スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第三十話 二人の刺客
第三十話 二人の刺客
サイド3へと向かうロンド=ベル。彼等は今度の敵は何かと考えていた。
「ゲストかな」
「どうだろうな、それは」
コウがチャックの言葉に応えていた。
「その辺りはわからないな」
「そうなんだよな。ここまで敵が入り乱れているとな」
そこが問題であった。しかも彼等はどうやら互いに対立し合っているようなのである。
「何が何かわからなくなってきたよ」
「まあそれでも同盟結ばれるよりましだろ?」
コウもそれを言う。
「そうしたらかなり厄介だぞ」
「そうだよな。そういえばゲストとインスペクターってさ」
「何だ?」
「兵器一緒だよな、使っているのが」
「同じ系列の組織なのかな」
コウはこれは前から考えていた。
「やっぱり」
「少なくともバルマーじゃないよな」
「ああ、それはな」
これははっきりとわかることであった。
「間違いなく違うな。むしろ」
「バルマーと対立しているか」
「そうだな」
「それでだが」
バニングがここで二人に対して言ってきた。
「最近バルマーと奴等のどちらかで戦闘があったようだ」
「そうだったんですか」
「そうだ。小競り合いだがな」
コウ二人に告げる。
「戦闘があったのは事実だ」
「それを考えるとやっぱりあれですね」
アデルがそれを聞いて言う。
「彼等とバルマーは対立しています」
「そうだ」
バニングはアデルのその言葉に頷いた。
「これは我々にとっては好都合だがな」
「そういえばあれですね」
ヘイトがここで話に入る。
「地球にいる勢力もバルマーとは対立しているみたいですし」
「百鬼帝国に邪魔大王国だよな」
モンシアが言う。
「その連中は」
「そうだ。どうやら地球に下りたバルマーの先遣隊を撃退したらしい」
「何か奴等に地球を守られるっていうのもな」
チャックはそれを聞いて複雑な顔になる。
「微妙だね」
「しかし今回は助かったよ」
コウはそれは素直に受け入れていた。
「今はただでさえ大変だからな」
「しかしあれだな」
モンシアは地球にバルマーの軍勢が向かったということに顔を顰めさせていた。
「奴等は俺達と戦っていてまだ地球に兵を向けられるっていうのかよ」
「それだけ力があるということだ」
バニングはそう彼に答える。
「それはわかっておけ」
「わかりたくないですけれどね」
「さて、そろそろサイド3だが」
ヘイトが言う。
「何が出て来るやら」
「それですね」
アデルもそれを考えていた。
「シャドウミラーではないでしょうが」
「連中は当分出番なしだろ」
カイが言う。
「あんだけ痛めつけたんだからな」
「じゃあバルマーかゲストかな」
「それかインスペクターね」
ハヤトとセイラも話に入る。
「どれかね。バルマーといっても二つあるけれど」
「マーグ司令の軍と」
「もう一つってわけか」
ハヤトとスレッガーが応える。
「もう一つが問題なんだけれどな」
「グラドスだったな」
リュウは彼等の名前をここで出した。
「随分酷いことをする奴等だな」
「あれは俺も驚いたぜ」
モンシアも今回は顔を顰めさせる。
「プラントに向けて核ミサイルだからな」
「少なくともマーグの作戦じゃないですね」
コウもそれはわかっている。
「もっととんでもないっていうか」
「だよな。昔のジオンみてえだぜ」
カイはここでジオンを出した。
「それかティターンズかね」
「そんなので済めばいいけれど」
しかしセイラはここで顔を曇らせる。
「彼等はもっと」
「とんでもないっていうんですか」
「ええ」
コウにも答える。
「そう感じるの。私は」
「エイジ君から聞いたんですが」
ハヤトが皆に告げる。
「グラドス人っていうのはバルマーの中でもエリートらしいです」
「エリート!?」
「はい、十二支族の一つの流れで。それでグラドス星に領地があるらしいです」
「じゃあバルマーの分家みたいなものかよ」
「そうなるね」
そうカイに答える。
「簡単に言うと」
「何かそれ言うとタケルと同じなんじゃねえのか?」
「そうなるな」
