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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第二十七話 内通者の疑惑

              第二十七話 内通者の疑惑
リーの危惧は当たった。彼等がゼダンに戻ると問題が起こっていた。
何とルナツーの整備系統がかなり故障していたのだ。そしてそれは整備系統だけではなかった。
「攻撃システムもか」
「はい」
ルナツーにいる将校の一人がブライトに答えていた。
「制御しているコンピューターのバグで」
「そうか。回復までにどれだけかかる」
「三日かと」
「三日か」
「その間に整備系統も回復する見通しです」
「わかった」
ブライトはそこまで聞いて頷いた。それからまた言う。
「その間なら何とかなるな。整備はア=バオ=ア=クーもあるしな」
「申し訳ありません、我々の不手際で」
「謝ることはない」
ブライトはそれはよしとした。
「ルナツーには今まで随分助けられている。それに故障やバグなら仕方がない」
「左様ですか」
「今は回復に専念してくれ」
そしてこう述べる。
「それでいいな」
「わかりました。それでは」
「うむ」
「とりあえず整備は問題ない」
クワトロがブライトに言ってきた。
「マシンに関しては艦内でもかなりできるしそれに先の戦闘でのダメージはそれ程でもない」
「だから大丈夫なのだな」
「そうだ。だが問題は攻撃システムだ」
クワトロはそれに対して言及する。
「ルナツーのそれが使えないとなると大きな穴になるな」
「確かに。それはあるな」
ブライトも思案する顔でクワトロの言葉に答えた。
「このままだと。いざという時には」
「ルナツー方面が手薄になる。敵にそれを気付かれたならば」
「厄介なことになるな。三日間何もなければいいが」
「それは期待するだけ野暮というものだろうな」
アムロが話に入ってきて述べる。
「今までのことを考えればこうした時にこそ敵が来るものだ」
「それは直感かな、君の」
「残念だが直感じゃない」
クワトロの皮肉にすぐ返した。
「これまでの経験だ。それは御前と同じだな」
「ふむ、そうか」
クワトロは口元だけで笑ってアムロに言葉を返した。
「それならわかる。確かにこうした事態になるといつも敵が来た」
「そうだな」
ブライトも二人の言葉に頷く。
「こうした時こそ警戒が必要か」
「あらかじめルナツー方面の哨戒を強化しておこう」
そのうえでアムロはこう提案してきた。
「それでいいな」
「わかった。ではそちらを重点的に哨戒し」
ブライトもそれを受けて言う。
「いざという時に備えよう。それでいいな」
「ああ、それで問題はないと思う」
アムロもそう言葉を返す。
「そういうことでな」
「ああ」
こうしてルナツー方面への哨戒が暫定的に強化されることになった。ルナツーの問題はすぐにロンド=ベルの面々にも伝わり早速哨戒部隊がそこに送られた。
「とりあえず今は静かだよな」
「そうね」
ゼオラがアラドの言葉に頷く。彼等もその哨戒に回されているのだ。
「今のところはね」
「それにしても何かあれだよな」
「あれって?」
「いや、メール=シュトローム作戦の時だけれどさ」
アラドはかつてここでティターンズと戦ったことについて言いはじめた。
「あの時はここでも戦ったなあって。それで今度はここを守っているんだからな」
「何がどうなるかわからないわよね」
ゼオラもそうアラドの言葉を受けた。
「あの時はまさかゼダンを拠点にするなんて思わなかったわ」
「ああ。けれど今はな」
「私達の家みたいになってるわよね」
「使い勝手もいいしな」
アラドはこう言って笑った。
「設備が揃ってていいものだぜ」
「そうよね。流石はティターンズの拠点だっただけはあるわ」
ゼオラも彼の言葉に頷く。
「ここが私達の手にあるのがやっぱり大きいわね」
「逆に言えばここが陥落したらどうなるんだ?」
「そんなの決まってるじゃない」
ゼオラの口調は何を今更といったものであった。
