スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第七十四話 招かれざる異邦人 後編
第七十四話 招かれざる異邦人 後編
アレクサンドリアに戻るロンド=ベル。戦闘態勢はそのままであった。
「あとどれ位だ」
「一時間です」
テツヤの問いにエイタが答える。
「それだけあれば」
「一時間か」
「間に合えばいいがな」
ダイテツはそれを聞いて艦橋で難しい顔をしていた。
「無事な」
「間に合わせます」
しかしここでテツヤは言う。
「何があっても。アインストの好きにはさせません」
「そうだ。アレクサンドリアはやらぬ」
ダイテツの言葉も確固たるものであった。
「何があろうともな」
「はい。市民の命も」
「その通りだ。我々が戦う理由は」
「武器を持たない者達を守る為」
「それがわかっていればいい。それでだ」
「はい」
話が続けられる。
「全速力だったな、今は」
「はい、そうです」
この問いにはエイタが答えた。
「全艦最大速度です」
「フルブーストをかけるか」
「フルブーストをですか」
「そうだ。多少エンジンに支障が出ても構わん」
かなり強気であった。
「まずはアレクサンドリアに辿り着くことを考えよ。いいな」
「はっ、それでは」
「艦長、その様に」
「頼むぞ。ことは一刻を争う」
何時になく険しいダイテツの声と顔であった。
「遅れればそれだけ何があるかわからん。だからこそ」
「了解です」
「それでは」
こうしてクロガネがフルブーストに入った。続いて他の艦艇も。彼等は凄まじい速さでアレクサンドリアを目指していた。そしてその結果。四十五分でアレクサンドリアに到着したのであった。
「よし、来たぜ!」
「間に合ったか!?」
まずは甲児と鉄也が出撃した。
「それならいいんだけれどよ」
「敵は一体」
「あそこだ」
ここで大介が二人に告げる。
「彼等はあそこにいる」
「そこは第九区画」
「そこかよ!」
「気をつけるんだ二人共」
大介はチームメイトである二人を注意した。
「あれはアインストだ」
「ああ、確かにな」
甲児は大介の言葉を聞いて頷く。みればここにもアインストが展開しているのだった。しかもかなりの数がここにいたのである。
「あれだけの数かよ」
「アインストめ、一体何を考えている」
鉄也はアインストそのものに対して疑念を向けていた。
「あえてアインストを作るとは」
「性能だけじゃねえな」
これは甲児も察していた。
「やっぱりよ。キョウスケ絡みなんだな」
「そうだな。間違いない」
大介が今の甲児の言葉にこくりと頷く。
「先の戦いと同じだ。だから」
「遠距離から倒すか」
「そうだな、しかし甲児君」
ここで鉄也の目が光った。
「果たしてこれだけだと思うか」
「つうと援軍があるっていうのか?」
「そうだ、可能性は高いだろう」
これは今までの多くの敵のパターンから想定しての言葉であった。
「だとすれば」
「あの連中にばかり構ってるわけにはいかねえってことだな」
「そうだ。次に備えておこう」
「その通りだな」
鉄也の今の言葉を受けたのは大介だった。
「鉄也君の言う通りだ。だからここは」
「わかってるわ、兄さん」
「周囲にも警戒ね」
「頼む」
マリアとひかるは彼の意を汲んでいた。
「甲児君、周りは任せて」
「サポートならね」
さやかもジュンもそれぞれのパートナーに言う。
「何時何が出て来ても」
「そちらには対処するから」
「おいボス」
甲児は二人の言葉を受けてボスにも声をかけたのだった。
「御前も頼むぜ」
「わかってるだわさ」
ボスもまた笑顔で甲児に応える。
「何時だってやってやるわよん」
「けれどボス」
「このマリンスペイザーは」
ヌケとムチャが突っ込みを入れる。今三人はマリンスペイザーに乗っているのである。
「ボロットと違って」
「動きが鈍いでやんすよ」
「そんなことは関係ないだわさ」
しかしボスは強気であった。
「このボス様が操るマシンはどれでも最強だわさよ」
「大体よ、ボス」
甲児がボスに突っ込みを入れる。
「何だわさ?」
「俺は警戒を頼んでるんだぜ」
マジンガーチームは甲児と鉄也、大介の三人がメインであり後のメンバーはサポートであるのだ。当然ボスもその中に入っているのだ。
