スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第二十話 謎の帝国
第二十話 謎の帝国
シャピロを倒したロンド=ベル。その彼等のところに一報届いていた。
「ハガネとクロガネですか」
「そうだ。そちらに回したいと思う」
ダイテツに対してミスマルが述べていた。
「それでどうかな」
「願ってもない申し出です。ただ」
「ただ。何かね」
「二隻ですな」
ダイテツはそこを指摘する。
「そこが気になります」
「そうか、やはりそこか」
ミスマルもそれは予想していたようである。納得したような声であった。
「一隻の艦長は私ですな」
「うむ」
ミスマルは彼の問いに頷いてみせる。
「その予定だ」
「ではもう一隻は」
そこが問題であった。
「誰が艦長を務めるのでしょうか」
「リー=リジュン中佐だ」
「リー中佐というと」
「知っているな」
「はい」
今度はダイテツがミスマルの問いに頷く番であった。
「連邦軍でも最近名が知られている」
「切れ者と評判の人物だ」
そのリーという人物の評判はこうであった。
「彼を送るつもりだ」
「確か彼は今」
「第一艦隊にいる」
「そうでしたな。あそこで随分と活躍したそうですが」
「だから問題はない筈だ」
ミスマルもそれを保証する。
「ロンド=ベルにおいてもな」
「能力的にはそうでしょう」
ダイテツもリーを知っている。だからそれは認めた。
「ただ」
「性格面か」
「彼はまだ若い」
ダイテツが最初に言うのはそこであった。
「あまりにも厳格で融通が利きません」
「少なくとも生真面目ではある」
それがリーの評判であった。
「それが問題か」
「このロンド=ベルは何分色々な面々がいる部隊です」
それこそがロンド=ベルである。彼が率いていた第一遊撃隊にしろそうであるが。
「ですから。彼に合うかどうか」
「彼は無理にでも合わせるだろう」
しかしミスマルはこう述べるのであった。
「軍人だからな。だからこそ」
「合わせると」
「そういう考えの持ち主だ。安心してくれ」
「わかりました。それでは」
「シロガネはこちらで引き取っておく」
ミスマルはシロガネのことについても言及した。
「それでいいな」
「わかりました。それでは」
「以上だ。他にはパイロットも付けておいた」
「パイロットもですか」
「そうだ。かなり特殊な面々だがな」
そうダイテツに述べる。
「戦力にはなる。期待しておいてくれ」
「わかりました。それでは」
「うむ、頼むぞ」
こうして新たなメンバーがまた加入した。早速彼等がゼダンに到着した。
「全く」
ハガネの艦橋にはそのリーがいた。彼は如何にも面白くないといった顔であった。
「私がロンド=ベルに入るのはいい」
「それは宜しいのですか」
「命令だからだ」
そう部下に答える。
「いつも言っているが軍人というものは」
「命令に服従すべきですな」
「そうだ。ロンド=ベルならば私の能力も今まで以上に発揮させられる」
こうも述べる。
「だからだ。それには不服はない」
「ではどうしてまた」
「一緒にいる面々だ」
それについて不服だというのであった。
「何故あの一家なのだ?」
「あの一家ですか」
「そうだ。幾ら連邦軍が人手不足だと言っても」
彼は言う。
「あの様な胡散臭い連中をまた入れるものだ。連邦軍もいい加減になってはいないか?」
「それは気のせいでは?」
「いや、気のせいではない」
彼はまた言う。
「ロンド=ベルも多分にそうだがな」
「はあ」
「少なくとも正規軍には思えない。独立部隊と言えばそれまでだが」
「ですがその功績は」
「それは認める」
認めるしかなかったと言える。
「それはな。だが」
「それでもですか」
「あまりにもそのあり方が軍のそれには思えない」
彼が問題としているのはそこであった。
「全く以っておかしな存在だ」
「確かにそうですが」
「あそこにはナタル=バジルール少佐もいたな」
