯軋りする。しかし戦局は容易には覆せない状況だった。これを見て彼女は決断を下した。
「こうなっちゃ仕方ないね」
「何をするつもりだ?」
「指揮官率先ってやつさ」
コウに対して答える。
「ここはね。つまりだよ」
「・・・・・・・・・」
「シカログ、行くよ!」
隣にいたシカログに声をかけて突っ込みだした。
「こうなったらね!あたし達でやってやるさ!」
「何っ!?二機で来た!」
「これはまずいぞ!」
皆それを見て驚きを隠せなかった。二人はそのまま突っ込んでくる。
「誰か止めろ!」
「このままあの二機に突っ込まれれば!」
「じゃあこんな時こそよお!」
「僕達の出番だね!」
「・・・・・・死ね」
オルガ、クロト、シャニが来た。二人の前に立ちはだかる。
「やいやい婆とハゲ!」
「覚悟するんだね!」
「容赦はしない」
「誰が婆だよ!」
早速オルガにムキになって言い返すアギーハであった。
「あたしはまだ二十代って言っただろ!」
「そんなこと関係ねえ!」
「そうの通り!敵は全員婆!」
「そういうこと」
「こうなったらあんた達全員皆殺しだよ!」
早速三人に向かうアギーハだった。
「シカログ、あんたはそのまま敵の戦艦を頼むよ!」
「・・・・・・・・・」
無言で頷くシカログであった。
「ダメージを与えてくれればそれでいいんだ」
アギーハもまた戦術を執っていた。
「そうすれば奴等の速度が落ちる。あとはそれに付け込んでね」
「アキトさん」
それを見たルリがアキトに声をかける。
「すぐに艦隊防衛に回って下さい」
「!?今すぐか」
「はい」
なお今彼女はアギーハの話を聞いていなかった。直感である。
「あのハンマーを持ったマシンが来ますから」
「それでか」
「是非御願いします」
「ああ、わかったよ」
「そしてです」
ルリはさらに指示を出す。
「ゴーショーグンも御願いします」
「おや、御指名かい?」
「そうです」
真吾の問いに冷静に返した。
「どうかここは艦隊防衛に回って下さい」
「了解、それじゃあすぐに」
「そっちに行くわ」
「ヒーローの帰還ってやつだな」
レミーとキリーも相変わらずの調子で応える。
「はい、宜しく御願いします」
「俺達はそのシカログっていうのの相手だな」
真吾はすぐにルリの考えを察してきた。
「艦隊を狙っているそいつのな」
「はい、そうです」
ルリもそれを認めて頷く。
「ですから宜しく御願いします」
「確かにね。そいつのハンマーは」
「受けたらやばいなんてもんじゃねえな」
レミーとキリーもそれを見抜いていたのだった。
「じゃあすぐにそっちに戻るから」
「待っていなよ」
「アキトさんとゴーショーグンであのドルーキンを防ぎます」
これがルリの作戦であった。
「そして今のうちに艦隊は」
「了解しています」
ユリカがすぐに答える。
「このまま正面突破ですね」
「そうです、それを続けて下さい」
そういうことであった。作戦を続行させる為にアキトとゴーショーグンを呼んだのである。
「シルベルヴァントはあの御三方が防がれていますし」
「あの子達なら大丈夫ですね」
「そうね」
メグミの言葉にハルカが頷く。
「一機でも強いですが三機揃ってですし」
「まあそうそう簡単にはやられないわね」
「おらっ、死ね!」
「さっさと抹殺してやるよ!」
「くたばれ」
その彼女達の前でオルガ達はアギーハを取り囲んで集中攻撃を浴びせている。しかし普通のマシンならばまず撃墜されているような状況でもアギーハは掠り傷一つついてはいなかった。だが彼女ですらもその攻撃をかわすだけで必死といった有様であった。
「ちっ、何て無茶苦茶な攻撃なんだよ!」
アギーハは三人の攻撃をかわしながら舌打ちしていた。
「激しいだけじゃなくてどう来るかわからないね。パターンがないっていうのかい」
「パターン!?何だそりゃ」
オルガが今のアギーハの言葉に突っ込みを入れる。
「知らねえな、そんな言葉よ」
「何だって!?」
「俺の辞書にそんな下らねえ言葉はねえ!」
「そういうことさ!」
クロトも出鱈目にハンマーを振り回してきた。
「パターン通りにやっていいのはゲームだけだからね!」
「ちいっ!」
すんでのところで彼のミョッルニルをかわした。
「あれだけ重そうなのをよくもあんなに軽々と」
「くっ、逃げたね!」
「じゃあ俺だ」
シャニはいきなりフレスベルグを放つ。オルガとクロトを無視して。
「うわっ!」
「何するんだよ!」
「かわしたか」
シャニは二人の言葉を無視してアギーハが自分の攻撃をかわしたのを見ていた。
「うざいな、御前」
「うざいじゃねえよ!」
「僕達まで巻き込むつもりかよ!」
二人は怒ってシャニに抗議する。
「当たったら死ぬだろうが!」
「どういうつもりなんだよ!」
「かわしたからいいだろう」
しかしシャニは謝らない。
「それよりあの女が生きていた」
「ふん、確かにな」
「生きているね」
「今度は仲間巻き添えにするってかい」
今回も全く予想できない動きであったのだ。アギーハにとって。
「何処まで出鱈目なんだよ、この連中」
「二人はよけると思っていた」
シャニもそれはわかっていたのだった。
「御前は死ぬと思っていた」
「あたしだって死ぬつもりはないさ!」
アギーハも生きなければならないのである。彼女の事情で。
「さっさとどきな!死にたくなかったらね!」
「俺は不死身なんだよ!」
「そんなこともわからないのかよ!」
「御前婆」
「そこは馬鹿じゃないのかい!」