「人類にとってかなりのピンチよ。こことアクシズ、ソロモンは何があっても渡せないんだから」
「宇宙の防衛拠点か」
「ええ。私達の今の任務は宇宙の防衛」
その為に彼等はゼダンにいるのである。ゼオラはそれがよくわかっていた。
「その為にこのゼダンは必要不可欠なのよ」
「基地がなければ戦えないもんな」
「そういうこと。けれどゼダンも今は随分無理してるわよね」
「皆あまり寝てないしな」
アラドもそれはよくわかっていた。
「何気に疲れもたまってるし。大丈夫かね」
「大丈夫じゃないからルナツーがこうなったのよ」
ゼオラの言葉は少し身も蓋もないものであった。
「そうでしょ、結局は」
「まあそうだけれど」
「わかったら真面目にやるのよ」
「ちぇっ、お姉さんみたいだな」
「それも当たり前じゃない」
ゼオラの口調が少し渋いものになった。
「だってスクールの時から一緒で。その時だって」
「はいはい、わかってるよ」
そこから先は言われたくなかった。
「そこから先はさ。何かオウカ姉さんもラトゥーニも入ったし」
「スクール出身者も私達だけじゃなくなったわね」
「それは正直嬉しいさ」
アラドの顔が明るいものになった。
「ずっと俺達二人だけだったんだしな」
「そうね」
ゼオラの顔も明るくなっていた。
「やっぱり皆がいるのって嬉しいわよね」
「ああ、何か他の皆もまだまだいそうだしな」
「わかってるわよね」
ここでゼオラはアラドに告げる。
「この戦争が終わったら皆をね」
「ああ、探そうぜ」
「ええ」
二人はそんな話をしていた。それをラミアとアクセルが離れた場所から聞いていた。
「理解できないな」
ラミアは二人の会話についてこう述べた。
「仲間だと。寂しいだと」
「確かにな」
それにアクセルも頷く。
「あれが人間の感情だというのか」
「人間には心があると聞いていたが」
ラミアはまるで自分が人間でないかのように言う。
「あの二人の感情もまた理解不能だ」
「俺達はただの道具だ」
アクセルもラミアと同じであった。
「それ以外の何者でもないというのにな」
「そうだ。それでどうして」
彼女はまた言う。
「ああした感情を持つのだ」
「道具だとは思っていないのだろう」
アクセルは表情を変えずこう述べた。
「だからだ。仲間を探すなどと言えるのだ」
「仲間か」
ラミアは表情を変えずに呟く。
「道具の集まりでしかない存在をそう呼ぶのだな」
「こちらの世界でもそうした存在が主流のようだ」
「わからないな。それで世界がどうなるかとでも思っているのか」
「思っているのだろう。理解はできないが」
「ふむ。そうか」
「それよりラミア」
アクセルはここでラミアに対して言う。
「わかっているな」
「当然だ。今が好機だ」
そう言うとアンジュルグの中の極秘通信を開いた。
「こちらW17」
そう名乗った。
「報告したいことがある」
「今後の作戦についてか」
「そうだ。ゼダンの場所はわかるな」
「うむ」
声はラミアの言葉に応えてきた。
「今はルナツー方面の攻撃システムが稼動しない。攻めるならそこからだ」
「わかった。ではすぐにそちらに兵を向けよう」
「頼む。それではな」
「うむ」
こうして通信は終わった。ラミアは通信を切ってからアクセルに顔を向けてまた言った。
「これでいいな」
「そうだ。これでロンド=ベルも敗れるか」
「今の我々の戦力ならば大丈夫だ」
ラミアはそうアクセルに告げる。
「ここから攻めればな」
「よし。では俺達の任務も終わりだ」
アクセルはラミアの言葉に頷いて述べた。
「ロンド=ベルが滅べばな」
「しかしだ」
ここでラミアはまた言う。
「どうした?今度は」
「果たして上手くいくかどうかだな」
彼女が危惧しているのはそこであった。
「どうも気になる」
「上手くいくと今言ったのは御前だが」
「それはそうだが」
だがそれでも気になるというラミアであった。
「どうもな。気になる」
「彼等の力がか」
「それだけではない」
ラミアはまた言う。
「何かあるような気がするのだ」
「何かがか」
「彼等にはな」
ラミアはそう言いながら共にいる仲間達を見るのだった。一応そうなっている者達を。
「力以上のものがあるような気がする」