「ええ」
部下が彼に答える。
「そうですが」
「全く。バジルール少佐は何をしている」
どうやら彼はナタルを知っているようであった。
「名門バジルール家の者としてだけでなくその能力と人格を期待されているというのに」
「一時ティターンズにいましたし」
「それもな」
リーはそのことにも表情を険しくさせた。
「妙な話だと思う。しかも彼女がいてあの風紀とは」
「理解できませんか」
「私の買い被りか?」
こうも述べた。
「彼女ならばロンド=ベルを引き締められると思ったのだがな」
「早瀬少佐もおられましたが」
「彼女もいたな、そういえば」
リーにとってはさらにわからなくなる要因であった。
「彼女がいて収まらない部隊だとは」
「有り得ないですか」
「わからない」
リーはそう述べて首を傾げさせた。
「どうしてあれでまとまらないのかな」
「しかし功績はあげていますし」
「納得せざるを得ないか」
「しかも彼等の多くは軍人ではありませんし」
ロンド=ベルの特徴はそこにもあった。正規軍ではないというところである。
「ですから」
「そこも考慮してか」
「そうです」
部下は述べる。
「考えていかないと駄目なようです」
「わかった」
わかりたくないが答えた。
「彼等には私の故郷も守ってもらっているしな」
「北京ですか」
「そうだ。おかげで家族も助かった」
この前の異星人との戦いである。ロンド=ベルはその戦いで見事敵を退けているのだ。
「それには感謝している」
「それでは閣下」
「だが。引き締めるものは思いきり引き締める」
その考えは変わらない。
「特にあの海賊一家はな」
「おいおい、また随分と言ってくれるな」
ハガネの艦橋のモニターに頬髯をたくわえた精悍な男が現われた。
「中佐さんよ、それはないんじゃないのか?」
「貴殿か」
リーはその彼の顔を見て不機嫌な顔をさらに不機嫌にさせた。
「俺達は海賊じゃない。立派な企業だ」
「それを誰が信じると思う?」
リーは不機嫌さをそのままに彼に言葉を返す。
「アーディガン一家を」
「俺達は道理に合わないことはしてはいない」
「だが違法行為をした」
彼が問題としているのはそこである。
「それを否定することはできない筈だが」
「また随分と厳しい艦長さんだな」
「二年前のことを覚えているか」
「さて」
リーのその質問にはわざととぼける。
「何のことかな。知らないのだが」
「あの時私はアリゾナの副長だった」
リーの昔乗っていた戦艦である。
「その時アリゾナを航行不能にしてくれたな」
「さてな」
それについても知らないふりをする。
「そんなこともあったかな」
「あの時はえらい目に遭ったものだ。それを忘れたことはない」
「人間何でもかんでも覚えていると健康に悪いぞ」
「放っておいてもらおう」
不機嫌さを頂点にさせて言葉を返す。
「だが覚えておけ。貴殿は何時か私が必ず牢屋に送る」
「ほう」
「それも一家全員でだ。わかったな」
「罪状もなしでか」
「それは何時か必ず見つけ出す」
リーも負けてはいない。
「私を甘く見るな。絶対にだ」
「これから一緒に戦うというのにか」
「これが終わってからだ」
完全に喧嘩腰の二人であった。
「楽しみにしておけ」
「そうらしい。次の家が決まったぞ」
その男ブレスフィールド=アーディガンは後ろを振り向いて言った。
「よかったな」
「あら、それは吉報ですね」
長女のシホミがそれを素直に喜ぶ。
「御飯も食べられますし」
「そうだね」
次女のアカネもそれに頷く。
「働かなくてもいいし」
「けれどあれですよ」
ホリス=ホライアンがここで言う。
「前科がつきますよ」
「面白い」
だがブレスフィールドはそんなことで参る男ではなかった。平気な様子であった。
「前科の一つや二つ」
「そうよねえ」
アカネも平気な顔をしていた。
「今更あたし達にそんなもの」
「あらあら、次のお家が決まりましたのね」
