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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第三十八話 戦神の星で  

                 第三十八話 戦神の星で
  火星に辿り着いたロンド=ベル。既にバルマー軍は火星上空に展開していた。
「ええと、数は」
「何だあの数は」
ロンド=ベルの面々は火星にいる。そこで彼等を見上げて唖然としていた。
「一万はいるよな」
「ああ、それ位は余裕でいるな」
そう言い合って呆然としている。
「月での戦いもそうだったが」
「相変わらず洒落にならない数で来る奴等だよな」
「それはもうわかっている筈だ」
ブライトがここで彼等に対して言った。
「だからだ。驚くことはでない」
「それもそうか」
「考えてみればそうだよな」
彼等もそれで納得するのであった。
「じゃあ迎撃だよな」
「いつもと同じで」
彼等も何だかんだで迎撃用意に入る。その後ろからメルビが言ってきた。
「まさか来てもらえるとは思わなかった」
「ボゾンジャンプを使いましたので」
それにルリが応えてきた。
「だからです。それで」
「そうだったのか。それでは」
「はい、それでです」
またルリは言う。
「皆さんを失うわけにはいきませんから」
「バルマー人であってもか」
「そんなことは。関係ないのです」
ルリは静かな声でメルビに返すのであった。
「バルマー人であっても地球人であっても」
「変わらないというのだな?」
「そうです」
また答えてみせた。
「一矢さんとエリカさんが私にそれを教えてくれました」
「竜崎一矢がか」
メルビも彼のことはよく知っていた。何故なら彼とエリカが今の彼等を導いたのだから。
「そうだな。彼がいるからこそ」
「私も。一矢さんがいなければ」
ルリ自身も言う。
「こうはなりませんでした」
「そうだな。我々も」
「ですから。ここはお任せ下さい」
こうまで言う。
「決して皆さんを失いませんから」
「わかった。それでは頼む」
メルビもそれを受けて頼んだ。
「我々もできる限り戦うが」
「はい」
「俺達は負けやしない!」
一矢はその中で叫ぶ。
「この火星を・・・・・・エリカ達を守ってみせる!」
「一矢・・・・・・」
「エリカ、俺達が一緒になるときは戦乱が完全に終わってからだ」
「ええ」
その約束である。だからこそ彼は戦っているのだ。
「その時の為にも。俺は今ここで君を守ってみせる!」
「そうだ!バームの人達を守れ!」
豹馬も叫んだ。
「何があってもな!」
「ようし!行くぞ皆!!」
「おう!」
豹馬は健一の言葉にも応えた。
「何があってもな!」
「敵、来ました!」
メグミが報告してきた。
「第一陣、数は四千!」
「最初からかなりの数ねえ」
ハルカはそれを聞いて呟く。
「本気の中の本気ってことね」
「その本気、退けてみせます」
ユリカはそのバルマー軍を見据えて言う。
「ナデシコも前へ」
「総攻撃ですね」
「まだ少し早いでしょうか」
「いえ」
ルリはそれはよしとしたのだった。
「今は。その時です」
「そうです、今から済めないと」
ゆりかはそうではないと駄目だと思っていたのだ。その直感で。
「だからです。全軍攻撃です!」
「よっし!突っ込むぜ!」
「それでも待って下さいヤマダさん」
「ダイゴウジだ!だがどうした!」
「エステバリスのテリトリーは忘れないで下さいね」
「何ィ!?折角のこの場面でか!」
彼はまだ今一つわかっていないようであった。
「折角突っ込むべきなのにか!」
「突っ込んでもいいですがそうしたらエステバリスのエネルギーが」
「くっ、そうだった!」
これでは彼も納得するしかなかった。
「不運だ!このダイゴウジ=ガイ一代の不運!」
「どちらにしろナデシコも前に出ます」
ルリは慰めるようにしてダイゴウジに告げた。