「それで何で戦うんだ?」
「違うだわさ」
「違うに決まってんだろ」
呆れたようにまた突っ込みを入れる。
「どうしてそうなるんだよ」
「むむっ」
「だから。周囲への警戒を頼むぜ」
「一応わかっただわさ」
「おい、一応かよ」
「まあまあ甲児君」
ここで大介が甲児を宥める。
「そうきつく言わないことだ。ここはアレクサンドリアだよ」
「それが何かあんのか、大介さん」
「海があるじゃないか」
アレクサンドリアは港だ。今も戦場のすぐ側には海がある。
「そこの敵を探し出してくれることを期待するよ」
「まあ大介さんが言うんならよ」
「大介さんには随分低姿勢だわさ」
「全くだ」
「そうでやんすね」
「じゃあおめえ等もっとまともにやれってんだ」
甲児の言葉ももっともだった。
「ったくよお。ここでボスボロットはねえだろうがよ」
「ボロットはいいマシンでやんすよ」
「壊れた時安いし」
しかしまだボスの子分の二人は言うのであった。
「宇宙でも使えるようになったし」
「補給装置もあるでやんす」
「冗談みてえなマシンだな」
これは前から誰もが思っていることであった。
「次から次に何でも付けられるんだからな」
「それがボロットのいいところだわさ」
ボスは少し得意げになっていた。
「何でも付けられて安いのが」
「まあ元々ゴミから造られたしな」
考えてみれば恐ろしいマシンである。
「そういうのもありか」
「おい、ゴミから造られたのかよ」
カズマがそれを聞いて突っ込みを入れる。
「何か変わったマシンだって思ってたらよ」
「あれっ、言わなかったか?」
「初耳だよ」
「そうですよ」
ミヒロも言う。
「本当なんですか!?ゴミからって」
「だから前に言ってなかったか?」
甲児はまだこう言う。
「ゴミから出来たからボロットだってな」
「信じられねえ」
カズマは唖然とさえしていた。
「そんなのが動くのかよ」
「色々なマシンがあるけれど」
「まあとにかくだ」
甲児がここで話を切ってきた。
「敵がそっちに来てるぜ」
「むっ!?」
「四機よお兄ちゃん」
ミヒロが報告する。
「北東から来ているわ」
「確かにな」
「カズマさん」
シホミから通信が入った。
「今からそちらにハガネが行きます」
「言っておくが救援ではない」
当然ながらリーもここにいた。
「戦術の為だ。そこを守るにはヴァルトークでは難しい」
「だからクロガネもかよ」
「そうだ」
やはり冷徹な声で答える。
「わかったな。では今からそちらにハガネが向かう」
「わかったぜ。じゃあ頼むぜ」
「何か面白くなさそうね」
今度はアカネがカズマに突っ込みを入れる。
「その言葉」
「っていうかよ、アインストだぜ」
彼がそう感じる理由はそこであった。
「キョウスケさんの相手するみてえでよ」
「中に乗っている人は違いますよ」
ホリスは結構割り切っていた。
「そんなこと言ったらここにはティターンズやアクシズのマシンもありましたし」
「それもそうか」
「そういうことです。キョウスケさんが乗っていなければノープロブレムですよ」
「じゃあ遠慮なくか」
「そうだ、遠慮することはない!」
ブレスフィールドもここで言う。
「マシンが同じなだけだ。気にするな」
「よし、それならな!」
「お兄ちゃん、来たわ!」
「よし、やってやる!」
「援護射撃を浴びせろ」
リーもまたカズマの後ろから攻撃を指示する。
「いいな」
「わかりました」
シホミがそれに応えて攻撃を繰り出す。ヴァルホークとハガネの連携攻撃で四機のアインストが瞬く間に撃墜される。それを合図としてロンド=ベルの攻撃がはじまった。
「幾らなあっ!」
ジェリドのジ=オがその機動力を駆使して地上を駆ける。
「能力が高くても中に入るパイロットが違えば敵じゃねえんだよ!」
「その通りだっ!」
ヤザンのハンブラビは変形し空を駆っていた。
「手前等なんか敵じゃねえ!俺達を倒したきゃキョウスケまで連れて来い!」
彼はウミヘビを放ちそれでアインスト達を潰す。ジェリドはビームライフルで次々と撃ち抜く。瞬く間にアインストは全て撃墜されてしまった。しかし。
「第四エリアです!」
ユンが叫ぶ。
「またアインストです!」
「またなのですね」
