スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第二十九話 シャドウミラー
第二十九話 シャドウミラー
「まず彼等についてですが」
「ああ」
皆ゼダンのブリーフィングルームにいる。そこでシュウの話を聞いている。シュウはその彼等を前にして話をしているのであった。
「名前をシャドウミラーといいます」
「シャドウミラー!?」
「聞いたことのない組織ですね」
「それも当然です」
シュウはそうエイタに言葉を返した。
「こちらの世界には存在しない組織なのですから」
「やはりそういうことだったか」
それを聞いてランティスが呟く。
「といってもセフィーロのものでもないな」
「その通りです。彼等は全く別の世界から来ていますから」
それをまた言うのだった。
「そちらの世界で彼等の理想を果たそうとしましたが果たせず」
「こちらの世界に来たってわけだね」
「その通りです」
万丈の言葉に頷く。
「そうしてこの世界でこそ自分達の理想を実現させようとしているのです」
「またはた迷惑な連中が出て来たって感じだね」
シモーヌはそこまで聞いて言うのだった。
「毎度毎度そういう手の奴ってのは出て来るね」
「洒落にならないけれどね」
ベッキーも慣れているとはいえあまり嬉しくはないようであった。
「ただでさえ敵が多いっていうのにね」
「しかしですね」
デメクサがここで言う言葉は。
「彼等のその理想が気になるんですが」
「おそらく真っ当なものではあるまい」
ティアンの予想は完璧なまでに当たっていた。
「ああした輩じゃ。真っ当なものではあるまい」
「その通りです」
そしてシュウの返答もその予想を肯定するものであった。
「彼等は永遠の戦いを望んでいます」
「永遠の戦いだと」
「またそれはどうしてだ」
ジノとファングはそれに対して問う。
「穏やかなものではないが」
「どういった理由だ」
「彼等の言葉によると人類の進化の為にはそれが不可欠なものだということです」
「何や、どっかの哲学者みたいなこと言うとんな」
ロドニーはそこまで聞いて言う。
「そういうこと言う奴っちゅうのは大抵」
「他人の迷惑を顧みません」
エリスも言うのだった。
「ですから大規模な犠牲を払います」
「その通りです。彼等にとってはそれは些細なことです」
「とんでもない話ですよね」
チカがシュウの言葉に応えて言う。
「だからですね、御主人様はそれを皆さんにお伝えしてですね」
「チカ」
ここでシュウはお喋りをはじめたチカを制止した。
「それ以上は」
「おっと、これはすいません」
チカも悪びれてはいないがこれで言葉を止めるのであった。
「じゃああたしはこれで。御主人様どうぞ」
「それにより無駄な血が流れるのは私としても本意ではありません」
シュウはあらためてロンド=ベルの面々に述べるのであった。
「ですから皆さんの前にこうして姿を現わしたわけです」
「というとあれだね」
リューネはここまで聞いてわかった。
「あたし達にそのシャドウミラーをやっつけて欲しいってわけかよ」
「ご名答です」
シュウは微笑んでリューネの言葉に応えた。
「お忙しいでしょうが。御願いします」
「戦いの中での進化か」
アハマドはそれについて何か思うようであった。
「悪くはないがそれにより無駄な血が流れるのはやはり好まぬな」
「あんたはまたそんなこと言って」
ロザリーがそんな彼を注意する。
「物騒なのよ」
「そういう問題ではない」
ヤンロンがさらに突っ込みを入れる。
「どちらにしろそうした相手ならば見過ごすことはできないな」
「そうよね。けれど」
テュッティはそれでも引っ掛かるものがあった。
「何でそれを私達に持って来るのかしら」
「御前は何もしねえのかよ」
マサキはあらためてシュウに問う。
「俺達に話を持って来るだけでよ」
「私としても色々と事情がありまして」
シュウはそう言葉を返すだけであった。
「それでこうして皆さんに御願いしているわけです」
「今まで御願いしていたの」
プレシアにとってはそれも驚きであった。
「クリストフ・・・・・・いえシュウさんって」