「ですから御安心下さい」
「わかった。ではナデシコと共に!」
「俺は先に行かせてもらうよ」
アキトはブラックサレナを突撃させていた。
「それができるから」
「はい、御願いします」
「ブラックサレナが量産化されれば」
ダイゴウジはエステバリス系の中で一機だけ突っ込むブラックサレナを見て羨ましそうに言うのであった。
「俺達も行けるというのに!」
「まあまあ旦那」
そんな彼をサブロウタが慰めてきた。
「行っても仕方ないしよ。俺達は俺達でやろうぜ」
「そうか」
「ほら、見なよ」
もう彼等の目の前にバルマーの大軍がいた。敵には困らない様子であった。
「どんどん倒していくぜ」
「そうだな。どいつもこいつも俺が相手をしてやる!」
いつものダイゴウジに戻っていた。
「このダイゴウジ=ガイが!」
「ちょっとやそっとじゃ負けるわけにはいかないシチュエーションなんでね!」
サブロウタも軽口とは裏腹にかなり熱くなっていた。
「格好つけさせてもらうぜ!」
「前面に火力を集中させて下さい」
エステバリス隊の射撃を周りに従えながらユリカは言う。
「ミサイル。そしてグラビティ=ブラストの用意を」
「わかりました。ではそれで」
「照準は特に合わせなくていいです」
ユリカはユリにこうも言うのであった。
「数は多いです。それよりも波状攻撃を浴びせて下さい」
「了解です。ではそれで」
「ミサイル発射!」
ユリカは指示を出す。それを受けてナデシコはミサイルを放つのであった。
ミサイルが放たれるとそれだけで敵がかなり撃墜される。しかし敵の数はまだまだ多くそこにまた新手が出て来るのであった。
「敵、第二陣!」
「民間人の誘導はどうなっている!」
リーが報告したシホミに問い返した。
「今メルビ長官達が誘導中です」
「そうか、ならいい」
まずはそれを聞いて安心したようであった。
「彼等が狙われては元も子もないようだからな」
「はい、そうですね」
「だが。このバルマー軍は」
リーはあらためてバルマー軍を見上げるのであった。
「あくまで我々を狙っているな。やはり敵の司令官はマーグ司令官のようだな」
「兄さん、何処にいる!」
タケルが戦場を駆けながら兄を探していた。
「今度こそ。俺は兄さんを!」
「生憎だが司令はここにはおられぬ」
「!?誰が御前は」
「アタッド」
その声は名乗った。
「アタッド=シャムランよ。そしてこれは私の愛機ヴァイクル」
「バルマーの指揮官か!」
「ええ、そうよ」
タケルのその問いに答えてきた。
「よくわかったわね」
「兄さんは何処だ!教えろ!」
「安心しなさい、この作戦には参加しておられるわ」
「そうか、なら」
「ええ。けれど」
だがここでアタッドは言うのであった。
「貴方は司令には会えないわよ」
「何っ、どういうことだそれは」
「それはこういうことよ!」
ここでロゼも出て来た。
「なっ!?ロゼ!」
「まだ生きていたのか!」
ロゼはタケルに対して叫びながらゼーロンのビームを放ってきた。タケルはそれを慌ててかわす。
「くっ!」
「言った筈だ!司令には近寄らさせはさせん!」
「そうしてまた来るというのか!」
「司令は私がお守りする!」
ロゼはそれもまた言うのだった。
「だからだ!御前なぞに!」
「兄さんは騙されているんだ!」
「くっ・・・・・・!」
その言葉には何故か言葉を詰まらせるロゼであった。
「それは戯言だ!」
「嘘じゃない!嘘をついているのは御前達だ!」
タケルはなおもこう言い返す。
「俺にはわかる!だから俺は兄さんを絶対に!」
「甘い、地球人!」
後ろからアタッドが彼に攻撃を浴びせてきた。だがタケルはその超能力を使ってか尋常ではない素早さを見せてそれをかわすのであった。
「くっ、その巨体で!」
ゴッドーマーズの動きを見て思わず呻くアタッドであった。
「何と素早い!」
「俺は・・・・・・誓っているんだ!」
タケルは剣を手にしてまた言う。