「何なら一生いていいな」
ブレスフィールドもまた。とにかく彼等は平気であった。
「どうだ艦長、それで」
「くっ、こいつ等は」
「艦長」
ここで部下が彼に言う。
「何だ?」
「彼等とハガネで艦橋に入りますのでこれ以上の衝突は」
「それも不愉快な話だ」
感情を完全に顔全体に出していた。
「どうしてこんな連中と」
「仕方ありません。クルーの大半がそのまま第一艦隊に残るのですから」
「それもわからん話だ」
リーはまたそう言う。
「それで何故この連中を」
「ミスマル司令の決定ですから」
「・・・・・・司令は時折変わったことをされる」
それでも有名である。
「だが今度ばかりはわからん」
「何しろロンド=ベルは激戦地域ばかり行っていますし」
「それはもう知っている」
だからこそ多くの戦果を挙げているのだ。
「しかし。それにしてもだ」
「まあそう仰らずに」
「命令だからか」
「そうです。もうすぐゼダンですし」
「・・・・・・わかった」
憮然として部下に答える。
「では行こう。それでいいな」
「はい」
こうして彼等はゼダンに入った。中にいるパイロット達も一緒である。
彼等はまず食堂に入った。そこで赤い髪の少女が大飯を平らげていた。
「うわあ、ここの御飯って」
彼女は巨大な丼の中の飯を食べながら言う。
「すっごく美味しいです」
「美味しいのはいいけれどよ」
甲児がそれを見ながら言う。
「これはまた。よく食う奴だな」
「甲児君もでしょ」
さやかはすかさず甲児に突っ込みを入れる。
「人のこと言えないじゃない」
「それもそうか」
「そうよ。それにしても今度もパイロットいるのね」
「そうです」
黒髪の少女が答えてきた。
「パイロットは紫雲統夜さんに」
「どうも」
紫の髪の少年が一礼する。
「宜しく御願いします」
「カルヴィナ=クーランジュさんに」
「宜しくね」
銀髪の美女がいた。
「カズマ=ガーディアンさん」
「俺と」
ここでカズマは隣の少女を指差す。
「ミヒロ=ガーディアンさん」
「宜しく御願いします」
「二人でパイロットやっています」
「こういう場合ってよ」
甲児がまた言う。
「妹がしっかりしているんだよな」
「何故それがわかった」
よりによってリーが甲児に問う。
「兜甲児だな」
「ああ。あんたが今度の艦長さんか」
「そうだ。リー=リジュン」
自分の名を名乗る。
「階級は中佐だ」
「俺と同期なんだ」
ここでテツヤが言ってきた。
「士官学校の時にな。こいつは首席で俺は次席だったんだ」
「へえ、あんた凄いんだな」
「大したことではない」
リーにとってはどうでもいいことのようであった。
「全く。よりによってこの一家と一緒とはな」
「何かあったの?」
さやかが早速ミヒロに問う。
「すっごい不機嫌そうだけれど」
「艦長ガーディアン家の人達と仲悪いんです」
「そうなの」
「海賊あがりってことで。昔えらい目に遭っていますし」
「成程ね」
さやかもそれを聞いて納得した。
「それでだったの」
「まあ気にしないで下さい」
黒髪の少女が笑って述べる。
「大したことじゃないですし」
「そうなの」
「後申し送れましたが」
その黒髪の少女がにこりと笑って言ってきた。
「私はカティア=グリニャール」
「カティアね」
「はい。それで彼女がフェスティア=ミューズ」
大食漢の少女を指し示した。
「宜しくね。テニアって呼んで」
「それで彼女がメルア=メルナ=メイアです」
「メルアって呼んで下さい」
最後に金髪の少女が名乗る。彼女達は統夜とカルヴィナのところに来た。
「御二人のサブパイロットです」
「へえ、三人で二人の担当か」
「そうなの、大体ローテーションで」
テニアが甲児に言う。
「二人が一緒に乗ってもう一人がブリッジで管制して」
「そうやっています」
メルアも述べる。
「何か面白いわね」
「そうだよな。けれど何だよな」
甲児はまた述べる。
「今回結構子供が多いよな」
