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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第四十三話 壊れた人形

                  第四十三話 壊れた人形
ロンド=ベルは全速力に近い速さでユーラシア大陸を突っ切った。そうして僅かな時間で松江に入ったのであった。
松江に入るとまずしたことは情報収集だった。その結果シャドウミラーの軍勢を瀬戸内海で見たのであった。
「瀬戸内海か」
サコンはそこだと聞いて考える顔になった。
「また厄介な場所に入られたな」
「瀬戸内海がか?」
エイジはそれを聞いてサコンに問うのだった。
「そんなに厄介な場所なのか」
「そうだ」
サコンはそのエイジの言葉に答えた。
「小島が複雑に入りこんでしかもその小島の殆どが山になっている」
「じゃあ隠れるのにはもってこいだな」
「そうだ。だからこそ厄介だ。しかも」
「しかも?」
「海流もかなり複雑だ」
サコンは海流についても言及した。
「水中戦もしにくくなっている。つまり」
「海からの攻撃も困難なのか」
「シャドウミラーがそこまで読んでいるとなると」
彼の危惧は続く。
「彼等も。やるものだな」
「けれど戦わないわけにはいかない」
今度はエイジが答えた。
「彼等も彼等でとんでもないことを考えているしね」
「そうだな。しかも」
サコンはさらに言い加えてきた。
「彼等はあえて別の世界から来てそれを果たそうとしている。その執念も凄い」
「そうだね。だからこそ怖い」
「ウィンデル=マウザーか」
サコンは敵の首領の名を口にした。
「一体何を仕掛けてくるつもりか。この瀬戸内で」
「そんなのは言ってみねえとわからねえさ」
カチーナがサコンに対して言ってきた。
「違うか?どっちにしろあたし達は行くしかないんだよ」
「中尉、それはあまりにも」
「いや、その通りだ」
ラッセルが突っ込みを入れようとするが大文字はカチーナのその言葉を認めるのだった。
「どちらにしろ行くしかない。だからこそ」
「そうですか。それじゃあ」
「行こう」
ラッセルだけでなく皆に声をかけた。
「瀬戸内にな」
「どちらにしとですか」
「そうだ。ではな」
「わかりました。それじゃあ」
「最低限どんな策が出てもいいようにはしておく」
大文字はこう言い加えてきた。
「備えはしておこう。それでいいな」
「そうですね。それは」
ミドリが大文字の言葉に頷いてきた。
「また何があるかわかりませんし」
「そうだな。外だけでなく」
また大文字は言うのだった。その目が光る。
「中においても」
「中、ですか」
「そうだ」
サコンの言葉に応える。
「わかったならすぐにな」
「はい、そちらも考えておきます」
「頼む。では行こう」
こうしてロンド=ベルは瀬戸内に進んだのであった。彼等は岡山に出た。
その岡山に入るとすぐに哨戒に入った。その結果愛媛の方に敵の姿を発見した。
「愛媛の方か」
「はい、壇ノ浦の辺りです」
哨戒に出ていたエマが報告する。
「そこに潜伏している敵を見つけました」
「そうか。壇ノ浦か」
大文字はそれを聞いて考える顔になった。
「ではすぐにそちらに向かうとしよう。海での戦いになるとすれば」
「いえ、そうはならないようです」
「ならないのか」
「敵は厳島に主力を置いている模様です」
エマはまた報告をあげてきた。
「おそらくはそこでの戦いになると思われます」
「よし、なら問題はない」
大文字もそれを聞いて安心した。水中での戦いが得意なマシンが少ないのと瀬戸内の潮流の複雑さを承知してのことである。
「ではすぐにそちらに向かおう。エマ君」
「はい」
「君も合流してくれ。すぐにな」
「まだ偵察を続けなくて宜しいのですか?」
「その必要はない。敵が何処にいるかだけわかれば充分だ」
「左様ですか」
「うむ。だから下がってくれ」
そうしてまた言うのだった。
「合流して敵を討とう。いいな」