「はい」
レフィーナに対しても答える。
「残念ですがまたです」
「しかも数は倍ですな」
ショーンの言葉は冷静であった。
「これはまたどうも」
「数で押す気ですね」
レフィーナはその中でも戦局を冷静に見ていた。
「やはり。いつも通り」
「大したことはない」
イライジャはレフィーナのその言葉を聞いても動じてはいなかった。
「いつものことだ」
「その通りだ」
マイヨも同じ意見であった。
「どうということはないな」
「それでは皆さん」
今度はレフィーナが指示を出すのであった。
「ここは」
「わかってますよ!」
「このまま迎撃ですね」
「はい、そうです」
アラドとゼオラの言葉に応えた。
「それではすぐに」
「よっし、じゃあゼオラ!」
「ええ、アラド!」
二人は息を合わせてビルトビルガーとビルトファルケンをそれぞれ駆った。そして早速それぞれ一機ずつ撃墜するのであった。
「こうやってまた!」
「一機ずつ!」
「総員再度攻撃開始です」
レフィーナの指示はこうであった。
「第四エリアに戦力を集中させて下さい」
「了解!」
「受けよ!」
早速マイヨが跳び目の前の敵を横薙ぎに両断した。その前で派手な爆発が起こる。
「幾ら来ようとも。私達は負けはしない!」
「よし、ブンドル!」
「わし等もだ!」
カットナルとケルナグールもまた戦場にいた。
「戦艦を前に出せ!」
「アインスト共を踏み潰せ!」
「ふむ、同志に似せたイミテーションだな」
ブンドルはここでも優雅さを失わない。
「その紛い物を破壊し真の友を見る。これもまた」
例によって薔薇を掲げる。
「美しい・・・・・・」
「とまあいつもの調子だな」
「久し振りに聞いたけれどやっぱり相変わらずってやつだな」
「ブンちゃんもいつもの調子ねえ」
真吾とキリー、レミーのゴーショーグンもまた前に出て来ていた。ゴーショーグンはゴーフラッシャーを放ちアインストを纏めて倒していく。アルトアイゼンの残骸だけが出来上がっていく。
「ブンドル、もっと撃つぞ!」
「ミサイルを撃て!」
カットナルとケルナグールもまた乗艦を前にやって叫んでいる。
「撃って撃ってうちまくれ!」
「前にいる奴には体当たりだ!」
「二人共今の艦長は私なのだが」
ブンドルは勝手に動く二人に対して言うのだった。
「勝手に騒がないでもらいたい」
「むっ、そうだったか」
「忘れていたぞ」
本当に忘れていた二人だった。この艦の艦長は三人の持ち回りなのだ。今の艦長はブンドルというわけである。
「それは失礼した」
「ではわし等は大人しくな」
「全く。だがいい」
今は機嫌がいいせいか寛容なブンドルであった。
「このまま正面にミサイル攻撃だ」
彼の指示であった。
「正面から敵を倒していくぞ」
「うむ、それではな!」
「潰せ!」
「だから今の艦長は私だ」
少し憮然とした顔になってまた二人に突っ込みを入れるブンドルであった。
「勝手に騒いでもらっては困るのだが」
「おっと、済まぬ」
「それではな」
今のブンドルの言葉で少しは大人しくなる二人であった。だがその間にも戦闘は続く。やがてまた敵を全滅させたがまたしても敵が出て来たのであった。
「十二時方向です!」
ユンが報告をあげる。
「今度は普通のアインスト達です!」
「それでもかよ!」
カチーナは今のユンの言葉に声をあげる。
「しつこい位に出て来やがるな!」
「ったくよお!」
タスクもうんざりしたように言う。
「これじゃわんこアインストだぜ!」
「わんこ?」
今のタスクの言葉にシャインが反応する。
「犬ですの?」
「そっちのわんこじゃねえ!」
「わんこっていえばあれなんだよ」
わかっていないシャインにシンジが説明する。
「ほら、お蕎麦あるよね」
「日本のあの黒い麺類ですね」
「そう、それをね少しずつお椀に入れて食べるんだ」
まずはこう説明する。
「一杯食べたらまた一杯。どんどん入れていってね」
「そうやって食べるんですのね」
「そうだよ。まあ僕はあまり食べられないけれど」
「俺だったら百杯はいけるぜ」
タスクがここで豪語する。
「あれ、大好きなんだよな」
「そんなに美味しいんですの?」
「うん、お蕎麦が好きならね」
一応こうは前置きするシンジであった。