「いつものことじゃない」
さやかはそう言葉を返す。
「うちの部隊って子供多いじゃない、元々」
「それもそうか」
「そう思っている貴方に朗報!」
だがテニアがここで笑顔で叫ぶ。
「大人の女性もいるのよ、これが」
「おっと、それはいいな」
イルムがそれを聞いて笑顔になる。
「そこのお姉さん二人にカルヴィナ少尉だけじゃなくか」
「おい」
笑顔になるイルムにリンが突っ込みを入れる。
「わかっていると思うが」
「げっ、いたのか」
「最初からな。鼻を伸ばせば」
「わ、わかってるって」
彼は焦って恋人に言葉を返す。
「御前一人だからな。そこは」
「わかればいい」
リンはまた冷徹な様子で言葉を返す。
「わかっていればな」
「あれがリン=マオさんですね」
シホミがジュンに尋ねた。
「噂通りの人みたいですけれど」
「いい人よ」
ジュンはうっすらと笑って彼女に答えた。
「ああ見えても仲のいいカップルだしね」
「そうなのですか」
「喧嘩する程ってやつね」
アカネはそう解釈した。
「いい話じゃない」
「それでだ」
鉄也は真面目に問う。
「その他のパイロットは」
「こちらは二機です」
青紫のショートヘアの女が出て来た。カーキ色のスーツとミニスカートに身を包んでいる。
「貴女は」
「フェアリ=ファイアフライです」
その女はこう名乗った。
「スーパーソウルセイバー及びソウルランサーの管制です」
「へえ」
「二機のかい」
「はい。御二人のサポートです」
そうロンド=ベルの面々に答える。
「秋月様の」
「秋月!?ああ」
万丈はその名前に心当たりがあるようであった。ふと声をあげる。
「彼等もここに来たんだ」
「知ってるんですか、万丈さん」
「うん。日系の財閥でね」
そうミレーヌに答える。
「かなり大きな家だよ。確か双子の兄妹だったかな」
「そうです。ただ」
「ただ?」
「名前に注意してね」
万丈は皆に告げる。
「ややこしいから」
「ややこしいって」
「何が」
「ああ、俺達のことか」
「ちょっと注意して」
ここでその二人が出て来たのだった。
「俺は秋月赤水」
「あたしが秋月赤水」
二人はそれぞれ名乗った。皆その名前を聞いて顔を顰めさせた。
「ちょっと待てよ」
「今何て」
「御二人の名前は同じなのです」
フェアリはそう説明するのだった。
「それでお間違えのなきよう御願いします」
「そういうことだ」
「宜しくね」
「いや、これは」
だが大介がまず困った顔を見せるのだった。
「名前が同じだとやっぱり」
「困るわ」
ひかるもそれは同じであった。
「どっちがどっちだか」
「わからないわ」
「じゃあ俺のことは兄赤水でいいぜ」
「あたしは妹赤水ね」
二人は陽気にそれぞれ提案してきた。
「それでどうだい?」
「わかりやすいわよね」
「どうする?」
「本人達はああ言ってるけれど」
皆その提案にまずは顔を見合わせて考える。
「じゃあそれでいいじゃないの」
万丈が言ってきた。
「本人達もいいって言ってるんだし」
「そうそう」
妹が笑顔で頷く。
「そういうことだから」
「宜しくね」
「了解」
「じゃあそういうことで」
こうして彼等も加わった。だがそれで終わりではなかった。
「後は」
「まだいるの」
「いるのかってちょっと」
甲児の言葉に早速クレームが入った。
「それはないんじゃないの?」
「悪い悪い。それであんたは」
「クリアーナ=リムスカヤよ」
人参色の髪の少女が現われた。
「リムって呼んで。デア=ブランジュネージュのパイロットよ」
「そうか、宜しくな」
「ええ。それに」
ここでリムはまた紹介するのだった。
「彼もね」
「ジョシュア=ラドクリフだ」
青い髪の男が出て来た。
「俺はジュアン=シュヴァリアーに乗っている。ジョッシュでいい」
「ジョッシュ君だね」
大介が彼に応える。
「宜しくな」
「ああ、こちらこそ」
二人は握手を交あわせた。
「何かはじめて会った気がしないけれど」