「わかりました」
こうしてエマは本隊に合流することになった。他に哨戒に出ていたマシンも合流する。そうして厳島及び壇ノ浦方面に進出した。するとそこにはもう大軍が展開していた。
「もういるのか」
「しかもまた布陣を終えている」
彼等は厳島に展開する敵の大軍を見て言うのだった。
「やはり彼等には」
「いるのか」
「さて」
大文字はシャドウミラーのその軍勢を見ながら呟く。
「長官」
「はい」
大河に声をかけるとすぐに応えてきた。
「手筈は宜しいでしょうか」
「何時でも」
大河はすぐに言葉を返してきた。
「それでは後は」
「そうですな。待つだけです」
「あの艦への備えはどうなっていますか?」
「そちらも安心して下さい」
大河はその言葉にも自信に満ちた声で返事するのだった。
「既に」
「何時でもですか」
「はい。それでは後は」
「彼等が。動くだけですな」
彼等は今目の前の敵を見てはいなかった。前を見てはいても。だが戦いを見据えていることに変わりはない。しかしそれを口には出さないのだった。
ロンド=ベルは前進を開始し厳島に降下する。そうして島を東西に挟んで今衝突しようとしたその時だった。
「待て!」
声をあげたのはラミアであった。
「!?」
「どうしたんだ?」
「動くな!」
彼女はハガネの砲塔の上にアンジュルグを上げて言うのであった。アクセルも一緒である。
「動くなっていうのは僕達に対して言っているのかい?」
「その通りだ」
こうバルトフェルドにも答える。
「動けばこのアンジュルグを自爆させる」
「何っ!?」
「自爆だと!?」
ロンド=ベルの面々はそれを聞いて思わずといった感じで声をあげた。
「どういうつもりなんだ」
「一体」
「全機に告ぐ」
ラミアはまた皆に対して言ってきた。
「直ちに武装解除してもらおう」
「ラ、ラミアちゃん!?」
「武装解除だと!?」
ガーネットとジャーダはそれを聞いて慌てた様子を見せる。
「どういうことだ、ラミア」
「あんた、何考えてんのよ!」
ムウとフレイが問う。しかしラミアはそれには答えずこう言うだけだった。
「強制はしない。だが只の爆薬ではない」
「只の!?原爆だっていうのかよ!」
「そういったものだ」
甲児の言葉には答えた。
「御前達はおろかここにいる全ての艦も撃沈できる」
「何っ!」
彼等がいるハガネの艦橋からリーが叫んだ。
「くっ、はかられたか!」
「ラ、ラミアさん!」
アラドが慌てた様子でラミアに問う。
「どうしたんだよ!?何でそんなことを!?」
「アクセルさんも!」
ゼオラはアクセルに対して問うた。
「どうしてこんなことを!」
「それが俺達の任務だからだ」
「に、任務!?」
「やはり御前達は」
ライは前に出ようとするがそれは出来なかった。彼等はさらに言葉を続けていた。
「繰り返す。直ちに武装解除せよ」
「抵抗する素振りを見せればその瞬間にアンジュルグを自爆させる」
「馬鹿言ってんじゃないよ!」
カチーナが二人に対して叫んだ。
「そんなことをしたらあんた達だって死ぬんだよ!?」
「死ぬことで任務が遂行できるならば、それでいい」
「!!」
「貴様等!」
「御前達の心がけ次第では全員無事でシャドウミラー隊の直属として活動することが出来る」
アクセルが彼等に告げてきた。
「どうする?降伏か死か」
「少なくともこのハガネは貰う」
「馬鹿な、そんなことは許さんぞ」
リーはハガネの艦橋からラミアの今の言葉は否定した。
「私がいる限り」
「既にハガネの中には工作員を送り込んでおいた」
「何っ!?」
「動け」
アクセルが指示を出した。
「ハガネを我等のものとせよ」
「馬鹿な、何時の間にそんなことを」
「艦長!」
ホリスがリーに報告をあげてきた。
「突如として艦内の各地で戦闘が発生しました!」
「何だと!」
「それにより艦の行動が取れなくなっています!」
「この艦橋にも来てるわ!」
アカネも叫んできた。
「くっ、すぐ防戦体制を整えよ!」
リーも自ら拳銃を取り出した。
「このハガネを敵に渡すわけにはいかん。いいな!」