「兄さんを助け出してみせると!バルマーから!」
「それは一理ある」
ここで助っ人が来た。ミリアルドであった。
「ミリアルドさん!」
「君もまた彼と同じだ」
ミリアルドはここで果敢に前線で戦う一矢を見ながらタケルに言うのだった。
「その心がある限り目的は果たされる」
「心があれば」
「その心に打たれぬ者はいない」
彼の言葉であった。
「だからだ。今は何としても生き抜く。いいな」
「はい!これからの為に!」
「未来は生きていれば必ず訪れるもの!」
そう叫んでアタッドのヴァイクルに攻撃を仕掛けるのだった。そのヒートロッドで。
「それを信じるからこそ。私は戦おう!」
「地球人が!」
ヒートロッドのその複雑な動きをかわしながら言う。
「御前達にそれができるなどと!」
「できないという保障は出来ない筈だ」
しか彼の言葉は強いものであった。
「何故なら。誰もが同じだからだ」
「同じだと。御前達地球人と誇り高き我々がか」
「そうだ。何も変わりはしない」
彼はそれを確信しているのであった。
「所詮は同じ存在。劣っても優れてもいない」
「戯言を。ならば!」
ヴァイクルを前にやってきた。しかしその攻撃もまたミリアルドに受けられてしまった。
「くっ!」
「この火星もバルマーの人達の命も渡さぬ」
ミリアルドは攻撃を受けながらクールに答えてみせた。
「何があろうとな」
「まだ戯言を!」
しかしアタッドの考えはまだ変わらない。彼等も激しい戦いに入っていた。
そこでであった。新たな増援と共に不意にあるマシンが姿を現わしたのであった。
「!?クスハ!」
「え、ええ!」
ブリットとクスハはそのマシンを見て声をあげた。
「あれはまさか」
「真・龍王機!」
「やあ、久しぶりだね」
孫光龍の声がしてきた。
「クスハ君にブリット君」
「!!」
「孫光龍!何故貴様が帝国監察軍に!?」
「さあ」
しかし孫はブリットのその問いにはとぼけて返す。
「何でだろうねえ?」
「ふざけるな!質問に答えろ!」
ブリットはそのふざけた様子に激昂する。しかし孫は平気であった。
「あははは!」
「何故笑う!」
「いいねえ、そのありきたりな反応!」
「何!?」
「いやいや失敬」
笑いを止めてまた言ってきた。
「僕は暑苦しい奴が嫌いでねえ。ついからかいたくなるのさ」
「では聞きます」
今度はクスハが彼に問うてきた。
「どうして超機人の操者である貴方が帝国監察軍に手を貸しているんです!?」
「何、ちょっとした縁さ」
「縁!?」
「しかもよ」
甲児はここで不意に思うのであった。
「何でこいつ今ここにいるんだ?」
「それもそうですね」
洸もそれに気付いた。
「何故ここに」
「それもまあ色々とあってね」
孫は彼等の言葉にも応えてきた。
「僕も忙しいんだよ。それとも」
「それとも?」
「運命って奴かな?」
「待て」
ここでヘルモーズが出て来た。そうしてエペソがここで孫に問うのであった。
「そこの得体の知れないマシンの男」
「僕のことだよね」
「そうだ、貴様だ」
エペソはその孫に対して問うた。
「地球の者のようだが。我々に協力するというのか」
「駄目かな」
エペソを前にしても平気な顔をしていた。
「それじゃあ。上の人はもう知っていると思うけれど」
「上というと」
「君達は銀河辺境方面軍だったね」
何故かそれも知っていた。
「違ったかな」
「いや、その通りだ」
ロゼが彼に答えた。
「そこまで知っているのか」
「まあ話は聞いているよ」
「それではだ」
ロゼはここで慎重に話を進めてきた。
「少し待て。司令に確認してみる」
「マーグ司令だったね。ギシン家の」
「そこまで知っているか」
ロゼは今の言葉でまた内心孫に対して警戒を抱いた。
「だから。縁があるんで」
「貴様一体」
アタッドはあからさまに彼に不審の目を向けてきた。
「何者なのだ?」
「待て、アタッド」
「エペソ」
アタッドはエペソの言葉を受けて動きを止めた。