「そうなのか」
「ああ、私の考え過ぎであればいいが」
「ウェンデル=マウザー博士は言っていた」
アクセルは突如謎の名を出してきた。
「ロンド=ベルこそはこの世界の鍵だと」
「鍵か」
「その強さ故にな。俺もそう見ている」
彼もその点では同じだった。
「しかし。御前はそれ以上だというのか」
「そんな気がするだけだ」
「それならば、だ」
アクセルはラミアの言葉を否定はしなかった。それどころか肯定されしていた。それがはっきりとわかる。顔には出さないが態度にそれが出ていた。
「もう少し様子を見るか」
「それがいいな」
ラミアもアクセルのその言葉に頷く。
「今はまだ、動く時ではない」
「そうだな。それでは」
「芝居を続けよう」
「うむ」
そんな話をしていた。やはりこれは誰にもわからない。わからないまま話が動いていく。暫くしてルナツーも方面にあの謎の軍が姿を現わしたのであった。
「やっぱり何かおかしかねえか?」
タスクは敵が来たと聞いて首を傾げて言った。
「狙ってきたみたいに来たぜ、あの連中」
「ルナツーにだな」
レオナがそれに頷く。
「来たな、本当に」
「情報が漏れるのには幾ら何でもあれだよな」
「そうね」
レオナはまたタスクの言葉に頷く。
「タスク、まさか貴方」
「俺がスパイだっていうのかよ」
「まさか」
流石にそれは否定する。
「ただ。貴方がうっかりして」
「おい、俺がそんなに馬鹿だって思うのかよ」
これにはタスクもムキになって反論する。
「幾ら俺でもそんなヘマするかよ」
「いや、御前はわからねえな」
カチーナが話に参加してきた。
「この前だって皿落として割っただろうが」
「それとこれとは関係ないんじゃ」
「いや、ある」
カチーナはそう言い返す。
「御前だけはどんなヘマするかわからねえからな」
「何でそんなに俺が信用できないんすか」
流石にタスクも言い返す言葉がなくなってきた。
「けれど俺じゃないっすよ」
「じゃあ誰だ」
カチーナは他の面々も見ることになった。
「誰が情報を漏らしやがったんだ」
「そんな馬鹿いるかな」
タスクはカチーナの言葉に首を傾げる。
「幾ら何でも」
「そうよね、タスクじゃなければ誰が」
「レオナ、まだ言うのかよ」
タスクはレオナの言葉にへこむ。
「だから俺じゃないって」
「そんなことはわかっているわ」
「わかっているのかよ」
「そうよ。幾ら何でもね」
実はわかっているレオナであった。
「それはないわ。だから余計にわからないのよ」
彼女も首を傾げさせる。
「誰が漏らしたのか。過失ならいいけれど」
「故意なら問題だよな、やっぱり」
「過失でも許すことはできん」
リーが二人に言ってきた。
「容赦なく軍法会議にかけ銃殺にする」
「それはまた」
「いえ、それが当然よ」
引くタスクにレオナが言う。
「そんなことをしたら当然よ」
「銃殺が当然なのか」
「無論だ」
リーの言葉と声が険しくなる。
「若し貴様だったらと思っていたのだがな」
「おっかないな、おい」
「おっかないとかそういう問題ではない」
リーは真顔であった。
「ましてや今度は。明らかにおかしい」
「おかしいっすか」
「考えてみろ」
リーはまたタスクに言う。
「ルナツーの異常は我々だけの極秘情報だ」
「そうですよね」
「それがどうしてよりによって彼等が知っている」
リーが言うのはそこであった。
「バルマーやゲストが察知したのならともかくな」
「そうです。だからこそ今回は腑に落ちない点があります」
レオナもそこを指摘する。
「何故彼等がここに来たのか。やはりおかしいです」
「内通者がいる」
リーは断言した。
「間違いなくな」
「だとしたら誰なんだ?」
タスクは首を傾げさせる。
「誰も怪しい奴なんていねえぞ」
「本気でそう思っているのか?貴様は」
リーはあえてタスクに問う。
「だとしたら貴様は救いようのない馬鹿だが」
「なっ、俺が馬鹿だって!?」
「そんなことでいちいち言うな」
「あっ、中尉」
カチーナに救いを見たがそれは違っていた。
「本当のことだろうが」
「そりゃないっすよ」
今度は愕然とした。
「俺が馬鹿だって、そんな」
「じゃあわかるのだな」