「了解!」
とはいってもハガネの中では苦戦が続いていた。彼等はそのまま人質に取られた形になりラミア達はさらに話をするのであった。
「さあ、どうする」
「結論を聞こうか」
二人が問うたその時だった。戦場にまたマシンが出て来た。
「あ、あのロボットは!?」
「この間転移してきた特機」
ブリットとクスハがそのマシンの姿を見て驚きの声をあげた。そこにいるのは誰か、彼等もよく知っていた。
「ご苦労だった、W17」
「はっ」
「そしてアクセルよ」
「有り難うございます」
二人はヴィンデルに対して返事をするのだった。
「W17!?そ、それって」
「ラミアさんのことなのか」
ジュドーとシーブックがそれを聞いて察した。
「そう」
そしてラミアもそれに答える。
「これが私の本当の名称だ」
「ほ、本当の名称!?」
「以後憶えておくことだ」
「話し方も変わってる」
「じゃあ今までのはお芝居だったの」
「それは違う」
ルーとエルのその言葉は否定した。
「言語機能がおかしかっただけだ」
「機能って」
「機械そのものじゃないか」
「じゃあ何なんだよ。部品だっていうのかよ」
イーノ、モンド、ビーチャは今のラミアの言葉からそれを察した。
「とりあえず聞きたいけれど」
アクアが彼等に問う。
「ラミアちゃんに何をしたのよ」
「何も」
それに答えたのはエキドナであった。戦場には彼女もいたのだ。
「彼女は私達の仲間。わかりやすく言えばスパイなのよ」
「スパイ!?」
「じゃあやっぱり」
「そういうことよ。ずっとこの機会を待っていたのよ」
エキドナと一緒にいたもう一人の女が述べる。
「そして私はレモン。宜しくね」
「レモンだと」
「またシャドウミラーが」
(しかし)
だがここでそのレモンは考えるのだった。
(W17。ハガネのブリッジを制圧しろと言った筈なのに何で外から脅しているのかしら?)
「では返答を聞こうか」
ヴィンデルが彼等に問う。
「ロンド=ベルの諸君、武装解除に応じるか否か?」
「否だ」
リーが彼等に答えた。艦橋に既に敵が迫っている中で。
「貴様等になぞ屈しはしない。絶対にな」
「そうか。ならば」
「アンジュルグを自爆させましょう」
「いや、待て」
だがここでヴィンデルはレモンの言葉を退けるのだった。
「まずはハガネの制圧だ」
「ハガネのですか」
「そうだ」
こうレモンに答えた。
「まずはだ。順調にいっているか」
「おそらくは」
レモンはこうヴィンデルに述べた。
「そうか。ではそのまま続けさせよ」
「はい。こちらW15」
レモンはあらためて通信を入れた。
「そのままハガネを制圧しろ。いいな」
「はっ」
彼等の指示に従いハガネの制圧は進められていた。ロンド=ベルの面々が近付こうにもラミアとアクセルが自爆しようとするのでそれは無理だった。
「汚ねえ真似してくれんじゃねえかよ!」
甲児が二人に対して叫ぶ。
「一時とはいえ仲間だったんじゃねえかよ!」
「仲間!?」
だがそれに対するラミアの言葉は素っ気無い、いや感情のないものだった。
「常に聞いていたがわからない言葉だな」
「わからねえだと!?」
「そうだ。私はただの機械」
そう述べるだけだった。
「それ以外の何でもない」
「だからだ」
アクセルも言ってきた。
「御前達はただの敵だ。それ以外の何者でもない」
「そうかよ!だから何をしても平気なのかよ!」
「その状況において最も実現できる可能性の高いことを為す」
「それだけだ」
「へっ、人形じゃねえか!」
甲児はそれを聞いてまた言い捨てるのだった。
「しかしよ。そのせいで」
「このままではハガネが」
「どうすればいいんだ」
鉄也も大介も動けない。しかしここで皆あることに気付いた。
「あれ!?」
最初に気付いたのはアイビスであった。
「セレーナがいないよ」
「むっ、そういえば」
次にスレイも気付く。
「いないぞ。一体何処に」
「いえ、いるわ」
しかしツグミが二人に言葉を返した。
「安心していいわ。彼女は」
「あっ!?ああ」
「そうか」
二人もここで気付いた。