リュウはカイの今の言葉に頷いた。
「つまりはバルマー人の傍流か」
「ですからかなりプライドが高いそうです」
ハヤトはまた言った。
「そのせいでバルマー帝国内でもかなり酷いことをしているとか」
「あれを見たらわかるさ」
ヘイトが忌々しげに言った。
「プラントのあれはな。シンが切れるのはいつものことだったが」
「あの坊主も切れていたからな」
スレッガーはキラについて言及した。
「敵のコクピットを狙って撃ち抜いていたからな」
「あれは当然ですよ」
コウはそれは当然だと言い切った。
「皆そうしていましたしね。許せませんよ」
「そうね。私もその時は同じだったわ」
セイラもコウの言葉と同じであったのだ。
「今でもそれでいいと思っているし今度会っても」
「グラドスだけは許せねえな」
カイも普段の飄々とした顔ではなかった。
「サイド3でも何かしやがったら」
「少なくともグラドスだけは別だ」
バニングもこれは同じだった。
「容赦はしないでいいぞ」
「わかってますよ」
コウが最初に彼の言葉に応えた。
「容赦しませんから」
「奴等を容赦すればそれだけ一般市民に被害が出る」
それがわかっているのだ・
「だからだ。いいな」
「はい」
「ああ、そこにいたんだ」
ここでバーニィが皆のところに来た。もうパイロットスーツを着ている。
「そろそろだよ」
「早く用意してね」
クリスもいた。彼女も皆に声をかける。
「出撃だから」
「ああ、わかってるよ」
コウが二人に応える。
「それじゃあ今から」
「気分のいい敵だったらいいけれど」
「悪いが敵は選んでくれねえさ」
モンシアがチャックに言う。
「それは我慢しな」
「じゃあ終わってからのディナーは選ぼうかな」
「今日のはもう決まってるぜ」
ところがそれにもヘイトが言ってきた。
「何ですか、それは」
「和食ですよ」
アデルが答える。
「確かお刺身ですね」
「ああ、だったらそれでいいよ」
チャックはそれで満足だった。
「クスハかラクスが切ったものじゃない限りは」
「彼女達もね」
セイラは難しい顔を見せてきた。
「あれも一種の才能ね」
「セイラさん料理の方は」
「一人暮らし長かったから」
そうクリスに答える。
「それなりのものはできるつもりよ」
「そうなんですか」
「少なくともあの二人のよりは」
これは断るのだった。
「あとミナキのも」
「何でうちは料理上手と料理下手の差が凄いんだろうな」
「それも謎だね」
ハヤトがカイの言葉に応える。
「よく考えたら」
「そうだよな。地雷が凄えからなあ」
カイは地雷と評する。
「うちの料理は」
「割合でいけば少しだけれど」
「だから地雷なんだよ」
スレッガーが言う。
「地雷は少し紛れ込んでいるからこそ効果があるんだ」
「ですね」
「確かに」
カイとハヤトはスレッガーの今の言葉に頷いた。
「そうじゃなければ効果がない」
「言い得て妙ですね」
「その地雷に気をつけて戦いの後は飯を楽しむとしようぜ」
「そういうことだな」
リュウも言う。
「じゃあ皆行くか」
「はい」
「それじゃあ今から」
皆それに頷く。そうして出撃するのであった。
ロンド=ベルは出撃した。サイド3のすぐ前に布陣している。目の前にはバルマーの軍勢がいる。
「!?見たところ」
シナプスはその彼等を見て言う。
「数は大したことがないな」
「そうですね」
それにジャクリーヌが応える。
「レーダーにも反応がありません」
「ではあれか」
シナプスはそれを聞いて考えた。それから述べた。
「彼等は先に地球に降下して百鬼帝国達に撃退された軍だな」
「そのようですね」
それにパサロフが答える。
「ダメージを受けている機体も多いですし」
「だからだな。よし」
それを聞いてすぐに決断を下した。
「ここで彼等を叩いておく。いいな」
「了解」
「それでは」
「全軍攻撃開始だ」
今回は積極的に前に出ることにした。
「そして敵の勢力を削いでいくぞ」
その方針になった。こうしてロンド=ベルはすぐに敵に攻撃を仕掛けるのだった。
ダメージを受けていたバルマー軍は呆気なく劣勢に陥った。指揮艦では不穏な空気が流れてさえいた。
「まずいことになったな」
「そうね」