「そうですが」
だがシュウは動じた様子はない。
「それが何か」
「ううむ」
ゲンナジーはそんなシュウを見て唸る。
「やはりやるな」
「ゲンちゃんにも匹敵するわね」
ミオも言う。
「これってやっぱり」
「それでシュウ様」
サフィーネもシュウに尋ねる。
「その組織の首領は何と言うのですか?」
「私もそれが気にならない筈ではないのですわ」
モニカもそれは同じであった。
「やはり。それもこれもそのシャドウミラーが」
「だから姉さん文法が」
「っていうよりもう言葉が」
テリアスとセニアがそれぞれ突っ込みを入れる。
「もう滅茶苦茶なんだけれど」
「とにかく敵の親玉よね」
「はい、それも誰かわかっています」
シュウはそれも調べていた。
「そこまでわかっているのかよ」
「はい」
またマサキに答える。
「その男の名はウェンデル=マウザー」
「そいつがそのシャドウミラーの親玉かよ」
「元は科学者でした」
シュウはウェンデルについて説明をはじめた。
「ですがその能力を己の理想に使おうと決意して」
「ああ、よくある話だな」
そこから先はマサキにもわかった。
「それで軍隊を持って何かしようとしたわけだな」
「その通りです。ですが元の世界ではそれを果たせず」
「そういうはた迷惑な奴は何処にでもいるな」
マサキはそこまで聞いて思わず言うのであった。
「そういう奴の理想ってのは大抵とんでもねえんだよな。今回もそうだしな」
「彼はこの世界でそれを実現しようとしています」
「戦争により永遠に進化する世界か?何かな」
マサキはそれに対して難しい顔を見せる。
「そう言う奴っていつも他人の迷惑なんざ顧みないんだよな」
「今回もそうです」
シュウはそれを当たり前のように言い切った。
「ですから私は今ここで皆さんにお話しているわけです」
「それで御前は何もしねえんだな」
「私がするのは他のことです」
シュウはこうマサキに答える。
「先程お話したように」
「そういうことか。まあ御前が何考えてるかわからねえのはいつものことだしな」
マサキももうそれには構わなかった。
「いいさ、じゃあ好きにやりな」
「ただ。今回は同行させて頂きます」
「何だ?スポット参戦ってやつかよ」
「その通りです」
シュウもその言葉に頷いてきた。
「それで宜しいでしょうか」
「俺に言われてもな」
だがマサキはそれには答えかねた。
「ブライト艦長とかが決めることだしな、それって」
「いいんじゃないかな」
ユウナが最初に言ってきた。
「今の彼は我々と特に敵対しているわけじゃないし」
「そうだね」
それに万丈も同意して頷く。
「彼に敵意がないことはわかっているし。それだったらね」
「他に誰か意見はあるかな」
ユウナは他のメンバーにも問うてみた。
「反対意見があるなら言ってくれていいけれど」
「それはないな」
カガリがそれに応えて言った。
「この男が何を考えているのか私にはわからないが悪いことを考えていないことだけはわかっているからな」
「その通りだ」
ライデンがカガリのその言葉に頷く。
「ならいい。むしろネオ=グランゾンの戦力が頼りになる」
「ネオ=グランゾンか」
アキトはそこに注目した。
「久し振りに見るけれどあのマシンも健在なんだね」
「ええ、勿論ですよ」
シュウはこうアキトに対して答えた。
「ですから御安心下さい」
「ならいいよ。少しの間だけれど一緒に戦おう」
「有り難うございます。それでは」
「しかし。シャドウミラーか」
万丈は彼等のことについて考えるのであった。
「やっぱりこちらの世界の住人じゃないのがわかったのは大きな収穫だね」
「そうだね」
それにユウナが同意して応える。
「だからああして兵器がまちまちだったのか」
「あれはあちらの世界のものです」
シュウはこうユウナに説明する。
「あちらの世界ではその軍備で革命を起こすつもりだったのですが」
「それが果たせなかったんだね」
「その通りです。それでこちらの世界に来たわけです」
「それでその世界だけれど」
ユウナはそちらにも興味を持ったのであった。
「どういうふうになっていたのかな。よかったら教えてくれるかな」