「美味しいよ。好きなだけ食べられるしね」
「そうですの。それでしたらこの戦いが終わってからにでも」
「それはまずいね」
アキトは今のシャインの言葉に少し暗い顔になった。
「ロンド=ベルでわんこそばなんかやったらもう」
「皆それこそ馬か鹿みたいに食べるからね」
アスカの毒舌は相変わらずであった。
「特に馬鹿な連中は」
「おい、アスカ!」
シンがアスカに言い返す。
「それは御前のことだろうが!」
「私が馬鹿って言いたいの!?」
「そうだ!」
また言わなくていいことを言う。
「御前の何処じゃ馬鹿じゃねえんだよ!このナチュラルボーン馬鹿!」
「よりによって大学を飛び級で出たあたしに!」
やはり喧嘩になった。
「覚悟しなさい!このタツノオトシゴ!」
「何で俺が魚なんだよ!」
「馬鹿だからよ!」
理由になっていない。
「死にたいんでしょ!答えは聞いてないわ!」
「そりゃ俺の台詞だ!」
何故かそうなっているのであった。
「俺の台詞取りやがって!許せねえ!」
「五月蝿いわね!そんなのどうだっていいでしょ!」
「釣ってやる!」
何故かこう叫ぶシンであった。
「俺の強さに泣かしてやる!」
「そりゃキャラが違うでしょうが!」
何故かわかるアスカであった。
「いい加減に自分の言葉位覚えなさいよ!」
「うるせえ!」
「・・・・・・まああの人達は置いておいてね」
自分の後ろで行われる恒例行事は苦笑いでスルーしてシャインに話すシンジであった。
「アキトさんってお蕎麦もいけますか?」
「俺はラーメンだけなんだけれど」
「そうなんですか」
「けれど作れないわけじゃないよ」
一応はこう答える。
「麺類だしね。研究したことはあるし」
「じゃあ後で御願いしますね」
「うん。さて、何千人分になるかなあ」
問題は量であった。
「一万人分も行かないと思うけれど」
「いえ、行くわ」
しかしレイは言う。
「皆大好きだから」
「やっぱり行くんだ」
「私も食べるわ」
レイも食べると宣言した。
「お蕎麦。好きだから」
「そうだったんだ」
「できればあの方と」
またあの男が脳裏に思い浮かぶレイであった。
「一緒に食べたいのだけれど」
「マスターアジアねえ」
シンジにはそれが誰なのかすぐにわかった。
「今どうしてるんだろうね」
「あまり考えん方がええで」
トウジが彼に突っ込みを入れる。
「考えたら出て来るお人やからな」
「何か妖怪みたいだね、それだと」
少なくとも普通の人間ではないのは間違いない。
「まあそうかもな。生きてるんやしな」
「死なないねえ、本当に」
そう簡単に死ぬようなマスターアジアではない。
「出て来てくれたら頼りになるんだけれど」
「願い下げよ」
シンと遣り合っていたアスカがここで突っ込みを入れる。
「あんな変態爺さんが出て来るのだけはお断りよ」
「じゃあBF団は?」
「あの連中もよ」
そうした手合いが嫌いなアスカであった。
「絶対に出て来て欲しくないわね」
「アスカって本当にあの人達好きじゃないんだね」
「常識が通用しない奴は大嫌いなのよ」
これがアスカの嗜好であった。
「特に。素手で使徒を倒すようなのはね。何よあれ」
「何よって僕に言われても」
シンジにわかる筈もなかった。
「あれが流派東方不敗なんじゃないから」
「説明になってないわよ」
そもそも説明にならない相手ではある。
「あんな変態爺さんにしろ奇人変人集団にしろ。何だったのよ」
「BF団については同感です」
さらにややこしいことにアズラエルまで話に入って来た。
「全く。あの暮れなずむ幽鬼ときたら」
「あいつか」
凱にはすぐにわかった。
「一人で工場を滅茶苦茶にしてくれましたからね、全く」
「そういうのが十人いたんですよね」
「その通りです」
シンジにも答えるアズラエルであった。
「それこそ。しかも首領というのがまた」
「ビッグファイア」
「聞きたくもない名前です」
とにかくBF団が嫌いなアズラエルであった。
「その下にいる三つの護衛兵団というのがこれまた」
「滅茶苦茶強かったんですよね、確か」
「正直彼等と国際エキスパートの戦いにロンド=ベルはあれ以上巻き込まれなくて良かったと思います」
バルマー戦役で少し介入しただけであるのだ。
「全く。今も彼等と戦っていたらそれこそ」