フーレの艦橋で仮面の男女が話をしていた。
「地球降下に失敗しこれでは」
「司令に何をされるか」
「わかったものではない。損害を最小限に食い止め撤退するか」
「そうね。それじゃあ」
「うむ・・・・・・いや」
だがここで男が何かに気付いた。
「待て」
「どうしたの!?」
「あれは」
クォヴレーの機体に気付いたのだ。
「あれはまさか」
「そういえば」
そして女はセレーナを見ていた。
「まさかあの女」
「ふむ、そうか」
男はここで思わせぶりな笑みを口元に浮かべた。そうして言うのだった。
「お互いロンド=ベルに獲物を見つけたようだな」
「そうね。それじゃあ」
「撤退の前に一仕事だ」
そう言うと艦橋を後にした。
「それでいいな」
「ええ、わかったわ」
女もそれに頷く。そうして彼等は出撃したのであった。
「何だありゃ」
「見たこともないマシンだな」
ロンド=ベルの面々は戦闘の中でフーレから出た二機の黒と金、青と銀のマシンを見て声をあげた。中型で翼を持っているように見えるマシンであった。
「バルマーの新型か」
「それか指揮官機か」
「ふむ、このヴァルク=バアルの調子はいい」
「ヴァルク=イシャーもね」
二人はそれぞれのマシンの中で言うのだった。
「では俺はあの男をやる」
「わかったわ。では私は女を」
「それぞれな」
「仕留めさせてもらうわ」
そう言い合うとそれぞれ動いた。そうしてヴァルク=バアルはベルグバウに、ヴァルク=イシャーはソレアレスにそれぞれ向かうのであった。
「アイン」
男はクォヴレーに対して声をかける。
「与えられた任務を遂行できぬ者は欠陥品だ」
「アインだと!?」
クォヴレーはその声に微かに眉を顰めさせた。
「それは一体誰だ」
「ゴラー=ゴレム隊の情報漏洩を防ぐ為にも御前を破壊する」
そう言って攻撃を浴びせる。クォヴレーはそれを何とかかわした。
「この攻撃は」
「何だ、今のは!?」
「急に出て来た!?」
クォヴレーと同じ小隊にいたアラドとゼオラが今の敵の攻撃を見て言う。
「何て速さなんだ!」
「クォヴレー君、気をつけて!」
「今のをかわしたか」
「誰だ、貴様は」
「わかっていると思うが」
仮面の男はこうクォヴレーに言った。
「とぼけているのか」
「とぼけている。何をだ」
「ふん、記憶をなくしていうのか」
男はクォヴレーの言葉を聞いてこう考えた。
「ならそれでいい。消えろアイン」
剣を出して斬り掛かる。それがベルグバウを切り裂いた。
「うっ・・・・・・」
「クォヴレー!」
「クォヴレー君!」
今の一撃を受けたクォヴレーはそのまま落下していく。仮面の男はそれを見て女に通信を入れる。女は女でセレーナを執拗に攻めていた。
「スペクトラ」
女の名を呼んだ。
「俺はあいつを追う」
「わかったわ」
スペクトラと呼ばれた仮面の女は男のその言葉に頷いた。
「じゃあキャリコ、私は」
「その女をやるのか」
「ええ。どうも向こうもそれを望んでいるようだしね」
「わかった。ではここは任せるぞ」
「わかったわ」
ここまで話すとキャリコはクォヴレーを追いに向かった。通信を切るとスペクトラはこれまで以上にセレーナに襲い掛かるのであった。
「さあ、覚悟はいいわね」
「覚悟はねえ」
セレーナなスペクトラを見据えながら言った。
「そっちがするものよ。隊長と皆の仇」
叫びながらソル=フェンサーを放つ。
「ここで取るわ!」
「それができるかしら」
だがヴァルク=イシャーは分身でそれをかわすのだった。
「貴女に」
「くっ、今のを!」
「見切るのは簡単よ」
セレーナを挑発するようにして言う。
「この程度の攻撃ならね」
「ならこれはどう!?」
また攻撃を浴びせる。高速で動き回り。
「これならかわせて!?」
「甘いわね・・・・・・むっ」
ここで援軍が来た。アイビスとスレイであった。
「スレイ!」
「援護に回る!」
「アイビス、スレイ」
「いい、セレーナ」
ツグミもいた。彼女がセレーナに対して告げる。
「貴女でもそのマシンの相手は難しいわ。三機でかかれば」
「悪いけれどね」
だがここでセレーナはそれを断るのだった。
「こいつだけはあたしにやらせて。いいかしら」
