転生者拾いました。
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少女の真実
クエストを無事完遂してギルドに戻って来ると受付のお姉さんに声をかけられた。
「カズヤさん。ちょっといいですか?」
「はい、なんですか?」
オレの隣りに受付のお姉さんが座った。
「実は彼女が目を覚ましたのですが…。」
「何か?」
何か深刻な異常でも見つかったのだろうか。
「私が近づこうとしたらベッドの上で逃げ回ろうとしたんです。」
「つまり怯えていると?」
「はい。」
「でオレがどうにかして欲しいと?」
「はい…。」
そんなに落ち込まないでください。あなたの仕事は笑顔を振り撒くことでしょ。
「わかりました。何とかしましょう。」
「すみません…。」
オレは席を立ち彼女がいる部屋に向かう。
「入っていいか。」
彼女がいるであろう部屋の前に立ち声をかける。
「………」
返事がない。どうせ入るのだから今更許可など。カズヤ・クロサキ、目標へ進入します!
とは言ってもこのドアは建て付けが悪く下手に力を入れれば外れてしまう。
「よぉ、起きてるか?」
「誰?」
ベッドを囲むカーテンに手を掛け一気に開ける。
オレは驚いた。なぜならベッドの上に可憐ではあるが気丈そうな少女が居るのだから。
はっきり言って惚れた。
「日本人?どうして?ここはどこよ。」
「いっぺんにたくさん訊くんだな。まず自己紹介だな。オレはカズヤ・クロサキ。2年前にこの世界に送り込まれた。神から聞いてないか?」
拾った時もかわいい子だと思ったが目を覚ましたらどんなにかわいいか、想像できなかったがこれはとんでもないな。
「カズヤ・クロサキ…。私は立川芹奈。こっちではセリナ・タチカワになるのかな。」
セリナ・タチカワ。いい名前だ。そしてなかなか物分かりがいい。こいつは期待できそうだ。
「で、次にここはどこか。ここはオレたちがいた世界とは違う世界。」
「ホントにそうなの?」
「悔しいがホントだ。八方手を尽くしてもオレたちの世界の情報は何一つつかめなかった。」
「ウソ……。」
信じられないという感じで芹奈さんは頭を垂れてしまった。
「オレだって信じられなかったが信じるしかなかった。二年も経てばもうどうでもよくなったよ。
さて、芹奈さんは神から何をもらったんだ?」
ここはオレが一番気になる事項だ。下手をすればオレの存在意義が失われる。
「えっと、魔力無限・魔法全習得・身体強化だったかな。あと、セリナでいいから。」
「そうか。じゃあセリナはオレと同じ能力を持っているのか。」
「そうなの?」
「ああ、それからオレは神からセリナの世話役になってくれと頼まれた。あと、オレのことは好きに呼んでくれて構わない。」
「ふーん。じゃよろしくカズヤ。」
早速呼んでくれたぜ。しかも女の子に頼りにされるっていいものだ。
「さて次の問題だが、住むところはどうする。お世辞にもこの街は治安はあまり良くない。宿屋の鍵もあてにできない。」
「鍵があてにできないなんて…。あっ!」
セリナの顔が輝いた。だが、次の瞬間赤くなった。
「あ、あなたの家はダメ?」
「……は?」
この子は一体何を言い出すのか。オレの家に行きたいなどと。
「…ダメ?」
「うっ……。」
ひ、卑怯ですよセリナさん。上目遣い&赤面&涙目なんて。スリーコンボきまっているじゃないですか。
「い、いいですよ。責任を持ってあなたをもてなします。」
「……ありがとう……。」
赤面したまま俯くなんて。あんたねらっているんですか。オレがそういうのに弱いと知って。
「ふ、不束者ですがよろしくお願いします。」
「……違うだろ。」
いろいろ飛ばしすぎだと思うのはオレだけだろうか。
「カズヤさ、……あらっ、お邪魔でしました?」
「なっ…!」
どうやらお姉さんにセリナが顔を赤らめていたのを見られてしまったらしい。
「ち、違いますー!」
そんなムキになって否定されたら凹むじゃないですか。
後書き
神が遣わした少女セリナがカズヤと同居を宣言した。
そのことによりカズヤの波乱に満ちた生活が始まる。
次回 カズヤの家
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