「大変でした?やっぱり」
「ぞっとします」
殆どアズラエルの私情であった。
「あの様な連中と本格的に戦うなどとは」
「そうですか、やっぱり」
それを聞いて妙に納得できるシンジであった。
「BF団はBF団で厄介な相手でしたしね」
「少なくとも彼等の活動はもうありません」
それ自体はいいことではあった。
「さて、それでは今は」
「はい」
「彼等です」
話がアインストに戻る。
「宜しいですか?また来ていますよ」
「わかっておりますわ」
答えたのはシャインであった。
「それではすぐに」
「全機密集隊形だ」
ブライトが指示を出す。
「互いに援護できる状況で敵に向かえ。いいな」
「了解!」
「それじゃあ!」
最初に攻撃を浴びせたのはアスカであった。
「やってやるわよ!覚悟しなさい!」
「じゃあ僕も!」
「私も」
「俺もや!」
それにシンジ達も続く。何だかんだでフォーメーションの上手いエヴァチームであった。彼等の一斉射撃もありまた敵は全滅した。しかしまたしてもであった。
「おいおい、またかよ!」
「何処から沸いて出て来るのよ!」
「しかしだ」
アラドとゼオラは嫌気が差した感じであったがクォヴレーは違っていた。
「数が少ない。戦力が尽きてきたか」
「あれっ、そういえば」
「そうね」
アラドとゼオラも彼の言葉で気付く。
「さっきより少なえな」
「やっぱりもう戦力がなくなってきたのかしら」
「有り得る」
答えるクォヴレーの言葉は冷静であった。
「砂漠での戦闘もあった。ならばな」
「じゃあ今はこれで在庫切れかよ」
「じゃあ後はもう」
「そうだ」
また二人に応えるクォヴレーであった。
「後はこれだけだ。やるだけだ」
「そうだな。それじゃあよ!」
「行くわよアラド!」
自然とアラドの名前を出すゼオラであった。二人は並んで飛び敵機の中を螺旋状に舞う。そうして敵を次々と倒していくのであった。
二人の活躍もありまた敵は全滅した。
「敵機全機撃墜です」
ナタルが述べる。
「まずはやりました」
「そうだな。新たな反応は」
「ないです」
ナタルはまたヘンケンに報告する。
「敵は完全に全滅したようです」
「レーダーにも反応はありません」
アゼレアも報告してきた。
「これで終わりですね」
「そうか。ではまずは全機現状維持」
まだ警戒は解かないのだった。
「周辺を警戒しろ」
「はっ」
「これで終わりですかね」
アゼレアはふとした感じで呟いた。
「流石に」
「だといいのだが」
ナタルの顔はまだ険しい。
「だが。どうなのか」
「まだ何か来るってことですか?」
「私の考え過ぎならいいのだが」
生真面目な彼女はついついそうなってしまう傾向がある。
「どうもな。今までのパターンだとな」
「来ますか」
「アインストはな。とりわけ数が多い」
このことも頭に入れているのであった。
「それなら。若しかしてだ」
「!?」
ここでアヤが何かを感じ取った。
「何かしらこの感じ」
「隊長、どうしました?」
「いえ、ちょっとね」
ライにも応える。
「何かの思念を感じるのよ」
「思念・・・・・・」
「これは・・・・・・うっ!?」
その時だった。アヤに異変が起こったのだった。
「何この感触は」
「おいアヤ!」
リュウセイもそのアヤに声をかける。
「どうhしたんだよ、一体!」
「!!」
「どうしたの!?」
クスハ達でもまた異変が起こっていた。
「龍虎王、何があったの!?」
「クスハ!?」
ブリットはクスハの言葉に応えてすぐに彼女に声をかけた。
「どうしたんだ、急に」
「今龍虎王が何かを」
「感じたっていうのか!?」
「え、ええ」
こうブリットに答えるのだった。
「これって一体・・・・・・」
「前方に重力異常!」
ランスが報告する。
「何か来ます!」
「何なのっ!?」
「わかりません、ですが」
ニーがミネバに応える。
「ですが。これは」
「これは!?」
「広範囲です」
二人はこうもミネバに報告するのだった。
「何かが来ます、間違いなく」
「とてつもなく巨大なものでしょうか」
イリアは顔を顰めさせてミネバに言ってきた。
「これは」
「アインストかしら」
ミネバは直感的にそう感じていた。
「それが来ているのかしら、また」
「ですがミネバ様」