「いいかしらってちょっと」
ツグミは今の言葉に目を丸くさせる。
「そんな生半可な相手じゃないわよ。だから」
「それでもよ。一人でした仕事だからね」
「一人でって。それは」
「いや、ツグミ」
ここでツグミをアイビスが止めた。
「セレーナがそう言うのなら任せよう」
「アイビス」
「そうだ」
スレイもそれに賛成してきた。
「そこまで言うのだったらな。それでいいな」
「ええ、御願いね」
にこりと笑って二人に告げるセレーナであった。そのうえでエルマに対して語る。
「そういうことで」
「大丈夫なんですか、本当に」
「無理なものでも大丈夫にするのがこのセレーナ=レシタールよ」
少なくとも今の言葉はスレイのものであった。
「そういうことで。宜しくね」
「わかりました。それじゃあ」
「敵の動きはわかるかしら」
「はい、パターンは読み取りました」
エルマはセレーナの希望通りの言葉を送った。
「これなら」
「わかったわ。次は右?左?」
「左です」
エルマは答える。
「攻撃すれば左に動きます」
「わかったわ、それじゃあ」
攻撃を浴びせる。するとエルマの言葉通り左に動いた。それを。
「やっぱりね。そこなら!」
「くっ、私の動きを読んだだと!?」
「それだけかわされたら誰だって学習するわよ。アディオス!」
ソル=レザーで切りつける。それがヴァルク=イシャーを切るのだった。
クォヴレーは何とかマシンのコントロールを戻した。だが戦闘宙域からかなり離れてしまっていた。
「参ったな」
まずはこう呟いた。
「今から戻るのは一苦労だな」
「その必要はない」
だがここで声がした。
「その声は」
「そうだ、俺だ」
ヴァルク=バアルが姿を現わした。キャリコであった。
「やはり俺を追って来たか」
「その通りだ」
キャリコはこうクォヴレーに答えた。
「死んでもらう為にな」
「御前は何者だ?」
クォヴレーは今度は彼にこう尋ねた。彼はキャリコのことを知らないのだ。
「俺のことを知っているのか?」
「ふむ、やはりな」
キャリコはその彼の言葉を聞いて確信した。
「記憶を失っているのか」
「答えろ」
「その必要はない」
「何故だ?」
「俺の手で御前を破壊する。だからだ」
「破壊だと!?俺をか」
「そうだ。壊れるのだ」
そこまで言うとまた剣で切りつけた。火花がベルグバウから飛ぶ。
「ぐうっ!」
「司令は欠陥品の存在を認めない」
キャリコは切りつけた後でクォヴレーに対して言う。
「ここで消えろアイン」
「アイン!?」
クォヴレーはその言葉に反応した。
「それが俺の本当の名前なのか!?」
「違う」
だがその時だった。何処からか声がした。
「!?」
「あがらうのだ、己の運命に」
その声はクォヴレーに対して語る。
「誰だ、俺に話しかけているのは」
「!?」
キャリコはクォヴレーの異変に顔を顰めているだけだった。それを見たクォヴレーは彼ではないことがわかった。
「あの男じゃない。誰なんだ!?」
「あがらえ」
声はまた告げる。
「仕組まれた運命に。その為の力を今御前に」
「力!?それは何だ」
「解放するのだ」
「解放だと」
「そうだ」
そうクォヴレーに告げ続ける。
「御前の力を。ベルグバウの本当の力を」
「何!?」
「御前に与えられたディーンの火を」
「ディーンの火!?」
「何を言っているのかわからないが」
キャリコが痺れを切らしたように動きだした。
「そこまでだアイン。消えてもらうぞ」
「そうはいくか!」
クォヴレーもやられるつもりはなかった。動く。
「俺は何も知らずに死ぬつもりなどない!」
「どうかな?」
しかしキャリコはその彼に冷笑を浴びせるのだった。
「知らずに死ぬ方が幸せかも知れんぞ?」
「黙れ!」
クォヴレーはそれを否定する。
「俺は・・・・・・俺はっ!!」
黒い光が宿った。それは。
「これは・・・・・・」
「これは」
キャリコもそれを見て声をあげるのだった。
「黒いマシンに力が!?」
「何かが起こっているのか」
キャリコは呟く。
「アインに」
「力がみなぎっている」
クォヴレーにもそれがわかる。だがまだそれには慣れていない。
「しかしこの力は一体・・・・・・」
