とある完全模写の物語
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禁書目録-Index-
「っう」
少年は短いうめき声と共に、右腕を即座にインデックスの口内から抜いた。どうしたのかと神童達三人は少年の右手に目を向けてみると、インデックスに噛まれたのか小さな歯型と共に血が少しだけ流れていた。
大丈夫か、と声をかけようとする神童だが、その前に神童の耳に少女の声が届いた。
「…告!警告!Index-Librorum-Prohibitorum。禁書目録の首輪、第一から第三までの全結界の貫通を確認」
その声の発生源は先程まで苦しんでいた筈のインデックス。しかし、今のインデックスは何時ものインデックスとは違い、何かが異常だった。
「十万三千冊の書庫保護のため、侵入者の迎撃を優先します」
侵入者の迎撃。この言葉を聞いて神童達三人は戦闘態勢に入る。
恐らく今インデックスを動かしているのは自動迎撃プログラムのようなもの。つまりインデックスを縛る何かが壊されたときに起動するようになっていたのだろう。
そして今から行われるのはインデックス-つまり十万三千冊の知識を持つ者による迎撃。
幾ら相手がインデックスだろうと、何もしなければ死んでも可笑しくはない。
「おい!何を呆けてる!攻撃が来るぞ!」
未だに現状をつかめていないであろう少年に神童は声を荒げ、注意を催促する。
「警告。第三章、第三節。首輪の事故再生は不可能。対侵入者用の特定魔術、聖ジョージの聖域を発動します」
インデックスがそう言うと同時に、インデックスの目の前に二つの魔方陣が並列して出現する。その一部は重なるようにして出現しており、その重なってる部分の景色だけがゆがみ始める。
それを目の前で見ている少年はなんだと景色が歪んでいる部分を凝視してしまい、そして見てしまった。
―このよの者とは思えない異形の存在を。
見てはいけないものを真正面から見てしまった少年の足は急激に震え、頭にも痛みが走る。吐き気もこみ上げてくる。何より―今この場で生まれてはならない恐怖心が生まれてしまった。
しかし、侵入者である少年をインデックスは見逃しはしない。聖ジョージの聖域の展開が完成したインデックスは聖ジョージが完成した瞬間、ひるんでいる少年に向け攻撃を開始する。
大型機関銃が発砲しているような音と共に二つの魔方陣から発砲されるいくつ物謎の弾。
少年は咄嗟に右手を突き出し、それを防ぐ。
(ちくしょう!攻撃の間が短すぎて攻撃にうつれねぇ!)
少年は完全に恐怖心をぬぐえたわけではないが、それでも今ここで引く訳にはいかないのだ。この少年は目の前で苦しんでいる人を放っておけない。その人が苦しんでいるなら助けを求めようが、求めまいが助ける。そういう人間なのだ。
「Salvare000!」
しかしインデックスの攻撃に反撃できないでいた少年だが、突然床に敷き詰められていた畳がインデックスの攻撃を阻害するかのように動き出した。
「今です!少年!」
そう叫んだのは火織。
そしてその声に答えるかのように少年はインデックスの元に駆け寄る。
火織のワイヤーを使った攻撃により、捲れあがった畳はインデックスの攻撃を阻害すると同時に、インデックスの足場も同時に崩した。それによりインデックスの攻撃は上方に向き、古ぼけたアパートの上に大穴を開け、星が煌く夜空に一線の光が駆け抜けた。
それと同時に大穴が開いたアパートの屋根からいくつ物白い羽が降ってくる。
「気をつけて!それは竜王の殺息。伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です!余波の光の羽が当たっただけでも危険です!」
火織から空から降ってくる光の羽のことについて聞き、そちらの方に意識を向けながらも少年はインデックスの元へと駆け寄る。
だがすでにインデックスは態勢を整えていた。
「戦闘思考の変更。戦場の検索を開始―現状、上条当麻の破壊を最優先とします」
まずい…!
少年は咄嗟にそう感じるが、すでに全身している体は止まることなく、インデックスの方へと進んでいく。
しかし、無情にも魔方陣から放たれた複数の光の弾は少年めがけて直進する。
と、その時、少年のマンションで少年を苦しめた炎の悪魔が少年の前に盾のように現れ、インデックスが放った攻撃をその身で受けた。
「イノケンティウスか!」
「何を呆けている異能者!礼を言う暇があるなら進め!」
少年が何を言おうとしているのか少年の様子から察したステイルはそれを先に制する。今は悠長に礼など言っている場合ではないのだ。
そして遂に少年はインデックスの元へとたどり着き、その右手をインデックスが展開した魔方陣へとぶつける。
(っくそ!なんだこれ!硬いぞ!?)
自分の右手が触れれば壊れると思っていた少年は魔方陣が壊れないことに驚き、一瞬だが隙が生まれてしまう。
今この瞬間ではその一瞬の隙が命取りになる。
自分の目の前の魔方陣を壊そうとしている少年の動きが止まったと判断した禁書目録は発動している聖ジョージの聖域をさらに少年の背後に発動させた。
「なっ!?」
突然自分の背後に魔方陣が表れ、少年は驚きの声をあげるが、今目の前で壊そうとしている魔方陣から右手を離してしまえば、右手を離した魔方陣から攻撃が再開されてしまう。それが分かっているからこそ少年は突然背後に表れた魔方陣に対応することができなかった。
火織とステイルも突然表れた魔方陣に対応しようとその場を踏み出そうとするが、既に魔方陣は起動しており、今何をしても間に合わないだろう。
間に合わない、そう三人が判断した瞬間、今まで何も手を出していなかった神童が動いた。
先程まで火織の後ろにいた筈の神童の姿は少年の背後に移動しており、魔方陣に向けて手を翳している。
そして次の瞬間、禁書目録が展開した魔方陣による攻撃と、神童による光の奔流が真正面がぶつかった。
「こっちは俺が抑えておく!今のうちにインデックスを!」
少年は背後で起こったエネルギーの衝突による余波で体が吹き飛びそうになるが、咄嗟に足に力をいれ、踏ん張ることでどうにかその場にとどまることが出来た。
そのまま神童に言うとおり、後ろは神童に任せ、自分は目の前の魔方陣を壊すことに神経を費やした。
(この世界が神様の作った奇跡の通りに動いてるってんなら…)
そして遂に少年の右手が触れている魔方陣にヒビが入り始め、そして遂に魔方陣は粉々に砕け散った。
「まずはその幻想をぶち殺す!」
少年がそう大きく叫ぶと同時に少年の右手はインデックスに触れた。
「―告―首輪の致命的な破壊―最終―滅―」
最後に何かをつぶやきながらインデックスは真正面から地面に体を預けた。
「イン…!」
少年は倒れたインデックスに近寄り、無事かどうかを確認し、安堵の息をこぼした。
それを後ろで見ていた神童達も安心し、少しの笑みを浮かべる。
これで終わった。
そう神童達三人は思ってたが、禁書目録の放った聖ジョージの聖域の余波である羽が少年の頭上に落ちてきた。
少年はそれを右手で払うことで安心したようだが、払ったと思った羽はしっかりと払えておらず、そのまま少年の頭上へと落ちた。
ゴッという鈍い音と共に少年はインデックスの隣に倒れ、ピクリとも動かなかった。
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