リーがまた言う。
「すぐにわかると思うが」
「そうですね」
しかもレオナはわかっていた。
「この場合は」
「だから俺じゃないっすよ」
「貴様でないのはとっくの昔にわかっている」
リーは怒ってタスクに言い返す。
「貴様みたいなスパイがいてたまるものか」
「そうっすよねえ。スパイか」
「あたしでも誰が怪しいかわかるぞ」
「中尉まで」
「手前だけだ、わかってねえのは」
こうまで言う。
「あとは甲児か勝平とかだけだ」
「何かそれって」
タスクはその顔触れを聞いて顔を暗くさせる。
「あれな奴等ばっかりじゃないっすか」
「だからだよ、さっきの中佐の言葉は本当なんだよ」
「トホホ・・・・・・」
「わかったらさっさと行け」
出撃するように言う。
「いいな、最前線だからな」
「わかってますよ、俺達は常に最前線」
「そうだ」
これは変わらない。ロンド=ベルにいる限り。
「思う存分やってやりますよ」
「一つ言っておく」
ここでリーが彼に言ってきた。
「何ですか?」
「妖しい者は二人だ」
「二人ですか」
「その二人が妙な動きをすれば」
「ええ」
「迷うことなく撃墜しろ、いいな」
やはりここでも険しい顔で言うのだった。
「わかったな」
「仲間をですか」
「スパイは仲間ではない」
リーの言葉が正論であった。
「容赦するな、いいな」
「わかりました」
「タスクが無理なら私がやるな」
レオナが彼に言う。
「わかったわね」
「レオナ、御前がか」
「私達は勝たないといけないのよ」
それがレオナの主張であった。
「それならスパイは。許してはならないわ」
「一時は仲間であってもかも」
「だからスパイは仲間じゃないのよ」
レオナはそこを強調する。
「考えればわかるでしょ。こっちに潜伏して情報を流しているのよ」
「ああ」
「だったら仲間なわけがないじゃない。絶対に許したら駄目よ」
「そうか」
「そうよ」
レオナは少し苛立っていた。タスクの人のよさが能天気なものに思えたからだ。
「そこをはっきりしておかないと駄目よ」
「そうするしかねえか、やっぱり」
「わかってもわかってないくても行くわよ」
レオナはそう言ってタスクを引っ張る。
「いいわね」
「ああ、それじゃあな」
「全軍出撃だ」
リーが指示を出す。
「ルナツー方面だ。いいな」
「了解」
こうして少しの慌しさと共にロンド=ベルは出撃した。ルナツー方面にはもう敵が出現していた。
「数は。三千か?」
ダイテツが艦橋から見える敵軍を見て呟く。
「そんなところか」
「はい、その通りです」
エイタが彼に応える。
「三千、やはり機種は」
「まちまちなのだな」
「そうです。地球のこれまでの軍のマシンが雑然とあります」
エイタはそうダイテツに報告する。
「それを考えますとやはり敵の戦術は」
「わかっている」
前と同じである、ダイテツはそう読んでいた。
「ならばだ。全軍陣を整えよ」
「迎撃ですね」
「そうだ。また待っていればいい」
テツヤに応えて述べる。
「そうして来た敵だけを倒していくぞ」
「わかりました」
「そしてだ」
そこまで指示を出したうえでチラリとラミア、アクセルを見た。
「まさかとは思うがな」
「艦長もそう思われていますか」
「大体皆も同じだと思うが」
「そうですね」
テツヤもそれは同じであった。
「怪しいことは事実です」
「その通りだ。しかしはっきりした証拠はない」
「それが問題ですね。怪しいというのにだ」
「そもそもだ」
ここでダイテツは言う。
「あのアンジュルグにしろ。地球のマシンではない」
「かといってバルマーのものでもないですしね」
エイタもここで言う。
「ジュデッカやそうしたものとは違います」
「タイプで言うと魔装機神か?」
テツヤはふとした感じでサイバスター等を出してきた。
「それだと」
「いえ、また違います」
しかしエイタはそれも否定する。
「むしろあれはレイアースに近いでしょうか」
「レイアースにか」
「精霊こそ宿ってはいませんが」
それがエイタの分析であった。
「その性能やタイプを見ていると」
「ううむ、わからなくなってきたな」
テツヤはエイタの言葉に腕を組んで考えはじめた。