「ふむ、しかしまだ」
キャリコはクォヴレーが戸惑っているのがわかった。そしてそれが狙い目だということも。
「反応が遅い。それならば」
「むっ!?」10
また襲い掛かってきた。またしても剣で斬ろうとする。
「来た、もうか」
「戦いの場に油断するとは愚かな」
口元だけで笑って言う。
「所詮貴様はその程度だな」
「くっ!」
また一撃を受けた。またしてもダメージを受ける。
「ぐああっ!!」
「やはりな」
キャリコはその攻撃を浴びせた後で笑ってみせてきた。
「今の御前ではその機体の力を引き出せんようだな」
「御前はベルグバウのことを知っているのか」
「いや」
それは否定する。彼もベルグバウのことは知らなかった。
「それは俺の方が聞きたい程だ」
「ならば何故だ」
クォヴレーはキャリコに対して問う。
「俺に対してその言葉は」
「その機体に融合したと思われるものに心当たりがあるのでな」
「融合!?」
「そうだ」
またキャリコは答える。
「貴様が本来乗っていたマシンにな」
「何が融合したと言うんだ!?」
「それは俺にとって忌むべき存在だ」
キャリコは言う。
「そして御前にとっても忌むべき存在。確率は五分五分だ」
「五分五分だと」
「消えろ」
キャリコは答えずにこう言葉を返した。
「奴の抜け殻と共に消えろアイン」
そう言って今度は分身する。そこから一斉射撃を仕掛けようとしてきていた。
「奴だと」
そしてクォヴレーにもその言葉が耳に残った。
「それに抜け殻だと。それはベルグバウのことか」
「答える必要はない」
だがキャリコはそれにも答えない。
「さらばだ」
「くっ、ううっ!!」
一斉攻撃だった。それがクォヴレーに襲い掛かる。逃れられないと思われた。だがここで。
「むっ!?」
キャリコは攻撃を仕掛けた直後で気付いた。そうして顔を歪めさせた。
「何が起こるのだ」
「!?おい」
「あれって」
そこにアラドとゼオラが来た。彼等はそこでクォヴレーとキャリコの戦いを見ていた。丁度クォヴレーがキャリコの攻撃を受けようとしていたその時だった。
「まずい筈なのによ」
「この気配って」
「・・・・・・・・・」
クォヴレーの動きは止まっていた。しかしその中で異変が起こっていた。その異変は。
「クォヴレー!」
アラドが叫んだ。
「どうしたんだよクォヴレー!」
「どうしたのクォヴレー君!?」
ゼオラもまた。二人は通信が効かないのを感じて今度はモニターのスイッチを入れる。しかしそれにも反応がないのであった。
「ゼオラ、そっちはどうだ」
「駄目」
ゼオラはアラドの言葉に首を横に振るだけだった。
「モニター出来ないわ。一体何が起きてるの!?」
「どういうことなんだ、これは」
「アインに何が起きた」
キャリコも二人と同じものを感じていた。まだ攻撃は当たっていないというのに。
「この気配は。だが」
しかし己の攻撃には自信があった。それは今まさにクォヴレーのベルグバウを貫こうとしているのだった。そこに頼みをかけるのだったが。
「これならば俺の勝ちだ」
「無駄だ」
「無駄!?」
クォヴレーの声からだった。それはキャリコの頭の中に直接届いていた。
「どういうことだそれは」
「この程度の攻撃なぞ」
「戯言を」
キャリコはまずはそれを否定した。
「かわせるものか。この俺の攻撃は」
「容易いと言っている」
しかしクォヴレーの言葉は変わらない。
「この程度はな」
「むっ!?」
「見ろ」
クォヴレーの姿が消えた。そうしてキャリコの攻撃を全てかわすのだった。
「かわした!?しかも全て」
「所詮は貴様はイミテーション」
クォヴレーの言葉だった。
「俺には勝てない」
「勝てないだと、この俺が」
「そうだ。さっき貴様は言ったな」
今度はキャリコの言葉を返してきた。
「俺が消えると。しかしそれは違う」
「どういうことだ。何が言いたい」
「言っておく」
「!?貴様」
ここでキャリコは気付いた。今のクォヴレーの姿に。
「貴様その姿は」
何と今の彼の髪は青かった。その青で彼を襲っているのだった。
「まさか本当に・・・・・・」
「消えるのは御前だ」
その青い髪のクォヴレーがキャリコに告げてきた。