「これはこれでいいものだな」
「私達も」
「いるぞ」
ここでもう二人出て来た。男女であった。
「グラキエースだ」
青い長い髪の美女だった。
「ウェントスです」
今度は白い髪の男である。クールな印象だ。
「ファービュラリスに乗っている」
「私はストゥディウムです」
「あれ、何か」
カツが彼等の名前を聞いていてふと思い出した。
「皆第一艦隊のエースじゃないの?」
「そういえばそうね」
ファもそれを思い出した。
「皆。特殊な機体だし」
「第一艦隊も今は再編成中でな」
彼等にリーが答えてきた。
「それで機種や艦種を統一させているところなのだ」
「そうなんですか」
「それで変わったものを一旦外している」
そうした事情があったのだ。
「それもあって私達はここに来た」
「成程」
「だが。それにしても」
また彼はアーディアン家の面々を見るのであった。忌々しげな顔で。
「この連中だけは」
「おやおや」
だが主のブレスフィールドは至って平気な顔のままであった。
「これから長い戦いを共にするクルーなのだが」
「私にはそのつもりはない」
リーは彼を睨み据えて言い返した。
「貴様は何時か。この手で」
「牢屋なら願ったりだ」
「冥王星に送ってやる」
かなり過激な言葉であった。
「その時を楽しみにしているがいい」
「どうせなら雷王星と言って欲しいところね」
「そうね」
アカネとシホミも父と変わらない調子であった。
「ジョーク下手なんだから、艦長って」
「冗談で言っているのではないからな」
リーはアカネにも怒りに満ちた目を向けるのだった。
「どちらにしろこれからの戦いでは御前達は私の指示に従ってもらう」
「了解」
「わかりました」
軽くリーに言葉を返す一家であった。
「少しでも命令に背いたら冥王星行きだ」
「何か疲れる人が来たなあ」
「ナタルさんより凄いね」
ロンド=ベルの面々はそんなリーを見て言うのだった。だがかなり軽い調子である。
「まあ何時また敵が来るかわからないし」
「用意だけしておいて」
彼等もそれは忘れない。
「ゆっくり歓迎パーティーでもしようぜ」
「そうだよな、楽しく」
何だかんだで新しい仲間を受け入れる彼等であった。それが終わって少し経ってからサイド5近辺に謎の一軍が現われたとの報告が届いた。
「バルマーか?」
「いや、どうも違うらしい」
すぐにそれは否定された。
「見たことのない軍隊のようだ」
「見たことのないって」
「一体何処のどいつなんだよ」
「それは言ってみたいとわからないね」
万丈はそう皆に述べた。
「ここでああだこうだ言っても仕方ないし」
「そうね。それじゃあ」
マリアが最初に彼の言葉に頷いた。それがはじまりとなった。
「皆で」
「行くか」
ロンド=ベルはゼダンを発ちサイド5に向かった。見ればそこには緑色で首が二つあるようなシルエットの戦艦が多数展開していたのであった。
「何だ、あの戦艦」
トッドはその戦艦を見て声を上げた。
「見たことのない形だな」
「ショウ、知ってる?」
「いや」
ショウもチャムの言葉に首を横に振った。
「あんなのは。とても」
「そうよね。あたしも知らないわ」
「少なくとも連邦軍ではないみたいね」
カルヴィナが言う。
「だとすれば」
「敵ですね」
カティアが言った。
「間違いなく」
「その証拠に」
今度はメルアが述べる。
「マシンに戦闘機らしきものをこちらに多量に向けてきました」
「やるつもりなのか」
統夜は怪訝な顔になった。
「向こうは」
「だったらそのまま行って」
ハガネの艦橋からテニアが言う。
「サイド5も危ないし」
「その通りだ」
彼女の言葉にリーが頷く。
「このままではサイド5にも損害が出る。ここで食い止めろ」
「あれっ、あの人」
トールは彼の言葉を聞いて目をしばたかせた。
「言っていることは案外まともだね」
「そうよね」
それにミリアリアも頷く。
「最初はどんな人かって思ったけれど」