「余計にな。しかしこの世界にあるものじゃない」
「それは確かです」
エイタもそれには頷く。
「それは間違いないですが。だとすると」
「やはり今ここにいる敵と関係があるのか」
ダイテツは鋭い洞察力をここで働かせてきた。
「そうなると」
「そういえば。御覧下さい」
テツヤはここで今はじまりだした戦いをダイテツに見せる。
「むっ!?」
「やはりあの二人は」
そうしてここで言うのだった。
「前線には出ませんね。艦隊の護衛に回っています」
「そうだな」
見ればそうであった。ヒリュウ改の周りにいる。そのヒリュウも前線からかなり近い場所にいるのであるがそれでも前線にいないのは確かであった。
「普段は常に前線にいるあの二人が」
「あのアクセルもだな」
「はい」
アクセルも見ている。彼も怪しいのだ。
「この敵との戦いでの二人はあまりにも妙です」
「やはり繋がっているのか」
「可能性としてはかなり低いですが」
テツヤがここで言った根拠は今目の前の敵がそもそも素性が知れないからだ。何処から来たのかさえわからない。それはラミア達も同じであるがだからこそ不安定要素に満ちていて可能性は低いと見積もらざるを得なかったのである。
「それはゼロではありません」
「ゼロでないならば疑うに足る」
ダイテツは言い切った。
「そう考えるならば」
「やはり。警戒は必要ですね」
「暫く泳がせながらな」
それがダイテツの考えであった。
「見ておこう。それより今は」
「ええ」
話が変わった。
「戦いに集中しよう。艦首に火力を集中させよ」
「了解、艦首に火力を集中させよ」
テツヤがダイテツの命令を復唱する。
「攻撃を前面に集中させる」
「わかりました」
ダイテツの言葉に頷く。そうしてクロガネは前面に攻撃を集中させて敵を次々に屠るのであった。その火力はかなりのものであった。
「よし、今ね」
それを横に見てラトゥーニが声をあげた。
「ラトゥーニ」
その彼女にシャインが声をかける。
「いきますわよ」
「ええ」
ラトゥーニはシャインの言葉を受けて頷く。そうして二人で動きを合わせ目の前のジンに向かう。
「これなら」
「いけますわっ」
二人は螺旋状に動き上下左右にと激しくビームを放つ。それで敵軍に突っ込みそのビームで敵を倒していく。二人が通ったところにはジン達の残骸があるのだけであった。
「やるわね、やっぱり」
エクセレンはそんな二人の戦いを見て微笑んでいた。
「そうでなくっちゃ。流石はロンド=ベル」
「そういうあんたもだろ」
その彼女にヒューゴが突っ込みを入れる。
「あまり自覚がないのは考えものだぞ」
「自覚?あるわよん」
しかしそれに対するエクセレンの返答は能天気なものであった。
「だから少年は安心して見ていなさいって」
「俺はもう二十なんだが」
「三つ離れていればもう少年よ」
「そうなのか?」
「そうよ」
かなり強引な言葉であった。
「だから。お姉さんを信じなさい」
「何かよくわからないんですけれど」
アクアが話に入って来た。
「三つ離れていてもヒューゴはもう二十歳ですし」
「細かいことも気にしないの」
しかしエクセレンはアクアにも笑顔で言う。
「いいわね」
「はあ」
「とにかくだ。数が多い」
ヒューゴはそこを指摘する。
「各個撃破といっても慎重にやらないとな」
「それを言うのは私の仕事なのに」
アクアがクレームをつけてきた。
「何であんたがここでクールになるのよ」
「俺は思ったことを言ったまでだ」
しかしヒューゴはここでもクールであった。
「それがどうかしたか」
「したわよ。全く」
また文句をつけるアクアであった。
「最近私影薄いから困ってるのに」
「そうか?」
「そうよ。声が似ている人も少ないし」
「気にしたら負けよん、それって」
またエクセレンが言ってきた。
「私だってそうだし」
「そういえばそうですよね」
アクアはその言葉に気付いた。
「キョウスケさんも」
「そういうこと。それは考えない考えない」
「俺は結構いるな」
ヒューゴはポツリと呟く。
「いいことか」
「羨ましいわよ」
アクアの本音であった。
「敵にもそういう人いないし。それはそれで大変なのよ」
