IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~
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第六話『シュバルツェ・ハーゼ』
出発の朝。家の玄関先で、スウェンはロイ、ネレイス、リズに出発の挨拶をしている。
「気をつけてね、何かあったら直ぐに連絡するのよ?」
「ああ、わかっている」
「少し寂しくなるな……けど、もう会えないって訳じゃないからね。頑張って来るんだよ」
スウェンは頷き、リズに視線を移す。
「行ってくる。元気でな」
「うん……お兄……ちゃん……も、元気で……ね」
「ああ。行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
そうして、スウェンは玄関を出ると、外にはシュハイクが車で待機をしていた。そのままスウェンは車の助手席に座る。
「挨拶はきっちり出来たか?」
「……ああ」
「ならいいんだ。さ、行こうか」
アクセルを踏み、車を進めるシュハイク。スウェンは遠ざかるグレーデュント宅を最後まで見届けていた。
「ん? その腕輪は? 昨日付けていなかったが……」
「義父さんと義母さんの贈り物だ」
「成る程、それが例の……ならば君は専用機持ち、というわけだな。おっと、これは伝えねばな。君は特別境遇ということで、上層部から少尉の階級を与えられた。それと私の補佐を、隊長補佐をしてもらおう」
「貴女は隊長も?」
「ああ、私は隊長であり、責任者をしている。君には訓練に励みつつ、私の補佐をしてくれればいい。期待しているぞ?」
「……了解」
「そろそろ着く。降りる準備をしろ」
/※/
車を降りたスウェンとシュハイク。スウェンはまず施設などを見、随分と立派だなと呟く。シュハイクはスウェンの前に立ち
「どうだ? 立派な施設が並んでいるだろう?」
「ああ」
「フフッ、薄い反応だな。それでは君がこれから住むことになる宿舎へ案内しよう。軍服もそこにある、ついて来い」
シュハイクの言うとおりについていくスウェン。視線だけを移しながら辺りの状況を見渡す。
(“最強の部隊”と呼ばれる位だ、これほどの施設があっても不思議ではないか……)
「ど……だろ?……ない……」
(しかし、ISが使えるからという理由で上層部が動くとはな……正直なところ、ISの存在認識を改めなければならないな)
「しかもだな、あそこの施設は隊員達の食堂……って聞いているのか?」
「……考えことをしていた」
「全く、困るぞ。そんなボーっとしているようでは。それと、君はこの敷地内に入った時点で隊員だ。隊長に対しての言葉遣いを直せ」
「了解しました、隊長」
「お、随分と順応するのが早いじゃないか。ほら、ついたぞ」
大きな建物がスウェンの前にそびえ立つ。スウェンは大きいなと一言。シュハイクがまた移動を開始したので、スウェンはそれについていく。
「君の部屋はここだ。軍服は中にある、着替えてきたまえ」
スウェンはその言葉を聞き、部屋の中へと入る。
「ほう、広さもそこまで狭くはないのか。軍人に与えられる部屋にしては良いものだ」
ベッドの上にある軍服を目にしそれに手をかける。そして直ぐに着替え終えると鏡の前に立つ。
「軍服という物ををまた着ることになるとはな……にしても」
スウェンは軍服の色に注目する。“黒”という名のつくだけあって、軍服は黒い。
「……悪い色ではないな」
それなりに気に入ったスウェンであった。着替えた私服をロッカーの中に入れ、部屋を出る。外に居たシュハイクはスウェンの軍服姿を見て「おお」と声を出す。
「なかなか様になっているじゃないか。似合っているぞ?」
「恐縮です。隊長、一ついいですか?」
「言ってみろ」
「何故服のサイズが合っているのか質問しても?」
「私を舐めるなよ?」
「いえ、答えになっていないのですが」
「細かいことはいい、早速君と隊員の顔合わせをしてもらう」
「了解」
/※/
「本日より“シュヴァルツェ・ハーゼ”に入隊したスウェン・カル・バヤン少尉であります」
スウェンは視界の先に居る“シュヴァルツェ・ハーゼ”の隊員達に敬礼をしつつ自己紹介をする。隊員達は表情を一切崩さず、スウェンを見ている。
「彼はこれから共に訓練をしていく仲間だ。皆、よろしく頼むぞ」
「「「はっ!」」」
声を合わせて応答する隊員。スウェンは隊員達に共通する点を見つける。
眼帯だ
シュハイクもそうだったが、隊員全員は左目に黒い眼帯を着用している。シュハイクの隣居る副隊長であろう女性もだ。何か眼帯には象徴的なモノでもあるのであろう、と推測する。すると、一人の少女が手を上げる。
「ん?どうした?」
隊員達の列が割れ、その挙手をしている少女の姿がはっきり見えるようになる。その少女の姿を見て、スウェンは一瞬表情を変える。何故なら、その少女は
(背の高さや目の色は違うが……まるでリズそのものだ)
そう、その少女の外見は多少違えど、リズの生き写しだからだ。
「君は……確か『ラウラ・ボーデヴィッヒ』だったな」
「はい、隊長。私に発言権を頂けませんか?」
「許可しよう。何だ?」
「何故男などという下等種がこの“シュヴァルツェ・ハーゼ”へ? 話を伺えば、上層部も動いたとか。私には理解できません」
ラウラの言葉に、シュハイクは顎に手を添える。彼女の隣に居るクラリッサは横目でスウェンに視線を送る。
「成る程、君はそう考えているのか。恐らくだが、他の者もその考えは少なからずある様に見えるな。上層部が動いた理由はごく簡単、彼がISを起動できるからだ」
「なっ!?」
「まさか……!?」
「そんなことが……」
ラウラを筆頭に隊員達はざわめく。
「それだけではない、私は彼から特別なモノを感じた。だから私は彼をスカウトしたのだ」
「し、しかし……」
「ならば、彼の実力を見れば問題ないな? クラリッサ!」
「はっ」
「彼とISで模擬戦をしろ」
「スウェン少尉と……ですか?」
「ああ。お前に勝てなくても、彼の実力をある程度見せれば皆も納得するだろう」
「……了解しました。ところで、スウェン少尉はISの使い方は?」
「知りません」
「なっ!?」
即答するスウェンにクラリッサは思わず声を漏らす。
「模擬戦は今から三時間後に行う。彼には私からISの使い方を叩き込む、良いな? スウェン少尉」
「了解」
「それまで皆は訓練を5分後に再開だ。それでは準備にかかれ!」
「「「はっ!」」」
敬礼し、隊員達は訓練の準備へと取り掛かった。クラリッサはシュハイクの方を向き
「私はツヴァイクの調整をしてきます。それでは」
そういい残して、敬礼の後歩き去ってくクラリッサ。「さて」とシュハイクは笑みを浮かべる。
「クラリッサは強いぞ? IS初操縦の君には分が悪すぎるか? まあ、少しは緊張しているだろう?」
「いえ」
「そうか、フフフ……これから君には三時間かけてISの基本操縦から何まで叩き込む。準備はいいな?」
「了解」
スウェンは左腕に付けられた、待機状態のストライクを見る。
(やるからには勝つ。お前と俺の実力を見せよう)
そのとき、ストライクは応えるかのように一瞬光を放っていた。
後書き
次回、スウェンVSクラリッサ。
ようやくISでの戦闘ですね……七話まで引っ張りすぎました。
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