「常識人なのかな」
カズイはそう予想した。
「厳しいだけで」
「士官学校首席だったっけ」
サイはその話を思い出していた。
「確か」
「ああ、そうだ」
それにテツヤが応えた。
「少なくともあいつは一般市民を巻き添えにしたりはしない。それは安心してくれ」
「だったら問題ありませんね」
マリューはテツヤのその言葉にまずは笑顔になった。
「軍人として」
「そういうことだ。じゃあそっちも」
「はい」
マリューはあらためてテツヤの言葉に頷いた。
「それでは」
「全軍迎撃用意」
またリーの言葉が伝わる。
「すぐにマシンを出せ。いいな」
「了解」
こうしてロンド=ベルは布陣した。そこに謎の軍が突き進んできた。
「貴様等がこの世界の軍か」
彼等から通信が入って来た。
「何だ手前は」
忍がそれに応える。
「見たことのねえ連中だからよ」
「ムゲだ」
それが彼等の返答であった。
「我等の名はムゲ=ゾルバトス帝国」
「ムゲ=ゾルバトス帝国!?」
「何、それ」
亮と雅人はその聞き慣れない名前に顔を顰めさせた。
「聞いたこともないぞ」
「俺も」
「またどっかからやって来たのかい」
「そうだ」
今度は沙羅の言葉に答えるのだった。
「ムゲ界からな」
「ムゲ界!?」
「何だそりゃ」
「遠くここから離れた世界だ」
謎の男はそう説明する。
「少なくとも貴様等の考えているような世界ではない」
「セフィーロみたいなものでしょうか」
プレセアはそう考えた。
「それは」
「ううむ」
クレフはその言葉に考える顔になった。
「だが。かなり」
「そうですね」
アスコットが彼の言葉に頷く。
「僕達より遥かに邪悪なものが彼等には」
「あるな。そうした世界だ」
「我が名はデスガイヤー」
赤いモヒカンに仮面の男であった。
「ここで貴様等を倒す。いいな」
「へっ、やれるもんならやってみやがれ」
忍も喧嘩腰に言葉を返す。
「一発殴ったら百発にして返してやるからよ!」
「全軍攻撃用意!」
ここでまたリーが指示を出す。
「コロニーを守りきれ。いいな!」
「武器を持たぬ者に興味はない!」
デスガイヤーはここで言い切ってきた。
「貴様等を完全に倒すのみ。覚悟しろ!」
「随分と威勢がいいじゃねえかよ!」
忍はその彼に言った。
「俺達をぶっ潰すっていうのかよ!」
「貴様等を倒すことが俺の役目!」
デスガイヤーはまた言う。
「それを果たすつもりだ!行け!」
デスガイヤーも軍を前に出してきた。そうして両軍は戦いに入るのだった。
両軍はサイド5を前に激突した。ロンド=ベルがサイド5を背にしている。
ムゲ軍はそのまま正面から力押しで来た。その衝撃はかなりのものであった。
「これは・・・・・・」
「かなりね」
シンジとアスカが言う。
「手強い、彼等も」
「上等よ!」
そのうえで二人はそれぞれ違う反応を見せた。
「慎重にいかないと」
「まとめて叩き落してやるわよ!」
シンジがライフルで慎重に狙うのに対してアスカはグレイブを派手に振り回す。それでそれぞれ敵を倒すのをカズマは呆れた目で見ていた。
「何ていうかよ」
特にアスカを見ている。
「すげえのがいるな」
「アスカさんのこと?」
ミヒロが兄に問う。
「それって」
「ああ、噂には聞いていたけれどよ」
それだけアスカが有名になっているということであった。
「あそこまでなんてな。俺も無茶するが」
「お兄ちゃんも同じ位よ」
だが妹は手厳しかった。
「いつも無茶やるじゃない」
「そうか?」
「そうよ」
やはり彼女は厳しい。
「おかげでいつも苦労するんだから。わかってる?」
「無茶しねえと勝てねえんだよ」
それが彼の反論であった。
「戦争だぜ、やっぱりよ」
「それでもよ。ほら、来たし」
「わかってるさ」
目の前に現われた敵達を前にして妹に応える。
「いいか、管制頼むな」
「ええ」
ミヒロは兄に応える。
「任せて。今のままでいいわ」
「よし、ターゲットロックオン!」