「しかしアクア」
ヒューゴはここでまたアクアに言う。
「何よ」
「御前この前俺と金竜大尉間違えていたな」
「だって声そっくりじゃない」
それを言い訳にする。
「仕方ないでしょ、それは」
「そういう問題か?」
「それを言ったらそれこそね」
アクアは少し頭にきた感じで言葉を続ける。
「マサキ君とヒイロ君なんかもう」
「あれはな」
ヒューゴにもわかった。
「聞き分けるのが難しいな」
「でしょ?だから困ってねえ」
「おい、俺かよ」
マサキの声が入って来た。
「そっちは暇なのかよ、そんな話してよ」
「マーサのところは忙しいの?」
「だからそのい呼び方は止めろって」
エクセレンに抗議する。
「マサキでいいって言ってんだろ、いつも」
「あら、別にいいじゃない」
しかしエクセレンの態度は崩れない。にこりと笑ってさえいる。
「この呼び方も可愛いでしょ」
「可愛いとかそういう問題じゃねえだろ」
マサキは心からこの呼び方が嫌なようであった。
「とにかくな、そっちはどうなんだよ」
「結構忙しいぞ」
キョウスケが答えてきた。
「結構か」
「こっちにはバーザムの一団が来ている」
「そうか、そっちはバーザムか」
「マーサの方は何なの?」
「こっちはドラムロだ」
マーサというのは無視して答える。
「数だけは多いぜ」
「宇宙空間にオーラバトラーねえ」
「普通だろ」
マサキはそうアクアに言葉を返す。
「それを言ったらショウ達だってよ」
「そうよね、よく考えたら」
「そういうことさ。何か宇宙と空での戦いは似てるしな」
「そうね・・・・・・今っ!」
「んっ!?」
アクアの言葉が急に変わったので妙に思った。
「どうしたんだよ、いきなり」
「ちょっと攻撃仕掛けたのよ」
そうマサキに答える。
「一機撃墜よ」
「それでそっちは後何機だ?」
「まだ数十機はいるな」
またキョウスケが答えてきた。
「数にして十倍か」
「十倍かよ」
「そっちはどれだけだ?」
「同じ位だな」
そうキョウスケに答えを返す。
「まあ何とかやっていってるさ、そっちはいけるか?」
「安心してくれ」
そうマサキに言葉を返す。
「充分やっていけている」
「そうか。じゃあ悪いがそっちはそっちで踏ん張ってくれよ」
「わかった」
マサキのその言葉にまた頷いた。
「そういうことでな。こっちの手が空いたら行くからよ」
「その余裕多分ないわよ」
ここでセニアが突っ込みを入れてきた。
「ねえのかよ」
「だって。また新手が来ているわよ」
「何っ」
それを聞いたマサキの声が動いた。
「もうかよ」
「だから。速度が違うから一辺には来ないのよ」
セニアはそこを指摘して言う。
「それを迎え撃つ作戦でしょ。忘れたの?」
「いや、覚えてるけれどよ」
マサキもそれは一応は覚えていた。
「それじゃあやっぱりここは」
「そうよ。当分離れられないわよ」
「ちっ、何処までも鬱陶しい奴等だぜ」
「わかったら頑張るの、いいわね」
「ああ」
そのうえでセニアの言葉に頷く。
「わかったぜ、それじゃあな」
「魔装機神が頼りなんだからね」
セニアはさりげなくマサキを持ち上げる。
「しっかりしてよ」
「しかしよ、セニア」
それに反論するかのようにマサキは言ってきた。
「どうしたの?」
「エネルギーがかなりやばいんだけれどよ」
彼が言うのはそれであった。
「マサキが後先考えずにサイフラッシュ撃つからニャ」
「あれだけ注意したのにニャ」
「仕方ねえだろ」
マサキはクロとシロに言い返す。
「これだけ敵がいるんだからよ」
「あのね」
セニアがそんなマサキに言う。
「補給装置あるマシンのところに行けばいいでしょ」
「今近くにいるか?」
「そういえばいないわね」
「だったら何にもならねえじゃねえかよ」
そうセニアに言い返す。
「ちっ、このままじゃ」
「安心していいわよ、マサキ」
そこにシモーヌが来た。
「何か考えがあるのかよ」
「ルナツーの補給タンクを使えばいいのよ」
「ルナツーのか」
「そっちは生きているしね」
動かないのは整備と攻撃のシステムである。そちらは大丈夫なのだ。
「すぐにそっちに入りなさい。いいわね」
「ああ、教えてもらって悪いな」