婆と言ったシャニにムキになる。
「こいつ等、何処まで」
「その不死身のパワー見せてやるぜ!」
「必殺!ミョッルニル!」
「やっぱり接近戦で死ね」
また三人が攻撃を浴びせる。それは壮絶なものだったがやはりアギーハはかわしていく。それでも彼女を止めていたのであった。
そしてシカログもまた。アキト及びゴーショーグンと闘っていたのだった。機動力のブラックサレナと攻撃力のゴーショーグンを前に互角に闘っていた。
「やるねえ、どうも」
「そうね。かなりね」
「まあ予想はしていたけれどね」
真吾達三人はドルーキンがゴースティックを受け止めたのを見て言っていた。
「それでも今のを受け止めるのは」
「いやいやこれって」
「流石は四天王ってわけかな」
「俺が行きます」
アキトが三人に声をかけてきた。
「横から」
「いや、それはどうかな」
だが真吾はそれには懐疑的な言葉を返したのだった。
「駄目ですか?」
「普通の敵ならまずそれでいけるわ」
レミーもそれはわかっていたのだった。
「まず間違いなくね」
「ところがこいつは只の相手じゃない」
キリーはそこを指摘する。
「だからだ。ここはだ」
「どうしましょうか」
「ちょっと協力してくれるかな」
真吾が彼に言ってきた。
「ここはちょっとね」
「協力ですか」
「そう。まず俺達がゴーフラッシャーを放つ」
「はい」
「アキト君はそれに合わせてブラックサレナで全力で向かってくれ」
「合わせてですね」
「そう、これで行こう」
こうアキトに提案するのであった。
「すぐにね。それじゃあ早速ね」
「わかりました。それじゃあ」
すぐにブラックサレナをゴーショーグンの後ろにやった。そのうえで。
「よし!」
「行きます!」
まずはゴーショーグンが動いた。そして。
「ゴーフラッシャーーーーーーーーッ!」
「今だ!」
ゴーフラッシャーが放たれると共にブラックサレナが動いた。打ち合わせ通りだった。
ゴーフラッシャーはシカログを撃つ。そして今度は。
アキトが突撃しつつ総攻撃を浴びせた。ブラックサレナの今あるだけの攻撃をここぞとばかりに浴びせたのだった。これでドルーキンが動きを止めたのだった。
「やったか!?」
「いえ、どうもまだみたいよ」
レミーがキリーに応える。
「というかまだまだ元気みたいよ」
「全く。しぶといねえ」
「じゃあまただな」
真吾がさらに攻撃を浴びせに入る。
「またやるか。今度はやり方を少し変えてね」
「はい、それじゃあ」
アキトも攻撃に入ろうとする。しかしその時だった。
「・・・・・・・・・」
「どうしたのシカログ」
「!?待てあんた」
真吾が今のアギーハを見て彼女に問う。
「あんたひょっとしてそこの無口な御仁の言葉がわかるのか」
「ああ、そうだよ」
すぐに真吾に答えるアギーハであった。
「そんなの当たり前じゃないかい」
「当たり前も何もさ」
キリーがそのアギーハに言う。
「喋らないのにどうしてわかるんだよ」
「ひょっとしてテレパシーってやつ?」
レミーも容赦がない。
「強い強いって思ってたら超能力あったんだね」
「残念だけれどないよ」
しかしアギーハはそれは否定した。
「そんなのはね」
「あら、ないんだ」
「じゃあ何でわかるんだ?」
「愛の力だよ」
こうレミーとキリーに力説する。
「だからわかるんだよ、こういうのはね」
「愛の力ねえ」
「凄いことは凄いけれど」
「やっぱり超能力じみてるな」
「とにかくだよ。・・・・・・うん」
本当にシカログのことを理解するアギーハであった。
「撤退するっていうの?」
「・・・・・・・・・」
「そう、わかったよ」
やはりわかるアギーハであった。
「ロンド=ベル、また会うよ」
「撤退かよ。何て話してるかわからなかったけれどな」
「そうね。少なくとも一方はね」
「全然わからなかったわ」
ビーチャとルー、エルが言う。
「それでも撤退はするみたいだね」
「とりあえず終わりだね」
モンドとイーノはこのことに少し安心していた。
「じゃあこのまま前進?」
「戦いは続くんだね」
プルとプルツーはこう述べた。
「そういうことだな、おばさんよお」
「まだ言うのかいこのクソガキ!」
ジュドーの言葉に本気で切れていた。
「どいつもこいつも!地球人ってのは!」
「・・・・・・・・・」
「わかってるよ」
それでもシカログの言葉には頷くのだった。
「ここはね。大人しくね」
「・・・・・・・・・」
「全軍撤退するよ」
アギーハが指示を出した。
「基地の中枢までね。いいね」
こうしてインスペクターは一旦撤退した。しかし戦いはまだこれからであった。
「ではこれより進撃再開です」
「はい」
ユリカの言葉にルリが頷く。
「目標敵基地中枢」
「わかりました」
「今よりそちらに向かいます」
「さてと、これから本番ってやつだな」
マサキが楽しそうに言う。
「さぞかし派手なお迎えが待ってるぜ」
「それはいいけれどさ、マサキ」
「何だよ」
セニアの言葉に応える。
「エネルギーの補給は大丈夫よね」
「それかよ」
「それ忘れたら戦えないわよ、わかってるわよね」
「ああ、わかってるさ」
「それじゃあまずはそれぞれ艦内に戻ってね」
こうしてロンド=ベルはマシンを一旦艦内に戻して簡単な整備及び補給を行いながら前進を続けた。敵の基地中枢まで彼らを阻むものはもうなかった。
第七十五話完
2008・8・26
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