「その世界では地球圏統一政府が出来ています」
「何だって!?」
アムロはそれを聞いて思わず驚きの声をあげた。
「そういった世界もあるのか」
「そうです。そして平和な世界になっています」
シュウはこうも言う。
「驚かれましたか?」
「驚くも何も」
アムロだけでなく他の面々もそれを聞いて驚きを隠せない。
「そんな世界があるなんて」
「信じられない」
「そしてその政府の大統領は」
「誰なんだ?」
「シャア=アズナブルです」
「むっ!?」
それを聞いてまずはクワトロが声をあげた。そうして他の面々も。
「それは本当のことなのか」
「はい。民主的な選挙により大統領に選ばれていますよ」
穏やかに笑ってそのクワトロに告げる。
「そして平和な政治を行っているのですよ」
「成程な。あの男がか」
クワトロはそれを聞いて微妙な笑みになった。
「中々面白い話だ」
「こちらの世界とは全く違うのです」
シュウはそれを強調する。
「何もかもが。だからこそそうしたことも起こっているのですよ」
「つまりその人物がいても同じことをするとは限らないんだな」
「そうです」
アムロにも答える。
「貴方が独裁者となっている世界もあるかも知れません」
「おいおい、俺が独裁者か」
アムロはシュウの今の言葉に苦笑いになった。
「似合わないな、それは」
「例えば貴方達の思うがままの世界もあるでしょう」
シュウは今度はキラとラクスを見て言う。
「もっともこちらの貴方達はそれを望んではおらませんが」
「そんなの全然よくないよ」
「その通りです」
キラとラクスはすぐにシュウに言葉を返した。心外といった様子で。
「僕は皆を守りたいだけですし」
「平和が戻れば。他には」
それがこちらでの二人の考えであった。
「政治家とかには興味ないです」
「私は独裁者は忌むべきだと考えています」
「それだけ多くの世界があるということですよ」
シュウはそんな二人にも笑って告げるのであった。
「例えです、例え」
「ここにいるメンバーの何人かがいなかったりもするのか」
「それも当然のことです」
シュウはムウにそう答える。
「貴方にしろ私にしろ既にこの世にはいないか最初からいない世界もあるでしょう」
「何かそこまで聞くとおっかないな」
ムウは思わず肩をすくめさせた。
「どうにもこうにも」
「そういうものです。こちらの世界はこちらのこと」
シュウはこう言う。
「関係はありませんが互いに影響し合うものでもあります」
「そこまで言うとわからなくなってきたな」
マサキは眉を顰めさせる。
「何かよ」
「言葉には出せなくても感覚でわかっていればいいです」
だがシュウはそれには言及しない。
「それだけで」
「そうなのかよ」
「はい。それでは今度のシャドウミラーの出現場所ですが」
「まさか」
「あの男」
ラミアとアクセルはシュウのこれからの言葉に注目した。彼等も集まっていたのである。
「サイド6近辺です」
「サイド6か」
ブライトはそれを聞いて考える顔になった。それからまた言うのだった。
「わかった。ではすぐにそちらに向かおう」
「はい。それでは私も」
「しかしよ、シュウ」
ここでマサキはまたシュウに声をかける。
「何か?」
「他にすることがある御前がここで戦うっていうからにはそこにはかなりのものがあるんだろうな」
「それはその時になってみればわかります」
シュウはこう言うだけであった。
「その時に。それで宜しいでしょうか」
「ああ、それならそれでいいさ」
マサキもその言葉を受ける。
「じゃあ行くか」
「はい」
「しかしまたネオ=グランゾンを見られるとは思わなかったぜ」
マサキは今度はネオ=グランゾンについて言及してみせた。
「あのマシンで手前は何をするつもりなんだ」
「私が目指すものはいつも同じです」
シュウは微笑んでマサキにこう答える。
「いつもね。それは」
「自由かよ」
「そうです。それを手に入れることこそが私の望み」
彼は言う。
「おわかり頂ければ幸いです」
「ということは御前はまだそれを手に入れていないってことだな」
今の言葉からそれがわかった。
「結局のところは」