「キャリコ=マクレディ」
「俺の名まで知っているのか」
「イミテーションの存在は知っていた」
キャリコに対してまた告げる。
「それだけだ」
表情を変えずに静かに向かう。そうしてヴァルク=バアルを切る。
しかし一撃では撃ちなかった。キャリコはまだ不敵な笑みを浮かべていたのだ。
「ふむ、遂にか」
「遂にだと」
「本性を現したか」
そうクォヴレーに言うのだった。
「貴様はアインではない」
「・・・・・・・・・」
しかもクォヴレーはそれに答えはしない。
「取り憑いたのはどちらだ?」
「何が言いたい」
「聞いているのは俺だ」
またクォヴレーに対して言う。
「バルマーに対し反旗を翻した二人の男」
「二人の男だと」
「そのどちらなのだ?」
「俺はバルマーに反旗を翻してはいない」
しかしクォヴレー、いや若しかするともう一人はそれを否定するのだった。
「俺はそもそもバルマーではなかった」
「何が言いたい」
これはキャリコにとってはわからない言葉であった。
「戯言か?今ここで」
「戯言ではない」
しかし『彼』はそれを否定する。
「貴様にはわからないようだがな」
「何が言いたいのかはわからないが」
キャリコはいぶかしんだままクォヴレーに言葉を返す。
「いいだろう。今日はこれまでだ」
「撤退するのだな」
「気が変わった」
不敵な笑みでクォヴレーに答える。
「だが忘れるな」
しかし言葉は忘れない。
「いずれ俺の手で御前の存在を消してやる」
「好きにするがいい」
『彼』はこう答える。ここでも表情を変えない。
「貴様にできるのならばな」
「言っておけ。今のうちに」
仮面の下の口が歪む。だが彼も負けずに言う。
「それまでアインを預けるぞ」
「聞いてはおく」
「・・・・・・ふん」
これ以上は話さなかった。彼は撤退に移っていた。
「また会おう」
こうしてキャリコは撤退した。するとクォヴレーはすぐにコクピットの中に倒れ込んだ。その髪の色も急激に元に戻っていくのであった。まるでそれが幻想であったかのように。
「クォヴレー!」
「クォヴレー君!」
そこにアラドとゼオラが近寄る。そして彼に声をかけた。
「一体どうしたんだよ」
「通信もモニターも遮断されていたし」
「アラド・・・・・・それにゼオラ」
クォヴレーは二人の言葉で意識を取り戻した。そうして二人に問うたのであった。
「俺は何を」
彼が問うたのであった。
「今何があった」
「えっ!?」
「何を言っているの!?」
二人はクォヴレーの言葉を聞いて目を丸くさせる。それは彼等こそが聞きたいことだったからだ。
「教えてくれ」
クォヴレーはまた二人に問う。
「今何があったんだ」
「御前ひょっとして」
「さっきのことを」
二人はそれを聞いて驚きの顔で言う。
「覚えていないっていうのかよ」
「まさか」
「俺はあの仮面の男の攻撃を受けて」
それは覚えている。
「それから何が。何をしたんだ」
「それは」
「その」
二人はモニターで顔を見合わせる。言葉を出しかねていたのだ。
「教えてくれ」
クォヴレーはまた二人に対して問うた。
「俺は一体何をしたんだ、何が起きたんだ」
「クォヴレー・・・・・・」
「クォヴレー君・・・・・・」
二人も答えられなかった。そうしてこの場はとりあえず本隊と合流した。サイド3での戦いは何なく終わり皆ゼダンに帰ろうとしていた。
「あたしはあっさり終わったんだけれどね」
「まあな」
「最初は大変だったがな」
セレーナはアイビスとスレイの突込みを受けながら話をしていた。
「そっちは大変だったみたいね」
「大変っていうかさ」
「あれは」
アラドとゼオラは難しい顔でセレーナと話をしていた。そこにはクォヴレーもいる。
「何かおかしいんだ」
「クォヴレー君も自分でわからないっていうし」
「自分で!?」
ツグミはそれを聞いて顔を顰めさせた。
「どういうこと、それって」
「俺にもわからない」
クォヴレー自身も答えた。
「何なのかな」
「わからないって」
「理由にならないのだが」
アイビスとスレイはその言葉に困惑した顔になった。
「けれど本当らしいんですよ」
「クォヴレー君は」