「というかそれ位わかるでしょ」
シモーヌは少し苦い顔になった。
「まさかとは思うけれど」
「いや、気付いてなかった」
マサキは自分でそれを認める。
「正直言ってな」
「呆れた」
「本当にね」
セニアとシモーヌは今のマサキの言葉にこう言った。
「とにかく。エネルギータンクにさっさと入って」
「補給しなさい、いいわね」
「わかったぜ、それじゃあよ」
「じゃあマサキ、あれになるのだニャ」
「サイバードだニャ」
「ああ、ここは急がねえとな」
クロとシロに言われるまでもなかった。マサキはもうサイバスターをサイバードに変形させていた。そうしてルナツーのエネルギータンクの一つに向かうのであった。
見ればサイバスターだけでなく他のマシンもエネルギーや弾薬をかなり消耗していた。それで自然にルナツーにこもるようになっているのだった。
「何だかねえ」
その中でレミーが言う。
「こうした戦いって好きじゃないのよね」
「じゃあドカーーーーーンと派手なのがいいのかい?」
「その通りよ」
こうキリーに言葉を返す。
「ゴーショーグンなんだから。やっぱり格好よく派手にね」
「それはもうやってるじゃないか」
レミーに真吾が言ってきた。
「ゴーフラッシャーを何度も放ってるだろ?」
「もっとよ」
レミーの要求はかなり大きいものだった。
「もっと派手にしないと駄目じゃない」
「やれやれ、注文の多いお嬢様だことで」
「料理店よりは少ないわよ」
キリーには料理店で返す。
「そこにいたのは確か」
「黒猫だったら勘弁な」
相変わらず黒猫が嫌いであった。
「それだけはな」
「そう。じゃあ止めておくけれど」
「そういうことさ。それにしてもな」
ここでキリーは敵を見た。その間にゴースティックでリガードを一機倒す。リガードは真っ二つにされて宇宙で光となって消え去った。
「本当にごちゃ混ぜの軍隊だな、この連中は」
「懐かしのドクーガのマシンもあるし」
「そうだな。まさかここで見るとは思わなかった」
真吾も言う。
「他にも色々といるしな」
「何だと思う?この連中」
レミーが次に考えるのはそこであった。
「この世界にいるのじゃないかも、本当に」
「あれかい?それじゃあ」
キリーがそれを聞いて言うのは殆どの者と同じであった。
「バイストンウェルとかセフィーロとかみたいな感じか」
「そんな匂いがするわね。だってどう見ても今までの勢力じゃないじゃない」
レミーはそこを言う。
「違うかしら」
「いや、俺もそう思う」
真吾はレミーのその考えに頷いた。
「やっぱりこれはどうにもおかしいな」
「しかもあれだしな」
キリーも述べる。
「こいつ等は無人機ばかりでしかも全滅するまで仕掛けて来る。数には相当な余裕があるみたいだな」
「そうだな」
真吾は応えながらゴーバズーカを放って敵の戦艦を沈める。それはサラミスであった。サラミスは艦の横腹を撃ち抜かれそのまま炎に包まれて爆発する。戦艦も既存の勢力のものばかりであった。見ればバルマーのものすら存在している程である。
「それだけは確かなようだ」
「じゃあ相当大きな組織ね」
「そうか?」
キリーは今のレミーの言葉には首を傾げさせた。
「あら、けれどこの数じゃ」
「その割には人がいないよな」
キリーが指摘するのはそこであった。
「戦艦にすらいないのじゃそれはどうかな」
「それは」
「何か余計にわからなくなってきたな」
真吾もそれについてはわからなかった。
「この敵は。一体何者なんだ」
「まだ正体は現さないってか」
キリーは軽口になった。
「悪役らしいねえ、どうにも」
「じゃあそれを暴くのが正義の味方ね」
「そういうこと」
今度はレミーの言葉にも明るく返す。
「けれどそれは今じゃない」
「最後の最後でそのベールを剥ぐのが定番よね」
「それじゃあ今は」
真吾も二人の言葉を受けて動く。
「真面目に目の前の敵を倒すか。レミー、キリー」
「ええ、いいわよ」
「そろそろ敵の数も減ってきたことだしな」
ゴーショーグンは攻撃態勢に入る。そうして放つのは。
「行くぞ、ゴーフラッシャーーーーーーーーッ!」
