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万華鏡

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第十七話 甲子園にてその十

「幾ら何でもね」
「古田さんって最高のキャッチャーじゃない」
「日本の野球史上ね」
 そこまでの凄さがあった。リードや肩、キャッチングだけでなくバッティング技術もかなりのものだったからだ。
「何しろ球場全体を見ている人だったから」
「審判まで調べてたのよね」
「そうらしいわね」
「まさにコンピューターだったって」
「それか心理学者かね」
 だからこそチームを何度も優勝させられた、古田がいれば並のピッチャーも一流になれるとさえ言われていた。
「そんなキャッチャーがいてくれたら」
「阪神優勝出来るわね」
「ピッチャーの能力を引き出すのはキャッチャーよ」
 流石プラネッツの頭脳だ、里香はこのこともわかっていた。
「だからこそね」
「古田さんクラスのキャッチャーねえ」
「野球ゲームで言うとあれだよな」
 また美優がゲームの話を出して言ってきた。
「キャッチャー二重丸で送球四、ブロックもあって」
「私野球ゲーム知らないけれどわかりやすいわね」
「で、肩と守備が十五段階で十四か十五だよな」
「それで打てるキャッチャーなの」
「確かにいてくれたら有り難いよな」
「阪神の投手陣で古田さんだと優勝出来るから」
 あそこまでいいキャッチャーならというのだ。
「だからいて欲しいけれど」
「流石にそこまではね」
 景子の言葉は羨むものさえ入っていた、かつてのヤクルトに対する。
「いてくれないわね」
「いて欲しいけれど」 
 ぼやくことしきりの里香だった。だが今日の天気は梅雨の中休みで晴れていた、五人は気持ちよく甲子園に行けた。
 一塁側に入るともうファン達で満員だった、黒と黄色で目がちかちかする程だ。
 そのベンチに五人横一列で座る、その中にいてだ。
 琴乃は三塁側、彼女達の向かい側を見ながらこう言った。
「やっぱり向こうは少ないわね」
「カープjの方はね」
「何処も黒と黄色ばかりね」
 彩夏に返すん、見ればだ。
 一塁側だけでなくバックネットも外野も黒と黄色ばかりだ、もう人の声と動く物音やら何やらで五月蝿いばかりだ。 
 三塁側も黒と黄色が多くそれでだった。
 琴乃はそれを見て言ったのだった。
「何ていうかね」
「阪神ファンばかりよね」
「この時期は成績がよくなくても多いわよね」
「そうよね。けれど成績が悪いまま秋jになると」
 さしもの阪神ファンでも、である。
「減るのよね、お客さんが」
「そうなるわよね」
「けれど今はまだ中盤だし」
「今順位三位だしね」
 しかも二位とのゲーム差は僅かだった。四位とは結構開いている。
「クライマックスシリーズが視野にあるから」
「お客さん多いのよ」
 彩夏はこう琴乃に話した。
「有り難いことにね」
「そうよね」
 琴乃は前のカープ側を見ながら彩夏の言葉に頷く。
「このままいけば」
「クライマックスね」
「いつも終盤になったら失速するけれど」
 特に主軸の打者がだ。
「今年こそはね」
「優勝して欲しいわね」
「若し優勝したら」
 琴乃はここで四人に言った。
「阪神の歌作らない?」
「プラネッツで?」
「そうするjの?」
「そう、私達でね」
 そうしようかというのだ。 
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