「その通りです。ネオ=グランゾンにもまだわかっていない部分がありまして」
「あれにか?」
「そうです。ブラックボックスになっている部分があるのですよ」
マサキに対して言う。
「何故かわかりませんが」
「パイロットがわからない謎かよ。しかも設計者、開発者が」
「そういうわけです。ある一部分だけですが」
シュウの目が考えるものになっていた。
「そこがどうしてもわかりません」
「あのマシンも色々あるんだな」
「おそらくそうした意味ではサイバスター以上です」
こうも言うのだった。
「そこは御了承下さい」
「何かそこにも謎があるような気がしてきたな」
これはマサキの勘であった。
「変なことにならなきゃいいがな」
「既にその変なことになっている可能性があるとは考えませんか」
「!?そりゃどういうことなんだ」
マサキは今の言葉を聞いてまた問うた。
「既にっていうのは」
「ですから。おかしいとは思われませんか、マサキ」
シュウはマサキに対して真顔で問うてきた。
「あまりにも偶然が多過ぎるのですよ」
「偶然か」
「偶然異世界に飛ばされたり異世界の存在が出入りしたり誰かが攻めてきたり地中の勢力が復活したりといったことが続いています」
「確かにな」
言われてみるとその通りだ。マサキもそれに頷いた。
「偶然にしちゃあんまりにもな」
「わかりますね。それに私のネオ=グランゾンが関わっているとすれば」
「確かグランゾンそのものはあのゲストの技術を使っているんだったよな」
「はい、そうです」
マサキのその問いにも答える。
「そこに地球の技術も使ったものです。他にはバルマーのものもありますが」
「そうだよな。ゲストか」
「私はそこに引っ掛かるものを感じます」
シュウが見ているのはそこであった。
「彼等がこのグランゾンに細工を置いていったのではないかと」
「細工ねえ」
「つまり彼等は私を利用しているのですよ」
シュウはこう言うのだった。
「面白いと思いませんか?自由を求める私をそうして利用するというのは」
「じゃあ何か」
マサキはそれを聞いてまたシュウに言う。
「御前はゲストに何かするつもりなんだな」
「それが何かわかれば」
マサキにこう答える。
「そのつもりですよ。絶対にね」
「まあ勝手にしな」
実際のところシュウがゲストに何をしようとマサキにとってはどうでもいいことであった。
「連中も敵だしな、俺達にとっちゃ」
「そうですね。ただゲストやインスペクターは面白い組織ですよ」
「面白い?」
「はい、そこも御覧になられればと思います」
マサキに対する言葉はこうであった。
「それもじっくりと」
「何か話が余計にわからなくなったがいいか」
これ以上こだわるつもりもなかった。シュウの話が色々と含んでいるのはマサキが最もよくわかっていることであったからだ。だからここで話を終わらせたのである。
「じゃあ今からサイド6だな」
「はい、すぐにでも」
そうマサキに答える。
「私もネオ=グランゾンで出撃させて頂きます」
「わかったぜ。じゃあな」
「はい」
こうしてロンド=ベルはサイド6方面に出撃した。するとそこに到着した途端にもうそこにはシャドウミラーの軍勢が展開していたのであった。
「まずいことになった」
「ああ」
アクセルがラミアの言葉に頷いていた。
「まさかシュウ=シラカワが我々のことを全て知っているとはな」
「博士のことまでな」
ウェンデルのことまで知っていたのは彼等にとっては全くの予想外であった。
「そして我々が次にここに本隊を送り込むことも」
「何もかもがわかっているようだな」
「ということはだ」
ラミアの顔が鋭くなる。
「若しかして我々のこともまた」
「その可能性は高いな」
アクセルはそれを否定しなかった。
「そう考えた方がいいのは事実だ」
「だとすればアクセル」
ラミアはその美しい顔を険しくさせてアクセルに言ってきた。
「一刻も早くあの男を」
「いや、それはかえって危険だ」
しかしアクセルはシュウの暗殺には賛成しなかった。
「駄目だというのか」
「迂闊には動けない」
それがアクセルの考えであった。
「迂闊に動けばそれこそ虎口に入ることになる。ただでさえ今の我々は」