「そういうことだね」
「そうか。そうするつもりか」
「一体何なんだよ」
甲児には二人の言葉の意味がわからなかった。
「急に安心してよ。こんな状況で」
「だから。大丈夫なんだって」
「安心しておけ」
二人はそんな甲児に言った。
「反撃のことでも考えておくんだね」
「御前の大好きなな」
「わからねえけどそれを考えたらいいんだな?」
甲児も単純なものでそれに乗った。
「じゃあそうさせてもらうぜ」
「ああ、そうしな」
「時は来る」
こう言うのだった。そうして彼等は安定した感じでハガネを取り囲み続ける。その間にシャドウミラーの工作員達はハガネの内部を制圧していく。そうして遂に艦橋にまで迫ろうとしてきていた。
「遂にここまで来ます!」
「扉は何処までもつか!」
「もうもちません!」
兵士がリーに応える。
「間も無く敵が!」
「くっ、総員迎撃用意!」
リーは手に持っている拳銃を構えながら指示を出す。
「何としてもここは守る。いいな!」
「はい・・・・・・あっ!」
遂にその扉が破られた。そしてそこからシャドウミラーの工作員達が雪崩れ込んで来た。
「来ました!」
「よし!」
最初に銃撃を放ったのはリーであった。それでまず一人撃つ。
「怯むな!いざとなればハガネを自爆させる!」
「ちょっと艦長!」
アカネがそれを利いて慌ててリーに顔を向ける。
「無茶苦茶じゃないの、それって!」
「無茶ではない」
しかしリーは冷静にこう言葉を返すのであった。
「敵にこのハガネを渡すわけにはいかない。だからだ」
「あんたも死ぬんだよ」
「無論承知のうえだ」
それをわかっての言葉なのだ。
「私も軍人だ。いざとなればな」
「そう。じゃあもう言わないよ」
リーの覚悟がわかったからだ。
「けれどね。あたしだってここで死ぬわけにはいかないしね」
「この程度ではな!」
ブレスフィールドは格闘で敵を次々に捻じ伏せていた。
「やられはせんわ!」
「そうですよね、親方」
ホリスもそれに続く。しかし両脇に敵兵の首を入れて振り回すブレスフィールド程ではない。
「じゃあここで踏ん張って」
「貴方達・・・・・・」
「貴方達・・・・・・うわあっ!」
ホリスはシホミを見て声を驚かさせた。
「お、鬼だ!」
「ここは渡しません!」
「一体どうした!?」
「艦長、鬼が!」
リーに対して答える。
「鬼が出ました!」
「何っ、鬼!?」
リーはそれを聞いても何が何かわからない。
「馬鹿なことを言え。百鬼帝国はここには」
「違います、ですから鬼です!」
「何だというんだ」
リーはまだわからない。
「ですから鬼が・・・・・・うわあっ!」
「むっ!?」
そこに投げ飛ばされたシャドウミラーの兵士が飛んできた。しかも一人や二人ではない。
次々と投げ飛ばされて来る。まるでピンポン玉の様に。
「ここまでの格闘術の使い手がいたというのか」
「だから鬼がいるんですって!」
ホリスはまたリーに言う。
「とんでもないことになっていますよ!」
「だから何だというんだ」
変に思いシャドウミラーの兵士が飛んで来る方角を見た。するとそこにいたのは。
その目を大きく見開いたシホミであった。彼女が羅刹そのものの顔で敵兵を薙ぎ倒していたのだ。
「ここは渡しません」
「な、何だあれは!?」
普段は冷静なリーも驚きの声をあげた。
「あれは一体何者なのだ」
「ですからシホミお嬢様ですよ」
「シホミ=カーディアン!?馬鹿な」
リーは最初それを否定した。
「彼女にどうしてあの様な力があるのだ」
「わかりませんよ。ただ」
見る見るうちに敵を倒していっているのは確かだった。
「このままでは守れますね」
「そうだな。何とか」
希望が見えてきていた。
「いけるか」
「はい」
ハガネは彼女の活躍で何とか守り抜いた。しかしまだそれは完全ではなくしかも外では睨み合いが続いていた。
「さて、返事を聞こう」
「どちらにするか」
二人がロンド=ベルの面々に対して問うていた。
「降伏かそれとも」
「死か」
「くっ、何てことなんだ」
洸も今回は歯噛みするしかなかった。
