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久遠の神話

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第三十七話 人との闘いその六

 そのうえで中田について考えた。彼の戦う理由を。
 その中でだ。上城はあることに気付いた。そのことは。
「あれっ、そういえば」
「そういえばって?」
「中田さん結構いいお家に住んでるよね」
 彼に招待してもらって彼の作ったパスタを御馳走になった、上城はこのことを思い出した。そのうえで樹里に対して、一緒にいた彼女に話したのだ。
「そうだよね」
「そうよね。いい一軒家よね」
「あれは一人で住むお家じゃないよ」
 上城は指摘する。このことを。
「とてもね」
「けれど中田さんって」
「一人暮らしみたいだよね」
「何かね」
 樹里も気付いた。このことに。
「そんな感じよね」
「ご家族がおられたのかな」
「ううん、どうなのかしら」
「何か僕達ってあれだよね。中田さんとは親しいけれど」
「それでもあの人のことは」
「知らないよね」 
 彼の人間性は知っている。決して悪人ではない。
 だが人間性を知っていてもそれで全てを知っていることになるかというとそうではない。だから上城も樹里もここでこう話をするのだった。
「大学は八条大学で」
「剣道をしておられることは知ってても」
「そうしたこと以外は」
「あまり知らないわよね」
「まあさ。人のプライベートをあれこれ調べるのってさ」
 そのことはどうかとだ。上城は言った。
「あまりよくないことだしね」
「そうね。それはね」
 樹里も同意だった。他人のプライベートの詮索については。
「よくないことよね」
「うん、褒められたことじゃないよ」
「それじゃあ」
「この話はこれで止めよう」
 上城は穏やかな声で樹里に話した。
「中田さんの家庭とかのことはね」
「そうよね。よくないからね」
「これでね。そういうことでね」
「ええ」
 樹里も彼の言葉にこくりと頷いた。そうしてだった。
 上城はここでだ。こう言ったのだった。
「それでだけれど」
「それでって?」
「いや、今度だけれどね」
 戦いとは別の話だった。その話は。
「部活の後で。今日はもう遅いから駄目だけれど」
「何か食べに行くとか?」
「そうしない?美味しいものね」
 こう提案したのである。
「何か美味しいものがあれば」
「そうね。スタープラチナとか白鯨もいいけれど」
 そうした店の名前がまず出た。同じ家が経営している店でスタープラチナはカラオケ、白鯨は居酒屋だ。どちらも同じビルに入っている。
「ただ。スタープラチナって」
「あそこは、だよね」
「ええ。横浜が負けるとあのお任せメニューがね」
「酷いの出てくるからね」
「そうそう。この前それ頼んだのよ」
 スタープラチナの看板にもなっているそのお任せメニューをだというのだ。
「その時横浜負けてて」
「あのチーム滅多に勝たないからね」
「で、ビールなのにお菓子出て来たのよ」
「ビールにお菓子?」
「それもチョコレートのクッキーよ」
 誰がどう考えてもビールに合わないものが出て来たというのだ。
「それが出て来たのよ」
「きついね、それはまた」
「何であのお店って横浜ベイスターズが負けると飲んでるのに合わないのが出るのかしら」
「勝ってると凄いの出て来るのにね」
「いい意味でね」
 負けている場合は悪い意味で凄いものが出て来るのだった。 
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