「疑われているからな」
「だからだ。今は動くべきではない」
「若し素性を公にされればどうするのだ?」
「その時は去る」
アクセルの考えは決まっていた。
「それしかない。何としてもな」
「そうか、わかった」
「ラミア、今はだ」
またラミアに言う。
「何も知らないふりをしておく。いいな」
「わかった」
二人はそんな話をしていた。ロンド=ベルは前方にいるシャドウミラーの軍勢に対して布陣を進めていた。その中でリーはじっとその二人を見ているのであった。
「流石に今回は動けないな」
「まあそうでしょうね」
リーにホリスが答えた。
「やっぱりシュウ=シラカワ博士がいますから」
「しかし。シャドウミラーか」
リーは今度は前方の敵を見て呟いた。
「別の世界から来た敵か、今度は」
「次から次にとよくもまあ」
「・・・・・・おかしいな」
リーは今度はこう述べた。
「幾ら何でも。有り得ないことが続いている」
「有り得ないですか」
「そうだ。七年戦争が終わりそれから七年が経ってバルマー戦役がはじまった」
話をそこまで遡らせる。
「その時から有り得ないことが次々と起こっている。違うか」
「そういえばそうよね」
その言葉にアカネが頷く。彼等はシュウと同じ疑問を抱いていたのだ。
「それも凄い確率で」
「何かあるというのか」
リーはその顔を険しくさせる。
「ここにもまた」
「何か全部つながったら凄い話になりそうだな」
ブレスフィールドも言う。
「どうやらな」
「つながっているかどうかはわからん。だが」
リーは言う。
「あのシャドウミラーの存在がかなりわかったのは大きいことだ」
「はい。では」
「このまま全軍攻撃に移る」
リーはシホミに応えて攻撃を命じる。
「攻撃目標はシャドウミラー主力、いいな」
「了解」
「おいシュウ」
マサキは攻撃命令が下る中でシュウに声をかけた。
「手前も攻撃に参加するんだよな」
「そのつもりです」
当然ながらシュウもここにいる。既にネオ=グランゾンに乗っている。
「ですが少し別行動を取らせて頂きます」
「別行動!?」
「はい、といっても普通に先頭には参加させて頂きますので」
そう言いながらネオ=グランゾンを前面に展開させてきた。
「そこは御安心下さい」
「そうかよ。じゃあまあ頼むぜ」
「はい。では行きましょうマサキ」
「俺にかよ」
マサキはそれでもシュウの言葉に応える。
「他に周りに誰も折られませんので」
「そうだったのか?」
「あたしがいますよ」
チカの声がした。
「ちゃんと御主人様の側にね」
「チカは私のファミリアですので」
だから当然だというのだった。
「別にどうということはないかと」
「何かあたしってかなり差別されてるような」
「大体おめえハイファミリアになれるのか?」
「失敬な、なれますよ」
こう言ってマサキに抗議する。
「ネオ=グランゾンにも装備されているんですから」
「そういうことです。ではチカ」
シュウはそのチカにここで声をかける。
「そのハイファミリアで攻撃を仕掛けますので」
「わかりました。それじゃあ」
「行きますよ。ハイファミリア」
そのネオ=グランゾンが攻撃を浴びせる。チカが乗り移りすぐに攻撃に入る。
「それじゃあまあ」
目の前にいるマラサイの一隊の周りを飛び交う。そうして螺旋状のビームで敵に攻撃を浴びせていくのであった。
「意外と強力だニャ」
「そうだニャ」
シロとクロがそれを見て言い合う。
「じゃあおいら達も」
「行くニャ、マサキ」
「わかってるさ。数が来るのならよ!」
サイバスターを前に突っ込ませた。
「纏めてぶっ潰すだけだぜ!」
「それじゃあ!」
「やるニャ!」
「ハイファミリア!」
サイバスターもハイファミリアを放った。それで彼も敵の小隊を襲うのであった。
「どんどん行くぜ!」
そのままディスカッターを抜いて敵陣に切り込む。それに他のマシンも続く。今回のロンド=ベルはかなり積極的に攻撃を仕掛けるのであった。
「撃て!」
「斬れ!」
周囲の敵を当たるを幸いに攻撃する。ロンド=ベルは接近戦でもかなりのものだった。
「やはり数は多いが」