「セレーナさん、ここは」
「そうだ。ここはあいつを信じるしかない」
神宮寺はそう彼に言葉をかけた。
「ここはな」
「頼みますよ」
「そろそろ答えたらどうか」
ラミアはまた彼等に問う。
「降伏か。それとも」
「悪いけれどね」
ここで声がした。
「どっちも好きじゃないのよ」
「では死ぬというのか?」
「違うわ」
また声はラミアに対して答えた。
「こうするのよ!」
そう言うと鞭が二人を襲った。それでハガネから弾き飛ばす。
「!?」
「この鞭は!」
「そうよ、あたしよ」
ソレアレスの姿が浮かび出る。今まで二人がいた場所に赤いマシンが立っていた。
「一丁あがり。上手くいったわね」
「セレーナ!」
「まさか今までは」
「そういうことよ」
セレーナは不敵に笑って下に落ちていく二人に言うのだった。
「話すのに夢中であたしが姿を消して近付いていたことに気付かなかったみたいね」
「くっ!」
「さて、外はこれでよし」
「ハガネの中はどうですか?」
アルマがハガネの中に通信を入れる。
「大丈夫ですか?」
「はい、何とか敵は全て倒しました」
ホリスが答えてきた。
「ハガネもこれで動けます」
「そう。一件落着ってわけね」
「くっ、作戦は失敗か」
「博士、どうされますか」
エキドナがヴィンデルに問うた。
「作戦は失敗しましたが」
「ふむ。ならば作戦を切り替える」
ヴィンデルはすぐに判断を下した。
「このまま正攻法に移る。いいな」
「わかりました。それでは」
「W16よ」
そのうえでエキドナに声をかけた。
「作戦は御前に任せる。いいな」
「はっ」
「私は下がらせてもらおう」
そう言うと彼は姿を消していく。
「後は頼むぞ」
「わかりました。それでは」
「やいやい!」
彼等に甲児が声をかけてきた。
「今まで随分汚ねえ真似してくれたな!覚悟しやがれ!」
「愚かな。我等の戦力を知らないのか」
「知ってて言ってるんだよ!」
甲児はこう言い返す。
「何もかもな!」
「そうか。ならば言葉はない」
甲児のその言葉を受けて指示を出した。
「全軍攻撃だ。叩き潰せ!」
「迎撃用意!」
ようやく動けるようになったハガネの艦橋からリーが指示を出す。
「一人たりとも逃がすな。殲滅しろ!」
「また随分と動きが早いね」
アイビスは彼の指示を見て言った。
「余程腹にすえかねてるんだな」
「まあ当然だな」
スレイがアイビスのその言葉に応える。
「奇襲を破られたからな」
「そうだね。しかしこれで」
「アイビス、スレイ」
ツグミが二人に声をかける。
「敵の動きはそのまま一直線よ。だから」
「ああ、わかってるさ」
「それならば簡単に倒せる」
二人はすぐに動きだした。アステリオンとベガリオンを並行して進ませる。
そうしてまずは一旦二機に分かれ上下から襲い掛かる。そして螺旋状に飛びながら攻撃を仕掛けていくのだった。
「くっ、何という速さだ」
エキドナもレモンも敵の動きに歯噛みをする。
「ロンド=ベル。この様なマシンもあるのか」
「あんまりね。敵を舐めるなってこよ」
セレーナがその彼女達に言う。
「特にあたし達はね」
「セレーナさん、それでこれからどうするんですか?」
エルマがここでそのセレーナに問う。
「どうするって?」
「まさか何時までもこのハガネの上にいるわけじゃないですよね」
「まさか」
笑ってそれは否定する。
「行くわよ。すぐにね」
「それじゃあ行くんですね」
「当然よ。それじゃあ行くわよ」
「了解です」
嬉しそうにセレーナに答える。
「それじゃあ行きますね」
「勿の論。それじゃあ」
「行くわよ!」
一旦姿を消す。そうして数機の敵の前に姿を現わし攻撃を仕掛ける。
「もう貴方は私の虜」
言いながら鞭を振るい忽ちのうちに数機倒す。その時にはロンド=ベルの攻撃は派手になっていた。戦局は簡単に彼等のものになっていた。
「へっ、その程度かよ!」
甲児が攻撃を浴びせながら叫ぶ。
「やいやい!この程度で俺の気が済むとは思っちゃいねえな!」
「くっ、流石に強いか」
「この程度の数では無理か」