「味方だというのなら。攻撃を仕掛けることはない」
「しかし」
「しかしでもだ。司令のお言葉を待て」
バルマーは階級社会である。マーグ爵位を考えれば従わないわけにはいかないのだ。
「いいな」
「・・・・・・わかった」
アタッドは納得できないがそれでも頷くしかなかった。
「ではな。それで」
「うむ」
「それで副司令」
エペソはあらためてロゼに問うてきた。
「司令は何と」
「エペソ」
ここでマーグ本人が出て来た。戦場にも。
「兄さん・・・・・・!」
「霊帝陛下から直接の御言葉だ」
「陛下から!?」
「そうだ。孫光龍だったね」
「うん、そうだよ」
孫は涼しい笑みをマーグにも向けていた。
「そしてこれは真・龍王機だよ」
「話は聞いた。協力を歓迎する」
「ではやはり」
「これで話はわかってもらえたね」
エペソの言葉をよそに孫はまたブリット達に顔を向けてきた。
「僕のポジションってやつが」
「そうか、バルマー軍かよ」
甲児はそう捉えていた。
「じゃあ容赦はしねえぜ。覚悟しな!」
「この人類の敵が!」
今度はタスクが叫ぶ。
「ぶちのめしてやるからな!覚悟しやがれ!」
「おやおや。短気なメンバーが増えたねえ」
孫はタスクの言葉を聞いてまた笑うのであった。
「またこれはどうにも。僕だってね」
「何だよ!」
「人界を守るつもりなんだよ」
「ふざけるな!」
今度はレオナが言い返した。
「侵略者の仲間になって何が人界を守るだ!」
「そうだ!」
ブリットも叫ぶ。
「それでどうしてそんなことを言える!」
「だから前も言った通りだよブリット君」
しかし孫は平然としたままである。
「僕は僕のやり方で使命を果たすまでさ」
「御前のやり方だと」
「そういうことさ。さて」
ここで真。龍王機を動かしてきた。
「行かせてもらうよ。こちらも」
「来た・・・・・・!」
「外様だからねえ」
ここで孫はまた言ってきた。
「誠に残念ながら同胞である君達を抹殺してバルマーへの忠誠の証を立てなくちゃならないのさ」
「ふざけるんじゃないわよ!」
フレイがその言葉を聞いて激昂してきた。
「私達を抹殺ですって!?」
「そうさ」
「あんた本気で地球の敵になるつもりんw!」
「だから違うよ」
フレイにも答えてきた。
「僕は母なる星を護る為にバルマー側へついたのさ」
「えっ!?」
「戯れ言を言うな!」
クスハとブリットはそれを聞いて同時に叫んできた。
「超機人は人界を、地球を護る為に造られた存在だ!」
「そうよ!」
ブリットに続いてクスハも言う。
「貴方の様に私利私欲で超機人を使うことなんて許されないわ!」
「おやおや」
しかしクスハの言葉を受けても孫の余裕は変わらない。
「二十年程度しか生きていない君達が超機人について何所まで知っているのやら」
「どういう意味だ!?」
「どういう意味だろうねぇ」
またとぼけてみせる。それを聞いてまたしても激昂するブリットであった。
「貴様!いい加減にしろ!」
「ブリット」
アムロがここで彼を制止した。
「奴の口車に乗るな。向こうのペースにはめられるぞ」
「は、はい!」
「さあ、来たまえ!」
孫が高らかに叫ぶ。
「君達に超機人の真の力を見せてあげよう!」
「いいか、皆!」
アムロが指示を出してきた。
「あの真・龍王機も大事だがまずは周りだ」
「そうだよな」
「まずは周りを」
カイとハヤトがそれに応える。
「あの龍は」
「私達が行きます!」
「任せて下さい!」
「いいのか、それで」
アムロは二人の言葉を受けて問い返した。実は彼が行くつもりだったのだ。
「はい、御願いします」
「ここは何があっても!」
「わかった。それじゃあ」
「来ました!」
ミリアリアがここで叫んだ。
「前から!真・龍王機が!」
「こっちに!」
「いえ!」
マリューに応える。
「龍王機のところです!」
「そう、向こうもわかっているのね」
マリューはそれを聞いて呟いた。
「お互いの相手が」
