ドラゴンシティ
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第一章
ドラゴンシティ
メルキドは非常に大きな都市だ。人口は多くしかも四方を堅固な城壁と深く広い堀で覆っている。護るs戦士と魔法使いも多い。
護りは万全の筈だった。だが。
今彼等は深い憂慮の中にあった。ある朝急にだったのだ。
すぐ傍に町が、蜃気楼の様に現れていたのだ。しかもその町の市民達は人間ではなかった。
ドラゴン達だ。多くのドラゴン達が人間の様に暮らしていたのだ。家に住み空を飛びその上で暮らしていたのだ。
その彼等の町を見て市民達は不安にかられてこう話した。
「ドラゴンの町が何でできたんだ?」
「しかも俺達の傍に」
「数も一万はいるぞ」
「ドラゴンが一万もいたらどんな勇者でも適わないぞ」
ドラゴンといえば最強のモンスターだ。巨大で力が強いだけでなく空も飛べばブレスもある、しかも頭がよく魔法も自由自在だ。
勇者にとってドラゴンを倒すことが強さのステータスシンボルとなっている程だ。そのドラゴンが何と一万だ。
それだけいればとてもだった。彼等は不安に満ちた顔にならざるを得なかった。
「若し町に攻めてきたら」
「この町でも全滅だぞ」
「十匹でも辛いのにな」
「それが一万となると」
最早どうにもならない、台風と地震が一度に来た感じになる。
町は一気に消滅してしまうだろう、戦士や魔法使い、その他の職業の面々も不安、いや恐怖に満ちた顔で口々に言った。
「あれだけの数のドラゴンには勝てない」
「おそらく魔界も征服できる」
「若しこの町に攻めてくれば町は消え去る」
「俺達ではとても守れない」
「災害には打つ手がない」
これが彼等の主張だった。普通はこれで町を見捨てて逃げ去る者が続出する筈だ、だがそれも今はだった。
何しろドラゴンが周りを徘徊しているのだ、下手に逃げても見つかれば餌にされるのがオチだった。逃げるという選択肢もなかった。
メルキドは絶体絶命の状況に陥った、市長であるユキノフもどうしていいかわからなかった。そして市民達も雇われている達も遂にこの結論に達した。
「もうどうでもなれ」
「なるようになれ」
つまり全てを諦めたのである。
「もうどうにかなってもな」
「それでいいな」
「ドラゴンなんかどうしようもない」
「それも一万もいるんだ」
しかもそのドラゴンの種類は。
「レッド、ブルー、ホワイト、ブラック、グリーン」
それぞれ強力な力を持つドラゴン達だ。
「ブロンズ、ブロス、カッパー、シルバー、ゴールド、プラチナ」
「土龍に火竜、応龍にな」
東方の龍達もいた。
「水龍、赤龍、青龍、白龍、黄龍、黒龍」
「ドラゴンのオンパレードだよ」
「まさにドラゴンシティだよ」
「ヒドラまでいるぜ」
「希少種のツーヘッドドラゴンまでな」
こんな有様だった。どうにかなるとはとても思えなかった。
それで彼等は諦めたのだ。どうでもなれと。
もう居直って日々を過ごすことにした。だが。
急に町に一匹のドラゴンが来た。それはサラマンダー、全身が燃え盛る龍だった。
サラマンダーは町の門の前まで来てこう言ってきた。
「いいでしょうか」
「げっ、サラマンダーかよ」
「あいつも強いぞ」
門の上から戦士達が嫌そうな声をあげる。
「凄い炎吐くし全身が燃えているし」
「あんなのそうそう相手に出来ないぞ」
「魔法の武器、氷のがあっても」
氷の魔法があってもだ。
「あいつは生半可な相手じゃないのに」
「あんなのが出て来たのかよ」
「遂に終わりの時が来たな」
戦士達は最後の時が来たと思った。遂にドラゴン達が町に攻めに来たと思ったのだ。だがサラマンダーはその彼等に言うのだった。
「挨拶に来ました」
「えっ!?」
皆この言葉に唖然となった。
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