エキドナとレモンはそれぞれ言う。
「これ以上の戦闘は無意味だな」
「そうだな。それでは」
彼等の作戦はもう決まった。
「撤退だな」
「これでな」
「W17とアクセルはどうなった?」
エキドナはその中でふとした感じで二人について述べた。
「生きているのか。どうか」
「駄目だ、連絡はない」
レモンはその問いに首を横に振った。
「生きているのか死んでいるのかもな」
「わからないというんだな」
「そうだ。残念だがここは仕方がない」
彼等には構わないことにしたのだ。
「撤退するぞ。いいな」
「うむ」
多くの損害を出しながらも彼等は撤退した。戦い自体は呆気なく終わった。しかしそれで何もかもが終わりというわけではなかった。
「あいつ、何処行った!?」
甲児は戦いが終わるとすぐに誰かを探しはじめた。
「あいつって?」
「だからあいつだよ」
さやかにこう言い返す。
「あいつに決まってるじゃねえか。あの二人な」
「あの二人?」
さやかはまた甲児に問い返した。
「だからさ、あの二人じゃねえかよ」
「あの二人じゃわからないわよ」
さやかはいい加減たまりかねた調子でまた甲児に言う。
「だから誰なのよ」
「あのさ、ええとよ」
考えても思い出せない。
「あの、名前何つったっけ」
「ひょっとしてラミアとアクセルのことか?」
ジョナサンが彼に突っ込みを入れた。
「さっきから言ってるのは」
「そうだよ、それだよ」
ここでやっと思い出したのだった。
「あいつ等だよ。どうなったんだ?」
「とりあえず生きているみたいだな」
ジョナサンはこう甲児に述べた。
「今カントとナッキィが見つけたぜ」
「生きてるのかよ」
「生体反応はあるらしい」
「そうか」
それならば生きているのは確実であった。
「だったら間違いないな」
「そういうことだ。それでどうするんだ?」
「決まってるだろ。ギッタンギッタンにしてやるんだよ」
もう言うまでもなかった。
「さあて、どうしてやろうか」
「残念だがそうはならない」
しかしここでピートが話に入ってきた。
「おろ、ピート」
「それはどうしてだ?」
「裏切り者、いやスパイだからな」
彼はまずスパイについて言及した。
「あの二人だけは許すわけにはいかない」
「じゃあどうするんだよ」
「まさかとは思うが銃殺か?」
「その通りだ」
何とジョナサンの言葉は当たった。
「裁判の結果になるが。これは間違いないな」
「っておい」
甲児も銃殺と聞いて言葉を失う。
「そりゃ尋常じゃねえぞ」
「いや、ここは仕方がないな」
「そうですね」
しかし甲児にリーとブンタが言うのだった。
「仮にもスパイだった。それに」
「自爆しようとしましたし。僕達を巻き添えにして」
「だからか。仕方ないのか」
「そうだ。わかったな」
「いや、幾ら何でもそれは」
サンシローも今一つ納得できない感じであった。
「やり過ぎじゃないのか?」
「銃殺なんてな」
ヤマガタケにしろどうにも賛成しかねる顔である。
「やり過ぎっていうか極端だよな」
「三輪長官じゃねえんだからよ」
甲児はここで三輪の名前を出した。
「そこまですることはな。やっぱりよ」
「いや、仕方がない」
しかし大文字もそれを肯定する。
「彼等に関してはな」
「何だよ、博士までかよ」
「甲児君、今回は事情が特別だ」
「そうだ」
鉄也と大介も言うのだった。
「スパイだったのだからな」
「彼等を置いてはおけない」
「何だよ、鉄也さんや大介さんまでよ」
甲児は二人に言われてもまだ納得しかねていた。
「どうなんだよ、それって」
「今からアンジュルグの移送をはじめます」
その中でカントが言ってきた。
「宜しいでしょうか」
「うむ、頼む」
大文字がその言葉に応える。
「大空魔竜までな」
「わかりました」
「じゃあそこまでな」
ナッキィも言う。今ロンド=ベルでかつてないことが起ころうとしていた。

第四十三話完

2008・2・17  
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