イリアはここでふとそのアインスト達について思うのだった。
「アインストにそこまで巨大なマシンがあったでしょうか」
「巨大なマシン!?そういえば」
「今まではなかったですが」
イリアはこう述べる。
「あるとしたら一体何でしょうか」
「アインストの頭!?」
ミネバは咄嗟に思ったことを口にした。
「巨大なものとしたら」
「とにかく。もうすぐ来ます」
イリアは前を見据えてミネバに答えた。
「それが」
「来るのね」
そうして遂にその巨大なものが姿を現わした。それは。
「な、何だありゃあ!?」
「で、でけえ!!」
それは確かに巨大なものであった。巨大な何かであった。
「身体の各部に今までのアインストのパーツが」
「まるであれは」
リョウトとリオが声をあげた。
「そうだね、あれはもう」
「アインストの頭みたいな」
ミネバの言葉をそのまま繰り返した。
「そんなのだけれど」
「何なのかしら」
「グウウウウウ・・・・・・」
ここで龍虎王が呻き声をあげた。クスハがそれにすぐに反応した。
「龍虎王!」
「ウウウ・・・・・・」
「貴方あれを知っているの!?」
「ウオオォォォォッ!!」
ここでクスハとブリットの乗るその龍虎王に何かが宿った。これもまたクスハにとっては驚くべきことであった。
「また何が」
「わからない、しかし」
ブリットも言う。
「何かが起ころうとしているのは間違いないぞ、これは」
「ええ・・・・・・」
「!?来ました!」
今度はその巨大なアインストから何かが放たれたのであった。あまりにも広範囲な攻撃でそれはまさに爆撃そのものであった。
「攻撃です!」
「くっ!」
それを聞いてナタルが呻きに近い声をあげた。
「もう来たか!」
「バジルール少佐」
ヘンケンが彼女に声をかける。
「どうするべきか」
「決まっています、回避します」
ナタルの判断は妥当なものだった。
「回避運動に移れ!今すぐだ!」
「はい!」
アゼレアがそれに応える。
「このままでは攻撃を受けるぞ!衝撃にも注意しろ!」
「わかりました!」
「それでだ」
ヘンケンは指示を出すナタルにまた声をかけてきた。
「それだけか」
「それだけといいますと」
「回避だけではない」
彼は言う。
「反撃用意もしておこう」
「反撃もですか」
「そうだ、回避運動を取りつつ攻撃にもかかれ」
「了解!」
アゼレアは彼の言葉にも応えた。
「じゃあ今すぐに!」
「うむ、頼むぞ」
「反撃もですか」
これはナタルには気付かないことだった。
「ここでですね」
「そうだ、ただやられているわけにはいかん」
前を見据えて言うヘンケンであった。
「やられたらやり返す。いいな」
「わかりました」
「敵の攻撃来ました!」
ここで触手が来た。
「かわします!」
「かわせ!」
またナタルが叫ぶ。
「そしてメガ粒子砲を撃て。いいな!」
「了解!」
こうして触手をかわしそのうえでメガ粒子砲を撃つ。これはその巨大なアインストを直撃した。かなりのダメージだと思われた。しかしであった。
「な、何だと!?」
「まさか」
それを見てナタルとアゼレアは思わず声をあげた。
「ダメージを修復しただと」
「まさか」
「ふむ、そうか」
ヘンケンはそれを見て冷静に述べた。
「他のアインストと違うのは大きさだけではないということか」
「ではあれはやはり」
ナタルの目が冷静なものに戻っていた。
「あのアインストは」
「しかしよ、どうするんだ?」
イルムがそのヘンケン達に問うてきた。
「あんだけでかくて回復力も半端じゃねえのをどうやって倒すんだ?」
「それは決まっている」
だがリンが彼に答える。
「回復力以上のダメージを与えるだけだ」
「それか」
「そうだ、それしかない」
リンはまた答える。
「やるぞ、いいな」
「ああ、簡単ですぐにわかったぜ」
「総攻撃だ」
ヘンケンは今度はロンド=ベル全体に指揮を出した。
「いいな、容赦はするな」
「了解ってね!」
そのイルムが応える。
「やってやらあ。こうなったらとことんまでな!」
「よし、ならよっ!」
「やるぞ勝平君!」
ザンボットとダイターンが前に出て来たのであった。そして。
「いっけえええええええええええええええっ!」
「あまり大きくてもいいことばかりじゃないってね!」