それで敵艦をまた沈めた。今度はバルマーのフーレであった。この巨艦が沈んだのが最後の合図となったのであった。
戦いは戦艦の撃沈に移っていた。何機か、若しくは攻撃力の高い武器で攻撃を仕掛け次々と仕留めていく。護衛はもう殆ど残っておらず戦いはあっさりと終わってしまった。
しかし。ここでも謎が残っていた。
「やはりな」
ドクーガ艦の中でブンドルが呟く。
「あの二人は動かなかった」
「そうだな」
「ここでもな」
カットナルとケルナグールもブンドルの言葉に応えて頷く。
「それを考えるとやはり」
「あ奴等は」
「私もそう考えている」
ブンドルも二人に応える。考えることは同じであった。
「しかしだ。まだこちらは動いてはならない」
「何故だ!?」
カットナルはそれを聞いて片目を顰めさせる。
「怪しいのならばすぐにでも」
「吐かせるしかあるまい」
ケルナグールも同じ考えであった。
「何なら自白財を用意するぞ」
「身体に聞いてやろうぞ」
二人のそれぞれの得意技を出してきた。
「何、これならすぐに」
「吐くのは間違いなしよ」
「だから違うのだ」
しかしブンドルはそれも退けるのであった。
「違うだと」
「どういうことだ、ブンドル」
「自白剤も拷問も効果がない相手もいる」
「むむっ」
「ではあの者達はまさか」
「その可能性も否定できない」
ブンドルが言うのは。
「サイボーグの可能性もな。だからだ」
「ではどうするのだ?」
「このまま放置しておくのか」
「今はな」
ブンドルの考えはこうであった。
「泳がせておくべきだ。今のところはな」
「それしかないというのか」
「わしは好かんな」
「何時か必ず動く」
だがそれでもブンドルは己の考えを変えない。彼もマリュー達と同じ考えであったのだ。
「その時にこちらも動けばいいだけだ」
「ではその時の用意をしておくのだな」
「わし等は」
「それがわかっているのならいい」
また二人に対して言う。
「今は。まだだ」
「わかった。しかしだ」
「どうした、カットナル」
ケルナグールはここでカットナルに問うた。
「戦いはさらにややこしくなっているな」
「敵が増えたことか」
「そうだ。今の時点で既にガンエデンとの戦いよりも激しくなっておる」
カットナルはそこを指摘するのだった。
「おそらくはこのまま」
「ならいいことではないか」
ケルナグールにとってはそうであった。
「敵が増えればそれだけ暴れられるのだからな」
「御主はそれしかないのか」
「戦えればそれで言うことはないわ」
実にケルナグールらしい言葉であった。
「それだけでな」
「ふん、単細胞が」
「何とでも言うがいいわ」
今更それでどうこう言うケルナグールではなかった。
「わしにとっては敵が多ければそれでいいのよ」
「戦いが終わればどうするつもりだ、それでは」
「それももう決まっておるわ」
ここでも幸せなケルナグールであった。
「かみさんとケルナグールフライドチキンの経営よ。もっともっと大きくしてやるぞ」
「・・・・・・世の中間違っている」
ブンドルの言葉である。
「何故このような男にあれだけの美人が」
「世の中謎だらけだな」
カットナルも言う。
「全く。これは一体」
「何とでも言うがいい。さて」
ケルナグールは上機嫌なまま二人に対して言う。
「戦いは終わったな」
「うむ」
「それはな」
見れば戦場にはもう一機の敵もいない。彼等の勝利は明らかであった。
「では戻るとしよう」
「美しき時の為に」
「帰ったら飯じゃ!」
三人はそれぞれの言葉で言う。
そうしてア=バオ=ア=クーに帰る。その格納庫の中で。
「あいつが来るのだな」
「そうだ」
ラミアがアクセルの問いに頷いていた。
「まずはあいつがな」
「そうか、わかった」
アクセルはラミアのその言葉に頷いた。
「ではそれに合わせるか」
「そうするぞ。いいな」
「了解だ」
彼等のここでの話は誰も知らない。しかし彼等に対して猜疑の目が広まっていた。その中でまた何かが動こうとしていた。戦乱の星はさらに輝きを増していた。

第二十七話完

2007・12・4
 
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