万華鏡
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第十七話 甲子園にてその七
「袴の下にスパッツ、毛糸のパンツって」
「ちょっと生々しいけれど」
里香は毛糸のパンツと聞いて少し赤面した。
「それは」
「いや、それでも寒いからね」
「冬は着けてるの」
「制服の下なんか凄いのよ」
景子は自分でもこのことを言った。
「スカートの下、本当にアイドルのアンスコみたいにしてるから」
「AKBみたいに?」
「ショーツの上に毛糸のパンツにスパッツね」
「後は、よね」
「そう、使い捨てカイロも」
これは本当に必需品だった。
「ガードを固めてるから」
「何か大変ね」
「寒いっていうのは地獄よ」
景子にとってはまさにそうだった。
「里香ちゃんはそこまでいかないでしょ」
「ううん、カイロは使うことがあるけれど」
ある、というレベルだった。常に使っている景子とはそこが違う。
「それでもね」
「毛糸のパンツとかは」
「ないから」
里香は真顔で景子に答えた。
「足も靴下はいてるから」
「私二枚よ」
冬はそうしているというのだ。
「二枚だから。ストッキングの上にだから」
「そういえばこの神社の中スリッパ多いけれど」
「私とお母さんのよ」
彼女だけでなく母もだった。
「お母さんも冷え性だから」
「それでなのね」
「冬、もう十月になったら」
秋も中頃になればだというのだ。
「寒くなるからね。特にこの神戸って風が強いから」
「六甲おろしね」
「あれが効くからね」
冬になると町の後ろの六甲から風が吹き降りる、それで冬でただでさえ寒い町が余計に寒くなるのである。
その神戸の冬について景子はさらに言う。
「もうガードは固くないと」
「そうだったの」
「とにかく。寒いのは苦手なのよ」
景子はまだ言う。
「夏はかなり楽に思えるわ」
「けれどクーラーは?」
「風も温度もそれ程にはしていないわ」
「抑えているのね」
「だから冷えるから」
「扇風機は?」
「その風も普通にしてるから」
強くはしていないというのだ、クーラーも。
「特にね」
「何か大変jなことばかりね」
「冷え性って大変だから」
「だから今もなのね」
「そうなの。それにしても皆の服って」
景子は里香だけでなく他の三人、自分のことも踏まえたうえで話をした。そのうえで言うことはというと。
「ズボンが多いわね、里香ちゃんはスカートだけれど」
「キュロットもなの」
「そう、キュロットもね」
それもだというのだ。
「ズボンじゃない」
「私これズボンみたいなスカートって思ってたけれど」
実際にはいている琴乃の言葉だ。
「違ったのね」
「キュロットって半ズボンって意味よ」
景子がこう琴乃に説明した。
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