イオン砲とサンアタック乱れ撃ちであった。それが巨大アインストを撃つのだった。流石に今度は効いたようであった。
「どうかな、今度は」
「確かに回復はしているわ」
ミサトが万丈に対して答える。
「けれど。さっき程じゃないわね」
「そうか、やっぱりね」
万丈はそれを聞いて会心の笑みを浮かべるのだった。
「幾らあの巨体で回復力でも限界があるね」
「限界なのね」
「何でも限界があるさ」
万丈の言葉は言われてみればその通りだがそれでも今の彼等には充分効果のあるものだった。
「どんどん攻撃を浴びせていけば絶対に倒せるよ」
「どんどんですか」
「皆、ありったけの攻撃を浴びせるんだ」
こう皆に告げた。
「深く考える必要はないよ」
「だったらよ、もっとやるぜ!」
勝平が最初にそれに乗った。
「また撃ってやるぜ!」
「まあ今回はそれでいいな」
宇宙太も反論はなかった。
「ああいうのにはそれが一番だ」
「じゃあまたイオン砲ね」
「ああ、やってやるぜ」
勝平は恵子に答えた。
「くたばれ!これでな!」
「それはいいが勝平」
宇宙太が彼に注意する。
「何だ?」
「エネルギーには気をつけろ」
こう彼に言うのだった。
「イオン砲はエネルギーをかなり消費するからな。それだけは気をつけろ」
「いや、一気にやってやる!」
だがそれは聞き入れないのだった。
「短気決戦だ!そんなの気にしていられるか!」
「おい・・・・・・いや」
宇宙太もここで考えを変えた。
「それでいいな。ここはな」
「いいのね」
「ああ」
恵子にも答える。
「ここはな。それでな」
「じゃあまた行くぜ!」
勝平はまたイオン砲を放つ。それがアインストを撃つがまだ怯んだ様子はなかった。
「まだかよ」
「想像以上にしぶといね」
勝平に万丈が答える。
「それもかなりね」
「なら今度はだ!」
次に攻撃に入ったのはショウだった。攻撃を掻い潜りながら剣を繰り出す。
「はあああああああああああああああっ!!」
「いっけえええええええええええええっ!!」
チャムも叫ぶ。ハイパーオーラ斬りだ。続いてトッドとバーンも攻撃を浴びせるが三人のハイパーオーラ斬りを受けても全く平気な様子であった。
「おい、まだかよ」
「うむ、動じた様子はないな」
トッドとバーンは全く動じない巨大アインストを見て言った。
「俺達三人の攻撃を受けてもまだよ」
「それにだ」
見ればさらにアレンとフェイ、トクマクも攻撃を浴びせていた。ハイパーオーラ斬りを六撃も浴びているがそれでも墜ちないのであった。
「俺の攻撃受けてまだ平気かよ」
「信じられねえぞ、おい」
アレンとフェイがたまりかねた調子で言う。
「しかもこれで六発目だろ」
「それでもかよ」
「俺も結構斬ってるよね」
トクマクは二人に対して問う。
「それでも全然平気って」
「化け物だな、ありゃ」
トッドの声はたまりかねた調子だった。
「まあ外見はそうだけれどよ」
「しかしだ」
バーンは言う。
「ダメージは蓄積される。何時かはな」
「何時かはか」
「そうだ、きっと墜ちる」
バーンの目が光った。
「必ずな」
「じゃあこれまで通り攻撃ってこと?」
チャムはこのことをショウに問うた。
「あの化け物に」
「それしかないな。だったら」
「ショウ、また仕掛けるのね」
「ああ」
チャムの言葉にこくりと頷く。
「もっとだ。墜ちるまでやってやる」
「それなら」
こうして彼等はさらに攻撃を続ける。攻撃は何処までも続けられる。そしてラー=カイラムのメガ粒子砲を浴びると遂にその動きが止まった。
「コレハ」
「!?言葉か」
ブライトは今のアインストの言葉に目を止めた。
「今のあのアインストの」
「コレハアラタナ」
「聞こえているな」
「はい」
「今聞こえました」
彼にトーレスとサエグサが答えた。
「間違いなくあのアインストからの声です」
「記録にも取りました」
「そうか。ではやはり」
「ナリエルノカ」
「成り得るか」
また言葉に目を止めるブライトだった。
「どういうことだ、一体」
「あっ、艦長!」
ここでトーレスが叫ぶ。
「どうした!?」
「あの巨大アインストが転移しようとします!」
「何だと!」
「モニターを見て下さい!」