コクピットにロックオンを知らせる警報が鳴る。後はもう撃つだけであった。
「シュート!行けっ!」
射撃ボタンを押して一気に撃ち抜く。そうして数機忽ちのうちに撃墜するのだった。
彼等の他の面々も見事な活躍を見せていた。まずは問題ないと言えた。
「何だ、皆凄腕じゃねえか」
ケーンはそんな彼等を見て言う。
「いざとなったらフォローに回ろうかって思っていたのによ」
「むしろ俺達がフォローされるかもな」
「いや、それもまた一興」
タップとライトも言う。
「おいおい、俺達みたいなエースがかよ」
「俺達以上のエースはここにはいるぜ」
「それを忘れられないのがロンド=ベルだ」
「まあそうだけれどよ」
これはケーンも否定できなかった。
「アムロ中佐は特別だからな」
「連邦軍の白い流星はな」
「やっぱり別格ってね」
そういうことだった。流石の三人もアムロには及ばないのだった。
「けれどまあ何かカズマにしろジョッシュにしろ上手くやってくれているし」
「俺達は俺達で」
「やりますか」
「やいそこのモヒカン!」
「それは俺のことか!」
デスガイヤーがケーンの言葉に応える。
「何の用だ!」
「って自覚しているのかよ」
「当然だ。これが俺の生き方だからな」
何故かモヒカンが生き方になっていた。
「否定するならすればいい。だが俺は」
「誰も否定するなんて言ってねえんだけれどな」
「気になるだけで」
タップとライトが突っ込みを入れる。
「そうか。ならいいが」
「とにかくだ。あんた、戦うつもりなんだな」
「だからここにいる」
言葉はこれまでと同じであった。
「我が偉大なるムゲ=ゾルバトス帝国の為にな」
「そうかい。じゃあこっちも容赦しねえぜ」
「最初から容赦はしていないけれど」
「まあそれは言いっこなしで」
また二人が言う。
「一気にやるぜ!」
「おう!」
「それなら!」
三人は動きを合わせて光子バズーカを放った。それでデスガイヤーの前にいた戦艦を一気に沈めるのであった。
「ほう、あの艦を一撃でか」
「将軍、まさかあれは」
「言うまでもない」
そう傍らの部下に言うのだった。
「こちらの世界の攻撃だ。中々凄いな」
「まさかあの艦が一瞬で」
「驚く必要はない!」
だがデスガイヤーはそれを見ても臆してはいなかった。
「この程度で。退くものか!全軍総攻撃だ!」
「いや」
だがここで制止する声がした。
「それは止めておいた方がいい」
「何っ!?」
「そろそろ限界だ」
低い声であった。その声でデスガイヤーに告げるのだった。
「ここは一旦退くべきだ」
「退けというのか、この俺に」
「そうだ」
声は言う。
「また戦える。それならばな」
「だが俺はまだ」
「皇帝もそう仰る」
声は今度は皇帝を出してきた。
「わかるな。これで」
「くっ・・・・・・」
そう言われてはデスガイヤーも従うしかなかった。苦渋に満ちた顔で頷くのだった。
「わかった。では全軍撤退だな」
「わかればいい」
声はデスガイヤーのその言葉に笑うのだった。
「それではな。ここは」
「うむ。全軍撤退せよ!」
デスガイヤーはすぐに撤退を指示した。
「よいな!」
「はっ!」
こうしてムゲ軍は素早く戦場から消えた。こうしてサイド5での戦いは終わったのであった。
「何だ、もう終わりかよ」
忍はムゲ軍が退いたのを見て言うのだった。
「意外と呆気なかったな」
「けれどあれはまた来るよ」
雅人はそう呼んでいた。
「絶対にね」
「そうだね」
それに沙羅が頷く。
「如何にもって感じじゃない」
「だが。とりあえずは勝った」
亮はそれはよしとした。
「サイド5は守られたな」
「そうだな。だが」
ここでアランは何かを感じていた。
「あのムゲ=ゾルバトス帝国だが」
「何かあるのかよ」
忍が彼に問うた。
「この世界と言っていたな」
「そういえばそうだね」
雅人がそれに応える。
「そうだ。どうやら別世界から来たと思っていいようだが」