アラドとゼオラがクォヴレーにかわって説明する。
「本当に何も」
「気付いたらって」
「そうなのか」
「二人がそう言うのなら」
アイビスもスレイも彼等の話も聞いてようやく納得するのだった。
「しかしどうにも」
「謎が多いな」
「そうだ」
それにダイテツが応えて頷く。
「話を聞く限りでは」
「あの時と同じなのね」
ユリカがふとした感じでこう言った。
「クォヴレー君初登場の時と」
「初登場って艦長」
ハーリーがユリカに対して突っ込みを入れる。
「漫画じゃないんですから」
「けれどそうなるわよ」
しかしここでハルカが言う。
「話を聞く限りね」
「そうですよね」
それにメグミも頷く。
「どうにもこうにも話が見えませんし」
「それでクォヴレー君」
ユリカはまたクォヴレーに尋ねる。
「その時と一緒よね」
「はい」
そしてクォヴレーもその質問に頷いて答えるのだった。
「気付いた時にはもう」
「そういうことなんですよ」
「私達にも詳しいことはわからないですけれど」
アラドとゼオラがまた説明する。
「そうらしいんで」
「クォヴレー君に以上はありません」
「それにしてもな」
ここでアストナージが言う。
「ベルグバウ自体もよくわからないマシンだな」
「よくわからないって?」
「細かい部分が不明なんだよ」
そうサイに答える。
「一応駆動系や手持ちの武器なんかは地球のマシンと似ているってわかったんだが」
「他の部分はですか」
今度はカズイが尋ねた。
「動力源周りはお手上げでな。起動させることすら出来なかった」
「それって本当なんですか」
「ああ。それでな」
アストナージはトールに応えながら話を続ける。
「こうなったらクォヴレー本人にいじらせるしかないっていう結論に」
「なっていたんだよ」
マードックも話す。
「それでもわからずじまいでな」
「今に至っているのは」
「じゃあ謎のマシンなんですね」
ミリアリアがそれを聞いて言う。
「そうなるわね。ちょっちそれは興味があるわね」
マリューはかつての技術将校の顔になっていた。それと共に何故かミサトの口調も入っていた。
「私的には」
「しかしそれでは」
ナタルは真面目に問う。
「何かが仕組まれていてもわからない部分があるということですね」
「そうなるかな、やっぱり」
アストナージは言われて気付いた感じであった。
「爆弾とかな」
「それだったら誰か気付いているんじゃないかな」
マードックがそれに突っ込みを入れる。
「これだけ色々な人間がいる舞台だからな」
「それもそうか」
アストナージはマードックのその言葉に頷いた。
「考えてみれば」
「けれどあの時は」
「そうね」
アラドとゼオラはここでまた口を開いた。
「ベルグバウの感じは」
「クォヴレー君を守っているような」
「守っている、か」
ナタルはそれを聞いて己の勘を確かめてみた。
「そうかも知れないな。だとすると」
「ベルグバウはとりあえず安全ってことかしら」
「そうであればいいのですが」
それでもまだ安心せずにマリューに述べるナタルであった。
「何分あのマシンはわからない部分が多いですので」
「何か感じではよ」
ここでリュウセイが言う。
「アストラナガンにも似てるな」
「あのマシンね」
ミサトがその言葉に険しい顔になる。
「あの堕天使に」
「そうね」
堕天使という言葉にリツコも反応を見せる。
「イングラム=プリスケン少佐の」
「あのマシンはガンエデンの戦いで行方不明になったけれど」
「あれで終わるような人じゃないしな」
リュウセイはそれがよくわかっていた。
「何か関係があるのかもな」
「アストラナガンか」
ナタルはそれについても考えた。
「では私達の敵ではないのかもな」
「しかも己の意志があるマシンの可能性もあるのね」
マリューはそこに注目していた。
「色々とあるみたいね、本当に」
「ロンド=ベルにはそうしたマシンも多いですが」
それはナタルもわかっていた。
「ベルグバウもその中の一機ですか」
「そういえば」
ヘンケンがここでふと気付いた。
「ベルグバウは何処か生きている感じだな」
「そうですね」
ヘンケンの言葉にミサトが頷く。
「エヴァよりも」