「戦力自体は大したことがないな」
アムロとクワトロはシャドウミラーとの戦闘を行いながら話をしていた。
「だが。その中で」
「ああ。これは」
二人はあるものを感じていた。戦場の中で。
「誰かいるな」
「この気配は」
「それかしら」
クェスもそれを感じていた。
「シュウさんがここに来たのって」
「そうなのか?」
それにギュネイが問う。
「やっぱりあの博士が来たのって」
「あんた気付かなかったの?」
クェスはそうギュネイに問う。
「あの博士が来る時っていつも絶対に何かあるじゃない」
「言われてみればそうだな。死ねっ!」
話しながら側の敵をビームサーベルで斬りつける。そうして真っ二つにする。
「毎度毎度節目で出て来る人だよな」
「だからよ。今回もきっと」
「この気配と関係があるか」
「それを感じているのならあれよ」
クェスは言う。
「つながってるのもわかるわよね」
「ああ、そういうことならな」
ギュネイはクェスの言葉にまた頷いた。
「しかし。今回の数は別格だな」
「そうね」
クェスもまたギュネイの言葉に頷く。そうしてファンネルを放つのだった。それでまた敵を倒していく。ビームに貫かれたドラムロの小隊が爆発していく。
「これも何か関係あるかも」
「その通りです」
ここでシュウが言うのだった。
「今回こうしてシャドウミラーの軍勢が多いのは事情があるのです」
「どういった事情なのだ、それは」
クワトロがシュウに問う。
「何故ならここにいるのはシャドウミラーの本隊です」
「シャドウミラーのか」
「はい。ウェンデル=マウザー直属の」
シュウはその首領の名を出してきた。
「だからこそこれだけの数が展開しているのです」
「そうだったのか」
「それじゃあよ、シュウ」
マサキもシュウに問う。
「ここにいる敵を率いているのは」
「彼はここにいます」
シュウの声が鋭くなる。
「それを今皆さんにお見せしましょう」
そう言い合うと攻撃態勢に入った。ブラックホールクラスターを放とうとしていた。
「では行きますよ!」
「シュウ、そこは!」
マサキが攻撃態勢に入ったシュウに対して言う。
「敵がいねえ。それでもいいのかよ」
「何、攻撃とは敵を撃つだけではありませんよマサキ」
しかしシュウは冷静な言葉でマサキに答えるだけであった。
「こうして。存在を明らかにすることもまた攻撃です」
「何っ!?じゃあそこにいるのは」
「はい、その通りです」
マサキの言葉に頷いてみせる。
「彼がそこにいます。ですから」
「わかった。じゃあやってみな」
「無論そのつもりです。それでは」
ブラックホールクラスターを放つ。いよいよだった。
「ブラックホールクラスター発射!」
暗黒の光球が放たれそれが空間を撃つ。そうするとその空間が割れて赤い世界が出て来た。そこに一機のマシンが姿を現わしたのであった。
「ネオ=グランゾンか」
「そうです」
シュウは姿を現わしたそのマシンに対して言う。
「貴方がここにいるのはわかっていましたので」
「シュウ=シラカワ。どうして私のことがわかっていた」
「貴方も私のことは御存知のようですね」
シュウはまたウェンデルに対して告げた。
「どうやら」
「私も貴方のことは知っていました」
「そうか、流石だな」
ウェンデルはそれを聞いて不敵な笑みを浮かべた。見れば白く長い髭を生やした老人であった。ロンド=ベルがはじめて見る顔であった。
「私のことを知っていたとはな」
「貴方の目的もわかっていますよ」
シュウはこうも彼に言ってみせた。
「この世界で己の理想を果たされるおつもりですね」
「その通りだ。だからこそ私はこの世界に来た」
己のマシンを前に出してきながら答える。
「この世界においてこそ。永遠に進化する社会を実現させるのだ」
「それだけれどね」
ここで万丈がウェンデルに対して問う。
「それで人類を永遠に戦いの世界に置きたいんだって?」
「その通りだ、破嵐万丈よ」
「僕のことも知ってるみたいだね」
「当然だ。諸君等のことは全て知っている。
ウィンデルはそれも言ってみせる。
「全てな」
「事前の調査は完璧ってわけなんだ」
「その通りだよ。全ては我が理想を実現させる為に」