「おいおい、ボスだったら速攻で潰さないと駄目だろうがよ!」
「僕達が抹殺してやるよ!」
「殺す」
オルガ、クロト、シャニが名乗り出て来た。
「おいクスハ、ブリット!」
「僕達が助けに行くよ!」
「任せろ」
「いや、それはいい」
「ここはね」
だが二人はそれを断るのだった。
「俺達がやる!」
「だから三人は他の敵の相手をして!」
「おい、いいんだなそれで」
「そいつの強さはかなりだよ」
「それを御前達だけで」
「いや、ここは二人に任せるべきだよ」
サイが三人に言ってきた。
「何だよ、御前までそんなこと言うのかよ」
「状況はやばいじゃない、それでもなの?」
「二人だけだと。死ぬぞ」
「大丈夫だよ」
だがサイはまた言う。
「二人ならね」
「そうね。じゃあ三人はそのまま周りの敵を倒して」
マリューはサイの言葉を受けて三人に指示を出した。
「イライジャ=キール中尉と一緒にね」
「ちぇっ、わかったよ」
「じゃあボスは任せて」
「雑魚を。消す」
「こっちにもかなり来ています」
カズイがここで報告する。
「艦長、ここは」
「ええ、ケーニヒ少尉」
「はい」
舵取りを行っているトールに声をかけた。
「動きは任せるわ」
「わかりました。それじゃあ」
「バリアント及びローエングリンの用意」
マリューは指示を出した。
「いいわね」
「はい、それじゃあ」
「敵が多いっていうのはこういう時には楽よね」
マリューは多くの戦いを経てこうした時にも余裕を見せていた。
「的を合わせなくていいから」
「確かにそうですね」
それにノイマンが応える。
「大変なのは事実ですが」
「そうね。用意はできたかしら」
「はい!」
カズイが応える。
「何時でもいけます!」
「そう。ぞれじゃあ」
それを受けて指示を出す。まずは。
「バリアント発射!」
「了解、バリアント発射!」
サイが応える。それで周囲の敵が撃たれる。
それで周囲を楽にした後で。今度はローエングリンの射撃に入るのであった。
トールが敵の多い場所に艦首を向ける。それと共にマリューは命令を下した。
「ローエングリン一番二番撃てーーーーーーーっ!」
「ローエングリン撃てーーーーーーーーっ!」
ミリアリアが復唱する。その射撃でバルマーの軍に大きな穴を開けるのであった。
圧倒的な数のバルマーであるがそれでもロンド=ベルはかなり優勢に戦っている。その中でクスハ、ブリットの戦いも佳境に入っていた。
「はははは!いいねえ!」
龍虎王の攻撃をかなり受けてもまだ真・龍王機は平気な顔をして戦場にいた。
「流石僕の主を倒した者達だ。賞賛に値するよ!」
「馬鹿な」
ブリットはまだ戦場に立っている真・龍王機を見て驚きの声をあげる。
「あれだけの集中攻撃を受けて平気なのか!?」
「それにあの人の主って一体」
だがここでも孫の返答はふざけたものであった。
「さあ何なんだろうねぇ?」
「そうか。言わないのか」
ブリットはもうわかっていた。
「ならいい」
「ふふん、僕の挑発に乗らなくなったみたいだね」
孫はそれを見て言う。
「まあ今日のところはこれでね」
「帰るのか」
「そうだよ。それに君とクスハ君の限りある命に万が一のことがあったらきつ~いお叱りを受けてしまうからねぇ」
「え!?」
「どういう意味だ!?」
「その内わかるよ」
孫は二人の言葉にやはり相変わらずの様子で言葉を返す。
「その内ね。それじゃあまた会おう」
「待て!」
「生憎待つのは性分じゃなくてね」
「性分じゃないだと!?」
「そうだよ。それじゃあね」
ブリットに言葉を返して戦場から消えるのであった。
「また会うだろうけれど」
「くそっ!」
ブリットは孫の消えた姿を見て怒りの声をあげた。
「孫光龍め、ふざけた真似を!」
「けれど一体」
クスハはクスハで。ブリットの言葉が気になっていたのであった。
「私とブリット君に万が一のことがあったらって。どういうことなの?」