既にモニターのスイッチは入れられていた。そこに映るアインストは。
「消えています!」
「撤退か!?」
「おそらくは。ここで撤退ですか」
「ダメージが蓄積されたか」
「そうではないでしょうか」
トーレスはそう予想するのだった。
「今までの様々な敵がそうですし」
「俺もそうだと思います」
サエグサも言ってきた。
「これは」
「撤退か」
「もう姿が消えました」
それを証明するかのように巨大アインストは姿を消すのだった。
「やはり。これは」
「エネルギー反応は?」
「消えました」
それも完全に消えたのであった。
「完全に。何処にも」
「そうか。では戦闘は終わりだな」
「ええ。しかし」
ここでサエグサは首を捻る。
「あのアインストは一体」
「何なんでしょうか」
トーレスも首を捻っていた。戦いは終わったが謎は残ったままであったのだ。
戦闘が終わり基地に戻ってから。ブリットはクスハに対して話すのだった。
「四神が反応していたな」
「ええ」
クスハはブリットの今の言葉に頷く。
「間違いないわ」
「それもかなり強かった」
二人だからこそわかることだった。
「若しかしたらあれは」
「宇宙に害をもらたらす者かしら」
「宇宙怪獣と同じなのか?」
スレイは話を聞いてこう考えた。
「だとしたら」
「それはまだわからないですけれど」
ブリットはスレイのその問いに今一つわかりかねる顔を見せてきた。
「けれど。あれは」
「そうか。怪しいのだな」
「よく考えたら宇宙に害をもたらす存在は一つとは限りません」
「一つじゃない、か」
「だって。宇宙は広いですし」
今度はアイビスに対して答えた。
「それを考えれば。やっぱり」
「あのアインストがそうであっても」
「それもそうだな」
スレイはそこまで聞いて真剣な顔になるのだった。さらに。
「有り得る。それもまた」
「そうですよね。それに」
「ああ、そうだな」
アイビスもまた言った。
「あの連中は少なくともシャドウミラー等と同じじゃないな」
「そしてです」
今度話に入って来たのはツグミであった。
「アルフィミィがエクセレン中尉を誘い出したのは」
「あれを送り込む為の陽動なの?」
「いや」
しかし今の言葉にキョウスケが首を横に振る。
「奴は奴で俺とエクセレンに用があったようだ」
「そうね」
エクセレンもいつもとは違った顔で頷いた。
「どうやらね」
「エクセレン」
カイがそのエクセレンに問うてきた。
「あの時だが」
「あの時?」
「何故あの時ヴァイスで飛び出した?」
彼が問うのはそこだった。
「あの時。どうしてだ」
「何ていうか」
エクセレンはそれに応えて何時にない思い詰めたような顔で答えるのだった。
「敵の気配を感じたというか」
「気配!?」
「ええ」
カイの言葉にこくりと頷く。
「で、気づいたらヴァイスちゃんに」
「まさかおめえ」
マサキは今のエクセレンの言葉に顔を顰めさせた。
「アルフィミィに操られてたとか言うんじゃねえだろうな」
「それはね」
今のマサキの言葉には首を捻る。
「そういう訳じゃないと思うけど」
「そうか」
「それにしてもあのお嬢ちゃん」
エクセレンはさらに首を捻って言う。
「何でキョウスケキョウスケって」
「俺のことをか」
「恋のライバルというには物騒な相手ね」
彼女が今度言うのはこのことだった。
「それに」
「それに?」
「私にだけ声が聞こえる時があるのも、ね。おかしいわよね」
「おかしいっていうかね」
アイビスがここで言った。
「あのアルフィミィって娘」
「どうしたの?」
「エクセレン中尉に似てないかな」
彼女が言うのはそこだった。
「何か。どうかな」
「ああ、そういえばそうね」
セレーナがそれに応えて頷く。
「何か。幼いけれどそれは」
「あるでしょ、それもかなり」
「私と似てるねえ」
「ええ。本当に似てない?」
「言われてみれば」
また頷くクスハ達だった。
「そうかも」
「見れば見る程」
また一つ謎が出て来た。謎は何処までも湧き出るようだった。その無数の謎が解けることなく複雑に絡み合い。ロンド=ベルを覆っていくのであった。
第七十四話完
2008・8・21
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