「悪いけれどその理想は諦めてもらいたいね」
万丈はむべもなくこうウィンデルに言った。
「どうかな、それで」
「戯言を。人は先に進まなければならないのだ」
ウィンデルはそれをまた言う。
「何があろうともな。そしてそれを推し進める最大のものこそが戦いだ」
「戦いによって人は先に進むか」
「そうだ。だからこそ私は」
ウィンデルはまた言うのだった。
「その理想を実現させる為にここに来たのだ」
「迷惑な奴だぜ」
甲児はそれを聞いて呟く。
「そんなのは勝手に自分の頭の中でしてやがれってんだ」
「甲児の言う通りだぜ」
宙は甲児のその言葉に頷いた。
「戦いでどれだけ人が死ぬと思っていやがるんだ、手前は」
「それはもうわかっていることだ」
ウィンデルはその言葉に平然として言葉を返す。
「それもまた当然のことだ」
「当然なのかよ」
「その通り。不要な存在は消してもいい」
「消すだと!?」
「そうだ」
また宙に答える。
「不要な存在を粛清するのもまた戦いの必然性の一つなのだ」
「手前一体何様のつもりだよ」
甲児はその言葉に激昂する。
「それで死ぬ人間のことを考えられない理想が何だっていうんだよ!」
「そうだ、その通りだ!」
ケーンも叫ぶ。
「そんな理想で死んでたまるかよ!」
「俺はあんたみたいな奴が大嫌いなんだよ!」
タップも言う。
「その通り。他人を犠牲にする理想は不要だよ」
ライトも言うのであった。彼等もウィンデルの理想には賛同できないものがあった。
「そういうことだ。手前の理想は俺が叩き潰してやる!」
マジンカイザーを前に出してきた。それでウィンデルを消すつもりだった。
「覚悟しやがれ!」
「悪いがそうはいかない」
だがウィンデルはそれ対そうとはしなかった。乗っているマシンをすぐに消させるのだった。
「逃げるのかよ」
「逃げるのではない」
ウィンデルはそう甲児に言う。
「引き下がるのだ。我が軍勢もかなり減ってしまった」
ロンド=ベルとの戦いのせいであるのは言うまでもない。彼等の攻撃でその主力の殆どを失ってしまったのである。
「悪いがここは撤退させてもらおう」
「どうやらこれで諦めるつもりはないようですね」
シュウがその撤退する彼に言う。
「戦力を蓄えてですか」
「その通りだ。では諸君」
ウィンデルは姿を消しながらシュウとロンド=ベルに対して告げた。
「また会おう。それではな」
「逃がしはしねえ!」
マジンカイザーの腕を飛ばす。それで撃ち抜こうとしたがそれは適わなかった。
腕がすり抜けてしまった。それと共にシャドウミラーの軍も姿を消した。戦い自体は呆気なく終わってしまったのであった。
「終わりですね」
シュウがそれを見て述べる。
「一応のところは」
「一応はな」
マサキもシュウのその言葉に頷く。
「しかし。シャドウミラーか」
「彼等はまた動くでしょう。しかし」
「しかし?何だよ」
「その時に何が起ころうとも諦めないことです」
そうマサキに対して告げるのだった。
「宜しいですね」
「!?どういうことだそりゃ」
「いずれわかります」
シュウはそうマサキに告げた。
「ですがそれは必ず解決しますので。気を落とされないことです」
「言っている意味がわからねえが頑張れってことだな」
「そう捉えられて結構です」
シュウはその言葉に応えてまた頷く。
「それでは。私はこれで」
「何だ、もうかよ」
「スポット参戦ですので」
シュウは珍しく微笑んでみせてきた。
「それでは。私はこれで」
ネオ=グランゾンも姿を消した。そうして残ったのはロンド=ベルだけであった。
「何か随分と大騒ぎしたわりには呆気なかったか?」
マサキはグラン=ガランに戻ってからそう言うのだった。
「戦い自体はよ。しかし」
「甲児は随分荒れているらしいね」
リューネがそのマサキに声をかける。
「あのウィンデルの考えにね。向こうじゃ大変みたいだよ」
「まあ甲児だったらそうだろうな」
マサキもその言葉を聞いて納得していた。
「あいつらしいっていえばらしいな」
「しかしシャドウミラーの動きは暫くない筈だ」
ヤンロンがそれは確かに分析していた。