「そんな感じですよね。何か常に意識があるような」
シンジもそれを感じていた。
「少なくとも有り得る話だと思います」
「少なくともあの変態爺さんやドイツ忍者よりはそうね」
アスカはここでも彼等を話に出すのだった。
「BF団とかよりもずっと現実的よ」
「御前それ言ったら連中復活してくるぞ」
ムウがアスカに突っ込みを入れる。
「あれだけしぶとい連中なんだかな」
「そうなったら困るどころじゃないわね」
「だから話には出すな。俺だって二度とあの赤い仮面は見たくないんだからな」
「わかったわよ。それじゃあ」
「とにかくね」
ミサトがまた言う。
「とりあえずは大丈夫みたいだし」
「ベルグバウはこのまま使うべきだっていうのね」
「戦力として貴重だしね」
こうリツコに答える。
「それでいいと思うわ」
「そうですね」
それにルリも頷く。
「私も大丈夫だと思います」
「ルリちゃんが言うなら大丈夫よ」
「あの、ミサトさん」
シンジは今のミサトの言葉に困った顔を見せる。
「それはあんまりにもいい加減なんじゃ」
「そうよ、それは」
アスカもそれは同じであった。
「どっかのセーラー戦士みたいよ」
「よく言われるのよね」
何とその通りであった。
「私って。何故かしら」
「まあそれはいいじゃないか」
何故かここでアムロがミサトをフォローする。
「誰にだって色々あるさ」
「そういえば」
レイがその触れてはいけない部分に触れる。
「アムロ中佐はひょっとして」
「あとあれね」
セレーナが言う。
「ベルグバウってまだ力完全に引き出せていないのよね」
「そうだな」
クォヴレー本人がそれに応える。
「俺もそれは感じる」
「じゃあデータを集めておいたら?」
セレーナはこう提案するのだった。
「そうしてこれからに活用するのよ」
「いいな、それは」
「そうだな」
アイビスとスレイがそれに賛成する。
「そうしたら今後何かもっと凄いことがわかるかもな」
「そうなればこちらのプラスにもなる」
「だからよ。アストナージさん、マードックさん」
セレーナは二人に声をかける。
「そういうことでいいかしら」
「ああ、俺達にしても」
「興味深い話だな」
二人もそれに頷くのであった。
「是非共な」
「それをやらせてもらうぜ」
「話は決まりね。それじゃあそういうことで」
「ええ。それにしてもセレーナ」
「何?」
セレーナは今度はツグミの言葉に顔を向けた。
「貴女が言うとは思わなかったわ」
「あら、そうなの」
「貴女、メカニックにも通じているの?」
ツグミはそれをセレーナに問う。
「そんな口調だったけれど」
「少なくとも縁はあったわ」
何故か縁と言う。
「そうしたことしていたしね」
「そういうことって?」
ツグミはセレーナの顔に少しだけだが陰がさしたのを見た。
「どういうことなの?」
「まあそれはいいとしてよ」
だがセレーナはこれ以上言わなかった。
「ベルグバウはこれで決まりね」
「そうだな」
「これでな」
皆セレーナのその言葉に頷くのであった。これで話はまずは終わった。
「それじゃあ次だが」
ブライトが口を開いてきた。
「アクシズに向かうことになった」
「今度はアクシズですか」
「あの辺りでインスペクターの軍が確認された」
そうカミーユに応える。
「彼等を警戒する為にゼダンには入らずにアクシズに向かうことになった」
「わかりました。それじゃあ」
カミーユはブライトのその言葉に頷くのであった。
「今度はそこでですね」
「おそらくはな。しかし我々の拠点はあくまでゼダンだ」
「そこからは動かないんですね、当分は」
「それは予定通りだ」
エマにも答える。
「ゼダンは設備が整っている。だからだ」
「そうですか。それでは」
「アクシズに向かう」
そのうえでまた指示を出す。
「そこで敵を迎撃する。いいな」
「了解」
「それじゃあ今から」
こうして彼等は休む間もなく次の戦場に向かう。戦いは終わっても次の戦いがもう待っている。それが彼等の今なのであった。
第三十話完
2007・12・16
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