その間にも戦いは続く。しかしそれも佳境になっていた。バルマー軍は次第に戦場を離脱していっていたのである。もう残っているのは僅かであった。
「もう少しだな」
「そうですね」
トーレスがブライトに応えていた。
「このままいけば間も無く」
「いいか」
ここでブライトは念を押してきた。
「追撃をする必要はない」
「それはまたどうしてですか?」
「すぐに来る」
それが理由であった。
「彼等はな。だからだ」
「あえて今は追わない、ですか」
「そうだ。わかったな」
そこを念押しするのであった。
「わかりました。それでは」
「次が決戦だ」
こうも言うのであった。
「だからだ。いいな」
「了解しました。それじゃあ」
「今の戦いは前哨戦は過ぎない」
ブライトはまた言う。
「次が本気だ」
「でしょうね」
戦いは終わった。しかしそれでもまだ彼等は安心してはいなかった。エリシオン基地に入っても警戒を解いてはいなかったのである。
「問題はだ」
大河はブリーフィングルームに主だった面々を集めて話していた。
「彼等が火星に来たことだ」
「そうですね」
「やっぱり火星を拠点にするつもりなんでしょうね」
彼等もそれはもうわかっていることであった。
「やはりここを拠点として」
「随分と慎重というか」
「バルマーも必死なのだ」
大河はそう彼等に答えるのであった。
「必死ですか」
「そうだ。考えればそれも当然だ」
大河はまた言う。
「彼等とて戦いに勝たなければならないのだからな」
「しかも」
今度はブライトが言う。
「敵の司令官自ら来ている。それだけ本気だということだ」
「ええ、兄さんも」
タケルもわかっていた。
「来ているんだ。また」
「ここでも決戦か」
彼等は言い合う。
「次だな。正念場は」
「そうだな」
「皆、ちょっといいかしら」
ここでミサトが一同に告げてきた。
「はい?」
「何か」
「通信が入ってきています」
「通信!?」
「地球からじゃないよな」
「まさか」
彼等は口々に言い合う。誰からの通信かわかりかねているのだ。
「一体誰が」
「来ているのか」
彼等は怪訝に思う。ここでモニターが開かれる。そこに出て来たのは。
「なっ!」
「御前は!」
「久し振りだな、ロンド=ベルの諸君」
「兄さん!」
「マーグ!」
タケルとコスモクラッシャー隊の面々が彼の顔を見て同時に声をあげた。
「私はゼ=バルマリィ帝国辺境銀河方面軍第総司令マーグ=ギシンだ」
「ギシン家だったのか」
レッシィがその家の名を聞いて声をあげた。
「あの男」
「ギシン家っていったら」
「そうさ」
アムにも答える。
「十二支族の一つさ、バルマーのね」
「そうね。やっぱりそれだけの家だったってことね」
アムはそこまで聞いてあらためて頷くのであった。
「じゃあタケルも」
「俺には関係ないよ」
タケルはそうアムに言葉を返してきた。
「俺は。地球人だから」
「そう。そうだったわね」
アムは今のタケルの言葉に顔をあらためて応えるのであった。
「御免なさい、それは」
「いいよ。それにしても」
タケルはアムを許してからあらためてモニターのマーグに顔を向けるのであった。そこで彼はロンド=ベルに対して話を続けていた。
「ところで」
ミサトはここで気付いたことがあった。
「彼の後ろにいる者ですが」
「そうだな」
フォッカーがミサトに対して応えた。
「先の戦いの司令官ラオデキア=ジュデッカ=ゴッツォと同じ顔をしている」
「そういえば」
ミサトはここで己の記憶を辿った。
「彼の副官ユーゼス=ゴッツォは彼のハイブリッド=ヒューマンを大勢出してきましたけれど」
「あの時ですね」
「ええ、そうよ」
クスハに対して応える。
「覚えているのね」
「忘れられません、あの時は」
クスハも彼を見ていた。その緑の髪の男を。
「じゃあつまり」
「ええ、多分ね」
ミサトは険しい顔でまた答える。
「同じ様な人間が何人もいるようね」
「ですね。やっぱり」
「それでだが」