「あれだけ戦力を消耗していればな」
「じゃあ当分は別の敵が相手なのか」
マサキはそれはわかっていた。
「今度の敵は一体誰やら」
「何かマサキ随分と投げやりね」
ミオがそんなマサキに突っ込みを入れる。
「どうしたのよ」
「どうしたもこうしたもよ」
マサキもそれでミオに応える。
「どうせまた敵が出て来るんだろ、うじゃうじゃいるからな」
「ええ、残念だけれどそうみたい」
テュッティがそれに応えてきた。
「何でもサイド3方面にバルマーの軍勢が出て来たそうよ」
「それでですが」
シーラがここで彼等に言う。
「私達はこれからすぐにサイド3に向かうことになりました」
「わかったな、諸君」
カワッセも彼等に告げる。
「済まないが休むのは後になった」
「やっぱりな。何か敵が多くて洒落にならなくなってきたぜ」
マサキはまたぼやく。
「どうしたものかな」
「どうしたもこうしたも暫くは戦うしかないわね」
シモーヌの言葉は現実そのものであった。
「結局のところはね」
「わかってるさ。じゃあ次はサイド3だな」
「そういうこと」
シモーヌはマサキのその言葉に頷いてみせた。
「それじゃあ行くわよ」
「安心しろ、マサキ」
ムハマドがマサキに声をかけてきた。
「何だよ」
「コーヒーの一杯を飲む時間はある。それに」
「それに?」
「敵は戦っていれば減っていく」
そう言ってマサキを宥めるのであった。
「戦いも楽しめばどうということはないしな」
「それ言うとあのウィンデルと変わらねえだろ」
「俺もそう思う。しかしだ」
アハマドはここでまたマサキに言う。
「どうやら俺はそこまではいかないようだ。俺は戦いは好きだが関係のない者を巻き込むつもりはない」
「そうだな。あんたはそういう奴だ」
マサキもアハマドのそうした性格はわかっていた。だから共にいるのだ。
「粛清といったものにも興味はないしな」
「じゃあこのまま俺達と一緒にいるんだな」
「それには変わりはない」
また言う。
「だから安心することだ」
「わかったぜ。じゃあコーヒーでも飲むか」
「うむ」
彼等は戦いの前の一時に入るのであった。しかしその中においても。ラミアとアクセルは不穏な会話を二人だけで続けていたのであった。
「今ではないようだな」
「そうだな」
アクセルはラミアの言葉に頷いていた。二人はクロガネの中の格納庫の隅で話をしている。誰にも気付かれないようにして。
「とりあえずのところはな」
「動くのは先か」
ラミアは言う。
「私達が本格的に動くのは」
「そうだ。エキドナから司令があった」
「それでは問題はないな」
「俺達の動き自体にはな。しかし」
アクセルの顔が微妙に歪んだ。
「どうした?」
「ロンド=ベルのことだ」
彼が言うのはそこであった。
「彼等は思ったよりも遥かに強力だ」
「確かに」
ラミアもアクセルのその言葉に頷く。
「それはあるな」
「データ以上のものがある」
アクセルはこうも言う。
「この戦闘力は。これは一体」
「何が原因なのだろう」
ラミアもそれについて考える。
「ここまでの強さは」
「熟練度や才能だけではない」
アクセルもそれがわかってきていた。
「それ等を総合した能力だけでもない」
「そうだ。では一体」
「それを見極める必要もあるかも知れない」
「ここまでの力を持つ原因の一つをか」
「その通りだ。果たして見極められるか」
その顔を微妙に顰めさせての言葉であった。
「これから」
「調べるしかない」
ラミアは感情を込めずに述べた。
「そして見極めるしかないのだ、我々は」
「道具としてか」
「そうだ、道具だ」
アクセルの顔がまるで剣の様に鋭くなった。
「俺達は道具に過ぎない。それを忘れるな」
「無論」
そしてラミアもそれに頷くのだった。
「ならば道具として今は」
「使われる時を待っていよう。次にな」
「わかった」
そう話をしてその場を後にする。シャドウミラーの存在とその目的はわかった。だが戦いは終わるどころか激しさを増すばかりであった。
第二十九話完
2007・12・11
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