「それが何かあるのかい?」
沙羅もアランに問うた。
「そのわりには。何故最初にここに来たのか」
アランの疑念はそこであった。
「このサイド5に。本来ここは」
「そうか」
亮は彼の今の言葉で気付いた。
「そうだ。最初に来たならまずは手近な軍事基地を狙う。しかし彼等は」
「一般市民の施設を狙った。そう言いたいのだな」
「そうです」
アランはリーにも答えた。
「それは何故か。どうしてもわかりません」
「少なくとも知識があるようだな」
リーもそれを理解した。
「この地球圏に関して」
「それです。その知識がある理由が気になります」
「事前に調べていた?」
カルヴィナはそう予測を立てた。
「侵略前に」
「それだったら最初に軍事基地を狙わないだろうか」
アランはそうカルヴィナに答える。
「例えば俺達が今いるゼダンのような」
「そうですね」
カルヴィナもその言葉に頷いた。
「言われてみれば」
「だがここに来た。陽動にしても知り過ぎている」
「僕達のことを」
統夜も気付いた。
「誰かがいるかもな」
アランはあらためて考えた。
「内通者か何者かが」
「内通者!?それは有り得ねえだろ」
ジャーダがそれを真っ先に否定した。
「世界が全然違ってしかも今やっと来たばかりなのによ」
「そうよ、それは幾ら何でも」
ガーネットも言う。
「有り得ないわよ、普通は」
「それは確かにそうだ」
アランもそれは認める。常識で考えて。
「しかし。それでも」
「引っ掛かるものはあるか」
「はい」
アランはカイの言葉に頷いた。
「少し。彼等を見てみるのも重要かも知れませんね」
「ふむ、そうだな」
ダイテツがその言葉を認めた。
「ではこれから色々と調べてみることにしよう」
「わかりました、それでは」
テツヤがそれに応えて言う。
「敵の残骸の回収を」
「うむ、頼むぞ」
「了解、では敵機の残骸を回収した後ゼダンに撤収する」
そう決定された。
「それでいいな」
「了解」
皆としてもそれで異存はなかった。
「それでは各自回収しろ。いいな」
「わかりました」
こうしてムゲ軍の残骸が回収されゼダンに戻った。だが結果がわかるのは当分先であった。
ロンド=ベルの面々はまずはゼダンで休息に入った。しかし誰もがアランの考えについてそれぞれ検証していたのだった。
「ムゲというのは異世界だな」
「そうみたいだな」
アムロがクワトロの言葉に頷いた。
「話を聞くとな」
「では。普通にこちらの人間が入ることはできない」
クワトロはそう考えた。
「普通にはな」
「けれどあれよ」
ここでクェスが言う。
「光ちゃん達みたいに」
「そうだ」
クワトロは彼女のその言葉に頷いた。
「向こうから召還される可能性もあるな」
「ラ=ギアスもそうでしたね」
ケーラがここで言う。
「確かあそこも」
「ええ、そうよ」
そこにいたセニアがケーラの今の言葉に頷いた。
「そうして召還していたのだけれど」
「だとするとそれなのか」
アムロは顎に手を当てて考えに入った。
「彼等の行動は。こちらの人間が参謀にいるから」
「その人間は召還されて彼等の中にいる」
クワトロも考える。
「だからなのか」
「そうだとし考えられない」
アムロはまた言う。
「サイド5を狙ってきた理由は」
「その細かい場所まで知っていたことも根拠になるな」
クワトロはそこも言う。
「だが。確証はない」
「そこか」
「予断や憶測は今は慎もう」
クワトロは慎重になることを述べた。
「情報収集に専念してな」
「わかった。それでは今のところはさらに残骸を調べよう」
サコンが言う。
「それでいいな」
「うむ」
「そうだな」
他の者達はサコンの言葉に頷いた。今はそれしかなかった。だが新たな敵がまた現われた、そのことは否定出来ないのであった。
第二十話完
2007・11・3
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