マーグはここで彼等に問うてきた。
「君達の指揮官は誰なのだ?」
「指揮官か」
「そうだ。彼に聞きたいことがあるのだ」
彼は言うのであった。
「誰なのだ?いないというわけではないだろう?」
「では長官」
「私で宜しいのですな」
「はい」
グローバルは大河に勧めていた。
「ここは御願いします」
「わかりました。それでは」
それを受けて前に出る。そうしてマーグと対するのであった。
「貴殿なのだな」
「そうだ」
そのうえでマーグに応えて言うのであった。
「私はGGG長官大河幸太郎だ」
まずは名乗った。
「まずは我々に接触を求めることの意味を問いたい」
「私の目的は火星の掌握。そして」
「そして?」
「あらたにできたことだが」
そう前置きしてまた言ってきた。
「君達の突出したその戦力を配下として迎えることだ」
「やっぱり」
「ええ、そうね」
ジュンコの言葉にミサトが応えた。
「バルマー戦役の時と同じね」
「目的は変わらないということね」
「そうね」
「君達が取るべき道は二つ」
マーグの言葉も同じであった。
「バルマーに降伏し覇道を共に歩むか。それとも」
「それとも?」
「我々を倒しゼ=バルマリィ帝国全てを敵に回すかだ」
「そうなのか」
「そうだ。それでだ」
マーグはあらためて大河に問う。
「選択するのだ。前者の返答であれば君達は我が盟友となる」
まずはこう述べる。続いて。
「そうすれば君達の敵を私が廃し地球に未来永劫の平穏を約束しよう」
「何かこれって」
「ええ。やっぱり違うわね」
ミサトは今度はウッソに応えた。
「話の切り口がラオデキヤとは違うわね」
「しかし」
今度はマリューが言ってきた。
「地球の敵を異星人である帝国監察軍が排除するなんて」
「全ては銀河の秩序を保つ為だ」
マーグはそうマリューに答える。
「君達が帝国の支配下に入るのであれば地球圏の秩序は保証される」
「信じられないわね」
ミサトは正直に述べた。己の考えを。
「その話は」
「そうね」
そしてマリューもそれは同じであった。
「ええ。地球圏を乗っ取る為の口実にしか思えないわ」
「それは違う」
だがマーグはそれを否定する。
「我々の活動は、文明をその破壊者達から保護する為のものである」
「どうかしら」
「返答は如何に?」
ミサトの言葉をよそにマーグは大河に問うてきた。
「一日だけ猶予をもらいたい」
大河はまずはこう答えるのであった。
「私の一存では決められないのでな」
(セオリー通りね)
ミサトはそれを聞いて思った。
(長官はこちらの態勢を整える為に時間を稼ぐ気ね)
「わかった」
マーグはそこまで聞いたうえで頷くのであった。
「では君達の良き返答を期待している」
ここまで言ってモニターを切る。話は一旦はそれで終わった。
「長官」
ミサトがここで大河に報告してきた。
「帝国監察軍が動きはじめました」
「返答は聞くまでもないということか」
「おそらくは」
ミサトはこう答えた。
「彼等の申し出はバルマー戦役の時にも断っていますので」
「地球圏との連絡は取れるか」
「駄目です」
命が言ってきた。
「強力なジャミングが掛けられています」
「どうやら帝国監察軍は地球の命運を我々に決めさせるつもりらしいな」
大河の顔に緊張が走る。
「あと一日」
「そうです、あと一日です」
ミサトも言う。
「そこで全てが決します」
「一日で」
「火星の一番長い一日がはじまるな」
「皆を集めてくれ」
大河はここで指示を出した。
「そして。そこで決めたい」
「はい」
「それでは」
「戦いは避けられないとしても」
それでもであった。大河は言うのであった。
「皆の意見を聞きたい。それでいいな」
「はい。では」
ミサトがまた応える。どちらにしろ長い一日がはじろうとしていた。

第三十八話完

2008・1・18   
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